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2017年12月31日 (日)

2017年、本年もありがとうございました。

 いよいよ2017年も大みそか。今年もたくさんの方々にお世話になりました。

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 今年の私どもの大イベントといえば、10月に東京家政大学で行った講演会「軍服 その歴史とイラストレーション」=写真上=がなんといっても大変でした。台風が迫る中、本当に会場がいっぱいになりまして、ご来場いただいた方々には改めて厚く御礼申し上げます。

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 それから、今年は7月に私たちの著作『軍装・服飾史カラー図鑑』(イカロス出版)の台湾版である『圖鑑版 軍裝・紳士服飾史』(楓樹林)が刊行されました=写真下。これまでも中国語版が刊行される経験はありましたが、やはり新しい本が出ると、それを機に、海外の読者からのご連絡が来るようになるなど、嬉しい出来事でした。

 

 ほかにも、今年はいろいろな方との出会いがありました。振り返ってみると、年末の最後の最後まで、相当に忙しい一年だったように思います。

 私自身や家族の体調不良というのも、ブログやSNSに取り上げませんでしたが、実はけっこうありました。

 トータル的には、かなり厳しい年だったような…。

 

 来年は、実りのある一年にしたいと祈念しております。皆様のご多幸をお祈りしております。どうぞよいお年をお迎え下さいませ。

本年はまことにありがとうございました。

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2017年12月29日 (金)

【映画評 感想】カンフー・ヨガ

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 いよいよ
2017年も押し迫りました。このほど、ジャッキー・チェン主演の中国・インド合作映画「カンフー・ヨガ」(功夫瑜珈、Kung Fu Yoga)というものを見ました。要するにカンフー映画とインド映画を足して、そこにインディ・ジョーンズの宝探しを混ぜてコメディーにしたようなけったいな一作ですが、これがなんとも奇妙な魅力にあふれています。今年の1月に中国、2月にインドで公開されて250億円以上を稼ぎ出し、興行収入的にはこれまでのジャッキーの主演映画の中で過去最高、となったそうです。

とはいえ、中国+インドで「カンフー・ヨガ」などというイージーかつ不真面目なタイトルから想像されるほど不真面目な内容でもなく、話の大筋は荒唐無稽ですが、意外に史実をからめた歴史ファンタジーでもあります。

映画館が飛躍的に増大し、アメリカを抜いて世界最大の映画市場となりつつある中国。そして独特の映画文化で世界に冠たるボリウッドを持つインド。両者が組んでの娯楽映画製作は、間違いなく成功しそうな要素満載です。しかし、実際にはこの二つの大国は決して仲良くありません。今月も、習近平主席の唱える現代版シルクロード「一帯一路」構想について、「インド政府は、14日に北京で開幕した国際協力サミットフォーラムへの参加を拒否した(産経ニュース)」という感じで、習氏の顔に思い切り泥を塗った感じです。そんな中、この映画では懸命に「両国が手を汲めば、一帯一路にも貢献できますよ」といったセリフがちりばめられ、政治的な配慮も垣間見えます。しかし、そういった点も、奇想天外な、あまりにもインド映画的な豪華絢爛なクライマックスに向かううちに、だんだんどうでもよくなる。それこそがこの作品の最大の特徴と言えましょう。

 

647年のインド。玄奘三蔵がインドから中国に仏典を持ち帰って以来、中国・唐王朝と友好関係にあったマガダ王国でクーデターが勃発。王位を奪った反乱者アルジュナは、マガダ王家が唐に献上しようとした財宝を奪おうとしますが、唐から受け取りに来た使節・王玄策の活躍で阻止されます。マガダ王女は援軍を要請するために、配下のビーマ将軍を王玄策に同行させ、唐に向かわせます。しかし、王玄策とはぐれた将軍の一行は、チベットの雪山で行方不明となってしまいます。

