2018年8月 9日 (木)

【映画評 感想】ミッション : インポッシブル-フォールアウト

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  映画「ミッション
:インポッシブル-フォールアウト」Mission : Impossible - Falloutを見ました。テレビシリーズ「スパイ大作戦」を基にしたトム・クルーズ主演の大人気シリーズの6作目になります。ブライアン・デ・パルマが監督した第一作は1996年、ということで、もう20年以上も続いているのですね。「フォールアウト」という言葉は、「予期せぬことが降りかかる」という一般的な意味合いのほかに、「死の灰が降る」という意味もあります。その通り、次々と主人公に降りかかる困難と、核兵器の脅威をテーマにしたのが本作です。

本作は、トムがジャンプして隣のビルに飛び移るシーンで骨折し、撮影が中断。製作が危ぶまれたのが大きな話題となりましたが、まさに「予期せぬ災難」に見舞われながら、完成にこぎつけたわけです。

本作の見どころとして、3作目の「M:i:III」で主人公イーサン・ハント(クルーズ)と結婚したジュリア(ミシェル・モナハン)が再登場します。4作目「ゴースト・プロトコル」で、ハントは敵に妻ジュリアを殺され、任務外の個人的な動機で復讐に走った、としてモスクワの刑務所に収監されている、という設定でした。しかし、ジュリアは実際には死んでいなかった、というわけです。彼女の登場で、ドラマは一挙に重厚さを増していきます。

それから、前作「ローグ・ネイション」で大注目された女スパイ、イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)も引き続き活躍します。

 

前作ローグ・ネイションでIMFImpossible Mission Force=不可能作戦部)は、ソロモン・レーン(ショーン・ハリス)率いる国際テロ組織「シンジケート」に翻弄されましたが、辛くもレーンを逮捕。シンジケートも壊滅したはずでした。

しかし、ハント(クルーズ)が新たに受け取った指令によれば、シンジケートの残党が「アポストル=神の使徒」と名乗り、テロ活動を再開している、といいます。

東欧の軍事施設から三つのプルトニウム・コアが盗み出され、これがアポストルの手に渡ることを未然に防ぐために、盗み出したマフィア組織と接触したハントとベンジー(サイモン・ペッグ)、ルーサー(ヴィング・レイムス)は、これを買い取ろうとしますが、取引の場に予期せぬ何者かが現れて、襲撃を受け失敗。プルトニウムは奪われてしまいます。

アポストルに協力して核爆弾の製造をしていた反体制科学者デルブルック博士(クリストファー・ヨーネル)から情報を聞き出したハントたちは、アポストルの謎の首領とされる人物「ジョン・ラーク」が、パリで闇社会の仲介人ホワイト・ウィドウからプルトニウムを手に入れようとしていることを知り、IMF長官ハンリー(アレック・ボールドウィン)の指示を受け、現地に乗り込もうとします。しかしそこに、IMFとハントに不信感を抱くライバル組織CIAの長官スローン(アンジェラ・バセット)の横槍が入り、凄腕のCIA工作員ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)が監視役としてハントに同行することになります。

ハントとウォーカーはパリで、ラークらしき男(リャン・ヤン)を襲いますが、相手は格闘の達人で、2人がかりでも大苦戦。そこに現れて「ラーク?」を射殺し、2人を救ったのは、英国情報部MI6の女スパイ、イルサ(ファーガソン)でした。

ハントはラークに成りすましてホワイト・ウィドウことアラーナ(ヴァネッサ・カービー)に接触。アラーナはプルトニウムを引き渡す見返りとして、別の依頼主から注文を受けている仕事、フランス警察が護送中のソロモン・レーンを奪取する作戦に協力する、という条件を提示します。警察を相手にする犯罪に加担することにハントは躊躇したものの、この条件を呑み、アラーナから手付けとしてプルトニウム1個を受け取ります。

しかし、ハントと共同作戦をとるウォーカーは、ハントこそが本当に犯罪組織のボス、ジョン・ラークなのではないかと疑い、上司のスローン長官に、死んだ「ラーク?」から手に入れた情報を渡します。

作戦決行の日、ハントたちはフランス警察の護送車からソロモン・レーンを連れ出すことに成功しますが、そこをバイクに乗って襲ってきたのはイルサでした。彼女はMI6からレーンを暗殺するよう命令を受けていたのです。

激しいカーチェイスの末、その攻撃もかわしたハントは、ロンドンでアラーナにレーンを引き渡そうとします。ところが、そこに現れたハンリー長官は、CIAに渡った情報に基づき、IMFは本件から手を引き、作戦を中止する、と告げます。窮地に立ったハントたちですが、その後、事態は急展開。

結局、プルトニウムはアポストルの手に渡り、世界は核攻撃の危機に見舞われます。身分を偽って密かに生きていたハントの妻、ジュリアも巻き込み、お話はクライマックスに向かいます…。

 

今回、4人の女性が活躍しますが、非常に魅力的に描かれていますね。なんといってもレベッカ・ファーガソンとミシェル・モナハンが人間ドラマの部分まで見せるいい演技をしています。それに加えて、女だてらに闇商売を仕切るホワイト・ウィドウ役のヴァネッサ・カービーという人が素敵です。元々、舞台で活躍し、近年、急速に注目されている若手女優さんだそうで、つい数年前には「ジュピター」でほんの脇役を演じていましたが、その後にテレビや映画で台頭し、期待の人です。それから、非情なCIA長官役のアンジェラ・バセットも存在感たっぷりです。1993年の「TINA ティナ」のティナ・ターナー役でアカデミー賞にノミネートされて一躍、有名になったベテランで、近年では「ブラックパンサー」でも重要な役どころをやっていました。この人も、次回作でも出てくるかもしれません。

トム・クルーズは可能な限りスタントマンを使わない、というのは有名な話で、56歳になった今回も、激しいカーチェイスにアクション、さらにヘリの操縦免許を取得してスカイ・アクションまでこなしています。本作では、街中を疾走してビルからビルに飛び移るシーンで負傷し、医師から全治9か月、と宣告されて、一時は製作が危ぶまれたわけですが、不屈の精神で、なんと6週間後には撮影を再開した、といいます。そういうことを知っているので、映画なのに、生中継を見ているかのように、ハラハラしてしまいます。激しいアクションに付き合うことになったヘンリー・カヴィルも「何度も死ぬかと思うほど危険な目にあった」と言っているようです。スーパーマン役で知られる彼も、本物の超人トムを前にして、圧倒されたようですね。

今作は、妻ジュリアや、ハントが気になっている女性イルサの再登場もあって、これまで超人的なヒーローとして活躍してきたイーサン・ハントなる人物がいかなる人間なのか、そういう内面の人物描写に深みが出ており、単なるアクションだけの娯楽作品ではなく、最後まで見どころが満載でした。このあたり、さすがにアカデミー脚本賞を受けた経歴のあるクリストファー・マッカリー監督の手腕は確かなものです。そもそもトム・クルーズとは「ワルキューレ」の脚本家として知り合い、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で脚本を担当しているときに、本シリーズへの参加をトム本人から打診された、と言います。

しかし、話が二転三転する盛りだくさんの複雑なストーリーを、2時間半に収めるのには、かなり苦労した感じも受けます。そんなにアップテンポではないのですが、見ていて、ちょっと説明不足というか、ストーリー展開的に分かりにくい印象も私個人は受けました。

そういえば、4作目、5作目で重要な役どころだったブラント(ジェレミー・レナー)は出演していません。本作では全く言及がないので、きっとほかの仕事をしているのか、異動したのか、ひょっとしたら転職したのか…。もっとも、一作目からずっと出ているルーサー、三作目から続投しているベンジー以外は、どの人物も入れ替わっています。そういう意味で、すでに卒業したと思われていたジュリアの復活は、かなり異例だったと思われますね。

きっと、このシリーズは次もある、と思うのですが、本作は、ここまでのストーリーの集大成的な内容でした。今後はますます新展開が期待できそうですね。

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2018年7月15日 (日)

【映画評 感想】ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

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映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」
Solo : A Star Wars Storyを見ました。言わずと知れた「スター・ウォーズ」シリーズの中核、エピソード5~6で事実上の主人公を務めたハン・ソロの若き日を描く作品です。

本来の主人公ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルが顔面を負傷して登場シーンが減ったこともあり、大きくクローズアップされて人気者になったという大胆不敵な宇宙のアウトロー、ハン・ソロ。全体的に日本の時代劇や、往年の戦争映画の影響が強い同シリーズの中で、西部劇的な要素を担っている人物です。演じたハリソン・フォードは当時、ジョージ・ルーカスの初のヒット映画「アメリカン・グラフィティ」(1973年)で脇役を務めた以外、ほぼ無名の役者でしたが、このハン・ソロ役を契機に大スターに成長しました。当初、ジョージ・ルーカスがハン・ソロ役に考えた候補の中には、アル・パチーノ、ジャック・ニコルソン、シルベスター・スタローン、さらにバート・レイノルズまでいたそうです。

それで、すでに語りつくされていると思いますが、本作で主演のオールデン・エアエンライクが、これからわずか10年かそこらの後で、あのふてぶてしく、男くさいハリソン・フォードに成長するものか、というのが大きな疑問を持たれたわけです。正直に言って、私も本作を見て、エアエンライクがやがて、ハリソンになりそうには全く感じませんでした(笑)。

しかし、決して物真似ではないけれど、ハリソンのハン・ソロを想起させるような言い回しやしぐさはしっかりやっているようで、ことに独特の腰を落とした無造作な銃の撃ち方などは、なかなか堂に入っています。実際にハリソン本人が、ハン・ソロを演じるための秘訣をいくつかエアエンライクに伝授したそうですね。

 本作は非常に製作が難航し、監督も出演者も途中で入れ替わりました。ロン・ハワード監督(この人も、アメリカン・グラフィティに主演俳優の一人として出演していましたね。ちなみに、お嬢さんが「ジュラシック・ワールド」シリーズのヒロイン、ブライス・ダラス・ハワード)になってから、全く新規の撮り直しに近い改造がなされて、今の形に落ち着いたといいます。その難行苦行から考えて、意外にといってはなんですが、作品はしっかりまとまっており、一本の作品としてみると、完成度は高いと感じます。監督がいかに苦心したか、と思います。

ただ、公開時期のずれ込みもあって、エピソード8からたった半年後の公開、となったのは、ちょっと不運だったと言えます。「ついこの間、新作を見たばかりなのに、またスター・ウォーズ?」という印象になってしまったのは、間違いありません。

 結局、「あのハン・ソロ」と思うかどうか、でしょうね。先入観を持たずに見れば、大変よくできた作品だと思います。

一言でいえばSF調の西部劇、でして、スラムで育った若者が、師匠の下で修業し、理不尽な悪党集団のボスと対立していく…といった成長物語は、典型的なガンマンもののストーリーです。

