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2017年3月25日 (土)

【映画評 感想】モアナと伝説の海

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 ディズニー・アニメ映画「モアナと伝説の海」
MOANAを見ました。この作品について、絵柄からほのぼのした作風を思い描いたら大間違い、「マッドマックス」の新作と「もののけ姫」を合わせたような感じで、非常に硬派な冒険アクション・ムービー、という映画評を読んだことがありますが、それは言い得て妙です。実際、ヒロインのモアナは強い使命感でミッションを果たし、自分の共同体を守ろうとするのですが、そのへんはむしろ「風の谷のナウシカ」も思い起こさせます。16歳の少女、ということもあってか王子様は登場せず、甘ちょろい恋愛話もなし。おふざけ的な展開もあまりなく、スケールの大きな海洋冒険物語となっております。

 「アナと雪の女王」はまずもって音楽のよさがヒットの要因となりましたが、今作も音楽が素晴らしいですね。主題歌「どこまでもHow Far I’ll Go」や挿入曲「俺のおかげさYou’re Welcome」は普通に発表してもヒット・シングルとなりそうな見事な曲です。

 今作の基本テーマは、メラネシアの人々がはるばる大洋を越えて、ポリネシアの島々に到達する歴史的な事実を取り上げる非常に野心的なものです。台湾に住んでいた祖先の人々は長い時間をかけ、メラネシアからミクロネシアの島々に移住していき、フィジーあたりまで進出していました。非常に高い航海技術を持っていたからで、西洋人が1516世紀にもなって「大航海時代」などと言いますが、アジアでは紀元前に海洋進出をしていたわけです。パンフレットによれば「しかし今から約三千年前、彼らの航海は突然停止した。そこから千年もの間、彼らは海を渡ることをやめ、他島への移住活動も行われなくなった―いくつかの説はあるものの、その正確な理由を知る者は誰ひとりいない。そして今から二千年前に航海が再開され、タヒチ、ハワイ、ニュージーランドなどの発見につながっていく」

 すなわち、このアジアの大航海時代「千年間の中断」はなんだったのか、を描いたのが本作。そして、モアナの冒険こそが「航海の再開」の契機となった、という描き方なわけです。なかなか壮大ですね。

 したがって本作の舞台は、二千年も前のメラネシアのどこかの島、ということで、地球の反対側ではローマ帝国が全盛期で、キリストが処刑されていたころ、太平洋ではこんな時代だった、ということです。時代考証を経た細かい服装や、髪の毛の描写など実に緻密で、CGアニメだからこそ手間がかかっています。そのへんはむしろ、実写の方が簡単ですものね。特に水にぬれた縮れ髪の描写が大変だった、といいます。また全編のほとんどで登場する海、波の描写も非常に苦労したそうです。途方もない人々の作業の成果が本作なのでしょう。

 

 1000年の昔、母なる女神テ・フィティの「心」を、変身の名人で、いたずら者の半神(デミゴッド)であるマウイ(声と歌=以下同じ:ドウェイン・ジョンソン)が奪い取りました。しかしそのために恐ろしい「闇」が生まれ、炎の悪魔テ・カァが出現。マウイはテ・カァに撃ち落とされ、テ・フィティの心も深海に沈んでしまいました。それから以後、闇は徐々に広がり、島々に栄えた文明は一つ、また一つと衰退して消えていきました。人々は闇の襲来を恐れるようになり、遠洋航海をやめ、それぞれの島に閉じこもって暮らすようになりました・・・。

 それから1000年の後、楽園の島モトゥヌイの族長トゥイ(テムエラ・モリソン)とその妻シーナ(ニコール・シャージンガー)の一人娘、モアナ(アウリィ・カルバーリョ)は、小さいころから海で遊ぶのが大好き。ある日、人格のある「海」が幼いモアナに渡そうとしたのは、あの「テ・フィティの心」でした。

 しかし、外洋に一歩も出ない島の掟に凝り固まっているトゥイは、モアナが海に関心を持つことを許さず、族長の後継者として育てようとします。ただ一人、モアナの祖母でトゥイの母であるタラ(レイチェル・ハウス)だけはモアナの理解者で、モアナに「自分の心の声に従って生きなさい」と諭します。