 それから1400年後の中国・西安。消えたマガダ王国の財宝を探すことをライフワークとしている兵馬俑博物館の考古学者ジャック(ジャッキー・チェン)の元を、インドの考古学者アスミタ博士(ディシャ・パタニ)が訪れます。彼女は、消えたマガダ軍の財宝のありかを示す地図を示し、協力を求めます。ジャックはアスミタと助手のカイラ(アミラ・ダスツール)、それに亡き友人の息子でトレジャーハンターのジョーンズ(リー・アーリフ・リー)、自分の助手シャオグゥアン(レイ)たちを連れて、地図が示す山中の地下深くに向かい、ついにマガダ軍の兵士たちの遺体を発見。しかしそこに突然、インドの富豪ランドル(ソーヌー・スード)率いる武装集団が現れ、ジャックたちと乱闘となります。このどさくさにまぎれ、ジョーンズは真の財宝の所在を示す秘宝「シヴァの目」を盗み、一人で逃げ出しました。

 数日後、アスミタから、ジョーンズがシヴァの目をドバイで開催されるオークションに出品したという知らせが届き、ジャックたちは急きょドバイへ。現地に住む大金持ちの友人ジョナサン(チャン・グオリー)の助けを得て16000万ドルの大金でシヴァの目を落札しますが、そこにまたもランドルの一味が現れて、これを奪い逃亡します。ジャックはジョーンズたちと協力してランドルを追跡するのですが、結局、シヴァの目は最後に現れたアスミタが奪い去ってしまいます。

ジャックたちは事の真相を知るべく、インドの研究機関に向かいアスミタの元を訪れます。実は彼女の正体とは…。

 

というような展開ですが、ジェットコースター的な急展開で突っ込みどころ満載の脚本はむしろ、それがそもそもの狙いとしか思えない感じです。頭が硬い人の批判は初めから受け付けません、だってこれは娯楽の王道作品ですから、というところでしょう。

ジャッキー・チェンのアクションは冴えわたり、これでもかと繰り出される、きらびやかなドバイの街や黄金キラキラのインドの財宝は、おめでたい正月映画にピッタリ。ドバイ王室提供で、何台も本物のフェラーリやランボルギーニの高級車が使用され、惜しげもなくカーチェイスでクラッシュされる様は、それだけで唖然とさせられます。ドバイ警察が保有する超高級パトカー「プガッティ・ヴェイロン」(定価2億円ほど。最高時速400キロ以上)もしっかり登場しており、車好きな人は必見でしょう。

なんといっても登場するのが八頭身の美男美女ばかり(ジャッキー本人は体形的にはちょっと違いますが)。特にアスミタ役のインド美女ディシャ・パタニは、現実離れした美貌とスタイルの持ち主で、こんな人が本当にいるのか、まさかCGキャラクター?と思われるほど。カイラ役のアミラ・ダスツールも、本作ではコメディー担当のちょっと三枚目な役回りですが、こちらも輝くばかりの美女です。いずれもインドでもまだ主演級とはいえ新人クラスの女優さんですが、インド芸能界にはこんな才色兼備の美女がいくらでもゴロゴロしていそう。恐るべき潜在的底力。やはり次の時代はインドですかね…。

一方、ランドル役のソーヌー・スードは、インドでは有名な悪役スターだそうです。

最後の最後、ゴージャスかつ怒涛の(?)エンディングで、途中の経過は何もかもどうでもよくなるような至福体験を味わえます。娯楽映画はこうでなければ。インドの映画では、いろいろ困難があっても、最後は笑って楽しく、という鉄則があるそうです。現実のこの世は苦しいことばかり、せめて映画の世界では幸福を味わいたい、というのがインドの考え方。

今年一年、大変だったな、という方には特にお薦めの「締めの一作」かもしれません。

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2017年12月28日 (木)

【映画評 感想】スター・ウォーズ/最後のジェダイ

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「スター・ウォーズ
/最後のジェダイ」Star Wars: The Last Jediを見ました。鑑賞したのは1227日ですが、この日は奇しくも、ちょうど一年前に、レイア姫ことキャリー・フィッシャーさんが亡くなった命日。そして、去年のこの日も、シリーズの前作で、若き日のレイア姫が最後に登場する「ローグ・ワン」を見ていたことを思い出しました。今作はまさに彼女の遺作となってしまいました。

