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2018年2月24日 (土)

【映画評 感想】グレイテスト・ショーマン

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 映画「グレイテスト・ショーマン」
THE GREATEST SHOWMAN を見ました。ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル作品で、楽曲担当はペンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビ。あの「ラ・ラ・ランド」でアカデミー賞とグラミー賞、さらに別の舞台作品でトニー賞も受け、まさに破竹の快進撃をみせている2人です。

確かにこの作品、音楽が素晴らしい。1時間45分の間、オリジナル・ナンバー9曲が連続でつながり、ほとんど立て続けに時間を埋め尽くしております。ミュージカル映画でも、普通のお芝居がかなり入る作品がありますが、本作は、音楽とダンスシーンが中心となるタイプです。これがどの曲もどの曲も、素晴らしい完成度。全曲をシングルカットしてもいい感じです。実際、この映画のオリジナル・サントラは並み居るヒット曲を押しのけ、全米及び日本のチャートで1位をとる快挙を見せており、中盤で歌われる「ディス・イズ・ミー」はアカデミー賞にノミネートされております。

 本作で取り上げているのは、アメリカのショービジネス界で伝説の巨人とされ、史上初めてサーカス興行を行ったフィニアス・テイラー・バーナム(18101891)の半生ですが、正確な伝記ではなく、史実をベースとして創作されたストーリー、とされています。とはいえ、基本的にはバーナムの実人生をかなりなぞっている展開になっております。

 

 貧しい仕立屋の子供として生まれたP・T・バーナム(ジャックマン)は、上流階級の令嬢チャリティ・ハレット(ミシェル・ウィリアムズ)と仲良くなります。しかし彼らの恋は、身分違いゆえに許されるものではありませんでした。父親が死んで孤軍奮闘するバーナムと、花嫁学校に入れられたチャリティの仲は引き裂かれてしまいます。だが二人の想いは強く、ついに親の反対を押し切って結婚します。

 夫婦にはかわいい娘が2人うまれ、貧しくとも幸せな生活でしたが、バーナムの勤めていた海運会社が突然、船の沈没により倒産。これをチャンスと捉えたバーナムは、すでに沈んだ船の保有証書を担保として船主を装い、銀行から開業資金を融資してもらいます。

 この資金を元にバーナムは、ニューヨークの一等地マンハッタンに「バーナムのアメリカ博物館」を開館します。これは世界中の珍奇な物を集めた博物館でした。しかしバーナム一家の意気込みとは裏腹に客足は全く伸びず、経営は行き詰まります。ここで、子供たちのアイデアからヒントを得たバーナムは、物ではなく「珍しい人間」を見せ物にした興行を打つことを思いつきます。

 「ジェネラル・トム・サム(親指トム将軍)」の異名で知られる小人チャールズ・ストラットン(サム・ハンフリー)や、ヒゲ女レティ(キアラ・セトル)など、社会で受け入れられなかった人々を雇ってバーナム一座を結成した興行は大ヒット。一座はサーカスと呼ばれるようになり、バーナムは富豪の仲間入りをします。しかしこのショーは劇評家からは叩かれ、「低俗で悪趣味な見せ物」として激しく嫌悪する人々も多く、加えて経済的には成功したバーナム一家も、上流社会から成り上がり者として後ろ指を指されます。

 そこで、バーナムは、上流階級向けの演劇プロデューサーとして有名なフィリップ・カーライル(ザック・エフロン)を口説き、仲間に入れることに成功。フィリップはバーナム一座で空中ブランコの花形であるアン(ゼンデイヤ)と出会い、一目惚れしてしまいますが、人種と身分の違いを超えて愛を成就させることは非常に難しい時代でした。

 やがて、フィリップの尽力で一座は英国に渡り、世界の上流社会の頂点に立つヴィクトリア女王に拝謁。さらにそこでバーナムは、女王のお気に入りであり、一世を風靡していたスウェーデン人歌手のジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)と出会い魅了されます。バーナムはジェニーをアメリカに招いて興行を打つことで、自分自身も上流階層の社交界に受け入れられることを強く望みます。