やがて大きくなり、未来の族長としての自覚に目覚めたモアナは、もう海に出ようとはしませんでした。それをトゥイは喜びますが、ある日、突然、異変が訪れます。島の作物が育たなくなり、魚も一匹も取れなくなる異常事態が発生し、大騒動になります。「闇」がついにモトゥヌイにも迫ってきたのです。外洋に出ようと進言するモアナをトゥイは一蹴し、独断で海に出たモアナはたちまち嵐に遭い、海の恐ろしさを思い知ります。絶望したモアナにタラは、モトゥヌイの一族の秘密を教えます。すなわち、先祖たちは初めからこの島にいたのではない、はるか彼方の土地から船に乗って移住してきた旅人だったのだ、と。

そうこうするうち、タラは倒れてしまいます。タラは最後の力を振り絞り、モアナに「お前は海に選ばれた」と告げ、とっておいた「テ・フィティの心」をモアナに託して、冒険に出るように促して、この世を去ります。

こうしてモアナは、たまたま船に乗った鶏のヘイヘイと共に、遠くマウイが幽閉されている島を目指します。モアナが本当に「海に選ばれた」者ならば、テ・カァとの戦いに敗れて、神から授かった魔法の釣り針を失い、変身能力を喪失しているマウイを復活させ、その助けを借りて「テ・フィティの心」を元に戻さなければなりません。

苦労の末にモアナが出会ったマウイは、話に聞いていた英雄的な半神とはほど遠く、お調子者でナルシスト気味の相当に自己中心的なヤツで、自分が問題の原因を作ったにもかかわらず、何の責任感も感じていない様子。ココナッツの海賊カカモラたちの襲撃を、マウイと協力して退けた後、モアナは釣り針を手に入れて、華々しい英雄として復活するようマウイを説き伏せ、マウイもモアナの熱意に根負けして、ようやくその気になります。

しかし、その釣り針は深海の魔物の国ラロタイを治める巨大なカニの化け物、タマトア(ジェマイン・クレメント)が所持しており、取り戻すと言っても容易なことではありません。マウイの復活と、テ・カァとの決戦はいかに。そして世界を飲み込もうとする闇の襲来を、モアナは防ぐことができるのでしょうか。

 

ということで、実際にヒロインと同年齢のアウリィ・カルバーリョの歌声が実に素晴らしいです。そして、もう一人の主人公マウイを演じているのは、プロレスラー「ロック」として有名なドゥエイン・ジョンソン。彼が主演した「スコーピオン・キング」がヒットしましたし、「ワイルド・スピード」や「ヘラクレス」にも出ていますね。今回は頼りがいがあるのかないのか、つかみどころのない英雄の役なのですが、非常にはまっています。それもそのはず、実はジョンソンの祖父はサモア系で、太平洋諸島の人々に崇められている英雄マウイは、彼にとっても子供のころから憧れの存在だったそうです。思い入れが深い役をゲットしたのですね。

ミュージカル的な演出で感動させるパートと、豪快なアクション・シーンが交互に繰り出されて、最後まで畳み込まれる快作でした。日本では春休みの公開で、子供向けのような扱いになりがちですが、それで見過ごしてはもったいない一作だと思います。

なお、本作は最後の最後に追加シーンがあるので、慌ててお帰りにならないように。また、冒頭におまけ的な短編映画「インナー・ワーキング」という作品が5分ほどあります。こちらは内容的に、本編となんの関係もないのですが、これがまたなかなか秀逸です。

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2017年3月21日 (火)

『洋外紀略』(安積艮斎)現代語訳が刊行されました!

