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2019年11月12日 (火)

【映画評 感想】ターミネーター:ニュー・フェイト

Photo_20191112121001 「ターミネーター:ニュー・フェイト」Terminator: Dark Fateを見ました。フェイトは「運命」という意味ですので、原題は「暗い運命」、邦題は「新しい運命」となりますが、なかなかこの邦題のセンスがいい、という声が多いようです。重苦しい運命に押しつぶされるのか、それとも立ち向かうのか。映画を最後まで見たとき、「未来は変えられるかもしれない」という思いが勝るなら、ニュー・フェイトの方がふさわしい、と感じられるかもしれません。

 

「ターミネーター」シリーズは、これまで6作品が製作されてきました。しかし、生みの親であるジェームズ・キャメロンが関わったのは1991年公開の「ターミネーター2(T2)」まで。それから28年ぶりにキャメロンがシリーズに復帰し、35作目はなかったことにして(!)、T2の続編として作られたのが本作、という位置づけになります。よって、本作は6作目ですがT6とは呼ばれません。35作目が好きな人にとってはショックな展開ですが、そもそも本シリーズはタイムマシンによる歴史改変ものです。最初のターミネーターが過去に送り出されたときから、多くの時間軸が分岐したはず。すべての歴史が、可能性としてあり得た別の時間軸の物語である、と考えればいいのでしょう。

 

T3以後のシリーズも、個別の映画として見れば、なかなかいい作品だと思われるのですが、確かにジェームズ・キャメロンが携わったものとは何か違うのでした。キャメロン作品の特徴は、アクションでない部分、人物の描写やさりげない日常を描くシーンでの抒情性でしょう。ちょっとした演出が非常に利いているのですね。本作で実際にメガホンを執っているのは「デッドプール」のティム・ミラー監督ですが、作風にキャメロンらしさが反映されていることは確実に感じ取れます。

 

そして、何よりもキャメロンらしさといえば「強いヒロイン」です。T2のサラ・コナーは、やはりキャメロンが描いた「エイリアン2」のリプリーと並んで、強力な女性アクション・ヒーローの走りと言えるような存在でした。

 

T3以後のシリーズは、サラが早くに亡くなった後、息子ジョン・コナーを中心に描く流れとなりました。5作目の「新起動/ジェニシス」では、原点の1984年に回帰して、サラを新たな人物像として描き直そうという意欲作でしたが、好評は得られませんでした。そこで、現実の世界と同様、28年が経過した今、サラ・コナーが早く亡くなるのではなく、生きているとしたらどうなっているだろうか、という話に立ち返ったのが本作です。1984年にハンバーガーショップでバイトする能天気な女子大生だった彼女は、T2で描かれた1994年には、世界の運命を変える強靭さに満ちた闘士に変貌していました。そして、本作では元祖リンダ・ハミルトンが復帰し、60代になってなお激しいアクションに挑んでいます。

 

当然ながら今作は、描写のあちこちに、2作目までの名シーンを想起させるところが盛り込まれています。なんといっても極めつけは、サラが「また戻ってくるI’ll be back」と言うシーンですが、ほかにもターミネーターが大型トラックで追いかけてくるとか、工場のプレス機で押しつぶされるとか、大破したターミネーターが足を引きずってにじり寄ってくるとか、どこかで見たような状況が目白押しです。

 

新型のターミネーター(厳密に言えば、歴史が変わった未来から来た彼は「ターミネーター」とは呼べないようです)はREV-9といいます。T2でロバート・パトリックが演じたT-1000を彷彿とさせますが、最大の特徴は「人間的な魅力」にあふれていること。高度なAIを搭載した新型は、愛想がよくて気の利いたセリフを言い、たとえば金属探知機を通過しなければならない場面では「アフガンで負傷して、腰に弾丸が2発、入ったままなんだ」などと実にうまいことを言います。シュワルツェネッガーの初代T-800なら問答無用で撃ちまくるところでしょうが、新型は余計なトラブルを回避します。標的以外の人間はむやみに殺さない、というのは別に慈悲深いのではなくて、時間の無駄を省きたいからです。そのために「人間以上に人間らしく」ふるまいます。人の能力を超えるAIが現実のものとなっている現代では、1984年に描かれた殺人マシーンの描写とは全く異なってきています。

 

