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2018年2月 4日 (日)

【映画評 感想】ジオストーム

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「ジオストーム」
Geostormという映画を見ました。監督がローランド・エメリッヒ作品の製作・脚本で有名なディーン・デヴリンということで、典型的なSFディザスター映画かと思ったのですが、見てみると違うのです! もちろんSF要素も災害パニックものの色も十分なのですが、後半はむしろクライム・アクション映画なのですね。実はこのクライムもの、犯罪捜査の部分が面白い、という一本です。主演が「オペラ座の怪人」や「300」で知られるジェラルド・バトラーということが主要な動機で見に行ったのですが、これがなかなか期待を上回る快作です。主人公の弟の彼女が、ホワイトハウスのエリート大統領警護官という設定なのですが、なぜこういう人物がこの種のSF映画に出てくるのか、最初は若干の違和感を覚えるものの、その後の展開を考えると大いに納得なわけです。

結構、アメリカの批評サイトなどでは辛口なものが目立つようですが、おそらくデヴリン監督にエメリッヒ作品のような災害大作を期待しすぎたのではないでしょうか。私はいい意味で、予想を裏切られた作品でした。

 

壊滅的な自然災害が続発した2019年、世界17か国が力を合わせて、地球の気候を宇宙ステーションと人工衛星網でコントロールする「ダッチボーイ」システムが完成します。ダッチボーイ(オランダ人の少年)とは、堤防の決壊を命がけで食い止めた少年の有名な逸話にちなんだ命名です。世界中から集まったスタッフを束ね、見事に計画を成し遂げたアメリカの科学者ジェイク・ローソン(バトラー)は一躍、世界の救世主と讃えられますが、それから間もなく、米上院の査問委員会に呼び出されます。独断専行の多いジェイクは、持ち前の傲岸な性格も災いして、計画の主任を解任されたばかりか、NASAでのすべての任務を取り上げられ、解雇されてしまいます。

しかも、ダッチボーイ計画の指揮権は、ジェイクの弟で国務省の官僚であるマックス・ローソン(ジム・スタージェス)に与えられます。屈辱と怒りの中で計画を去ったジェイクは姿を消し、世捨て人のようになってしまいます…。

それから3年後の2022年。それまで順調に稼働していたダッチボーイが不具合を起こし、アフガニスタンの砂漠の村が氷結、多くの村人が凍死する、という痛ましい事件が起こります。さらに事故は続き、香港では超高温のためにガス管が爆発し多数のビルが倒壊、大災害が発生します。そのうえに、国際宇宙ステーションで、一人のスタッフが通常では考えられない事故で死亡。あきらかにシステム上の異変が起きていると思われました。

実は、ダッチボーイはあと2週間で、アメリカ政府の手を離れ、国連に移管することになっていました。当初、パルマ合衆国大統領(アンディ・ガルシア)は事件を隠蔽したまま手放そうと考えますが、それでは無責任、というマックスの意見を入れることにし、デッコム国務長官(エド・ハリス)の進言もあり、計画のすべてを熟知する唯一の男、ジェイクを呼び戻して、宇宙ステーションに派遣することにします。ジェイクの復帰には乗り気でないマックスも、国務省の上司で、恩人であるデッコムの意見には逆らえません。

仕事を失い、妻とも離婚。一人娘のハンナ(タリタ・ベイトマン)の成長だけを楽しみに暮らすジェイクの元を、今や国務次官補に昇進しているマックスが訪れます。これまでの経緯から反目する兄弟ですが、心血を注いで作り上げたダッチボーイの異常を知り、ジェイクは再び宇宙ステーションに向かうことを決意します。

3年ぶりに訪れたステーションでジェイクを出迎えたのは、かつての部下でドイツ出身のウーテ・ヒスベンダー(アレクサンドラ・マリア・ララ)。しかし今では彼女がこの基地の指揮官であり、ジェイクはすでに過去の人。3年前にはいなかったメキシコのアル(エウヘニオ・デルベス)や、英国のダンカン(ロバート・シーハン)らクルーの態度も冷ややかなものでした。

そんな中、香港駐在のダッチボーイ・システム調査員チェン(ダニエル・ウー)が、前の異常高温事件を調べるうちに、関係者であっても衛星の制御システムにアクセス出来なくなっている事実に気付き、連絡してきます。このまま制御不能の事態が進行すれば、地球全体が「ジオストーム」(破局的な世界規模の大嵐)に見舞われる、と指摘したチェンは、さらに重要な秘密をつかむと、マックスに会うためにアメリカまでやって来ます。しかし、マックスに接触しようとする寸前に、チェンは何者かに襲われます。マックスと、その恋人で大統領警護官のサラ・ウィルソン(アビー・コーニッシュ)は、ダッチボーイの不具合が単なる故障ではなく、人為的な妨害工作であることを疑い始めます。

そのころ、衛星のデータを記録しているデバイスを回収しようと宇宙遊泳に出たジェイクも、作業中に宇宙服の制御装置が故障して命を落としかけます。ジェイクとマックスは、これが何者かの陰謀による犯罪なのではないか、という結論で一致します。