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このたび、明徳出版社から『洋外紀略』(安積艮斉)が刊行されました。原書は幕末期に活躍した大学者、安積艮斉(あさか・ごんさい)が書いた本です。安積艮斉はこの時期で最も影響力のあった学者で、弟子には三菱グループの創始者・岩崎弥太郎、悲劇の幕臣として有名な小栗上野介、新選組の原型を組織した清河八郎、そしてあの吉田松陰など錚々たる人たちがいます。さらに、その松陰の門下生に高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋、品川弥二郎らがいたわけで、いわば幕末の志士たちのゴッドファーザーのような人物です。

その艮斉さんが、当時としては異色の、海外諸国の事情を詳細にまとめ、国防の重要性を説いた一冊です。江戸にいてナポレオン戦争のこともアヘン戦争の経過も把握していた艮斉先生はすごい! 本書の名は森鴎外の代表作『渋江抽斉』にも出てくるぐらいで、当時において著名な本だったのですが、このほど、その艮斉さんの一族の末裔である安藤智重さんが原書の漢文を読み下し、現代語訳を完成させた次第です。大変な偉業です。

 なお、わたくしは僭越ながら帯文を書いております。こんな感じです。

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「試みに鶏卵を机に卓(た)てんことを請う」

艮斎さんは、ナポレオンもピョートル大帝も、「コロンブスの卵」の話までも、知っていた。黒船が来航する前、もう世界を見通していた日本人が、幕末の江戸にいたのである! 

戦史・軍装史研究家 辻元よしふみ

 

 本書には、あのコロンブスの有名な「卵を立てる」逸話も紹介されております。幕末においてこんなことまで知っていた人がいた。驚きですね。

 

【基本データ】

『洋外紀略』(ようがい・きりゃく)安積艮斎 安藤智重 訳注 村山吉廣 監修 定価 2,916 (本体2,700 +) ISBN 978-4-89619-946-8 発売日 2017/03

 

 

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2017年3月18日 (土)

【映画評 感想】アサシン・クリード

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 映画「アサシン・クリード」
ASSASSIN’S CREEDを見ました。ドイツ出身の人気俳優マイケル・ファスベンダーの主演作で、共演はフランスを代表する女優マリオン・コティヤール。またジャスティン・カーゼル監督は、同じ2人が主演した2015年の話題作「マクベス」の監督でもありました。

 この映画の元となったのは、フランスのゲーム会社UBIの代表作「アサシン」シリーズです。大ヒットゲームの映画化、というのは時々ありますが、やはりゲームと映画は異なる媒体なので、そのまま移植するわけにはいきません。

 ゲームの方は、人類の起源に異星人なのか超古代文明人なのか、とにかくいわゆる「神」のような存在が関わった、というのが前提の世界観になっております。そして、その「神」が残した情報をめぐり、古代から数千年の長きにわたり二つの秘密結社が抗争を続けており、その一方が人類を統制支配しようとする「テンプル騎士団」、もう一つが人類の自由意思を守ろうとする「アサシン教団」である、という設定です。

 この両者の戦いは現代にまで及んでいるのですが、テンプル騎士団が20世紀初めに創設したアブスターゴ財団が先端科学技術アニムスを開発し、遺伝子情報の中に残された先祖の記憶を再体験できるようになります。その結果、アサシン教団の戦士の子孫が、十字軍時代のエルサレム、ルネサンス期のフィレンツェ、産業革命期のロンドンに潜入し、先祖と一体となって歴史に介入し、現代の問題を解決していく、というのがゲームの基本的な話です。

 もちろん歴史上、実在したテンプル騎士団、暗殺(アサシン)教団をモデルとしているわけですが、史実とは関係なく、あくまでもゲーム独自の解釈になっているわけです。

 それで、今回の映画化では、上記の基本設定はそのままに、従来のゲームで登場したエルサレムやフィレンツェを選択せず、新たに15世紀末のスペインを舞台としています。つまりキリスト教勢力によるレコンキスタが成功して、最後のイスラム国家グラナダ王国(あのアルハンブラ宮殿で有名ですね。宮殿のシーンは映画でも登場します)が陥落、イスラム勢力が欧州から去り、スペイン王国が成立した頃、そしてまもなくスペインのイザベル女王の後援を得て、コロンブスが新大陸に出発する時期を舞台としています。

 

