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2018年2月 3日 (土)

【映画評 感想】ダークタワー

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 映画「ダークタワー」
The Dark Towerを見ました。あのホラー文学の巨匠スティーヴン・キングが30年がかりで書き上げた大河小説の映画化で、メガホンを執るのは、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で知られるデンマークのニコライ・アーセル監督。今まで、長年にわたってJJ・エイブラムズ監督やロン・ハワード監督がこの小説の映画化に取り組んでいたそうですが、諸般の事情でアーセル監督の出番となったようです。このアーセル監督、少年時代から原作を愛読し、当時、組んでいたアマチュアバンドで、「ダークタワー」にちなんだオリジナル曲を演奏したこともあるほどの筋金入りのファンだとか。

 そして配役として、今をときめくイドリス・エルバに、アカデミー賞俳優のマシュー・マコノヒーが顔をそろえる、ということで、なにやらただならない物を感じて見てみました。この2人の俳優は我が家的にお気に入りですし。

 見終わってみて、やはりこの2人の存在感と演技は素晴らしいです。というか、このレベルの人たちだから成り立った企画かも、と思います。それと、子役のトム・タイラーという人もいい。今現在16歳ということですが、まもなく名子役を脱して、期待の若手、と呼ばれそうです。いかにもスティーヴン・キングの作品らしい「わかってくれない大人」と子供の対立、というモチーフにぴったりのピュアな、そして役柄からでしょうが、ちょっとどこかダークな感じもある少年です。

 しかしまあ、7部構成の大河小説で、日本語版でも新潮文庫から16冊とか、番外編も入れるとさらに、とかいうボリュームの大長編を、2時間にも満たない映画一本にするのはかなり無理があったのでは。スティーヴン・キングが大いに影響を受けたという「指輪物語」も、「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」あわせて6部作でなんとか映像化したわけです。「ハリー・ポッター」にしても「スター・ウォーズ」にしても、やはりそれなりのスケール感がないと描けないものは描けない、と感じてしまいます。

 要するに、原作を全く知らない人には不親切、そして原作のファンからすれば物足りないも甚だしい、ということになりそうですが…。これはむしろ、1年ぐらいかけて大河ドラマにした方がいい素材かもしれません。

 ではあるのですが、色々な制約がある中、監督がもともとファンであるというのが強みで、短い時間の中で、しっかり手際よくストーリーは盛り上げていますし、世界観も不十分ながら、なんとなく理解出来ます。原作の持ち味は正しく伝えているのではないかと。キングの作品世界への思い入れや愛を感じるように思います。だから見応えはあります。問題はおそらく製作面でのビジネス的な制約がいちばん大きいのでしょうが…。

 

 ニューヨークに住む11歳の少年ジェイク・チェンバーズ(トム・タイラー)は、1年前に消防官だった父親が殉職し、心を閉ざしています。母親のローリー(キャサリン・ウィニック)は息子を愛していますが、早くも新しい夫と再婚。義父のロンは露骨にジェイクを邪魔者扱いにしています。

 ジェイクは1年前の父の事故以来、夜な夜な不思議な夢を見るようになりました。真っ黒い巨大な塔がそびえ立つ世界。その塔を、機械に縛り付けられた子供たちが発するエネルギーのビームが攻撃して破壊する、というものです。無数の世界を結びつけている塔が崩壊すれば、この宇宙は終焉を迎え、暗黒の勢力が乗り込んできます。その証拠に、塔が揺らぐ夢をジェイクが見るたびに、現実の世界でもニューヨークはもちろん、各地で地震が頻発するのです。

 塔を破壊するべくあちこちから子供たちを集め、暗躍する不気味な「黒衣の男」や、これと敵対し、暗黒の塔を守ろうとする拳銃の使い手「ガンスリンガー」の存在。黒衣の男に従う一見、人間のようで、実は人の顔のマスクを被っている醜い獣のような亜人種…。