 本作では、なぜ「ハン・ソロ」という名前なのか、どういう経歴でパイロットとなったのか、いつチューバッカと出会ったのか、ランド・カルリジアンがオーナーだった高速宇宙船ミレニアム・ファルコン号をどうやって手に入れたのか、そして、エピドード4でハリソンのハン・ソロがオビワン・ケノービ(アレック・ギネス)に語っていた「ケッセル・ランを12パーセクで飛んだんだぜ」という自慢話の真相について…つまり、シリーズのファンにとっては非常に重大な情報が数々、盛り込まれています。その意味で、やはりファンは必見、という一作だと思います。

 

 共和政が崩壊、ジェダイ騎士団が解体し、皇帝の帝国が徐々に銀河を制圧しつつある時代。しかし、帝国による秩序も完成しておらず、あちこちの星では、地方の小悪党や盗賊がのさばっている時期のことです。

惑星コレリアのスラム街に住む貧しい人々は、レディ・プロキシマという独裁者の圧政に苦しんでいました。この星の若者ハン(エアエンライク)は、幼馴染のキーラ(エミリア・クラーク)と共に逃走を試みますが、ハンだけが密航に成功し、キーラはプロキシマの部下に捕えられてしまいます。お尋ね者となったハンはとりあえず、新入隊員を募集している帝国軍に志願し、コレリアを離れることとします。

 それから3年後。泥の惑星ミンバンの戦線に、帝国軍歩兵部隊の一兵卒となっていたハン・ソロの姿がありました。ハンは上官に逆らい地下牢に放り込まれますが、そこで知り合ったのが帝国の奴隷となっていたウーキー族のチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)。2人は牢を脱出し、たまたま帝国軍から宇宙船を盗み出そうとしていた盗賊ベケット(ウディ・ハレルソン)の一味と共に飛び立ちます。ベケットの腹心ヴァル(タンディ・ニュートン)はハンたちを全く信用してくれませんが、パイロットのリオ(ジョン・ファブロー)は気に入り、正式に一味の仲間となります。

 ベケットたちは、帝国軍の軍用列車から希少な宇宙船の燃料コアクシウムを盗み出す計画を実行します。しかしもう少しで成功、という時に、周辺を縄張りとする別の盗賊エンフィス・ネスト(エリン・ケリーマン)の襲撃を受けて、失敗してしまいます。

 ベケットとハン、チューバッカは、ベケットの雇い主であり、あたりの星系では最大の勢力を持つ犯罪組織クリムゾン・ドーンの首領ドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)と面会し、作戦失敗を報告することになります。ここでハンは、キーラと思いがけなく再会します。キーラは今やドライデンの片腕となり、組織の大幹部となっていました。

 ベケットはコアクシウムをなんとしても手に入れることをドライデンに約束します。かくて、キーラをお目付け役に加えた一行は、惑星ケッセルにある鉱山から精製前のコアクシウムを手に入れ、宇宙の難所として知られるケッセル星の周辺空間「ケッセル・ラン」を突破する困難な作戦を実行することになります。

不安定なコアクシウムを積んで難所を通過するには、極めて高性能な宇宙船が必要となります。一行はまず惑星ヴァンドアに向かい、高速船ミレニアム・ファルコン号を所有している密輸業者ランド・カルリジアン(ドナルド・グローヴァー)に接触することにします…。

 

 といったわけで、話はやがて、ハンとチューバッカが砂漠の惑星タトゥイーンでジャバ・ザ・ハットの密輸仕事を請け負うようになり、ルークやオビワン・ケノービと出会う方向に進んでいくわけです。そういうゴールが決まっている話なので、ある意味でストーリー上の緊張感が失われるのも事実。だが、本作は何回もどんでん返し、裏切りが相次いで、最後まで巧みに引っ張っていると思います。

 ドライデン・ヴォスを演じたポール・ベタニーは、今や「アベンジャーズ」「アイアンマン」などマーベル・シリーズの常連スターですが、ロン・ハワード監督の大ヒット「ダヴィンチ・コード」で名を上げた俳優さん。今回は、一連のスケジュールの遅れで、本来、同役を務めていた人が参加できなくなり、急きょ、監督の指名を受けて憧れのスター・ウォーズ・シリーズに出演が決まったというラッキーな人です。パンフレットによれば「自分から監督に売り込んだのは初めて」だそうです。

 キーラ役のエミリア・クラークは「ターミネーター」の新作で、二代目サラ・コナーを演じて注目されましたが、熱演しながら、その清楚な美貌がかえって「リンダ・ハミルトンには見えない」という批判が絶えず、苦労しました。ある意味、今回のエアエンライクの立場に似ています。「有名人に似ていないと批判され、物真似をしても批判される」困難さを一番、理解できる女優さんだったかもしれません。

しかし今作での彼女は、今まで全く言及されていない新キャラを演じるということで、生き生きとした人物像になりました。本作で一番、目立った人、成功した人の一人ではないでしょうか。

 それで、この人が最後には、さらに思いもよらない正体を現すのが本作の結末なのですが、ここらへんはネタバレとなるので書かないでおきましょう。

 それにしても、ハン・ソロの初恋の人であるこのキーラ。それほど重要な人物であるのに、エピソード4以後の歴史には全く、名前すら登場しないわけで、ハンもその後に知り合ったレイア姫にどんどん惹かれていくわけです。このあたりをどういう扱いにするのか、今後の作品でフォローするのか、興味深いところです。

 また、本作では、思いがけない登場人物として、エピソード1「ファントム・メナス」で若き日のオビワン(ユアン・マクレガー)に倒されたはずの皇帝の弟子、ダース・モールが出てきます。彼は実際、あそこで死んだわけではなく、外伝などでは復活劇が描かれているようです。これもハン・ソロの物語とどう絡むのか、も気になるところです。

 どうも「ハン・ソロ」シリーズとしての続編、も考慮した展開となっているように思われる本作。一応、三部作を前提としているそうですが、必ず続編を製作する、という話もないようなので、このあたりは大いに気になる、というのが見終わった後の感想です。

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2018年7月14日 (土)

【映画評 感想】ジュラシック・ワールド/炎の王国

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 映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国」
Jurassic World : Fallen Kingdomを見ました。2015年のヒット作「ジュラシック・ワールド」の続編であり、1993年にスティーブン・スピルバーグが監督して世界を驚かせた「ジュラシック・パーク」シリーズとしては、通算5作目にあたります。新シリーズは3部作の予定だそうで、次の6作目は2021年公開予定、とアナウンスされているようです。

 前作の主人公オーウェン役のクリス・プラット、クレア役ブライス・ダラス・ハワードが再演している他、なんとシリーズ初期に活躍したイアン・マルコム博士としてジェフ・ゴールドブラムが登場します。また、肖像画という形ではありますが、ジュラシック・パークの創業者ジョン・ハモンドとして、故リチャード・アッテンボローの姿も映し出されるのは、ファンには嬉しいサービスでしょう。

 

 前作ジュラシック・ワールドでの悲劇的な大騒動から3年たった2018年。施設は廃墟と化したものの、生き延びた恐竜たちはイスラ・ヌブラル島で野生化していました。

 しかし、この島の休火山が活動を再開し、恐竜たちは二度目の絶滅の危機に瀕していました。かつてジュラシック・ワールドの前身ジュラシック・パークで起きた事件にかかわり、滅びたDNAの復活やクローン技術に懐疑的なマルコム博士(ゴールドブラム)は、米上院の委員会で参考人として意見を述べ、このまま恐竜たちが火山島とともに滅びることを受け入れるべきで、政府は手を出すべきでない、と主張します。それもあって、議会はこの件には公的な関与をしないことを決定します。

 前作でジュラシック・ワールドの運営責任者だったクレア(ダラス・ハワード)は、その後、恐竜保護活動の民間グループを立ち上げていましたが、政府の決定を聞いて心を痛めます。そこに、かつてジュラシック・パークを創業した亡きジョン・ハモンドのパートナー、ベンジャミン・ロックウッド(ジェームズ・クロムウェル)から連絡があり、ロックウッド財団の運営責任者ミルズ(レイフ・スポール)と面会することになります。

ミルズは恐竜を島から救出する財団独自のプランを計画しており、特に際立って知能の高いラプトルの「ブルー」を捕獲したいと考えていました。そこでクレアはミルズに協力し、ブルーの育ての親で、元恋人でもあるオーウェン(プラット)を誘い、自分の団体の仲間で獣医のジア(ダニエラ・ピネダ)、IT技術者のフランクリン(ジャスティス・スミス)を連れて、島に赴くことになります。

 島でクレアたちを出迎えたのは、財団が雇ったウィートリー(テッド・レヴィン)という野卑なハンター風の男で、その後、オーウェンが森の中でブルーと3年ぶりに再会すると、悪党の本性を現します。ブルーを傷つけながら捕獲し、オーウェンには麻酔弾を撃ち込み放置。さらに手近にいた恐竜を片端から捕えて船に積み込み、クレアたちを置き去りにして、噴火する島を逃げ出します。

結局、クレアたちは、ブルーを捕獲するために利用されただけだったと悟りますが、命からがら島を脱出し、ウィートリーの船に密かに潜入します。

 船はロックウッド財団の本拠地を目指して進んでいました。ミルズは病身のロックウッドには無断で、武器商人のエヴァーソル(トビー・ジョーンズ)に話を持ちかけ、競売会を開いて恐竜たちを売りさばこうとしていました。さらに、財団の地下にある秘密研究所には、前作で暴走した凶悪なハイブリッド恐竜を生み出した遺伝子学者ウー博士(BD・ウォン)の姿もあり、恐竜の遺伝子を生体兵器に応用するべく、違法な研究を続けていました。

しかし、この陰謀にロックウッドの孫娘メイシー・ロックウッド(イザベラ・サーモン)が気付き、祖父に打ち明けます。ロックウッドはミルズを詰問し、競売をやめさせようとしますが…。

 

 といったお話で、島を脱出するまでの前半はジェットコースターのようなアクション、後半は密室的なロックウッドの屋敷の中での息詰まる死闘、といった感じの盛り沢山な内容。これまでのシリーズとの継承性に敬意を払いつつ、新しい要素も盛り込んで、意欲的な一作となっていると感じます。

 クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードの2人は、前作からの共演で息もぴったり。非常にいい感じです。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」などマーベルの一連のシリーズで知名度を上げたプラットにとっても、オーウェン役は当たり役の一つとなりました。

 癖のある役というと、あちこちの映画で引っ張りだこのトビー・ジョーンズ。今回も悪徳商人を存在感たっぷりに演じています。

 ゴールドブラムは、せっかくの再登場ですから、もっと大活躍をしてもらいたかった、という気もします。しかし、この人が前に出過ぎると、旧作のリメイクのような印象になりかねず、そのあたりを考慮した結果のバランスなのだろう、とも思います。

