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2017年6月24日 (土)

【映画評 感想】キング・アーサー

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 ガイ・リッチー監督の「キング・アーサー」
King Arthur: Legend of the Swordという映画を見ました。これまでロバート・ダウニーJr.を主演に据えた異色の「シャーロック・ホームズ」シリーズを成功させた同監督のこと、英国をはじめ欧米文化圏の人にとってはあまりにも有名な「アーサー王伝説」を、かなり自由に解釈した作品となっております。

これまでに何度も映像化されてきた題材で、近年で言っても、2004年の同名作品はクライブ・オーウェンと、当時まだ10代だったキーラ・ナイトレイの共演で話題を呼びました。それだけに、思い入れが強い海外のお客さんの間では、このガイ・リッチー版の個性の強い作風について賛否両論あったようです。

我々、日本人からしてみると、そもそもアーサー王は(モデルになった話はあるにしても)史実と言うよりファンタジーの題材であって、指輪物語やホビットと大差ないように思われるので、特に違和感なく見られるのではないかと思いました。ただ、それにしても、通常、流布している伝説では5~6世紀ぐらいが舞台の話であるのに、北欧のバイキングが現在の英国やフランスに攻め込んできた8~9世紀になっているとか、あの時代にはちょっと考えがたい東洋人の武術の名人がいるとか、というあたりはご愛嬌ですが、さらに設定面で、本来はアーサー王の父違いの義姉の息子、つまり甥(であると共に、実はアーサーと姉との不義の子)として登場し、最後に激しく対立する騎士モルドレッドが、敵の魔法使いとしていきなり出てくるとか、普通はアーサー本人以上に活躍する大魔術師マーリンがほとんど登場せず、その代わりに弟子を名乗る女魔術師が一人登場するだけとか、アーサーの祖父の逆臣として語られてきた王位簒奪(さんだつ)者ヴォーティガンが、今回は父の弟、つまり叔父さんであるがゆえに、話としてはむしろハムレットになってしまったとか・・・おそらくこのへんが、欧米の熱心なアーサー王ファンからは、あまりよく思われなかった点の一端かとも思います。

とはいうものの、先ほども申しましたが、そもそもアーサー王伝説自体が荒唐無稽といっていい話なので、ファンタジー好きの日本人の一人として、私などが虚心に見る限りに於いて、なかなか面白い作品になっていると思いました。上に挙げた変更点も、それで盛り上がっているとも見えますので、映画表現として否定するようなことでもないと感じます。ただ、聞いた話では、本当はマーリン役にイドリス・エルバを迎えたかったのだが、断られたために、マーリンの出番がほとんどなくなった、などと聞きますが、それが本当なら、ちょっとショボイ感じは否めませんね・・・。

 

ブリタニアの王であり、聖なる剣エクスカリバーの使い手ユーサー・ペンドラゴン(エリック・バナ)は、弟ヴォーティガン(ジュード・ロウ)や騎士ベティヴィア(ジャイモン・フンスー)らと力を合わせ、キャメロン城に攻め寄せた悪の魔術師モルドレッドを倒します。しかしその後、兄の存在を疎ましく思い始めたヴォーティガンは、邪悪な魔道の力を用いて兄夫妻を殺し、王冠を手に入れます。幼い王子アーサーは逃げ延び、ロンディウム(現在のロンドン)のスラムにある売春宿で孤児として育てられます。

それから年月が流れ、ヴォーティガン王は自らの野心のまま、国民を虐げ、巨大な魔術の塔を建造しています。しかし、その工事中に城の近くの湖が干上がり、湖底から、岩に刺さったまま抜けなくなっている聖剣エクスカリバーが発見されます。ヴォーティガンの悪政にうんざりしていた国民の間で、聖剣を岩から引き抜ける者こそ、真の国王であり、行方不明になっているアーサー王子だ、という噂が瞬く間に広がっていきます。

ヴォーティガンと手を組んで軍事力を提供する密約を結んだバイキングの指揮官グレービアード(ミカエル・パーシュブラント)と町でトラブルを起こしたアーサー(チャーリー・ハナム)は、捕らえられて聖剣のあるところへ連行されます。国中の若者がこの剣を岩から抜けるかどうか試すように、国王の命令が布告されていたのです。軍人トリガー(デヴィッド・ベッカム)が見守る中、アーサーは剣を握ります。周囲の人々が驚いたことにそれは岩から引き抜かれ、強烈なエネルギーを感じたアーサーは気絶してしまいます。