 当然ながら精神科医は、父親を失ったがゆえの妄想だと切り捨てますが、ジェイクはこれらの夢の世界が実在すると考えます。やがて、学校でトラブルを起こしたジェイクは施設に送られることになります。しかし、迎えに来た施設の職員の首筋に、マスクの切れ目があることに気付いたジェイクは、慌てて逃げ出します。

 ジェイクは夢で見たニューヨーク市内にあると思われる古い建物を探し、ついにたどり着きます。そこには、異世界に転移出来るポータルが存在していました。ジェイクが足を踏み入れた先は、夢に出てきた「中間世界」と呼ばれる荒廃した領域。そして、そこで出会ったのは、やはり夢で見た「最後のガンスリンガー」ことローランド・デスチェイン(イドリス・エルバ)その人でした。

 ジェイクから夢の話を聞いたローランドは、「夢読み」のアラ(クラウディア・キム)を尋ねて小さな村を目指します。

 しかしその頃、ただならぬ超能力「シャイン=輝き」を秘めた子供が中間世界に侵入したことを悟った黒衣の男ウォルター(マシュー・マコノヒー)は、ニューヨークに行ってジェイクの家を訪れ、ローリーから情報を手に入れます。ジェイクこそ、暗黒の塔を破壊出来る最強の能力者に違いない、と判断したウォルター。しかも、そのジェイクと一緒に宿敵ローランドがいることを知り、ウォルターは村を襲撃することにします…。

 

 というような展開ですが、ジェイクという子供の設定が原作とはかなり異なりますし、黒衣の男ウォルターというのが何者で、これに仕える亜人種タヒーンというのは何なのか、というのも全く描かれません。ウォルターの主君であるクリムゾン・キング(真紅の王)の存在も、ちょっと暗示的にふれられるだけ。だから、本作だけ見て知識が完結するようには出来ていません。

 しかし、スティーヴン・キングの語る物語はみな、このダークタワーの世界とつながっている、という背景を知ると、見えてくるものがあるわけです。たとえば「IT」でさらわれていく子供や、「キャリー」で最後に行方不明となる超能力少女キャリー、といった人物は、要するにこのウォルターの下に送られて、暗黒の塔の破壊に使役されているのかもしれない、という具合です。

 主演級の3人のほかの人物では、アラ役のクラウディア・キムが美しい。日本では「キム・スヒョン」の名で知られる韓国の女優さんですが、欧米圏ではクラウディアという名で活動。「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」にちょっとマッドな女性研究者の役で出演して知名度を上げ、今度はエディ・レッドメインが主演するハリー・ポッターの続編「ファンタスティック・ビースト」シリーズの次作に出演するそうで、ハリウッドで大いに活躍しています。すごいですね。

 それからチョイ役ですが、ウォルターの直属の部下の一人、亜人種タヒーンの女性ティラナを演じたアビー・リー・カーショウも、出演シーンが少ないのに目立ちました。「マッドマックス」の新作や「キング・オブ・エジプト」などで注目された美貌の人。さすがにトップモデルの一人、立っているだけでも存在感があります。何しろウォルターが、マスクを被っている亜人種と知っての上で一目惚れしてしまう、というような描き方なので、こういうレベルの人を起用したのでしょうが、ここのシーンがウォルターという謎めいた男の個人的な人間性(というか女の好み)を覗かせて、ちょっと面白いです。

 大作小説を映像化するには短すぎる、という見方もある一方で、ひとつの作品としてみると、ちょうどいい長さのようにも感じられるのが悩ましいところです。映画の密度や登場人物の数からして、実は見終わった後の充実感はしっかりあります。

 やはり後の展開などを気にすることなく、単発映画として充実させる、という方法を優先したのだろう、と思われるわけです。何が正解というのは難しいですが、いろいろと、有名な原作がある映画化について考えさせられる一本でもありました。

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