 それにしても、このシリーズは結構、人が死ぬ映画です。恐竜が大暴れすれば、そのエサである弱い生き物=人間が次々に犠牲になるのは必然なわけです。何しろ彼らから見て、いちばん数が多く、無力で手に入れやすい獲物と言えば、人間でしょうからね。

 そして、最終的にはこの恐竜との共存が、人類には出来るのだろうか、というのが大きな問題となってきます。

映画の最後、このあたりがクローズアップされて、次作に続いていきそうな展開です。実際、圧倒的に強力で知能も高い恐竜が完全復活するとなると、あくまでも恐竜がたまたま隕石の衝突などによって滅びてくれた後の世界で繁栄してきた人類という種族にとり、大変な危機になることが分かります。マイケル・クライトンの最初の原作が取り上げた主要なテーマもそこにありました。

 シリーズを通じての核心的なテーマが、最後に集約されてきそうな予感。それを、マルコム博士の再登場が示しているようです。

 次作は東京五輪より後の公開、ということで、まだまだ先のことですが、シリーズとしてどういう結論を導き出すのか。それから、クレアやオーウェンはこれからも登場するのか。非常に興味深いです。

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2018年6月22日 (金)

【映画評 感想】メイズ・ランナー:最期の迷宮

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「メイズ・ランナー
: 最期の迷宮」Maze Runner: The Death Cureを見ました。アメリカのヤングアダルト(わが国でいうライトノベル)小説を映画化してヒットしたシリーズ三部作の最終章です。

この作品は当初、昨年初めに公開される予定でしたが、主演のディラン・オブライエンが撮影中に大怪我を負って中断し、一時は製作が危ぶまれた経緯があります。1年遅れで完成して最後まで「完走」した関係者に拍手を送りたいですね。

少年少女が成長する過程を描く、というヤングアダルト作品であるために、スタート時点では、ほぼ無名の若手が多数、出演したこのシリーズ。本作で名を上げたオブライエンが、「アメリカン・アサシン」でマイケル・キートンと共演したのを始め、ヒロインのカヤ・スコデラリオはジョニー・デップの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのヒロインに、ウィル・ポールターはレオナルド・ディカプリオ主演の「レヴェナント:蘇えりし者」に、トーマス・ブロディ=サングスターは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に、さらにローサ・サラザールはジェームズ・キャメロン製作の「アリータ:バトル・エンジェル」の主演に抜擢される、など、その後の数年間で各人がキャリアアップを果たして(年齢的にも、皆さんアラサー世代となり)、立派なスターになっています。後になって、有望な若手の登竜門だった、と言われるようなシリーズとなりました。初めからキャスティングが見事だった、ということだと思います。

メイズ・ランナーとは「迷路の走者」という意味ですが、この3作目だけを見た人には意味が分からないと思います。実際、このシリーズは一作ごとにかなり作風が異なり、迷路に閉じ込められた少年たちが逃走を図る、という意味で文字通りのメイズ・ランナーと呼べるのは、最初の作品だけと言えます。

広大な迷宮の中に閉じ込められた少年たちが、自分たちが何らかの実験の対象であることに気付き、命がけの脱出を図ったのが一作目。そして、その実験が、人類を破滅させようとしている細菌に対し、免疫を持っている子供を集めて、特に強靭な素質の者を選別するための手段だったことが二作目で明らかになります。

彼らは、実験を行っている世界災害対策本部(WCKD)の施設を抜け出し、危険な砂漠を越えて、レジスタンス組織と合流します。しかし、思いがけないことに、行動を共にしていたテレサ(スコデラリオ)の裏切りにより、ミンホ(キー・ホン・リー)たち多くの仲間がWCKDの手に落ちてしまいます。

主人公のトーマス(オブライエン)は、テレサの裏切りに傷つきながら、ニュート(ブロディ=サングスター)、フライパン(デクスター・ダーデン)と共にミンホの救出を誓うわけでした…。

 

さて、ここからが本作。トーマスたちは、レジスタンスのリーダー、ヴィンス(バリー・ペッパー)、前作からトーマスたちと行動を共にしているブレンダ(サラザール)、ホルヘ(ジャンカルロ・エスポジート)と協力し、少年少女を運ぶWCKDの列車を襲撃。ハリエット(ナタリー・エマニュエル)、エリス(ジェイコブ・ロフランド)、ソーニャ(キャサリン・マクナマラ)たちの奪還に成功しますが、ミンホの姿はありませんでした。

WCKDの拠点とされる「ラスト・シティー」で、ミンホは人体実験を受けているらしい。ヴィンスは強く反対しましたが、トーマスは危険を顧みず、敵の本拠地に乗り込むことにし、ニュートたちもそれに従います。

ついにたどり着いたラスト・シティーの前で、WCKDの保安責任者ジャンソン(エイダン・ギレン)の攻撃を受けて一行はピンチを迎えますが、そこで彼らを助けたのは思いがけない人物でした…。

WCKDに対する抗議活動を率いている過激派のリーダー、ローレンス(ウォルトン・ゴギンズ)の支援を得て、シティーの中枢部に潜入するトーマスたち。そこには、ペイジ博士(パトリシア・クラークソン)の元で冷酷な人体実験に明け暮れているテレサの姿がありました。トーマスは動揺しつつも、彼女に接近し、力づくでも協力させ、ミンホが捕えられている施設の中心部に乗り込もうとします…。

 

 といった具合で、お話は終幕に向かってひた走っていくわけです。5年がかりのシリーズで出演者の息もぴったり、独特の雰囲気が出来上がっているのが分かります。先にも書きましたが、若い出演者たちが、その後、それぞれが違う映画に出て活躍し、久々の同窓会と言うか、卒業式と言うか、そんな感じも受けます。

 お話の細かいところを見れば、突っ込みどころは多々あると思います。ことにシリーズを通しての敵役ジャンソンというのが、保安責任者のくせにとにかく無能なヤツで、素人考えで見ていても、あり得ない凡ミスを繰り返すのに唖然としてしまいます。普通ならとっくに首になっていそうなものですが、WCKDも人材不足なんでしょうかね。もちろん、この役柄が無能らしい、ということで、演じているエイダン・ギレンが好演しているからこそ、このキャラクターの表面だけ抜け目ない風を取り繕いながら、実は抜け穴だらけのダメさが見えてくるのですが。

 一方、今作で初登場のローレンス役、ウォルトン・ゴギンズは迫力がありました。実に壮絶です。この人のおかげで終盤が大いに引き締まりました。

 最後の幕切れは、なんというか物悲しい感じで終わります。多くの登場人物が姿を消し、ずっとシリーズを見守ってきた人たちには、何か喪失感を覚えさせるような、静かなエンディングを迎えます。

 「トワイライト・サーガ」「ハンガー・ゲーム」などと続いてきたヤングアダルト小説原作のシリーズ映画作品、というのもそろそろアメリカでは一段落してきているようです。映画化できそうな原作は、みんな映像化してしまった、という感じなのでしょう。事情があって、ムーブメントのしんがりに近い位置を占める形になった本作は、有終の美を飾ったといっていい一作だと思います。不思議な名残惜しさと余韻が残りました。

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2018年6月 9日 (土)

【映画評 感想】デッドプール2

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「デッドプール
2Deadpool 2という映画を見ました。2016年のヒット作「デッドプール」の続編で、X-MENシリーズとしては通算11作目にあたります。デヴィッド・リーチ監督を始め、主要スタッフには「ジョン・ウィック」シリーズ(主演:キアヌ・リーブス)や「アトミック・ブロンド」(主演:シャーリーズ・セロン)で名を連ねた人が多数、参加しています。つまり、それらのバイオレンス・アクション作品に共通する「新感覚アクション」の要素が濃いわけです。それにもかかわらず、デッドプールは1作目も、どんなにバイオレンス・シーンがあろうが、おふざけがあろうが、実はせつない恋愛映画でした。本作でも、まさにその持ち味が前作以上に強まっています。

雰囲気を盛り上げる音楽面では、あのバラードの巨匠セリーヌ・ディオンが主題歌を熱唱。また挿入歌として、前作ではワム!の「ケアレス・ウィスパー」が効果的に使用されましたが、本作ではa-haの「テイク・オン・ミー」が哀切な場面で流れます。しかしこの1985年の大ヒット曲、「ラ・ラ・ランド」でも演奏されていましたが、今から振り返ると80年代を代表する楽曲という地位に就きましたね。

ちょっとノスタルジックな感傷が、これほど上手く演出や音楽で効果を発揮するのは奇跡的とすらいえるでしょう。「ジョン・ウィック」や「アトミック・ブロンド」もそういった作風ですが、このデッドプール2は際立っているように思えます。随所にてんこ盛りで展開される、懐かし映画(音楽同様、80年代から90年代前半のものが中心)のパロディー場面も、一つ一つが非常に洗練されています。

スピリチュアルな死生観まで提示して、まさにバイオレンスと脱線コメディーを装った「せつない恋愛映画」が、より一層の高い完成度で迫ってきます。そもそもX-MENのパロディー的な外伝、低予算のスピンオフとしてスタートした本シリーズも、今や押しも押されもしない人気シリーズとなってきた感じがします。

主演のライアン・レイノルズは、「ウルヴァリン」第1作で「ウェイド・ウィルソン」として出演したものの、ヒュー・ジャックマン演じるローガンにあっけなく倒されてシリーズを去りました。それ以後、コミックもの大作として「グリーン・ランタン」の主演を獲得したのですが、こちらは興行的に不発で終わり、シリーズ化はされませんでした。

そのへんを踏まえますと、本シリーズの成功でついに捲土重来、長き不遇をはねのけたわけです。そして、そのへんの事情を本作では、前面に押し出して自虐的な笑いに変えています。実にしたたかですね。そういうわけで、本作ではヒュー・ジャックマンが終盤で思いがけない形で登場するほか、ついに本家のX-MENのレギュラー・メンバーまで、ほんのワンシーンですがしっかり登場してしまいます。つまりビーストのニコラス・ホルトや、チャールズのジェームズ・マカヴォイ、クイックシルバーのエヴァン・ピーターズなど、おなじみのスター本人が顔をそろえます。デッドプールの世界観がX-MENの正史に組み込まれた瞬間というわけです。お見逃しなく。

 

前作で、最愛の女性ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と結ばれてから2年。「デッドプール」ことウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、マフィアや麻薬の売人などを始末する危険な暗殺稼業でその日を送っていますが、ある日の任務に失敗。敵から報復を受けて失意のどん底に。