 ジェニーがアメリカにやって来ると、バーナムは一座をフィリップに任せ、ジェニーと共に全米を回るツアーに出かけてしまいます。ジェニーのツアーはアメリカでも絶賛で迎えられますが、残されたチャリティたち家族は傷つき、一座のメンバーの心も、あまりに上昇志向が強いバーナムから離れていきます。そんな中、ついにサーカスを嫌う人々と一座の間で大騒動が持ち上がり、バーナムは破滅の危機に追い込まれてしまいます…。

 

 といった展開でして、一連のことがあっという間に(ほんの数年ぐらいの間に)起こったように描かれます。これは意図的な演出で、2人のバーナムの娘も劇中でほとんど年齢が変わりません。しかし、史実を見ますと、1829年にバーナム夫妻が結婚(ということはバーナムはまだ19歳)、34年からショービジネスを始め、41年(31歳ぐらい)にバーナムの博物館を開業。44年にヴィクトリア女王に拝謁し、50年(40歳ぐらい)にジェリー・リンドの公演を打ちます。そして65年(55歳ぐらい)に博物館が火災で焼け、テントによるサーカス興行「地上最大のショー」を開始。その後、政界に進出し州会議員や市長を歴任。73年(63歳ぐらい)にチャリティ夫人が亡くなり、別の女性と再婚して晩年を迎え81歳で亡くなる…。そんな人生ですので、実際には結婚から映画のエンディングあたりまでで36年も経過していたことになります。

 史実のバーナムは、偉大なショーマンであると同時に、典型的なペテン師とも見なされ、相当にあくが強く、功罪ともに相半ばして議論が尽きないような人物です。

また、他の実在人物として、19世紀当時、世界で最も有名なオペラ歌手だったジェニー・リンド(182087)についても、本作ではバーナムとのロマンス色が強く描かれていますが、実際のリンドは大作曲家メンデルスゾーンと秘密の恋愛関係にあったのでは、と言われる人です。その他にも、あのピアノの詩人ショパンとの関係や、童話作家アンデルセンに求婚されて断った、といった逸話もあるなど、この人の実人生そのものが大変ドラマチックだったようですね。

リンドは1850年に始まったバーナム主宰の全米公演を中途で打ちきった後(主にバーナムの運営姿勢に疑問を抱いた、ということのようです)、自主公演として52年まで全米ツアーを継続しており、収益のほとんどを慈善事業に寄付しています。さらにこの時に共演したドイツ人ピアニスト、オットー・ゴルトシュミット(この人もメンデルスゾーンの弟子)とボストンで挙式し、一緒に欧州に戻っており、このへんもちょっと映画の描き方とは相違しているようです。

 サーカスのメンバーでは、ジェネラル・トム・サム(183883)は実在の人物です。彼を伴った公演を英国で行った際に、ヴィクトリア女王に拝謁したようで、映画でも女王が彼に強い興味を抱くシーンがあるのは史実を反映しているのでしょう。他の人々は、モデルになる実在人物はいるものの、本人そのものとしては登場していません。

 というような史実との相違はしかし、このミュージカル作品では気にしないことです。これまでにP・T・バーナムを取り上げた映画は何度も作られており(特に有名なのは1986年の「バーナム/観客を発明した男」で、バーナムを演じたのはバート・ランカスター)、また1980年にはズバリ「バーナム」という題のミュージカルも舞台で公演されていますが、それらはより忠実にバーナムの人生そのものを伝記的に紹介していたようです。しかし今回は、あくまでもバーナムという人物をモデルとした「人生賛歌」として、見事にストーリーを盛り上げています。このあたりは、第一稿をもとに脚本を練り上げたビル・コンドン(あの「美女と野獣」の監督です)の手腕なのだろうと思います。

 歌が素晴らしい、と初めに申しました。特に冒頭の「ザ・グレイテスト・ショー」、それからバーナムがフィリップを口説く「ジ・アザーサイド」、ジェニー・リンドがステージで歌い上げる「ネヴァー・イナフ」、ヒゲ女がリードをとり、本作を代表する一曲「ディス・イズ・ミー」、さらにフィリップとアンの想いが爆発する「リライト・ザ・スター」…、ざっと挙げたつもりで、もうほとんどの楽曲を挙げなければならないほどです。