 1491年、スペインで暗躍したアサシン教団の戦士、アギラール(マイケル・ファスベンダー)は、同僚の女戦士マリア(マリアーヌ・ラベド)と共に重要な任務を遂行していました。グラナダ王国の最後の君主ムハンマド12世(カリード・アブダーラ)の幼い王子が、スペイン国王の側近でテンプル騎士でもある異端審問長官トルケマダ(バビエル・グティエレス)に捕えられ、ムハンマドが所持している古代の秘宝で、それを所持することで全人類を支配できる「エデンの果実」がトルケマダ、ひいてはテンプル騎士団の手に渡ることを防ぐ、というのがその任務でした・・・。

 それから500年後。1988年のメキシコ・バハで、少年カラムはある日、父親が母親を殺害し、さらに謎の勢力に逮捕される光景を目にします。その場を命からがら脱出したカラムは、さらに30年後の2016年、中年の犯罪者となってアメリカの刑務所にいます。

 誕生日のその日、殺人犯カラム(ファスベンダー)は死刑の執行を迎えます。薬物を注射され、最期の瞬間を迎えた・・・と思った次の瞬間、自分はまだ死んでおらず、病院のようなところで蘇生したことに気付きます。その場にいたソフィア(マリオン・コティヤール)は、ここがアブスターゴ財団の施設であることを告げ、彼に祖先の記憶に退行する装置アニムスを取り付けます。この15世紀の世界を体験する実験の結果、カラムは間違いなくアサシン教団のアギラールの子孫であることがはっきりします。

カラムの体力の限界を迎え、ソフィアはそれ以上の実験を性急に続けることに反対しますが、アギラールはエデンの果実を手にした最後の人物、とされており、それを手に入れることに執着する財団の総裁でソフィアの父、アラン(ジェレミー・アイアンズ)は、アギラールがトルケマダの一派に捕えられ、火刑に処せられたとされる日付の歴史を再現することをソフィアに急がせます。というのも、アランは実は現代に続くテンプル騎士の一人であり、騎士団総長ケイ(シャーロット・ランプリング)から、まもなく開催される騎士団総会までに成果が出ない場合、財団への財政支出を打ち切る、と通告されていたのです。

一方、カラムは施設内に、かつて母を殺して姿を消した父ジョセフ(ブレンダン・グリーソン)がいることをアランから告げられます。30年ぶりに再会した父から、カラムはあの日の真相を聞かされます・・・。

 

ということで、トルケマダやムハンマド12世など、歴史上に実在した人物と架空の人物が入り乱れる歴史ファンタジーですが、馬に乗ったり弓を射たり、独特のアサシン・ブレードで戦ったり、とファスベンダーとしても今までで最もトレーニングが厳しかった映画だったそうです。アクションシーンがゲームそのままで再現されます。

当然、スタントの人たちも大活躍で、特にゲーム版での特徴だった、ワシのように高いところから飛び降りるイーグル・ダイブの再現ではデジタル技術は使わず、本当にダミアン・ウォルターズという人が37メートルもの高さから降下して撮影しているそうで、まさにド迫力です。

「マクベス」以来の共演であるコティヤールも、今回は冷静な科学者、という役どころですが、ファスベンダーとは息もぴったり、いい演技をしています。アイアンズとランプリングという2人の大物も抜かりがないです。特に70年代に「愛の嵐」で一世を風靡したランプリングも今や71歳ですが、相変わらずの美しさです。また、父ジョセフ役のブレンダン・グリーソンはハリー・ポッター・シリーズや「オール・ユー・ニード・イズ・キル」にも出ていたベテラン俳優ですが、スター・ウォーズのエピソード7や「レヴェナント」に出演して知名度を上げているドーナル・グリーソンのお父さんだそうですね。

しかし今作で注目なのは、やはり15世紀スペインのシーケンスでして、物語の大半を占める15世紀のストーリーでは、登場人物は皆、よくハリウッド作品でありがちな、なんとなく英語にしてしまうということはなく、スペイン語で押し通しております。素晴らしいですね。こちらでなんといっても光っていたのが、アギラールの仲間でおそらく愛し合ってもいる女戦士マリア役のマリアーヌ・ラベドという人。とにかくこの役柄にぴったりのミステリアスな美女ですが、経歴を調べてみるとスペインの人じゃなくて、ギリシャ系のフランスの女優さんだそうですね。イーサン・ホーク主演の2013年の映画「ビフォア・ミッドナイト」あたりがハリウッド・デビューで、近年、急速に評価が高まっている人だとか。このへんからぐっと出てくるかもしれませんね。