不死身の肉体を持つ故に死ぬことも許されず、絶望するウェイドを、X-MEN教官のコロッサス(声:ステファン・カピチッチ)が助け出し、見習いの身分ながら正式にX-MENに加入させます。その初仕事として、コロッサスやネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)、その恋人であるユキオ(忽那汐里)と出動したウェイドは、ミュータント養護学校で暴走している少年ラッセル(ジュリアン・デニソン)を制圧します。しかし、学校の理事長(エディ・マーサン)は邪悪な人物で、ラッセルたちを日常的に虐待していることが分かります。怒りに駆られたウェイドは学校の職員を殺してしまい、X-MENを除名に。ただちにラッセルと一緒に、ミュータント専用の刑務所アイスボックスに収監されてしまいます。

そこに突如、出現したのは、未来からやって来たという謎の戦士ケーブル(ジョシュ・ブローリン)。彼はなぜかラッセルを執拗に殺そうとしますが、ウェイドは身を挺してその攻撃をかわし、結果的にケーブルとともに刑務所から外に放り出されてしまいます。

ラッセルたち囚人は、護送車に乗せられて、さらに要塞度の高い別の施設に送られることになります。当然、ケーブルがそこを襲撃するとみたウェイドは、悪友のウィーゼル(TJ・ミラー)と共に、新たな独自のヒーロー・グループを結成することにします。そこに集まったのは酸性の液体を吐くというツァイトガイスト(ビル・スカルスガルド)、ひたすら幸運であるという女性戦士ドミノ(ザジー・ビーツ)、何の特技もない失業者ピーター(ロブ・ディレイニー)と、使えるのか使えないのかよく分からない面々。ウェイドは新グループを「X-フォース」と名付け、ケーブルの攻撃からラッセルを守ることにします。というのも、愛しのヴァネッサがそう望んだから。ラッセルを守ることが、ウェイドの心を「正しい位置」に導くきっかけになるかもしれない、と彼女は告げたのでした…。

 

 ケーブル役のジョシュ・ブローリンはマーベルの別の世界「アベンジャーズ」シリーズでは敵の大ボスであるサノスを演じており、おふざけなんでもありの本作でも、いきなりウェイドから「サノス」と呼ばれています(!)。実はコミック原作では、デッドプールとサノスはライバル関係にあるので、今回の配役はそのへんをあえて混乱させるためのものかも。また、原作ではケーブルは、サイクロプスとジーンの息子、という設定なのだそうですね。本作では背景を何も描いていませんが。

 忽那汐里さんが演じたユキオというキャラは、漢字で書くと「雪緒」という日本人(あるいは日系人)の戦士で、これまでにも日本を舞台にした「ウルヴァリン」シリーズの2作目で登場しています(演じたのは福島リラさん)。しかし今回は、ネガソニックとの同性愛関係という大胆な設定に。

 後半で特に目立つのがX-フォースのメンバー、ドミノの活躍ぶりです。この役を演じたザジー・ビーツはドイツ出身の新進女優で、近作では「ジオストーム」で、米国務省の職員でありながら異色の女性ハッカーという役柄で注目されました。知的な美貌で、強い女性役にぴったりの存在感があっていいですね。

 悪徳理事長を演じたエディ・マーサンは、いろいろな映画に出ている英国のベテランですが、この独特の暗い表情、最近の映画でもどこかで見たなと思いましたら「アトミック・ブロンド」で東ドイツの秘密警察幹部スパイ・グラスを演じていました。リーチ監督のお気に入りの役者さんのようです。そういえば「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」のピエロ役で知られ、名優ステラン・スカルスガルドの息子さんでもあるビル・スカルスガルドも、「アトミック・ブロンド」つながりといえます。同作でヒロインを助ける東ベルリンの現地工作員の役をやっていました。

 非常に感動的なお話…ですが、最後の方はもう自虐的な「歴史修正」の嵐! 最後の最後まで見ると、「要するにこれが言いたかったのか」とあっけにとられてしまいますが、もうなんでもありなのが、デッドプールの世界。

 本作もヒットして、おそらく3作目の製作も期待されます。今度こそX-MENと本格共演するか、それともいきなり掟破りのアイアンマンやマイティ・ソーと絡んだりするのか。いやいや、なんならダースベイダーやジェームズ・ボンドと共演したって構わないのかもしれません。なんでも許される作品なだけに、今から大いに楽しみです。

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2018年5月25日 (金)

【映画評 感想】ランペイジ 巨獣大乱闘

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 「ランペイジ
 巨獣大乱闘」RAMPAGEという映画を見ました。元ネタは1986年にアメリカのゲームセンターで大ヒットした「ランペイジ」というアーケード・ゲーム。原題の意味は「大暴れ」です。

 そのゲームというのは、3人の人間がふとしたきっかけで巨大なゴリラ、狼男、ワニに変身し、全米の街をひたすら破壊しまくる、というもの。街の建物を全て破壊しつくせばステージクリア、という、この身もふたもない話から、一本の映画にしようというのもかなり強引ですが、主演にプロレス界に長く君臨した人類最強の男ドゥエイン・ジョンソンを据えることで(というか、本作では彼は製作総指揮までやっていますが)、これがどうして、きわめてよく出来たアクション怪獣映画になっています。

 今や映画スターとして引く手あまたのジョンソン。ディズニー・アニメ「モアナと伝説の海」では声優を務め、歌も披露するなど、なんでもできる器用さも際立ちます。待機作品も控えており、若い世代など、この人が本来は有名なレスラーだったことを知らないかもしれません。しかしこの、強靭な肉体と高い知性を感じさせるジョンソンだからこそ、この映画の主人公に与えられている「元米軍特殊部隊の隊員で、その後、密猟捜査官に転じ、今ではサンディエゴ野生動物保護区で霊長類学者として活躍」というかなり難易度の高そうな経歴を無理なものに感じさせません。

 そして、主人公と、彼が育てている白いゴリラ、ジョージとの心の交わり、というのが、娯楽作品の枠組みを超えて実によく描けており、感動を呼びます。この要素がなければ、本当に「大暴れ」だけになりそうなところを、うまく考えたストーリーだと思います。

 

 1993年に、難病治療の切り札として開発された遺伝子編集技術クリスパー。しかし、悪用の危険性を憂慮した米政府は2016年、この研究を禁止しました。

 シカゴを本拠とする米企業エナジン社は、宇宙ステーション「アテナ1」の中で極秘に遺伝子編集の研究を進め、動物実験を繰り返していました。ところが実験は失敗し、アテナ1は崩壊。生き残ったアトキンズ博士(マーリー・シェルトン)は、エナジン社の経営者クレア・ワイデン(マリン・アッカーマン)の厳命を受けて実験サンプルを3個、持ち出し、アテナ1から脱出しますが、救命ポッドが大気圏突入時に爆発してしまいます。博士は死亡し、三つの危険な遺伝子サンプルは米国内の地上に落下します。

 サンディエゴ動物保護区の霊長類学者デイビス・オコイエ(ドウェイン・ジョンソン)は、かわいがっている白いゴリラのジョージ(モーション・キャプチャー : ジェイソン・ライルズ)の心身に異変が起こり、どんどん巨大化して狂暴になっていくことに気付きます。そこに現れたケイト・コールドウェル博士(ナオミ・ハリス)は、自分がエナジン社で行った遺伝子研究が悪用され、アテナ1の事故によって危険なサンプルが地上に落下、その影響を受けた動物に変異が起きていると説明します。とうとうジョージは暴れ出し、デイビスとケイトの2人は、政府の秘密組織OGAのエージェント、ラッセル(ジェフリー・ディーン・モーガン)に逮捕され、麻酔弾を撃ち込まれたジョージも輸送機で運ばれることになります。

 同じころ、ワイオミング州の森林地帯から、巨大化したオオカミが出現。エナジン社を率いるクレアと弟のブレット・ワイデン(ジェイク・レイシー)は、バーク(ジョー・マンガニエロ)を隊長とする傭兵部隊を派遣して、大ごとになる前に倒そうとしますが、逆に部隊があえなく全滅してしまいます。

 クレアとブレットのワイデン姉弟は、2体の巨獣をおびき寄せるために、シカゴのエナジン本社から特殊な周波数の信号を発信。軍部に巨獣を倒させた後、一連の騒動の責任をケイトに押し付け、自分たちは遺伝子を回収して、生物兵器として売り込もうと画策します。

 信号を受けてジョージは暴れ出し、輸送機は墜落。デイビスとケイトは辛くも落下傘で脱出し、気絶していたラッセルの命も助けます。

 ラッセルはデイビスとケイトを、軍のシカゴ防衛指揮官であるブレイク陸軍大佐(デミトリアス・グロッセ)の元に連れて行きますが、ワイデン姉弟の差し金により、違法な研究をしていたのはすべてケイト一人の責任、ということにされた結果、ケイトとデイビスはそのままFBIに身柄を引き渡されることに。

 しかし、事情を察したラッセルは、2人を病院の輸送用ヘリで脱出させ、ワイデン姉弟の悪事を阻止させようとします。ケイトによれば、エナジン社には巨獣を制御するための解毒剤があるはず。デイビスはジョージを救うために、エナジン社に乗り込みます。

 そんな中、軍の作戦は次々に失敗。シカゴに入った2体の巨獣は、まさにランペイジして破壊の限りを尽くします。さらに川からは、三つ目のサンプルが落ちたフロリダ州で巨大化したワニが出現。万策尽きたブレイク大佐は、ついに最後の手として、爆撃機からシカゴの市街地に悪夢の巨大爆弾MOABを投下する決断をしますが…。

 

 といった流れで、娯楽作品のお手本のようなスムーズな展開は小気味よく、といって話をかっ飛ばし過ぎる感じもなく、しっかり情緒的な描写やコミカルなシーンも盛り込んでいます。なんといってもドウェイン・ジョンソンの存在感が光りますが、ケイト役のナオミ・ハリスもいいです。今や007シリーズのマネーペニー役で有名になった人ですね。

 それから、傭兵隊長を演じたジョー・マンガニエロ。どこかで見た顔、と思いましたが、あの男性ストリッパーの世界を描いた異色作「マジック・マイク」で、男性フェロモンむんむんのストリッパーを演じていました。

 本作の悪役、クレア・ワイデン役のマリン・アッカーマンという人はスウェーデン出身の女優さんで、いろいろな映画に出ているようですが、私の記憶にあったものでは、2012年にニコラス・ケイジが主演した「ゲットバック(原題: Stolen)」で、銀行強盗グループの女性ドライバーを演じていたのが印象深いです。

一癖ある秘密組織エージェントを演じたジェフリー・ディーン・モーガンは、日本ではあまり知られていない俳優さんです。本作では後半のコミカルなシーンを大いに支えていました。今後の活躍を期待したいです。