 多くの歌唱は出演者が自身でこなしております(ジェニー・リンドの歌声はローレン・オルレッドが吹き替え)。そもそもミュージカル・スターであり、「レ・ミゼラブル」の主演で有名なジャックマンは元より、舞台ではすでに定評のあったキアラ・セトルや、ヴォーカリストとしての実績があるデンゼイヤの歌唱力の高さに、改めて脚光が当たっています。「ヘアスプレー」などで知られるエフロンも歌える人なのは当然ですが、今作はことのほか大変だったのではないでしょうか。「ジ・アザーサイド」のシーンでは、酒場でバーナムとフィリップが飲みながら歌い、踊るという展開で、2人がグラスを空けると、すかさずマスターが酒をつぐ、という繰り返しがスリリングで、これは難しかっただろう、と思いましたが、パンフレットに拠ればこのシーンだけで3週間も練習したとか。「リライト・ザ・スター」を歌うシーンでは、デンゼイヤと共にロープや空中ブランコで舞い上がりながら歌う、という場面を、もちろん吹き替えなしで本人たちがやっています。デンゼイヤも今作のために、何か月も空中ブランコを練習したそうで、もうシルク・ド・ソレイユばりの危険な演技を自分でやっていますが、ここも大きな見どころです。

 最初から最後まで一貫して描かれる「差別との闘い」というテーマが、あくまでエンターテイメントの流れを損なうことなく、しかし胸に迫る重みを持って提示されているのは本作の特徴として特筆すべき点でしょう。

 本当に、グレイテスト・ショーの名にふさわしい一作です。日本でもサントラ盤CDの生産が追いつかず、入荷未定の状態が続いています。この豪華絢爛たる映像と音楽を楽しむには、やはり大画面で、と思いました。

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2018年2月13日 (火)

「コシノジュンコ先生の文化功労者受賞を祝う会」(東京・六本木)

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 昨日、東京・六本木のホテルで、デザイナー、コシノジュンコ先生の文化功労者受賞を祝うパーティーが開催され、450人の方が参加。私どもも末席を汚してまいりました。開宴前には先生と3人で記念撮影させていただきました。私の着ている皮革製の燕尾服、玲子のドレスはコシノ先生の作品です。Dv3pdvruqaeu3qx

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 私どもは、岡部俊哉・前陸上幕僚長ご夫妻、陸上自衛隊の補給統制本部長・金丸章彦陸将と記念撮影させていただきました。タキシード姿の方が岡部前陸幕長、制服の方が金丸陸将です。会場には中国、キューバ、ポーランドなど各国の大使、林芳正文科相、女優の倍賞千恵子さんや萬田久子さん、デヴィ・スカルノ夫人、神田うのさんらのお姿がありました。Dv3pm4mvmaaefml


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2018年2月 4日 (日)

【映画評 感想】ジオストーム

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「ジオストーム」
Geostormという映画を見ました。監督がローランド・エメリッヒ作品の製作・脚本で有名なディーン・デヴリンということで、典型的なSFディザスター映画かと思ったのですが、見てみると違うのです! もちろんSF要素も災害パニックものの色も十分なのですが、後半はむしろクライム・アクション映画なのですね。実はこのクライムもの、犯罪捜査の部分が面白い、という一本です。主演が「オペラ座の怪人」や「300」で知られるジェラルド・バトラーということが主要な動機で見に行ったのですが、これがなかなか期待を上回る快作です。主人公の弟の彼女が、ホワイトハウスのエリート大統領警護官という設定なのですが、なぜこういう人物がこの種のSF映画に出てくるのか、最初は若干の違和感を覚えるものの、その後の展開を考えると大いに納得なわけです。

結構、アメリカの批評サイトなどでは辛口なものが目立つようですが、おそらくデヴリン監督にエメリッヒ作品のような災害大作を期待しすぎたのではないでしょうか。私はいい意味で、予想を裏切られた作品でした。

 