いわゆるSW正史の「エピソード8」にあたる本作。批評家筋はこぞって称賛しておりますが、一部の熱心な「昔からのSWファン」という人たちからは、多少の違和感も持たれている、という話を聞きます。つまり、SWらしくない、という感じを受けるというのですが、私は、その変化というのは、監督がライアン・ジョンソンに代わったことだけでなく、やはりシリーズ全体の大詰めを迎えていることが背景にあるように感じました。

あえていうと、外伝である前作「ローグ・ワン」に通じるものがあると感じます。簡単にいえば、正史シリーズでは、その後に続く展開から制約が多く、ことに時代を遡って製作された作品の場合、後の時代の作品に登場する人物は「決して殺せない」ということがあります。たとえば、エピソード1~3の間には、ダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカーを勝手に退場させるわけにはいきません。

しかしとうとうシリーズもクライマックス。一連の時間軸の最後に当たる今、どの人物をどう扱うかはまさに監督の自由! それが決定的な持ち味の差になっていると私は思います。「ローグ・ワン」は、後の正史との兼ね合いから、ほとんどの登場人物は一回限りで、その後の時代には「活躍してはならない」ということが、かえって緊張感を高めて傑作となりました。

今回のエピソード8にも、そのような緊張感を感じるのであります。それが、明快なスペースオペラだったSWシリーズの中で異質な印象を与えるのかもしれません。

また、ストーリー展開的にも、主要な人物たちそれぞれの人生が思いがけない方向に大きく変転していくこと、さらに脚本構成として、苦境に立つレジスタンス軍、敵の戦艦に潜入する秘密部隊、そしてフォースをめぐり葛藤するレイ、カイロ・レン、ルークの3人による息詰まる心理戦、の三つのお話が並行して複雑に展開し、これも従来の非常に明快だったシリーズとは違う感じをもたらしていると思われます。

 

遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。

銀河帝国の残党「ファースト・オーダー」と、新共和国のレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)率いる私設軍隊「レジスタンス」の戦闘が激化。前作でレジスタンス軍は、ファースト・オーダー軍の司令官ハックス将軍(ドーナル・グリーソン)が指揮する新兵器「スター・キラー」の破壊に成功しました。しかしそれと引き換えに、レジスタンスの拠点、惑星ディカーの位置が知られてしまいます。ハックス将軍のファースト・オーダー艦隊が基地を急襲し、レジスタンス軍は壊滅状態に。ポー・ダメロン中佐(オスカー・アイザック)の活躍により、ファースト・オーダー艦隊の主力艦「ドレッドノート級スター・デストロイヤー」を撃沈できましたが、レジスタンス側の被害も甚大で、生き残ったレジスタンス艦隊は、ハイパースペースへワープして逃走します。ところが、ファースト・オーダー艦隊は、レジスタンス軍のクルーザー(巡洋艦)に仕込んだ追跡装置により、行き先を追尾していました。

そのころ、惑星オクトーの孤島に身を潜めている伝説のジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)を探し当てたレイ(デイジー・リドリー)。ところがルークの反応はそっけないもので、レイは全く相手にされません。しかし、盟友ハン・ソロが、その息子であり、かつてのルークの教え子でもあるカイロ・レン(アダム・ドライバー)に殺されたことを知ると、悩んだ挙句、ルークはレイにフォースの訓練を施すことにします。

 ハイパースペースを抜けたレジスタンス艦隊を、カイロ・レンの部隊が奇襲してレジスタンス側は大敗。総司令官であるレイアが意識不明の昏睡状態になってしまいます。その代理として、ホルド提督(ローラ・ダーン)が臨時指揮官の任に就きますが、慎重派のホルドと熱血漢のポー・ダメロンは気が合わず、人間関係がうまくいきません。

ポーはホルド提督には無断で、敵の追跡探知を阻止する隠密作戦を進めます。フィン(ジョン・ボイエガ)と整備士のローズ(ケリー・マリー・トラン)の2人は、ファースト・オーダーの総帥であるスノーク最高指導者(アンディ・サーキス)が座乗する旗艦「メガ・スター・デストロイヤー」の探知機を破壊するべく、戦艦への侵入コードを解読できる暗号破りの名人に接触するために、惑星カントニカに向かいます。ところが、この星でフィンたちは警察に捕まってしまい、絶望の淵に立たされます。そこで声をかけてきたのは、「俺なら戦艦のコードを破れるぜ」と豪語するあやしげな男、DJ(ベニチオ・デル・トロ)でした。