展開上、巨獣を倒すべくアメリカ軍が多数、出てくるのですが、A-10攻撃機やB-2爆撃機、F-16戦闘機など、非常に堅実と言うか、現実的な兵器が登場しているのには好感が持てます(この手の映画と言うと、まだ配備されていないSF的な試作兵器や新型兵器が登場しがちですので)。しかし米軍の車両がすべて砂漠地仕様の黄色いサンド塗装なのはなぜだったのでしょう? ついでに申せば、初動対応はともかくとして、最終的には三軍統合の大規模作戦となると、指揮官が大佐クラスというのは荷が重いのでは? 銀星の付いた人(つまり将軍)が出てこないと説得力がないような気もしました。というか、映画の枠を大きくしたくなかったのでしょうが、このぐらいの大騒ぎになれば、連邦政府と大統領は何をしているのだ、ということになりそうな気もします。

ともかく、ゲームが原作の怪獣映画、と聞くと軽いノリのお気楽な娯楽作品、というイメージになりますが、なかなかどうして。主演2人やモーション・キャプチャーの人の熱演もあって、非常に力の入った作品になっています。これは拾い物という感じの一作でした。

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2018年5月 3日 (木)

【映画評 感想】アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

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  映画「アベンジャーズ
/インフィニティ・ウォー」Avengers: Infinity Warを見ました。インフィニティは「無限」の意味。よって原題は「限りなき戦い」といった意味合いです。2008年製作の「アイアンマン」以来、10年にわたって展開されてきたマーベル・シネマティック・ユニバース・シリーズの19作目にあたります。すでに世界中で大ヒット中ということで、私はディズニーの御膝下である千葉県浦安市の映画館でパンフレットを買おうとしましたが、売り切れていました。現在、増刷中だそうです。人気シリーズで、しかもGW期間に公開の場合、初めから十分な数を印刷するはずですが、その予想を超えていたようです。

これまでのいろいろなシリーズで登場した人物が大集合しており、60人を超えるキャラが出演します。当然、演じているのは、それぞれの映画では主演級のスターばかり。本作は製作費が300億円前後のようですが、ギャラだけですごい金額なのかも(もっともこのシリーズでは、俳優と初めに複数の作品に出ることを前提にした契約を交わす「まとめ買い」方式だそうですが)。

これまでの10年におよぶシリーズ展開で、特にアスガルド人が地球に関わり始めて以来、何度となく「キューブ」とか「エーテル」「ロキの杖=セプター」などと、それぞれの外見上の形状で呼び名を変えつつ、騒動の原因となり続けてきた「空間(スペース)」「現実(リアリティ)」「時間(タイム)」「力(パワー)」「魂(ソウル)」そして「精神(マインド)」を司るエネルギーの結晶、「インフィニティ・ストーン」。個別の作品で常にキーとなってきたこれらの石が、ついに一つの意味に結実してきます。

六つの石を集めると無限のパワーが生まれる、という、この手のお話にはよくあるパターンなのですが、しかし、本作でそのお宝集めをしているサノスという人物の目的は、単に偉くなりたいとか、全宇宙を支配したいという権力欲で行動しているわけではありません。彼なりの哲学的な信念が熱く披露されます。ここが本作の大きなテーマです。真の主人公はむしろ、ヒーロー側ではなくてサノスというこの複雑な人物のようにも思われます。

彼の考えは、人口爆発を抑制するには、あえて人口を半減するしかない、というものです。たとえば地球人口70億人なら、35億人を滅ぼすしかない。しかしそれは無作為であるべきであって、貧富や身分、能力の差などは一切、考慮することなく、偶然に選ばれた半数の人が死ななければならない、という恐るべき思想です。

たくさんの作品の伏線を回収し、登場キャラをさばいて一本の映画にする力技には脱帽します。この脚本を練るのは大変だったでしょうが、それが非常によく出来ています。これまで主に「キャプテン・アメリカ」シリーズを担当してきたルッソ兄弟監督が、重任を見事に果たし、複雑な話のようで、ちゃんと展開が理解できます。もっとも、これまでのシリーズを全く見ていない、あるいは「アベンジャーズ」と題した作品以外は見ていない、という人はさすがに設定や人物関係が分かりにくいかもしれません。「マイティ・ソー」「キャプテン・アメリカ」両シリーズおよび、直近の作品で今作の展開にも大きなかかわりがある「ブラックパンサー」は事前にご覧になった方がよいように思われます。

サノスが求めている六つのストーンは、この作品の開始時点でどういう状況になっているか、というと、①スペース:ロキが所有②マインド:ヴィジョンが所有③リアリティ:コレクターが所有④タイム:ドクター・ストレンジが所有⑤パワー:ザンダー星の軍当局が保管⑥ソウル:行方不明…となっております。

つまり②と④が目下、地球にあるわけです。

①は元々、ソーの父オーディン王が地球に隠匿していたものを、ナチスの一派ヒドラのシュミットが悪用しますが、キャプテン・アメリカ(本名:スティーヴ・ロジャーズ)が奪取して冬眠状態に。戦後70年を経てSHIELDが武器に使用しようとした後、同組織の解体を経てアスガルドに戻りました。

②はサノスがロキを地球に送り込む際に供与した後、ヒドラの残党ストラッカー男爵の手に渡り、さらにこれを奪った人工知能ウルトロンが悪用しようとし、結局はアイアンマン(本名:トニー・スターク)の人工知能と結合してヴィジョンという新しい人格を生み出しました。

③はオーディンの父ボー王が地球に隠匿して長年、行方不明でしたが、ソーの恋人ジェーンを介して世に現れ、これをダーク・エルフが宇宙征服に利用しようと目論んだもののソーが阻止。アスガルドの女戦士シフがノーウエア星の財宝コレクターに託しました。

④はどういう経緯か不明ですが、長らく地球の平和を守る魔術結社カマー・タージが保有しており、ドクター・ストレンジが、師匠エンシェント・ワンから継承しました。

⑤はかつて、タイタン人サノスが養女ガモーラを使って手に入れようとしましたが、ガモーラの裏切りによりガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々がこれを阻止しています。

⑥についても、サノスの命令でストーン探索していたガモーラがその秘密を知っている模様です。

さらに大きな動きとしては、ヒドラの残党による浸食でSHIELDが解体。東欧の国ソコヴィアを滅ぼしてしまったウルトロンとの戦いを機に、アベンジャーズが国連の支配下に入るソコヴィア協定を支持するトニー派と、協定を否定するスティーヴ派に分かれ、内部抗争が勃発。一方、アスガルドではオーディンの死を契機に、ソーの姉、最強の女神ヘラが復活し、その圧倒的なパワーによってアスガルドは滅びてしまいました。辛くもヘラを倒したソーとロキ、そしてたまたま居合わせたハルクは、アスガルドの住民と共に、新たな移住地を目指して旅立ったのですが…。

 

アスガルドの移民船が宇宙に出て間もなく、正体不明の巨大な戦艦が出現します。それはサノス(ジョシュ・ブローリン)に仕えるタイタンの戦闘部隊ブラック・オーダー(黒の騎士団)の船で、サノスと、その側近のマウ(トム・ヴォーン・ローラー)によりアスガルドの人々は虐殺されてしまいました。ヘラとの戦いで疲弊しきったアスガルドを見て、好機と考えたサノスの奇襲です。無敵を誇ったソー(クリス・ヘムズワース)やハルク(マーク・ラファロ)もサノスには歯が立たず、瀕死のヘイムダル(イドリス・エルバ)は最期の力を振り絞ってハルクを地球に転送します。ロキ(トム・ヒドルストン)はサノスを得意の姦計にはめようとしますが、手もなく倒され、スペース・ストーンがロキからサノスの手に渡りました。彼が左腕に装着しているガントレット(籠手)には、すでにザンダー星を滅ぼして入手したパワー・ストーンが輝いており、ハルクの怪力すら通用しなかったのです。

六つのストーンを手に入れれば、サノスの思うことはすべて実現できます。この無限の力を用い、宇宙の増えすぎた人口問題を解決すべく、すべての生命を一瞬で半減させる。それがサノスの抱いている恐るべき計画でした。こうして二つ目の石を獲得したサノスは、地球にマウの部隊を派遣します。

地球では、突然、地上に落ちてきて、ハルクから変身が解けたブルースを見て、カマー・タージのドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)とウォン(ベネディクト・ウォン)は異変を察知します。「最強の敵サノスが地球を襲う」と力説するブルースの訴えを重視した2人は、ちょうどその頃、長年の恋人ペッパー(グウィネス・パルトロー)と正式に婚約したばかりのトニー(ロバート・ダウニーJr.)を探し出します。今こそ最大の危機、というのにアベンジャーズは分裂したままです。しかしこの際、スティーヴ(クリス・エヴァンス)と協力するべきだと判断したトニーが連絡を取ろうとした矢先、早くもマウの宇宙船がニューヨークを襲撃します。

マウの狙いは、まずはストレンジの持つタイム・ストーンです。ストレンジ、ウォン、トニー、たまたま近くに居て加わったスパイダーマンことピーター(トム・ホランド)による激しい戦いが繰り広げられますが、ストレンジはマウに拉致されてしまいます。後を追ったトニーとピーターは宇宙船に潜入し、そのままサノスの本拠地に乗り込むことにします。

同じころ、破壊されつくしたアスガルドの移民船を、クイル(クリス・プラット)率いるガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが訪れ、ソーを救出します。ソーから宿敵サノスが動き出したことを聞いた一行は、二手に分かれて事態に対処しようとします。まずソーとロケット(ブラッドリー・クーパー)、グルート(ヴィン・ディーゼル)はアスガルドの神器を作り出してきたドワーフ族の拠点に向かいました。ヘラとの戦いで主力武器のハンマーを喪失したソーは、手ぶらでは今のサノスに対抗できないことを痛感し、新たな武器を必要としていたのです。

クイルとドラックス(デイヴ・バウティスタ)、それにサノスに育てられたガモーラ(ゾーイ・サルダナ)たちは、アスガルド人がリアリティ・ストーンを託したコレクター(ベニチオ・デル・トロ)の元に向かいます。しかしコレクターの拠点にはすでにサノスがやって来ており、三つ目のストーンを奪われたうえに、ガモーラが連れ去られてしまいます。

ガモーラから、所在不明となっているソウル・ストーンが惑星ヴォーシアにあることを聞き出したサノスは、彼女を連れてその星にやって来ます。ヴォーシアでサノスたちを待っていたのは、意外にもかつて地球でヒドラ党の首領だったレッドスカルことヨハン・シュミット(ロス・マーカンド)でした。

地球では、2年前のソコヴィアの戦いと内部抗争の後、スコットランドに身を潜め、密かに愛を育んでいたヴィジョン(ポール・ベタニー)とワンダ(エリザベス・オルセン)を、サノスの部下が襲います。狙いはヴィジョンの頭部にあるマインド・ストーン。この石は以前、ストラッカー男爵がワンダの超能力を引き出すために使用したものでもあり、ワンダはその制御の意味もあってヴィジョンと行動を共にしていたのです。