壊滅的な自然災害が続発した2019年、世界17か国が力を合わせて、地球の気候を宇宙ステーションと人工衛星網でコントロールする「ダッチボーイ」システムが完成します。ダッチボーイ(オランダ人の少年)とは、堤防の決壊を命がけで食い止めた少年の有名な逸話にちなんだ命名です。世界中から集まったスタッフを束ね、見事に計画を成し遂げたアメリカの科学者ジェイク・ローソン(バトラー)は一躍、世界の救世主と讃えられますが、それから間もなく、米上院の査問委員会に呼び出されます。独断専行の多いジェイクは、持ち前の傲岸な性格も災いして、計画の主任を解任されたばかりか、NASAでのすべての任務を取り上げられ、解雇されてしまいます。

しかも、ダッチボーイ計画の指揮権は、ジェイクの弟で国務省の官僚であるマックス・ローソン(ジム・スタージェス)に与えられます。屈辱と怒りの中で計画を去ったジェイクは姿を消し、世捨て人のようになってしまいます…。

それから3年後の2022年。それまで順調に稼働していたダッチボーイが不具合を起こし、アフガニスタンの砂漠の村が氷結、多くの村人が凍死する、という痛ましい事件が起こります。さらに事故は続き、香港では超高温のためにガス管が爆発し多数のビルが倒壊、大災害が発生します。そのうえに、国際宇宙ステーションで、一人のスタッフが通常では考えられない事故で死亡。あきらかにシステム上の異変が起きていると思われました。

実は、ダッチボーイはあと2週間で、アメリカ政府の手を離れ、国連に移管することになっていました。当初、パルマ合衆国大統領(アンディ・ガルシア)は事件を隠蔽したまま手放そうと考えますが、それでは無責任、というマックスの意見を入れることにし、デッコム国務長官(エド・ハリス)の進言もあり、計画のすべてを熟知する唯一の男、ジェイクを呼び戻して、宇宙ステーションに派遣することにします。ジェイクの復帰には乗り気でないマックスも、国務省の上司で、恩人であるデッコムの意見には逆らえません。

仕事を失い、妻とも離婚。一人娘のハンナ(タリタ・ベイトマン)の成長だけを楽しみに暮らすジェイクの元を、今や国務次官補に昇進しているマックスが訪れます。これまでの経緯から反目する兄弟ですが、心血を注いで作り上げたダッチボーイの異常を知り、ジェイクは再び宇宙ステーションに向かうことを決意します。

3年ぶりに訪れたステーションでジェイクを出迎えたのは、かつての部下でドイツ出身のウーテ・ヒスベンダー(アレクサンドラ・マリア・ララ)。しかし今では彼女がこの基地の指揮官であり、ジェイクはすでに過去の人。3年前にはいなかったメキシコのアル(エウヘニオ・デルベス)や、英国のダンカン(ロバート・シーハン)らクルーの態度も冷ややかなものでした。

そんな中、香港駐在のダッチボーイ・システム調査員チェン(ダニエル・ウー)が、前の異常高温事件を調べるうちに、関係者であっても衛星の制御システムにアクセス出来なくなっている事実に気付き、連絡してきます。このまま制御不能の事態が進行すれば、地球全体が「ジオストーム」(破局的な世界規模の大嵐)に見舞われる、と指摘したチェンは、さらに重要な秘密をつかむと、マックスに会うためにアメリカまでやって来ます。しかし、マックスに接触しようとする寸前に、チェンは何者かに襲われます。マックスと、その恋人で大統領警護官のサラ・ウィルソン(アビー・コーニッシュ)は、ダッチボーイの不具合が単なる故障ではなく、人為的な妨害工作であることを疑い始めます。

そのころ、衛星のデータを記録しているデバイスを回収しようと宇宙遊泳に出たジェイクも、作業中に宇宙服の制御装置が故障して命を落としかけます。ジェイクとマックスは、これが何者かの陰謀による犯罪なのではないか、という結論で一致します。