 そのころレイは、ルークによる訓練を受けるうちに、カイロ・レンと心が接触することが多くなります。動揺するレイとカイロ・レン。そしてルークもまた、レイが父アナキンや、カイロ・レンと同様に、フォースの暗黒面に落ちるのではないかと危惧するようになり…。

 

 といったことで、かなり前作で期待させられたような、予定調和的な展開とはならないで、物事はレジスタンス軍側にとって悪い方に、悪い方にと進んでいきます。苦心して遂行したことがうまく実らず、絶望するというシーンが繰り返されます。多くの登場人物が、特攻隊のような決死の攻撃で命を落としていきます。このあたりの救いのなさが、SWらしくない、といわれるゆえんなのかもしれません。ただ、むしろ日本人的に見ると、何か我々が親しんできた時代劇や戦争映画によくみられる、自己犠牲的なテーマに近く、大いに琴線に触れるものがあるように感じます。私は本作を見ていてなんとなく、登場人物のほとんどが戦死してしまう「宇宙戦艦ヤマト2」を思い出しました。

 ただ、いい塩梅でユーモアあふれるシーンも盛り込まれて、緊迫したシーンの合間、合間のところどころでほっとさせられます。意外に見終わった後の感想は重いものではなく、それは適度なバランスで、緻密に配置された、そうしたくすぐりの効果も高いのではないかと思いました。あの懐かしいヨーダ(声:フランク・オズ)が思いがけないところで登場するなど、嬉しいサービスもあります。

 滅びゆくジェダイ。そしてルークとレイアの物語にも、結末が近付いていきます。これからどのような未来が待ち受けているとしても、もはや古き良き時代は再来しません。前作でハリソン・フォードがシリーズを去り、キャリー・フィッシャーが亡くなったことで、レイアの出番もこれで終わってしまったのでしょう。

 一抹の寂しさを覚えるのは、やはり一時代の終焉を予感させるからかもしれません。1977年に開闢したスター・ウォーズの宇宙も、次作でついにひとつの完結を見ることになります。厳粛で壮大な物語でした。

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2017年12月24日 (日)

クリスマス&忘年会(帝国ホテル・ブラッスリー)

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 今年のクリスマス・イブは日曜日ということで、いろいろ楽しい催しをされている方も多いのではないでしょうか。私どもは本日は多忙ですので、数日前に昨年と同様、帝国ホテル地下のレストラン「ブラッスリー」にて、家族クリスマス会兼忘年会を行いました。ホロホロ鳥のメインディッシュがことのほか美味でございました。Dryjvd6vaaalbab_2

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2017年12月18日 (月)

日本甲冑武具保存会の研究会に伺いました。

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 このほど日本甲冑武具研究保存会の研究会が、東京・早稲田の水稲荷神社・参集室で開催されました。会員で甲冑師の佐藤誠孝様のご紹介で、私どもも伺いました。鎌倉の下馬遺跡から出土した非常に珍しい大鎧についての説明があり、熱い議論が展開。非常に濃密な2時間余りでした。甲冑の研究は日本の誇る文化財の保存という意味で大切ですが、公的な研究機関や大学などの活動や研究は限られたもので、この会員の皆様のような方々が私財を投じ、時間を削って活動されていることが多いのです。頭が下がります。Drrfsfdueaagahl

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2017年12月17日 (日)

「ザ・クロークルーム」レセプション(銀座)

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 9月にオープンした銀座の新しいテーラー「ザ・クロークルーム東京サロン」のレセプションが、このほど開催されました。Droufa2umaeqt0e



 このお店は「ギンザ・シックス」のすぐそばにあります。クロークルームは元々オーストラリアのブランドですが、日本には初上陸。非常に感度の高い紳士服、レディース、レザー商品などを扱っており、日本では基本的にビスポーク(注文服)のお店となっています。
 かつて「サローネ・オンダータ」を支えた島田氏と林氏、松岡氏がこの東京サロンを立ち上げました。Droujlsvqaa0rg