激しい攻撃に苦戦する2人を、突如、助けに現れた面々。それはスティーヴ、ナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)、サム(アンソニー・マッキー)でした。危機を脱したスティーヴたちは、ソコヴィア協定の取り決めでアベンジャーズを統括することになっていたロス国務長官(ウィリアム・ハート)に事情を説明し、協力を得ようとしますが、全く話になりません。ロスを見限ったローズ(ドン・チードル)も合流し、久々に戦力を整えたアベンジャーズ・チーム。スティーヴたちは、サノスにストーンを渡さないためには、まずヴィジョンからストーンを分離し、ワンダの力で破壊しようと考えます。そのための高い技術と、敵の邪魔立てを阻止できる高い武力を持っているのは、ブラックパンサーことテイ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)と、その妹の天才科学者シュリ王女(レティーシャ・ライト)、側近のオコエ(ダナイ・グリラ)がいるアフリカの王国ワカンダしかありえませんでした。こうして、サノスとの決戦の地は必然的にワカンダということに…。

 

ということで、話の大筋を把握するだけでも大変なことになってしまいます。おまけに本作は、久しぶりにSHIELDの元長官フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)や副官のマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)までエンディングで登場します。これだけ大物俳優を集めて、しかも、ワンシーンしかないような登場人物にも相応の見せ場を作っていく。しかし娯楽作品なので、2時間半できっちりと納める、というのが本当に見事です。

サノスという今回の中心人物の背負った業(ごう)や苦悩、また登場人物たちの愛憎、葛藤といった部分も、この制約の中で可能な限り描き出している。まことにようやるわ、という感じです。

見終わると、特にサノスとガモーラという親子の物語、それからワンダとヴィジョンの愛の物語が大きな印象を残しています。さらに、あっと驚く結末に漂う、日本人でいえば「無常観」とでも呼ぶべき感覚。娯楽作品だとかヒーローものだとかいう感想を持つ人は、まずいないのではないでしょうか。

これは掟破りだな、と思うのですが、すごいことをやるな、とも感じます。本作は、今後、2作品を挟んで、来年に公開予定のアベンジャーズとしての続編に向かって話が収束していくことになっていますが、一体、どんな結末になるのか予想もつきません。

これほど注目され、期待される中で巨大なシリーズを継続することは、製作側の人たちにとって尋常でないプレッシャーだと思いますが、確かに一作、一作が渾身の作品で、期待を裏切らないのは見事です。

そうそう。すべての世界観を生み出したマーベル社総帥のスタン・リーさんは、今回も元気にカメオ出演しています。今や95歳! 誰が超人といって、ソーでもハルクでもなく、まさにこの人こそが真の超人ですよね。

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2018年4月21日 (土)

【映画評 感想】パシフィック・リム:アップライジング

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  「パシフィック・リム
: アップライジング」Pacific Rim: Uprisingを見ました。大ヒットした2013年の「パシフィック・リム」の続編です。前作は、なんといっても日本の怪獣映画の大ファンであるギレルモ・デル・トロ監督の作家性、こだわりが強烈な主張をしている映画でした。当然、2作目も同監督がやる予定だったのですが、そこに影響を与えたのが製作会社レジェンダリーの中国映画配給大手による買収話です。この動きのために、待機作品の順番が入れ替わるなどして、製作が遅れることになり、デル・トロ氏は本作の監督を断念。製作、アドバイザーとして関与することになりました。代わって取りかかったのが、アカデミー賞13部門ノミネート、監督賞など4冠の「シェイプ・オブ・ウォーター」だったわけです。また、前作で主人公だったチャーリー・ハナムも同様の理由により、「キング・アーサー」の主演を優先することになり、このシリーズからは姿を消すことになってしまいました。

 そういう経緯もあって、一時は本作の製作が危ぶまれる向きもあったようです。しかし出来上がってみますと、何しろ最後の決戦の地は日本、それも東京です。さらに怪獣が目指しているのは富士山、というわけで、昔の日本の怪獣映画に対するオマージュの詰まった作品となりました。本当はそこに、法的枠組みの中で懸命に「事態に対処」しようとする自衛隊、といった「シン・ゴジラ」にまで連なる描写があれば、いかにも日本らしくて言うことなしですが、本作の世界観では通常の政府や軍隊・自衛隊・警察などの組織は影が薄く、専門のカイジュウ向け軍隊があるので、ここはむしろ科学特捜隊やウルトラ警備隊が活躍するウルトラマン・シリーズに似ているともいえます。

しかしまあ、東京での戦闘シーンで「住民は皆、退避した。戦闘可能!」というセリフがありまして、1200万人を超える世界最大都市、東京の住民が瞬く間に「退避」できるのか、と(笑)。「東京ナメんな!」と思うところですが、おそらく、日本の警察とか自衛隊の苦闘が、その一つのセリフで表されているのかも、と想像いたしました。

 あるシーンでは、お台場ではないようですが、都心にガンダム像が立っている描写があります。このためにちゃんとガンダムの製作会社サンライズの許諾も得ているそうで、日本人から見ても興味深い一作になりました。

 前作を支えたもう一人の主人公、イドリス・エルバはストーリー上、戦死してしまったので出られません。しかし結構、回想シーンや写真などで登場しています。その息子という設定でジョン・ボイエガが出ていて、本作の主役を務めています。「スター・ウォーズ」新シリーズで帝国からの脱走兵を演じている彼ですね。また、一作目のヒロイン、菊地凛子さんと、前作で活躍したドイツ系学者コンビの役で、チャーリー・デイとバーン・ゴーマンが再演しているのも嬉しいです。この2人、後半では真の主役というほど活躍します。実は今回のアップライジング(反乱、暴動)というタイトルは、彼らの行動にかかわっているのです。クリント・イーストウッドの子息スコット・イーストウッドと、日本の千葉真一さんの子息の新田真剣佑(あらた・まっけんゆう)さんが出ているのも注目点です。

 前作はどんな話だったかというと、2013年に突如、太平洋に姿を現した謎の巨大生物カイジュウに対処するために、各国が協力して環太平洋防衛軍PPDCを結成。人類とカイジュウの10年以上にわたる死闘が展開されました。カイジュウと戦うためにドイツで開発されたのが、適性のある2人のパイロットの精神がそろわないと制御できない巨大ロボット兵器イェーガー。最後は2025年、スタッカー・ペントコスト司令官(エルバ)らが犠牲となって、カイジュウが異世界から現れる海底の「裂け目」に至る通路を確保。そこにローリー(ハナム)と森マコ(菊地)が乗り込む旧式イェーガー「ジプシー・デンジャー」が突入し、機体を自爆させて裂け目を封鎖、2人も生還した、というものでした。

 その後、作中では明確に言及されていませんが、どうもローリーはこの時の戦闘の後遺症で病に侵され、マコを残して亡くなった、という設定のようです。

 

 それから10年がたった2035年。カイジュウが現れなくなり、人類は復興の道をたどっています。しかし、カイジュウはいつか再来するかも、という危機感は薄れておらず、PPDCも、前の戦争時にあった解散や縮小といった議論は起こらず、戦力の維持に努めています。そんな中、英雄スタッカー・ペントコストの息子、ジェイク・ペントコスト(ボイエガ)は、かつては父の背中を追ってイェーガー・パイロットになりましたが、命令違反により軍籍を剥奪され、以後は英雄の息子という名前を隠すように荒んだ生活をしています。ある日、軍の廃棄場からイェーガーの部品を盗み出そうと潜入したジェイクは、やはり部品泥棒で、独力で小型のイェーガーを組み立てたという才気溢れる少女アマーラ(ケイリー・スピーニー)と出会います。

 アマーラと共にPPDCに逮捕されたジェイクは、今や同軍の最高位、事務総長となっているマコ(菊地)から、これまでの犯罪を免除する引き換えとして、軍に復帰し、パイロット候補生の指導教官になるよう要請されます。マコは父スタッカーの養女として育てられたので、ジェイクから見て義理の姉でもありました。同時にアマーラも才能を見込まれて入隊することになり、2人はパイロット候補生の養成課程が所在する中国・モユラン基地に移されます。

 ここでジェイクを待っていたのが、候補生時代の同期ネーサン(イーストウッド)です。模範的な軍人に成長しているネーサンは、問題を起こして軍を除隊したジェイクにあからさまな嫌悪感を抱き、一触即発の図式に。一方、孤独に育ってきたアマーラも、同世代の少年少女ばかりの生徒隊の中では浮いた存在で、なかなかうまく溶け込めない様子です。

 しかしネーサンによると、意外なことに間もなくイェーガー部隊は全員、解雇されるかもしれない、といいます。というのも、中国の軍需企業シャオ産業を率いるシャオ・リーウェン社長(ジン・ティエン)が遠隔操作できる無人イェーガーの大量配備計画をPPDCに売り込んでおり、これが評議会で承認されれば、有人イェーガー部隊は必要なくなる、というわけです。しかし最高責任者であるマコは、無人イェーガーがハッキングなどで乗っ取られる可能性などを危惧して、計画の受け入れに乗り気ではない様子です。

 この件について各国代表が話し合うため、オーストラリア・シドニーでPPDC評議会が開催されます。軍の主力イェーガー「ジプシー・アベンジャー」に搭乗して会場警備することになったジェイクとネーサン。そこに突然、所属不明で誰が乗っているかも分からない謎のイェーガー「オブシディアン・フューリー」が現れ、会場を襲撃します。マコは敵を見て、それがどこで作られたものか、素性をすぐに見抜きましたが、完全な情報を伝える暇もなく、乗っていたヘリが墜落します。

 マコの情報を解析した結果、シベリアの奥地にある軍の廃工場を示していることが判明します。モユラン基地司令官チュアン将軍(マックス・チャン)の命令を受けて出撃したジェイクとネーサンは、案の定、そこに姿を現したフューリーを倒しますが、コクピットに人の姿はなく、なんとカイジュウの脳が操縦していたことが判明します。一体、誰がこんなものを作ったのか?