マックスは、チェンから聞いたダッチボーイ計画の背後で人知れず進行している「ゼウス計画」という名称の別のプロジェクトを調べるために、旧友の国務省職員でネット・ハッキングの名人ディナ(ザジー・ビーツ)の助けを借りて情報にアクセスしようとしますが、現職の国務次官補で、ダッチボーイ計画の責任者であるマックスでも情報を得られないことが分かり愕然とします。やむなく、最高レベルの捜査権限とあらゆるアクセス権を持っている人物、つまりサラの協力を得て調べたところ、ゼウス計画というものは、ダッチボーイを気象兵器として用いる悪魔のプランであり、その解除に必要なコードは合衆国大統領だけが知っている、ということが判明します。

そうするうち、インドのムンバイで、モスクワで、リオデジャネイロで、東京で、異常な気象現象が起こり、大災害が発生します。かくて、フロリダ州オーランドの党員集会に出席するパルマ大統領をめぐり、サラとマックスはどうするのか。そして、宇宙ステーションで見えない敵と戦うジェイクとウーテは、ジオストームを阻止出来るのでしょうか…。

 

ということで、ジェラルド・バトラーとジム・スタージェスの兄弟の反目とか、一人娘との情愛とか、おいしいところはしっかり押さえていますが、全編を通して見ると、2人の強いヒロインがとにかく活躍します。つまりドイツ人科学者ウーテと、警護官サラですね。この2人が実にかっこいい。アレクサンドラ・マリア・ララは「ヒトラー~最期の十二日間~」の総統秘書ユンゲ役で有名ですが、私は久しぶりに見ました。今やドイツ映画界を代表する女優さんです(この人、本来の国籍はルーマニアですが、4歳から西ドイツに移住し、ずっとドイツで暮らしているので、ドイツの女優と言って全く問題ないでしょう)。それからサラ役のアビー・コーニッシュが凜としていて、実にいいです。実際に警護官だった人の指導を受け、射撃の訓練も積んで役作りしただけのことがあります。この人も、私は「エリザベス・ゴールデンエイジ」でエリザベス1世女王の侍女ベス・スロックモートンをやっていた頃しか覚えていなかったのですが、いい女優になりましたね。この人はオーストラリアの人で、ホワイトハウス職員の役柄ですが、実はアメリカ人ではありません。

マックス役のジム・スタージェスは、近年のヒット作としては「クラウド・アトラス」ですが、2008年の映画「ブーリン家の姉妹」では、ナタリー・ポートマン演じるアン・ブーリンの弟の役をやっていました。あの作品ではこの人も、イケメンの若手としてかなり注目されたと思いましたが、その時点ではずっと端役扱いだったエディ・レッドメインやベネディクト・カンバーバッチのその後の大出世が話題になりました。この人もぜひ頑張ってほしいです。ちなみにジム・スタージェスはロンドン出身、ジェラルド・バトラーはスコットランド出身で、いずれも英国籍。米国人兄弟という役柄ですが、こちらも実は全くアメリカ人ではないわけです。

その一方、英国人クルーの役をやっているロバート・シーハンという人、どこかで見た顔だと思えば、ニコラス・ケイジ主演の「デビル・クエスト」(2011)で最後まで生き残る騎士見習いの若者を演じていました。この人は英国籍でなく、実際はアイルランド人です。

宇宙ステーションの描写などはまことに素晴らしいもので、NASAの監修を受けており、リアルそのものです。一方で、絶叫災害ものとしての側面は、見終わってみると意外に薄いです。その点が、そういう作風を期待していた人には物足りなかったのかもしれません。それに、「アメリカが世界を救う」というハリウッド映画のお定まりのパターンからいえば、本作はむしろ、環境の悪化を無視し、国際協調を破って独善的に行動する「アメリカの暗部」をテーマにしている感じです。主人公を最後に救うのがメキシコ人のクルーだったり、2022年時点の合衆国大統領が、アンディ・ガルシアが演じるラテン系だったり(ということは、トランプ氏は1期だけ、という意味ですね。もっとも本作の撮影時はまだトランプ氏が勝利するなど全く予想されていなかったそうですが)という描き方は、アメリカ・ファーストな信条の人からは敬遠された、という可能性もあります。