REV-9はインターネットを駆使し、あらゆるデバイスや監視カメラの情報を収集して、あっという間に標的を見つけ出します。2019年の今、彼は人探しに全く苦労しません。1984年のT-800は、電話帳を調べ、電話をかけまくり、「サラ・コナー」という名の女性をすでに2人、殺害した後に、ようやく標的にたどり着きます。その後も、サラとカイルが逃亡を図ると、追跡に大いに苦労しています。もし仮に、もっと古い時代、18世紀とか15世紀とかにターミネーターがやって来たとしても、サラ・コナーのご先祖を探し出すことは不可能かもしれません。

 

ラテン系のキャストが多く、アメリカとメキシコとの間の壁が物語の舞台になるなど、いかにも現代的なテーマも見られます。やはり今の時代の作品なのだと感じますね。さらに、若き日のサラ・コナーと、エドワード・ファーロングが演じたジョン・コナーが登場しますが、これらのシーンでは、最新技術で顔をすげかえています。今や、昔の姿だろうが故人の姿だろうが、なんでも再現できる技術があります。このへんも非常に興味深いです。

 

【ストーリー】1984年にT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)の攻撃から辛うじて生き延び、1994年にはT-1000の攻撃をかわし、サイバーダイン社で開発が進んでいた軍事コンピューター「スカイネット」の誕生と、1997年に起こるはずだった核戦争「審判の日」を阻止して、歴史を変えたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)と息子のジョン。しかし98年になり、この年代に送り込まれていた別のT-800から攻撃を受けたとき、悲劇が訪れます…。

 

20年以上が経過した現在。メキシコ市の自動車工場で働くダニー(ナタリア・レイエス)とディエゴ(ディエゴ・ボネータ)のラモス姉弟の職場に、父親が訪ねてきます。彼はダニーの姿を確認すると、突然、攻撃してきます。そこに現れた女性戦士グレイス(マッケンジー・デイビス)は、それが父親ではなく、未来からダニーの命を奪うために送り込まれた殺人マシーンであること、自分はその攻撃を阻止するために送り込まれた未来人であることを告げ、姉弟を連れて逃走を図ります。

 

殺人機械REV-9(ガブリエル・ルナ)の執拗な追跡を受け、ついにダニーとグレイスは追い詰められますが、そこに初老の女性が姿を現し、2人を助けます。その女性、サラ・コナーは、謎の人物からの情報を受けて、現場にやって来たと言います。情報はテキサスのある地点から発信されており、グレイスが未来で受けた指令でも、同じ地点に向かうように指示されていました。

 

グレイスがいた未来にはスカイネットは存在せず、代わって「リージョン」という名の軍事AIネット・システムが存在し、人類が機械と対決する暗いものとなっています。サラは歴史を変えたのですが、結論はあまり変わらない「暗い運命」だったのです。その世界の未来を担うキーパーソンがダニーであり、REV-9は彼女の命を奪うために送り込まれました。サラは、ダニーが1984年の自分と同じ立場にあることを知り、見過ごせないと感じます。

 

ダニーの叔父の手引きにより、メキシコから国境を越えてアメリカに向かった一行ですが、そこにはすでに国境警備隊員の中に紛れ込んだREV-9 の姿がありました。その場を何とか逃れて問題の地点にたどり着くと、意外な人物が待ち構えていました。それは、1998年に襲ってきたあのT-800の年老いた姿でした…。【要約ここまで】

 

3人のヒロインのキャラが非常に立っています。リンダ・ハミルトンの奮闘ぶりは言うまでもありません。グレイス役のマッケンジー・デイビスは「ブレードランナー 2049」で有名になった女優ですが、今回は超人的な戦士という役柄を全力でこなし、新境地を開拓しています。ここから評価が上がって来そうですね。ダニー役のナタリア・レイエスは、ほぼ無名の新人といっていいですが、オーディションでリンダ・ハミルトンが惚れ込んで彼女に決めた、というだけあって、初めての大役とは思えない堂々たるメイン・キャストぶりです。

 

このシリーズのアイコンであるシュワルツェネッガーからは、「もうこれで最後にしたい」という発言もあったようですが、どうなのでしょうか? この新シリーズは、当初の計画としては、三部作として構想されているといいます。普通に考えますと、スカイネットが支配する未来がなくなったのだから、サイバーダイン型T-800も今後は登場しない、というのが順当な考え方かもしれませんが、まあSF作品ですから、どのような展開もあり得ると思われます。

 

AIの実用化が現実のものとなり、この作品が1984年に訴えた内容が、甚だ切迫したものに思えるようになった今こそ、ターミネーター・シリーズは必要とされるものになってきたように感じます。もはや遠い未来の絵空事ではないのですね。キャメロン氏は「アバター」シリーズでお忙しいと思いますが、ぜひご本人の出世作である本作も続けて関わってほしい、と切に思います。

 

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