 そのころ、シドニーの事件を受けて、シャオ産業の無人イェーガー計画が承認され、緊急に世界中に配備されます。指揮を執っているのは、前の戦争時にカイジュウの脳とリンクし、世界を救う契機を作った科学者ニュートン(デイ)です。彼は軍を辞めて、今ではシャオ産業の技術部長となっていますが、シドニーの悲劇的な事件もビジネスチャンスと放言するシャオ社長の態度は傲慢なもの。ニュートンは、かつて共に戦った旧友の科学者ハーマン(ゴーマン)に、実は社長には無断で無人機を操作出来る仕掛けを施してある、と秘密を暴露します…。

 

 ということで、結構、込み入った話を2時間のハイスピードで驀進する感じで、割と古典的な作風だった前作とはテンポが違います。巨大ロボット「イェーガー」も、前はズシン、ズシンと鈍重に歩くマジンガーZを思わせるものでした。今回は洗練されて身軽になり、どちらかといえばエヴァンゲリオンかトランスフォーマーのような印象に。このへんはしかし、10年間の技術進歩の結果、といわれれば納得は出来るかもしれません。

 どうしても戦闘シーンがメインになるので、人間模様とか、背景とかのドラマ面は前作より雑に感じる部分もあります。もうひとひねり欲しかったな、という感じもありますね。

 日本人的に見ますと、最後にカイジュウ軍団とイェーガー部隊が戦う決戦の地、東京の描写が…これ、本当に東京? 中国語みたいな看板も多いようですが? まあ2035年ということで、相当に変わっているのかもしれません。遠景に東京タワーやスカイツリーもあって、東京を描こうとしているのは分かります。ただもうちょっと、現実の東京に似た街並みにしても良かったような気はいたします。

 それに、東京に限らず、どこの都市であってもですが、身長80メートル、重量2000トンもある巨大ロボットやカイジュウが歩き回ることは、本当に出来るのだろうか? 地盤がどんどん沈んで、泥田か雪の中を歩くように、すぐに足が抜けなくなり、身動き出来なくなるのでは、とも思います。

 それに、日本人として最も気になるのは、東京の市街地のすぐ背後に富士山がそびえているところですね。こんなに近くないよ! ほとんど山梨県あたりの街のように描かれているのがなんとも奇妙です。カイジュウは巨大だから足も速いのかもしれませんが、それにしても東京から富士山の山頂まで行くには、もっと時間がかかるようにも思います。

 とまあ、真面目に考えてしまうと、突っ込みどころは多々ある感じの作品なのですが、娯楽作品としての出来栄えは素晴らしいものがあります。謎が謎を呼ぶ序盤から、意外な急展開、そして後半の怒濤のクライマックスへ、という流れは、こういう映画のお手本のようです。強敵を前にして、決死の突撃を覚悟する少年少女ばかりの候補生部隊の姿には、胸が熱くなります。いかにも日本のこの手の映画や漫画などの作品にありそうな展開ですが、やはりいいですよ、このへんは。大画面でぜひ!

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2018年4月 8日 (日)

【映画評 感想】レッド・スパロー

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  映画「レッド・スパロー」
Red Sparrowを見ました。あの「ハンガー・ゲーム」のコンビ、フランシス・ローレンス監督とジェニファー・ローレンス主演のスパイ映画です。27歳にして4度もアカデミー賞にノミネートされ、すでにオスカー女優となっているジェニファーですが、何をやっても見事にこなしてくれる演技力は確かにすごいものです。

予告編を見て、てっきり近頃よくある「冷戦時代のソ連KGBのスパイ」の話と思いこんでいましたが、本作は、現代のロシアのスパイを取り上げているのです。しかしこの映画の描き方だと、今のプーチン体制のロシアは、かつてのソ連と全く体質の変わらない全体主義国家、という感じになっています。このへんはどうなのだろう、と思う反面、まさに今年の3月あたりから、英南部ソールズベリで起きた元ロシア・スパイの暗殺未遂事件を巡って、英国をはじめ米仏独などの西側諸国と、ロシアが外交官の追放合戦を繰り広げております。元スパイを暗殺するために、化学兵器の神経毒まで用いたのではないか、と言われており、「やはりロシアになっても体質はソ連のままなのね」と世界中に思われたのは間違いありません。

それでなくとも、ソチ冬季五輪の閉幕後、強引なクリミア併合や、アメリカ大統領選挙、英国のEU独立投票などへの干渉、国内の反政府運動への容赦ない弾圧など、ロシアのえげつない手法が徐々に明らかになって、やっぱり元KGB将校であるプーチン大統領が率いる国、相変わらずの全体主義国家なのだろう、というイメージが強まっているのは間違いないところです。ローレンス監督も「初めは現代のテーマとして観客に共感されるだろうか、と思ったが、最近のロシア情勢の変化でリアリティーが増した」ということをパンフレットで述べております。「こんなのはあくまで映画であって、実際はこんなわけないだろう」と笑い飛ばせないところが、大いに問題なのかもしれません。

 

 モスクワのボリショイ・バレエ団の新進スターであるドミニカ・エゴロワ(ジェニファー・ローレンス)。母親のニーナ(ジョエリー・リチャードソン)は病身のため身体が不自由ですが、ドミニカがスターになったため、その治療費や介護費もバレエ団が持ってくれています。

 しかしある日の公演で、パートナーのコンスタンチン(セルゲイ・ポルーニン)が大きくジャンプした後、間違って着地し、ドミニカの脚を折ってしまいます。大手術となり、当然ながら主演を降板。さらにこのままいけば、引退に追い込まれ、バレエ団も解雇されて、病気の母親を抱えたまま路頭に迷うことになってしまいます。

窮地に立ったドミニカに、今まで疎遠にしていた亡き父の弟ワーニャ・エゴロフ(マティアス・スーナールツ)が声をかけてきます。彼はロシア情報庁(旧ソ連の情報部KGBの後身組織)の副長官にまで出世していました。叔父エゴロフは、政権にとって邪魔になっている有力政治家ウスチノフ(キルストフ・コンラッド)が、元々、ドミニカの大ファンであることを利用し、これに色仕掛けで近寄るようドミニカに命じます。その引き換えに母親の面倒は国家が保証する、と約束するので、ドミニカは断れなくなります。

 叔父の指示通りにウスチノフに接触したドミニカは、ホテルで強引にレイプされかけますが、寝室から護衛を退室させ油断したウスチノフは、その場で暗殺されてしまいます。叔父の強引なやり口にドミニカは怒り、口封じのために殺されることを覚悟します。実際、情報庁のザハロフ長官(キーラン・ハインズ)はドミニカを処分するよう命じますが、エゴロフは姪に優れたスパイの才能があることを見抜き、諜報部門の責任者コルチノイ大将(ジェレミー・アイアンズ)に、ドミニカをスパイとして養成するよう推薦します。

 こうしてドミニカは、秘密のスパイ養成所に送り込まれますが、そこは厳格で冷徹な女性監視官(シャーロット・ランプリング)の指導の下、相手の心理を手玉に取り、あらゆる手段を講じてハニートラップを仕掛けるスパイ「スパロー(雀)」の養成学校でした。

 厳しい訓練に耐えたドミニカを、エゴロフは呼び戻します。彼が与えた任務は、アメリカに情報を流しているロシア高官の内通者を探り出すことでした。彼女はブダペストに飛び、ロシア側の内通者と接触しようとしているCIA諜報員ナッシュ(ジョエル・エドガートン)に接近します。さて、CIAに内通しているロシア側の人物とは誰なのでしょうか…。

 

 といった展開ですが、「現代のロシア」と言われても、どうしても「冷戦時代のソ連」に見えてしまう陰湿な雰囲気、独特の重い空気感が見事です(ロシアの人が見たらどう思うのでしょうか)。そして、出ている主要キャストにほとんどロシア系の人はいないにもかかわらず、使っている言語も英語であるにもかかわらず(とはいえ、かなりロシアなまりの英語にしているようですが)見事にロシアに見えます。

あのジェニファー・ローレンスがロシア人のスパイ役? と初めに聞いたときは若干の違和感を覚えたわけですが、実際に見ると、陰のある本物のロシア人に見えてしまいます。冒頭ではボリショイ・バレエ団の花形スターという役なので、かなり長い時間、実際にバレエを演じて見せていますが、これもレッスンが大変だったそうです。また、スパイ養成所や、実際のスパイ活動のシーンとなると、役柄から何度も全裸になる必要がありました。こういう作品は初めてだったそうで、気迫の体当たり演技です。Photo_2


ここでちょっと私らしく、「軍装史研究家」らしいことを書きますと、本作ではプーチン政権下で導入されたロシア軍のM2008制服が多数、登場します。コルチノイ将軍が着ている緑色のジャンパー形式の略装や、最後にドミニカが受勲するシーンで軍人たちが着ている青緑色のM2008パレード装などは大いに目を引きました。この場面で、ドミニカは少尉の肩章を付けており、正規の将校として任官したようですね。さらに、左の胸に小さな金色の星型の勲章を付けていますが、これは旧ソ連の「ソ連邦英雄」制度を引き継ぐ「ロシア連邦英雄」という称号を示すものです。一見するとごく小さな勲章ですが、実はロシアにおいて最高位の栄典です。これを受勲すると、年金が高額保証され、医療費や家賃、光熱費、鉄道などの交通機関は無料、スポーツ観戦や観劇なども特別優遇されるなど、破格の待遇を受けます。その受勲式の直後のシーンでドミニカは、古巣であるボリショイ劇場の貴賓席に座っていますが、これも英雄としての待遇を示しているのだろうと思います。きっと彼女の栄典で、病気のお母さんも安泰となったことでしょう。

バレエのシーンでドミニカのパートナーを演じているのは、世界的なバレエ・ダンサーのセルゲイ・ポルーニン。この人は「オリエント急行殺人事件」にも出ていましたが、これから映画界にも本格的に進出してきそうです。

 恐ろしい女性将校の役にシャーロット・ランプリングというのも適役ですね。「愛の嵐」でナチス収容所の女性役で有名になったこの人には、確かに制服とか、収容所といったイメージがつきまといます。ことさら恐ろしげにしないでも、任務とあれば顔色一つ変えないでどんな残酷な行為でもしてみせそうで、そこが怖いですね。

 叔父エゴロフ役のスーナールツという人が、どうも若い頃のプーチン氏に似ている感じがしてなりません。実際、そういうイメージなのでしょうか。微笑んでいても目が笑っていない、裏と表だらけの、全く信用できない人物、という雰囲気が漂っています。

 エゴロフの上司ザハロフについて、字幕で「ザハロフ参謀」とありましたが、あれは誤訳ではないでしょうか? Chief Zakharovと原語では言っていましたが、これは英語でChief of staffが「参謀長」なので、そこから類推して「参謀」としたのかもしれません。しかし、Chief of staffChief(チーフ)は「長官」、staff(スタッフ)が「参謀」の意味ですから、チーフだけなら参謀という意味はどこにもなく、組織の長という意味合いしかありません。よってここは「ザハロフ長官」とするべきだと思われます。

 この話、ドミニカがスパイ学校に強制的に入れられるまでの展開もいろいろ刺激的なのですが、彼女がスパイとなってブダペストに乗り込んでからは二転三転して、最後はあっと驚く結末に到達します。実にスリリングです。相手をはめてやろう、というスパイばかりが登場してきますので、主人公を始め、誰が本当のことを言っているのかさっぱり信じられない感じになってきます。

 007のような活劇と違い、派手なカーチェイスや撃ち合いはなく、中心になるのは人目に付かない心理戦とハニートラップと、拷問、暗殺です。原作者ジェイソン・マシューズはCIAに長年、勤務した人で、原作小説『レッド・スパロー』はアメリカ探偵作家クラブが主宰する権威ある文学賞、エドガー賞の「2013年長編小説新人賞」を受けています。