ちなみに、ダッチボーイの建造に関わった17か国の中には日本も入っているようで、宇宙船の機体に描かれた日の丸がしっかり確認できます。

なんにしても私は、サラ・ウィルソン警護官が活躍し出す後半の展開が好きですね。カーチェイスあり、銃撃ありで、出だしはSF然としていたこの作品がそういう話になるのか、と思いました。この人をヒロインにして新シリーズにしてほしいぐらいです。

それに、クライマックスの盛り上がりは素晴らしいですよ。この手の作品は、最後はこうならないと、というところはきっちり感動的に演出してくれています。大画面で見て損のない一作だと思いました。

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2018年2月 3日 (土)

【映画評 感想】ダークタワー

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 映画「ダークタワー」
The Dark Towerを見ました。あのホラー文学の巨匠スティーヴン・キングが30年がかりで書き上げた大河小説の映画化で、メガホンを執るのは、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で知られるデンマークのニコライ・アーセル監督。今まで、長年にわたってJJ・エイブラムズ監督やロン・ハワード監督がこの小説の映画化に取り組んでいたそうですが、諸般の事情でアーセル監督の出番となったようです。このアーセル監督、少年時代から原作を愛読し、当時、組んでいたアマチュアバンドで、「ダークタワー」にちなんだオリジナル曲を演奏したこともあるほどの筋金入りのファンだとか。

 そして配役として、今をときめくイドリス・エルバに、アカデミー賞俳優のマシュー・マコノヒーが顔をそろえる、ということで、なにやらただならない物を感じて見てみました。この2人の俳優は我が家的にお気に入りですし。

 見終わってみて、やはりこの2人の存在感と演技は素晴らしいです。というか、このレベルの人たちだから成り立った企画かも、と思います。それと、子役のトム・タイラーという人もいい。今現在16歳ということですが、まもなく名子役を脱して、期待の若手、と呼ばれそうです。いかにもスティーヴン・キングの作品らしい「わかってくれない大人」と子供の対立、というモチーフにぴったりのピュアな、そして役柄からでしょうが、ちょっとどこかダークな感じもある少年です。

 しかしまあ、7部構成の大河小説で、日本語版でも新潮文庫から16冊とか、番外編も入れるとさらに、とかいうボリュームの大長編を、2時間にも満たない映画一本にするのはかなり無理があったのでは。スティーヴン・キングが大いに影響を受けたという「指輪物語」も、「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」あわせて6部作でなんとか映像化したわけです。「ハリー・ポッター」にしても「スター・ウォーズ」にしても、やはりそれなりのスケール感がないと描けないものは描けない、と感じてしまいます。

 要するに、原作を全く知らない人には不親切、そして原作のファンからすれば物足りないも甚だしい、ということになりそうですが…。これはむしろ、1年ぐらいかけて大河ドラマにした方がいい素材かもしれません。

 ではあるのですが、色々な制約がある中、監督がもともとファンであるというのが強みで、短い時間の中で、しっかり手際よくストーリーは盛り上げていますし、世界観も不十分ながら、なんとなく理解出来ます。原作の持ち味は正しく伝えているのではないかと。キングの作品世界への思い入れや愛を感じるように思います。だから見応えはあります。問題はおそらく製作面でのビジネス的な制約がいちばん大きいのでしょうが…。

 

 ニューヨークに住む11歳の少年ジェイク・チェンバーズ(トム・タイラー)は、1年前に消防官だった父親が殉職し、心を閉ざしています。母親のローリー(キャサリン・ウィニック)は息子を愛していますが、早くも新しい夫と再婚。義父のロンは露骨にジェイクを邪魔者扱いにしています。

 ジェイクは1年前の父の事故以来、夜な夜な不思議な夢を見るようになりました。真っ黒い巨大な塔がそびえ立つ世界。その塔を、機械に縛り付けられた子供たちが発するエネルギーのビームが攻撃して破壊する、というものです。無数の世界を結びつけている塔が崩壊すれば、この宇宙は終焉を迎え、暗黒の勢力が乗り込んできます。その証拠に、塔が揺らぐ夢をジェイクが見るたびに、現実の世界でもニューヨークはもちろん、各地で地震が頻発するのです。