アーサーは、叔父であるヴォーティガンと対面します。当然ながら、その結論はアーサーを「偽物」として公開処刑する、というものでした。そのころ、反ヴォーティガン闘争を続けているベティヴィアの下を、一人の謎めいた女性(アストリッド・ベルジュ=フリスベ)が訪れます。彼女はただ、大魔術師マーリンの弟子メイジ(魔術師)と名乗り、ベティヴィアにアーサーを救い出し、協力するよう告げます。

ヴォーティガンの面前で、アーサーはメイジやベティヴィアの手により脱走に成功しますが、スラムで育ったアーサーには全く自覚がなく、暴君を倒すことにも、王位を継ぐことにも興味がない様子。そこでメイジはアーサーをダークランドに導きます。そこに行けば、アーサーは両親が命を落としたあの日、何が起こったかを思い出すはず。しかしその真実は、アーサーにとっては思い出したくない辛く悲しい記憶なのでした・・・。

 

というような展開ですが、ガイ・リッチー監督らしく、映像のフラッシュバックで前後の話を強引に進める手法があちこちに使われており、はっきり申して、おそらく予備知識がないとストーリーがよく分かりません。登場人物も多く、そのへんの取っつきにくさもやや敬遠された理由かな、という感じも抱きました。ただ、そういう実験的な手法はファンタジーと相性は悪くなく、むしろ世界観をよく表現しているという評価も出来そうです。このへんは好き嫌いが分かれるかもしれません。

「パシフィック・リム」や「クリムゾン・ピーク」で名を上げてきたチャーリー・ハナムとしては、170億円を超える予算の超大作に満を持しての登場、というところなのでしょうが、何かアーサー王としてのカリスマ性は弱い印象も受けました。アーサー王の話は、水戸黄門的なカタルシス、つまり、スラムで育ったけれど本当は王子、という貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)の要素がほしいところで、「実はすごい人だった」というのが前半の苦労と落差があるほど効果的なのですが、この作品のアーサーはずっと現代的な不良の兄チャン、という感じがして、そういう演出が新しいアーサー像ともいえるのでしょうが、ちょっと重みに欠ける感じはあります。

一方、ガイ・リッチー監督とは「ホームズ」のワトスン役で縁のあるジュード・ロウ。今回は悪役に徹して見事な存在感です。それから父ユーサーを演じたエリック・バナも久しぶりに「ブーリン家の姉妹」以来の王様役ですが、はまっています。この2人は、確かに王様に見えるのですけど、チャーリーのアーサーには最後まで、何かが「ない」んです。王者としてのオーラとか風格というものでしょうかね。

それからメイジという謎の役柄のベルジュ=フリスベは非常に味がある女優さんで、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の前作では人魚を演じて評判になりました。本作では、いかにも謎めいた背景がある魔術師という感じです。結局、この作品では何者か分からないままで終わってしまうのですが、後のアーサー王妃グイネビアにあたる人物のようでもあり、あるいはアーサーを悩ませる義姉であり魔女のモルガン・ルフェイのようでもあり、なんだかはっきりしませんね。またマギーという国王の侍女が出てきます。劇中ではかなり重要な役柄ですが、これを演じたアナベル・ウォーリスは、奇麗な女優さんです。この人、まもなく公開のトム・クルーズ主演映画「マミー」でも活躍しているそうです。

そして、今作で話題になったのが、あのサッカー選手デヴィッド・ベッカムの映画デビュー作だったということ。まあ、ちょい役なわけですが、けっこうセリフもあり、なかなか演技も悪くないようで、興味深いところです。

総括すれば、いろいろ分かりにくい面もあるのですが、ファンタジー作品としては秀逸な一作だと思います。元ネタに思い入れが薄い日本人が、先入観を持たず見れば、大いに楽しめる一級の娯楽作品だと思います。

 

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コメント

この監督の「シャーロック・ホームズ」が面白く感じなかったのですが、もしそうなら「キング・アーサー」も同じ感想になる可能性が高いですか?

投稿: 大福 | 2017年6月26日 (月) 22時47分

大福様 コメント有難うございます。

さて、ご質問に率直にお答えすれば、あくまで個人的な意見ですが・・・その可能性は高いかもしれません(!)。かなりこの監督の独特の個性が強い作風なので、ホームズに関しても「こんなのシャーロック・ホームズじゃない!」という拒絶反応の強い方も多かったと聞きますが、本作もそういう意味では違和感を持つ人は持たれるのでは、と思います。

投稿: 辻元よしふみ | 2017年6月26日 (月) 23時50分

ご回答ありがとうございます。確かカンフーのように闘うシャーロックに不快感を持ちました。こんなひどい作品がどうして続編があるのか不思議なくらいでした。映画は監督次第で、テンポが決まるのものなのでしょうか?

投稿: 大福 | 2017年6月27日 (火) 22時32分

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