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2017年9月 2日 (土)

【映画評 感想】ワンダーウーマン

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「ワンダーウーマン」
Wonder Womanを見ました。全米では6月に公開し、すでに興行収入800億円を超える大ヒット作品です。とにかく評判がよい本作ですが、コミックものの娯楽作品と侮るなかれ。非常にハードな戦争映画そのものでして、現実にあった壮絶な第1次大戦を舞台にして、そこにたまたまワンダーウーマンという架空の人物が入り込んできた、という史実ファンタジーという見方でいいと思います。よって、いわゆるコミック然とした雰囲気は微塵もないのが素晴らしい。

こういう作品が生まれた理由の一つが、いまハリウッドで最高の女性監督であるパティ・ジェンキンスがメガホンを執ったことにあるのは間違いありません。「モンスター」でシャーリーズ・セロンにアカデミー賞をもたらした同監督は、決して声高にフェミニズム的な主張を盛り込んではいませんが、しかし、まだまだ女性の権利が抑制されていた1910年代の英国(たとえば議会に女性が立ち入ることも、発言することも許されなかった、という描写が出てきます)を舞台に選んだことは、異世界からやってきたワンダーウーマンの個性を際立たせることに成功していて、巧妙です。本来、原作のワンダーウーマンは1941年、第2次大戦下で生まれたスーパーヒロインで、最初に相手にした敵は当然、ナチス・ドイツ軍だったのですが、本作がその前の第1次大戦をテーマとしたのも正解だったと思います。ナチス相手の作品はすでにたくさんあり、あのキャプテン・アメリカとも被ってきます。これが第1次大戦となると、時代背景にしても、コスチュームにしても兵器にしても、観客からすると一種の目新しさがあるのではないでしょうか。

本作は、なかなか第1次大戦映画としてみても秀逸でして、この時代を取り上げた作品としては、古典的な「西部戦線異状なし」とか、近年ですとスピルバーグ作品の「戦火の馬」などいくつかありますが、なかなか最新の映像技術を駆使して同大戦を再現している映画はありません。塹壕戦の悲惨な状況や、戦傷者の痛々しい姿、当時の最新兵器、たとえばドイツ軍のエーリヒ・タウベ戦闘機とか、マクデブルク級以後のクラスの軽巡洋艦、マキシム機関銃などなど、いかにも第1次大戦を思わせるアイテムが大量に登場します。

当時のドイツ軍の軍装もかなり正確で、将校と兵隊の制服の生地のクオリティーの差までしっかり見て取れます。連合軍側のスパイという設定の主人公(クリス・パイン)が敵のドイツ軍に潜入するシーンで、ドイツ軍パイロットの姿のときはエースという設定でプール・ル・メリート勲章をぶら下げて騎兵軍服を着ていたり、普通の軍服を着ているときはいわゆるヴァッフェンロック軍服をまとっていたり、と非常に芸が細かい。将校用のシルムミュッツェ(ツバ付き制帽)は上部にドイツ帝国、下部にプロイセン王国(もしくはその他の領邦国)を示すコカルド(円形章)を付け、下士官兵は同じ仕様だがツバのないミュッツェ(クレッチヒェン)を被っている、などしっかり時代考証しています。

今作の悪役はナチスではないので、それに代わるような人物として、実在のドイツ帝国陸軍・参謀本部次長(首席兵站総監)エーリヒ・ルーデンドルフ大将が登場します。ルーデンドルフの姿は、ちょっと軍服の襟の形状が第1次大戦期のものらしくなく、第2次大戦風なのと、将官用の襟章が第2次大戦期の「元帥用」らしいものを着けているのが減点ポイントですが(笑)なかなか雰囲気が出ています。襟元にプール・ル・メリート勲章と大十字鉄十字勲章、さらに黒鷲勲章の星章と、ホーエンツォレルン王室勲章らしきものの星章を帯びており、常装で礼装用のベルトを締めているのはご愛嬌ですが、実際にそういう例もあるのでまあいいでしょう。

しかしまあ、この映画でのヒンデンブルク元帥(参謀総長)とルーデンドルフ大将の描き方は、ちょっと問題が・・・。歴史に詳しい人、特にドイツ人が見たらどう思うのだろう、とはちょっと思いました。ルーデンドルフといえばやはり知将という印象。この映画に出てくるような粗暴な体力系武闘派というのとは違う感じがします。気に入らない部下を射殺するシーンまでありましたが、マフィアや蛮族じゃないのだから、ドイツ軍でそんな人殺しをしたら、いかに将軍だろうが参謀次長だろうが、即座に憲兵に逮捕されるのではないでしょうか。それに、2人とも戦後まで元気で活躍してくれないとその後のナチス政権が・・・おっと、このへんはネタバレなのでもう言いませんが、まあ基本的には娯楽作品の悪役ですからしょうがないのでしょうね。もっとも「史実のルーデンドルフ将軍」だとはそもそも断言していないので、パラレルワールドの同将軍ということなのでしょう。ただ、全体的に、やはりナチス・ドイツならともかく、ドイツ帝国軍をあんなに悪の軍団のように描いている点には、違和感があったのは事実です。

そういう点を除けば、第1次大戦映画としてシリアス作品から娯楽作品まで含めて最高レベルの映像表現になっていると思います。ヒーロー・アクションに全く興味がない方でも、戦史や軍装に興味がある方は必見の作品となっていると感じました。

 