 「ザ・クロークルーム」104-0061 東京都中央区銀座7-10-5 ランディック第3銀座ビル5階 TEL 03-6263-9976 MAP https://goo.gl/HtEp9N
 月曜日定休。12:00~19:00(予約制)ということで、まずはお電話を。Droum2uuiaaf0va

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2017年12月16日 (土)

【映画評 感想】オリエント急行殺人事件

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「オリエント急行殺人事件」
Murder on the Orient Expressを見ました。「シンデレラ」「マイティ・ソー」など大ヒット作の監督として、また「ダンケルク」などでの演技派俳優としても知られるケネス・ブラナー。彼が、ギネスブックから「史上最高のベストセラー作家(なんと10億冊以上!)」として認定されているミステリーの女王、アガサ・クリスティの小説に挑んでメガホンを執った一作です。

製作にリドリー・スコットが名を連ね、脚本のマイケル・グリーンは、「LOGAN/ローガン」「エイリアン: コヴェナント」「ブレードランナー 2049 」と今年、話題になった大作に軒並み関わっている売れっ子です。

さて、「オリエント急行殺人事件」というタイトルを聞くと、あの名探偵エルキュール・ポアロが登場するアガサ・クリスティの有名な小説であるというだけでなく、今、40歳代以上の方なら、1974年に大ヒットした同名の映画を思い出すことでしょう。この映画化では、アルバート・フィニーがポアロを演じ、アカデミー賞6部門ノミネート、宣教師役のイングリッド・バーグマンがアカデミー助演女優賞を獲得しました。

その他に、ご存じデビッド・スーシェが演じたテレビ・シリーズ「名探偵ポワロ」の中の一作にも、同じ原作のドラマがありました。

ミステリーですから、結末を言ってしまえばネタばらしそのものです。だからそれについては何も申しませんが、アガサ・クリスティが原作を発表したのは80年以上も前の1934年のこと。当時としては非常に大胆な結末に読者が驚いた一作でした。また、あの大西洋横断を初めて成功させたチャールズ・リンドバーグの子供が誘拐された1932年の事件(つまりわずか2年前に起きた、記憶に生々しい事件)を、小説中に取り込んだことでも話題となりました。

小説発表から40年を記念して制作された著名な先行映画もあることから、この作品の犯人は誰か、といったことはかなり知れ渡っております。そういう中での再映画化、というのはかなり勇気が要ると思うのですが、やはりこの、シャーロック・ホームズと並ぶ世界的に有名な探偵の新しい像を示してみたい、という欲求が強かったのでしょう。エルキュール・ポアロ(ポワロ)というと、おしゃれで小太りで、初老の紳士。頭脳派だけれど自分でアクションすることはまずない、というイメージでした。しかしケネス・ブラナー自らが演じるポアロは、本人もステッキを扱えば達人クラスの武闘派、という描き方で、これが新鮮です。事実、戦前期までの紳士がステッキを手放さなかったのは、単なるおしゃれアイテムではなく、19世紀半ばに、日常的に剣を帯びる習慣が廃れた後、代わりとなるステッキを護身用に持って歩く、という意味合いが強かったといいます。だから、もともと警察官出身のポアロが、護身として杖術が出来るというのも、不自然ではありません。

また、ポアロと言えばヒゲですが、原作では「立派なヒゲ」で、時として相手から滑稽と思われた、というような描写があります。クリスティは相当に大げさなヒゲをイメージしていたらしく、1974年版の映画制作時、存命だった彼女は、ポアロ役アルバート・フィニーのヒゲを見て、がっかりした、という逸話があるようです。そんなこともあり、今作でのケネス・ブラナーのポアロは、顔の下半分を埋めるような巨大な口ヒゲを生やしています。ブラナーは、原作者の表現を重視したため、と言い、「犯人はこのヒゲを見てポアロを滑稽な人物と思い、油断してボロを出す。それがポアロのやり方」と説明しています。つまり、コロンボ警部のよれよれのコートと同じような効果がある、というのですね。

 今回の映画化では、登場人物の設定や名前が、原作や1974年版から、かなり変わっており、その大きな意図は、人種問題を色濃くフィーチャーしている、という点にあるようです。黒人やラテン系の登場人物も加わって、そういう視点が現代的なテーマとして浮上してきます。