マックスは、チェンから聞いたダッチボーイ計画の背後で人知れず進行している「ゼウス計画」という名称の別のプロジェクトを調べるために、旧友の国務省職員でネット・ハッキングの名人ディナ(ザジー・ビーツ)の助けを借りて情報にアクセスしようとしますが、現職の国務次官補で、ダッチボーイ計画の責任者であるマックスでも情報を得られないことが分かり愕然とします。やむなく、最高レベルの捜査権限とあらゆるアクセス権を持っている人物、つまりサラの協力を得て調べたところ、ゼウス計画というものは、ダッチボーイを気象兵器として用いる悪魔のプランであり、その解除に必要なコードは合衆国大統領だけが知っている、ということが判明します。

そうするうち、インドのムンバイで、モスクワで、リオデジャネイロで、東京で、異常な気象現象が起こり、大災害が発生します。かくて、フロリダ州オーランドの党員集会に出席するパルマ大統領をめぐり、サラとマックスはどうするのか。そして、宇宙ステーションで見えない敵と戦うジェイクとウーテは、ジオストームを阻止出来るのでしょうか…。

 

ということで、ジェラルド・バトラーとジム・スタージェスの兄弟の反目とか、一人娘との情愛とか、おいしいところはしっかり押さえていますが、全編を通して見ると、2人の強いヒロインがとにかく活躍します。つまりドイツ人科学者ウーテと、警護官サラですね。この2人が実にかっこいい。アレクサンドラ・マリア・ララは「ヒトラー~最期の十二日間~」の総統秘書ユンゲ役で有名ですが、私は久しぶりに見ました。今やドイツ映画界を代表する女優さんです(この人、本来の国籍はルーマニアですが、4歳から西ドイツに移住し、ずっとドイツで暮らしているので、ドイツの女優と言って全く問題ないでしょう)。それからサラ役のアビー・コーニッシュが凜としていて、実にいいです。実際に警護官だった人の指導を受け、射撃の訓練も積んで役作りしただけのことがあります。この人も、私は「エリザベス・ゴールデンエイジ」でエリザベス1世女王の侍女ベス・スロックモートンをやっていた頃しか覚えていなかったのですが、いい女優になりましたね。この人はオーストラリアの人で、ホワイトハウス職員の役柄ですが、実はアメリカ人ではありません。

マックス役のジム・スタージェスは、近年のヒット作としては「クラウド・アトラス」ですが、2008年の映画「ブーリン家の姉妹」では、ナタリー・ポートマン演じるアン・ブーリンの弟の役をやっていました。あの作品ではこの人も、イケメンの若手としてかなり注目されたと思いましたが、その時点ではずっと端役扱いだったエディ・レッドメインやベネディクト・カンバーバッチのその後の大出世が話題になりました。この人もぜひ頑張ってほしいです。ちなみにジム・スタージェスはロンドン出身、ジェラルド・バトラーはスコットランド出身で、いずれも英国籍。米国人兄弟という役柄ですが、こちらも実は全くアメリカ人ではないわけです。

その一方、英国人クルーの役をやっているロバート・シーハンという人、どこかで見た顔だと思えば、ニコラス・ケイジ主演の「デビル・クエスト」(2011)で最後まで生き残る騎士見習いの若者を演じていました。この人は英国籍でなく、実際はアイルランド人です。

宇宙ステーションの描写などはまことに素晴らしいもので、NASAの監修を受けており、リアルそのものです。一方で、絶叫災害ものとしての側面は、見終わってみると意外に薄いです。その点が、そういう作風を期待していた人には物足りなかったのかもしれません。それに、「アメリカが世界を救う」というハリウッド映画のお定まりのパターンからいえば、本作はむしろ、環境の悪化を無視し、国際協調を破って独善的に行動する「アメリカの暗部」をテーマにしている感じです。主人公を最後に救うのがメキシコ人のクルーだったり、2022年時点の合衆国大統領が、アンディ・ガルシアが演じるラテン系だったり(ということは、トランプ氏は1期だけ、という意味ですね。もっとも本作の撮影時はまだトランプ氏が勝利するなど全く予想されていなかったそうですが)という描き方は、アメリカ・ファーストな信条の人からは敬遠された、という可能性もあります。

ちなみに、ダッチボーイの建造に関わった17か国の中には日本も入っているようで、宇宙船の機体に描かれた日の丸がしっかり確認できます。

なんにしても私は、サラ・ウィルソン警護官が活躍し出す後半の展開が好きですね。カーチェイスあり、銃撃ありで、出だしはSF然としていたこの作品がそういう話になるのか、と思いました。この人をヒロインにして新シリーズにしてほしいぐらいです。

それに、クライマックスの盛り上がりは素晴らしいですよ。この手の作品は、最後はこうならないと、というところはきっちり感動的に演出してくれています。大画面で見て損のない一作だと思いました。

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