 塔を破壊するべくあちこちから子供たちを集め、暗躍する不気味な「黒衣の男」や、これと敵対し、暗黒の塔を守ろうとする拳銃の使い手「ガンスリンガー」の存在。黒衣の男に従う一見、人間のようで、実は人の顔のマスクを被っている醜い獣のような亜人種…。

 当然ながら精神科医は、父親を失ったがゆえの妄想だと切り捨てますが、ジェイクはこれらの夢の世界が実在すると考えます。やがて、学校でトラブルを起こしたジェイクは施設に送られることになります。しかし、迎えに来た施設の職員の首筋に、マスクの切れ目があることに気付いたジェイクは、慌てて逃げ出します。

 ジェイクは夢で見たニューヨーク市内にあると思われる古い建物を探し、ついにたどり着きます。そこには、異世界に転移出来るポータルが存在していました。ジェイクが足を踏み入れた先は、夢に出てきた「中間世界」と呼ばれる荒廃した領域。そして、そこで出会ったのは、やはり夢で見た「最後のガンスリンガー」ことローランド・デスチェイン(イドリス・エルバ)その人でした。

 ジェイクから夢の話を聞いたローランドは、「夢読み」のアラ(クラウディア・キム)を尋ねて小さな村を目指します。

 しかしその頃、ただならぬ超能力「シャイン=輝き」を秘めた子供が中間世界に侵入したことを悟った黒衣の男ウォルター(マシュー・マコノヒー)は、ニューヨークに行ってジェイクの家を訪れ、ローリーから情報を手に入れます。ジェイクこそ、暗黒の塔を破壊出来る最強の能力者に違いない、と判断したウォルター。しかも、そのジェイクと一緒に宿敵ローランドがいることを知り、ウォルターは村を襲撃することにします…。

 

 というような展開ですが、ジェイクという子供の設定が原作とはかなり異なりますし、黒衣の男ウォルターというのが何者で、これに仕える亜人種タヒーンというのは何なのか、というのも全く描かれません。ウォルターの主君であるクリムゾン・キング(真紅の王)の存在も、ちょっと暗示的にふれられるだけ。だから、本作だけ見て知識が完結するようには出来ていません。

 しかし、スティーヴン・キングの語る物語はみな、このダークタワーの世界とつながっている、という背景を知ると、見えてくるものがあるわけです。たとえば「IT」でさらわれていく子供や、「キャリー」で最後に行方不明となる超能力少女キャリー、といった人物は、要するにこのウォルターの下に送られて、暗黒の塔の破壊に使役されているのかもしれない、という具合です。

 主演級の3人のほかの人物では、アラ役のクラウディア・キムが美しい。日本では「キム・スヒョン」の名で知られる韓国の女優さんですが、欧米圏ではクラウディアという名で活動。「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」にちょっとマッドな女性研究者の役で出演して知名度を上げ、今度はエディ・レッドメインが主演するハリー・ポッターの続編「ファンタスティック・ビースト」シリーズの次作に出演するそうで、ハリウッドで大いに活躍しています。すごいですね。

 それからチョイ役ですが、ウォルターの直属の部下の一人、亜人種タヒーンの女性ティラナを演じたアビー・リー・カーショウも、出演シーンが少ないのに目立ちました。「マッドマックス」の新作や「キング・オブ・エジプト」などで注目された美貌の人。さすがにトップモデルの一人、立っているだけでも存在感があります。何しろウォルターが、マスクを被っている亜人種と知っての上で一目惚れしてしまう、というような描き方なので、こういうレベルの人を起用したのでしょうが、ここのシーンがウォルターという謎めいた男の個人的な人間性(というか女の好み)を覗かせて、ちょっと面白いです。

 大作小説を映像化するには短すぎる、という見方もある一方で、ひとつの作品としてみると、ちょうどいい長さのようにも感じられるのが悩ましいところです。映画の密度や登場人物の数からして、実は見終わった後の充実感はしっかりあります。

 やはり後の展開などを気にすることなく、単発映画として充実させる、という方法を優先したのだろう、と思われるわけです。何が正解というのは難しいですが、いろいろと、有名な原作がある映画化について考えさせられる一本でもありました。

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