 加えて、お話の冒頭でいきなり、聖地エルサレムにおけるキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の争いごとが出てくるなど、まさにタイムリーな話題を持ってくるあたり、決して古色蒼然とした懐古趣味の映画ではないよ、という主張が垣間見えてきます。

 映像的にも凝りに凝っていて、さりげないワンシーンが冴えています。たとえば殺人現場を映すのに、上にカメラを置いて鳥瞰図にして撮る、といった工夫があちこちに見られて、派手な特殊効果はなくとも、見せ方で21世紀の映画であることを訴えている感じです。

 

 では、ネタバレしない程度にお話の冒頭をご紹介しますと…。

 

時は1934年の冬。聖地エルサレムで、教会から盗難された聖遺物を見つけ出し、見事に犯人を逮捕して解決に導いた世界的名探偵エルキュール・ポアロ(ブラナー)。その後はしばらく、事件捜査から離れて、イスタンブールで休暇を満喫するつもりでした。

しかし、英国領事館の役人がやって来て、また難事件が発生、という一報をもたらします。すぐにロンドンに戻らなければならなくなったポアロは、イスタンブール発でフランス・カレーに向かうオリエント急行に乗ろうとしますが、バカンスのシーズンでもないのに、なぜか1等客室は満室でした。そこで、オリエント急行を運営する国際寝台車会社の重役である旧友ブーク(トム・ベイトマン)のコネを利用して、無理やり、その日に発車するオリエント急行に飛び乗ります。

ポアロは車内で、アメリカ人の富豪ラチェット(ジョニー・デップ)から声を掛けられます。ラチェットは何者かから脅迫を受けており、殺されるかもしれない、と脅えています。それで、著名な探偵のポアロに警護を引き受けてほしい、と依頼します。しかし、ラチェットの人相に凶悪なものを感じたポアロは、これを断ります。

その夜、突然の雪崩発生で、オリエント急行はバルカン半島の山中で運行を停止。除雪作業がすむまで車内の人々は動けなくなってしまいます。

そんな中、朝になってラチェットの他殺体が発見されます。身体を12か所も刺されて死亡しており、ポアロはブークの依頼を受けて捜査を開始します。

犯人は1等客室の乗客の中にいると思われましたが、全員にしっかりしたアリバイがあることが分かり、ポアロは困惑します。しかし、調べてみると死んだラチェットという人物の正体はとんでもないものでした。さらに、車内の乗客は一癖ある人物ばかりで、各人が何か隠し事をしているようであり、不自然なものをポアロは感じ始めます。

 ラチェットの秘書で会計担当者だったマックイーン(ジョシュ・ギャッド)、ラチェットの執事マスターマン(デレク・ジャコビ)、生真面目すぎてどこかエキセントリックな女性宣教師エストラバドス(ペネロペ・クルス)、人種差別的な意見を公言するオーストリアの学者ゲアハルト・ハードマン教授(ウィレム・デフォー)、富裕なロシアの亡命貴族ドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)と、それに仕えるメイドのドイツ人女性ヒルデガルテ・シュミット(オリヴィア・コールマン)、黒人の医師アーバスノット(レスリー・オドム・ジュニア)、室内で犯人に襲われたと主張する遊び好きの未亡人ハバード夫人(ミシェル・ファイファー)、聡明な家庭教師メアリ・デブナム(デイジー・リドリー)、バレエ界のスターでもあるハンガリー貴族アンドレニ伯爵(セルゲイ・ポルーニン)と、その妻で病弱なエレナ伯爵夫人(ルーシー・ボイントン)、中米出身の成功した自動車セールスマン、マルケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)、それから1等車の車掌で南仏出身のピエール・ミシェル(マーワン・ケンザリ)。この中の誰かが犯人なのか、それとも外部から犯人が侵入したのか。

ポアロが導き出したのは驚くべき結論でした…。

 