話の雰囲気が現代よりも少し前の時代のように感じるのは、おそらく原作者の現役時代を反映しているからで、今現在の諜報員はもっとIT系、デジタル系の任務が多いのでは、という気がしますが、それにしても、スパイという仕事の日常を描くディテールの生々しさが印象に残る一作でした。

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2018年4月 7日 (土)

【映画評 感想】ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

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  映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」
Darkest Hourを見ました。アカデミー賞で6部門ノミネートされ、主演のゲイリー・オールドマンが主演男優賞、そして特殊メイクを担当した日本の辻一弘さんがメイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いたことで、一躍、日本でも注目作品となりました。オールドマンは全くチャーチル首相に似ていないので、辻さんがいなければ決して出来なかった映画、ということですね。

重厚な大河戦争ドラマかと思う方もいるかもしれませんが、これは第2次大戦初期の1か月ほどの出来事を描いており、その間の英国首相チャーチルを中心とした人間ドラマを軸としています。脚本が「博士と彼女のセオリー」のアンソニー・マクカーテンということで、非常に感動的な物語に仕上がっているのが見事。映画館では泣いている人もかなりいらっしゃいました。終盤の盛り上げ方は素晴らしいです。

チャーチル首相と言えば「理想の政治家」といったアンケートで必ず首位を争う人物で、世界史に残る大政治家です。しかしその名声の高さゆえに、従来、チャーチルとは要するに「英国の強いリーダー」という印象しかなかったのではないでしょうか。

しかし、初めから完成された強い指導者、などいないわけで、本作はむしろチャーチルがいかに指導者として成長していったか、を描いています。194059日にチェンバレン首相が辞任してチャーチルが後継に指名され、64日に有名な「決して降伏しないNever surrender!」演説をして、挙国一致でナチス・ドイツと対決する体制を固めるまでの1か月間。しかしこれが簡単なことではなくて、この間にフランスは敗北し、ダンケルク海岸で30万人に近い英国陸軍は全滅寸前。ナチス軍の勢いに押され、浮き足だった英国内では講和を唱える声も強かったわけであります。ここで国民が団結したのは、チャーチルという指導者が現れたから、なのですが、そんな彼にしても、後になってこの時期を「最も暗い日々」Darkest Hourとして回顧したほどでした。

いわば、この1か月が、本当に歴史が変わる可能性があった時期でした(ヒトラーから見れば、この1か月こそ唯一の勝利のチャンスだったといえます)。事実、後になってヒトラーの側近、ゲッベルスは「チャーチルさえいなければ、英国はとっくに降伏して、第2次大戦は終わっていたのに」と言ったそうです。ここでまず英国を倒し、それから日本と協力してソ連を攻める。その間、アメリカが参戦しなければ放置し、必要なら最後に孤立したアメリカを日本軍と挟み撃ちする、といった手順で行けば、ヒトラーの野望は決して絵空事だったわけではありません。その意味で、邦題はちょっと作品の内容と合っていないのでは、という評もあるようですが、歴史的に正しいものともいえるでしょう。

前に、ヒトラーの第三帝国の崩壊と死を描く「ヒトラー最期の十二日間」という映画がありましたが、それに応じてみると、本作は「チャーチル最初の二十七日間」ということになります。そして前者では、ヒトラーの元にやってきた新人秘書ユンゲは、ヒトラーが親切で穏やかな紳士であることに驚くわけですが、やがて総統の狂気と冷酷さという本質に触れていき、彼が自らの帝国を投げ出すところを目撃します。一方の本作では、チャーチルの元にやって来た新人秘書のレイトンが、チャーチルの怒声に脅えて泣き出すところから始まります。しかし、イヤな親父だったチャーチルは、徐々に人々の尊敬を勝ち得て国王からも信任され、ついに英国宰相として人々の民心をつかんでいきます。こう見ると、非常に好対照な2作品であるように思えてきます。

 

 1940年5月、ナチス・ドイツ軍は電撃的に西方作戦を展開し、ベルギーは降伏。フランスも風前の灯火という状況に陥りました。長年にわたって、ドイツ総統ヒトラーに対し宥和政策をとり、その侵略行為を黙認してきた英保守党のチェンバレン首相(ロナルド・ピックアップ)は弱腰外交と批判され、求心力を失いました。

 挙国一致の戦時内閣を組閣することに賛成した労働党のアトリー党首(デヴィッド・ショフィールド)は、条件としてチェンバレンの退陣と、それに代わる「強力なリーダー」の擁立を要求。閣内では現役の外相であり、国王ジョージ6世(ベン・メンデルスゾーン)の友人でもあるハリファックス卿(スティーヴン・ディレイン)を首相に待望する声が高まりますが、彼は慣例的に組閣できない貴族院議員であり、就任を辞退します。

 国民と野党から人気が高かったのは、一貫して反ヒトラーを唱えてきた海軍大臣ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)ですが、彼は第1次大戦時にも海相としてガリポリ作戦を立案し敗北。その後、蔵相として金本位制に失敗し、第2次大戦では北海での作戦行動で海軍部隊の多くを喪失しており、おまけに大酒飲みの浪費家で、与党の保守党内では全く信任されていませんでした。国王も、兄で先代のエドワード8世(後のウィンザー公爵)がアメリカ人女性シンプソン夫人と結婚して退位する際、チャーチルがその結婚を後押ししたとして、嫌悪感をチャーチルに抱いている始末でした。

 こうして四面楚歌の中、組閣を命じられるチャーチルの元に、新人の女性タイピスト、エリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)がやって来ますが、発音が聞き取りにくく、気難しいチャーチルに脅えて泣き出してしまいます。それを優しくなだめたクレメンティーン・チャーチル夫人(クリスティン・スコット・トーマス)は、「嫌われ者でなく、誰からも愛される首相になってほしい」と夫を諫めつつ励まします。

 英国首相となったものの、与党の支持をつなぎ留めるには、閣内に政敵の前首相チェンバレンや、ハリファックス卿を入れないわけにはいかず、ドイツとの早期講和を望む声が絶えません。味方と言えば側近の陸軍大臣イーデン(サミュエル・ウェスト)だけでした。

 ここでチャーチルと英国にとって最大の危機が訪れます。フランス軍が壊滅し、大陸に派遣した30万人近い英国陸軍の主力がダンケルク海岸に取り残され、帰国出来なくなってしまったのです。これを救出するために、アメリカのルーズベルト大統領(声:デヴィッド・ストラザーン)に駆逐艦の譲渡を要望しますが、米国内の反対の声が強く却下されます。首相付き軍事顧問のイスメイ大将(リチャード・ラムスデン)はフランス作戦の敗北を宣言し、戦闘機総監のダウディング空軍大将(アドリアン・ラウリンズ)は航空部隊の本国撤収を強く要求します。ハリファックス卿の元にはイタリア首相ムッソリーニから和平調停の提案があり、一挙に流れはドイツとの講和に傾きます。

ある深夜、名案が閃いたチャーチルは、旧知のドーバー海峡管区司令官ラムゼー海軍中将(デヴィッド・バンバー)に電話を掛けます。それは、第2次大戦初期の転換点となったダンケルク撤退作戦「ダイナモ」を指示するものでしたが、これが上手くいくかどうかは全くの未知数で、危険な博打のようなものでした。

高まる講和論の中で半ば絶望し、疲弊しきったチャーチル。彼の私室に深夜、一人の来客が訪れます。それは全く思いがけない人物でした…。

 

 それにしてもゲイリー・オールドマンのチャーチルがぎょっとするほど感じが出ています。目が本物より優しい感じですが。ストライプのスーツは、実際にチャーチルが愛したロンドンのテーラー、ヘンリー・プールで仕立てたそうです。そして、チャーチル独特の声、癖が強いしゃべりを完全にものにしています。物まねというのではなく、史実にないようなシーンあるいは想像したシーンでも、本人ならきっと、こういう時はこうしゃべるだろう、という意味での演技力です。これだけやれば、ゲイリー本人と、メイクの辻さんにオスカーがもたらされたのも当然と思えます。

 その他の実在人物も、かなり本物に似ているのです。チェンバレンやイーデン、アトリーなども非常に似ています。あまりルックスを似せることに熱心でない史劇も多いのですが、本作は明らかに一見して再現している、という要素を追求しています。この辺は、「アンナ・カレーニナ」のときも見る者を驚かせた凝りに凝ったカメラワークと共に、当代きっての映像派で、史劇を得意とするジョー・ライト監督のこだわりなのでしょう。

 新人タイピスト役のリリー・ジェームズもいいですね。「シンデレラ」で一躍、大スターの仲間入りをした人ですが、気品のある雰囲気が古風な役柄に実に似合う人です。深刻になりがちな内容の中で、この人のはつらつとした演技が大いに救っています。彼女が演じたエリザベス・レイトンも実在した人物です。

 国王役のベン・メンデルスゾーンは近年、色々な作品で活躍していますが、近作で言えばスター・ウォーズ・シリーズの「ローグ・ワン」で演じた、帝国軍技術将校の役でしょう。今回は「英国王のスピーチ」の主人公で、コリン・ファースの当たり役となったジョージ6世ということですが、今作ではすでに例の吃音を乗り越えた後なのでしょう、堂々たる君主として、そして初めはウィンザー公の一件もあって毛嫌いしていたチャーチルを強く支持する指導者として、いい味を出しています。この国難の時期に、チャーチルと並び、もし国王がジョージ6世でなく、ウィンザー公ことエドワード8世のままであったら、やはり歴史はどうなっていたか分かりません。エドワード8世は親ナチス的な言動を公然としていた国王で、もしナチスが英国を支配下に置いたら、ヒトラーはウィンザー公を国王に復位させただろう、と言われています。

 それにしても、昨年はクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」という映画もヒットしたわけですが、あの作品で登場した凄惨な戦闘をしている時に、司令部や議会では、本作で描かれたようなやり取りがあり、指導者たちも四苦八苦していた、ということが分かると一層、興味が深まります。英国において、この緒戦の苦しかったダンケルク戦の時期が再び注目されているのはなぜなのでしょうか。EU離脱が決まり、国際的孤立と、国内世論の分断が深まっていく英国で、何かこの時期と、それを指導したチャーチルからヒントを得たいという願いが出てきているのかも知れません。確かにチャーチルは、大局を見通す信念の人で、長いものに巻かれない人、安易な人気取りに迎合しない人です。そのために、戦争の末期には選挙に敗れ、政権を労働党のアトリーに譲ることになります。

 チャーチルは独裁者から民主主義を守り抜こうとして戦い、そして民主主義によって政権を追われたわけです。まことに色々と考えさせられる一本でした。

 

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