時は現代。パリのルーブル美術館に「ウェイン財団」の車が到着します。財団の使者は、ここにいる美女ダイアナ(ガル・ガドット)に一枚の古い写真を渡します。それはバッドマンことブルース・ウェインから贈られた物で、第1次大戦中に撮影された乾板写真でした。そこに写っている若き日の自分と、すでに亡き仲間たちの姿を見て、ダイアナは物思いにふけっていきます・・・。

話は超古代に遡ります。世界を支配した神々の王ゼウスは、自分に仕える人間たちを創造します。人間へのゼウスの寵愛が厚いことを妬んだゼウスの息子、軍神アレスは人類に悪を吹き込み、堕落させます。それを見たゼウスは愛と勇気に満ちた女性だけの種族アマゾネスを創造し、戦乱に明け暮れる人類を救います。怒ったアレスは神々を戦争に巻き込み、アマゾン族を奴隷としてしまいます。やがて、アマゾンの女王ヒッポリタ(コニー・ニールセン)は妹のアンティオペ将軍(ロビン・ライト)と共に反乱軍を率いてアマゾンと人類を解放、アレスはゼウスに倒されます。しかしゼウスもアレスとの闘いで力尽き、地中海の人知れぬ海域にゼミッシラ島を作ると、アマゾンたちをそこに住まわせて世を去ります。それ以来、アマゾンたちは人類の歴史とかかわることなく、何千年もセミッシラ島に閉じこもってきました。ヒッポリタの手元には、ゼウスから授かった島でたった一人の子供ダイアナが残されました。

ヒッポリタはかつての戦乱の記憶を憎み、ダイアナが戦士となることを禁じていましたが、ダイアナは戦闘に興味を抱き、叔母であるアンティオペ将軍に密かに武術を習います。初めはそれに反対したヒッポリタですが、軍神アレスの復活を予期して、ダイアナを強い戦士に育てる方針に転じます。まもなくダイアナは、アンティオペもしのぐアマゾネス第一の最強戦士に成長します。

そんなある日、一機の戦闘機がセミッシラ島の沿海に墜落します。溺れかけていた操縦士を助けたダイアナは、初めて見る男性に動揺します。さらに、彼を追ってドイツ軍の巡洋艦が出現し、島の秘密を破ってドイツ兵が大挙、上陸してきます。いかに精強とはいえ、初めて見る銃や大砲などの近代兵器にアマゾン軍は苦戦し、激しい戦闘の中でアマゾン戦士もたくさん命を落としました。その中に叔母であり恩師でもあるアンティオペもいました。ダイアナは最初にやってきたパイロット、アメリカ陸軍航空隊出身で、現在は英国情報部で働く諜報員スティーヴ・トレバー大尉(クリス・パイン)から、外の世界では世界大戦が勃発していることを知り、軍神アレスが復活したことを確信します。スティーヴはドイツ軍のルーデンドルフ総監(ダニー・ヒューストン)が推進している最強の毒ガス開発計画を阻止するためにトルコの研究施設に忍び込み、天才女性科学者ドクター・マル(エレナ・アナヤ)の開発ノートを奪い取って飛行機で逃げる途中だったと言います。ダイアナは、自らが島を出てアレスを倒し、世界を平和に導こうと決意します。

初めは反対したヒッポリタも、ダイアナが外の世界に旅立つことを受け入れ、見送ってくれますが、「人間の世界はお前が救うに値しない」と言います。その言葉の意味はダイアナには分かりませんでしたが、深く心に刻まれました。

スティーヴの手引きでロンドンにやってきたダイアナですが、アマゾンの島で大らかに育った彼女に、女性差別の厳しい時代の英国は驚くべき事ばかり。議会に乗り込んでも女性に発言権はなく、軍の司令官たちも無責任で、あきれることばかりでした。しかし議会の大立者でスティーヴの上司であるサー・パトリック・モーガン(デヴィッド・シューリス)は、密かにスティーヴとダイアナを援助することにし、ベルギー戦線からドイツ軍の司令部に潜入し、ルーデンドルフとマル博士の計画を止める作戦を承認します。

スティーヴがこの作戦のために集めた面々は、モロッコ出身の詐欺師サミーア(サイード・クグマウイ)、飲んだくれのスコットランド出身の狙撃兵チャーリー(ユエン・ブレムナー)、アメリカ先住民で、故郷を捨てて欧州で武器取引をしている酋長(ユージン・ブレイブロック)と一癖ある者ばかり。最前線に達したダイアナは、そこで機関銃と大砲が血しぶきの嵐を巻き起こす凄惨な塹壕戦の現実を目にします。ルーデンドルフこそがアレス本人だと確信するダイアナと、あくまでも彼の毒ガス計画阻止を目的とするスティーヴの思惑は必ずしも一致しませんが、はたして彼らはこの大戦争を終結に導くことが出来るのでしょうか。

 

ということで、ダイアナ役のガル・ガドットはミス・イスラエルになったこともある極め付きの美人。まさにワンダーウーマンになるべくしてなった人で本当に魅力的です。そして本作では、スティーヴ役のクリス・パインがいい。「スター・トレック」シリーズのカーク船長でおなじみの彼ですが、今作は新たな代表作となったのではないでしょうか。激闘の中でダイアナに惹かれていく微妙に揺れる「男心」を見事に演じきっています。その他の配役も的確で、非常にいいですね。スティーヴの秘書エッタ役のルーシー・デイヴィスもいい味を出しています。2時間半とこの種の作品としては長尺ですが、いささかの緩みもなく、最後まで見事に引っ張る脚本も素晴らしいと思います。

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