 なんといっても豪華で優雅な世界観です。オリエント急行の列車を完全に再現したセットは、実際に走行も出来るというのだから驚かされます。衣装も華麗なる1930年代の雰囲気を出しつつ、現代的なスタイリッシュさもあり、見事です。ポアロのシャツの付け襟の下からスタッドボタンが見え隠れし、見事な着こなしですが、しかしオシャレすぎるということもない。今回は戦うポアロ、ですからね。衣装は「エリザベス」シリーズや「オペラ座の怪人」「マイティ・ソー」などで有名なアレクサンドラ・バーンです。

豪華といえば、スターの競演です。大スターの勢ぞろいで、1974年版に負けていない感じですが、やはりその旧作でショーン・コネリーが演じた「アーバスノット大佐」という人物が、今作では1930年代には珍しかったと思われる黒人の医師ドクター・アーバスノットに差し替えられているのが、特に大きな変化でしょう。イングリッド・バーグマンが演じた北欧系の宣教師が、ペネロペ・クルス演じるスペイン系のエストラバドスに、さらにイタリア系だった自動車ディーラーがラテン系のマルケスになって、人種的な部分が前に出ている配役になっております。

ケネス・ブラナーとは盟友といえるジョディ・デンチとデレク・ジャコビの重鎮2人が重厚感を加えております。ジャコビは「シンデレラ」でも病身の国王の役で感動を呼んでくれましたね。その他、ジョニー・デップやミシェル・ファイファー、ウィレム・デフォーなどおなじみの大物俳優、女優は紹介の必要もない面々でしょう。いずれも定評ある演技派で、見せ場で実力を遺憾なく発揮しています。特にデップの悪党ぶりは見事! この人が本当に悪そうでないと、この作品は成り立たないですよね。

 新進・気鋭の出演陣で注目なのが「スター・ウォーズ」新3部作のヒロイン、レイ役で知られるデイジー・リドリーです。同じ12月にスター・ウォーズの新作と、このクラシックなミステリーに出て、相乗効果を狙う作戦なのでしょうか。それは見事に成功しそうです。全く違う世界観の映画で、存在感を示す彼女は、今後も伸びていきそうですね。

レスリー・オドム・ジュニアはトニー賞受賞のミュージカル・スター、セルゲイ・ポルーニンは著名なバレエダンサー、マヌエル・ガルシア=ルルフォは「マグニフィセント・セブン」でメキシコ人のガンマンを演じて注目されました。ジョシュ・ギャッドは「アナと雪の女王」のオラフ役と、「美女と野獣」のルフウ役で一躍、人気者に。それから、車掌役のマーワン・ケンザリは今後、実写版「アラジン」に悪役ジャファーとして出演するという話ですが、どんな映画になるのでしょうか。

 この映画の最終部分は、ポアロが途中で列車を降り、エジプトで起きた殺人事件の捜査に向かうところで終わります。1974年の映画も、その後、「ナイル殺人事件」(1978年。ポアロ役はピーター・ユスチノフ)という次作につながったのですが、今作の後もやはり、「ナイル…」に向かっていくようです。

 本作の配給会社20世紀フォックスが、ディズニーに買収される、という報道が流れました。経営問題に関係なく、次作の「ナイル…」が無事に制作されることを期待します。クラシックな装いながら、やはり21世紀のポアロ、だと思います。アガサ・クリスティの作品が、こうして新たな命を吹き込まれて次代に受け継がれていくのは、とても大事なことだと感じました。

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2017年12月13日 (水)

クリスマスパフェ(新宿高島屋・高野パーラー)

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 気温も下がって、ぐっと師走らしい雰囲気になってきましたね。先日、新宿に行ったらライトアップが綺麗でした。立ち寄った高野パーラーでは、期間限定のクリスマスパフェというのを頼んでみました。Dq2s07xuiaa3boj

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2017年12月11日 (月)

コシノジュンコ先生の御主人、鈴木弘之氏の誕生パーティー。

 このほど、東京・六本木のハイアットホテルにて、デザイナー、コシノジュンコ先生の御夫君で株式会社Junko Koshino代表でもある写真家・鈴木弘之氏の誕生パーティーが開催されました。70歳を迎えられたとのことですが、とにかくダンディーでカッコいい。そしてスリム。憧れますね。さらにまた、先日、文化功労者となられたコシノ先生もいつでもパワフル。とにかく素晴らしいひとときでした。Dqty0vgvqaa34f9_3


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