とにかく全編がゴージャスかつ奇抜な映像で埋め尽くされ、ゲームのファンもそうでない人も十分に楽しめる一作でしょう。なんとなくラストは今後も続きそうな感じで終わります。続編でさらに、別の時代を取り上げてくれると嬉しいですね。

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2017年3月17日 (金)

「武具繚乱 関谷弘道氏甲冑コレクション展」(板橋区立資料館)

 先日、板橋区立郷土資料館http://www.k5.dion.ne.jp/~kyoudo/まで足を運びました。現在、同館で開催中の「特別展 武具繚乱 関谷弘道氏甲冑刀剣類コレクションを中心に」を見るためです。

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 数年前に亡くなった甲冑コレクター、関谷氏が同館に寄贈した主に江戸期の甲冑の展覧会なのですが、さすがに
20領を超える甲冑が並ぶさまは壮観です。鎌倉~南北朝期の大鎧や胴丸はすでに国宝級、室町~桃山期の戦国甲冑も今では博物館級となり、現在、一般の骨董市場などで売買されているのは、もはや実際には戦争が行われていない江戸時代に製作された、実用というより財産、贈答品、展示品として作られた甲冑なのですが、それも年々、海外などに流出し、おそらく10年もしたら多くの物が散逸してしまうだろう、と言われています。Photo_2


 それを危惧した関谷氏は、私財を投じて膨大な江戸期の甲冑を収集したもので、しかし江戸期のこうした遺物は研究が進んでおらず(いまだ売買の対象物で、学者の研究対象になっていないのでしょう)それゆえに、それぞれの甲冑の出自・由来についても、不明瞭なのですが、それが逆に非常に興味深いです。本展の主要な展示物の一つである、長州藩家老・福原家所用の具足と思われる一品も、福原家の定紋ではない卍型の家紋が描かれた佩楯の由来がはっきりせず、その謎解きとして関連の古文書などが展示されており、こうした地道な研究が必要なのだな、と理解できる展覧会です。Photo_3


 ほかにも彦根藩・井伊家の赤備えの甲冑だとか、土佐藩の上士が幕末になって製作させたらしい非常に珍しい具足とか、さらに足軽用の「御貸具足」とか、骨董としての市場価値はよく分かりませんが、今後、史料性が増していくことが確実なものが多数、展示されています。

 展示品をフルカラーでまとめた95ページもある豪華図録(しかも写真資料のPDFデータをディスクに入れたものまで付属!)が、たった1000円で販売されています。これだけで大変な値打ちものです。公立の資料館でなければ、あり得ない価格設定でしょう。この図録は通信販売もしているので、ご興味のある方は同館のサイトをチェックしてください。Photo_4


 同展は3月26日まで。月曜休館。午前9時半~午後5時(入館は4時半まで)。入場無料です。同館の最寄駅は西高島平駅ですが、この駅ではタクシーはつかまえにくく、歩くとしてもかなりアクセス的には遠いので、高島平駅か成増駅からタクシーで行かれることをお薦めします(成増駅からはタクシーで810円でした)。

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2017年3月13日 (月)

ホワイトデーにドイツ軍御用達チョコ「ショカコーラ」はいかが?

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 ホワイトデーという時節柄、今回はドイツのチョコレート「ショカ・コーラ
Scho-Ka-Kola」なんていかがでしょう? これは1930年代から販売されています。コーラの実を混ぜ、通常のチョコレートよりもカフェインが増量されており、このチョコを食べるとすっきり目が覚める、という優れもの。商品名は「ショコラーデ(チョコレート)」と「カカオ」と「コーラ」をつないだようですが、19世紀末から存在したアメリカの飲料「コカ・コーラ」をもじった要素もあるのじゃないか、とは思われます。2


 このショカ・コーラは1936年のベルリン五輪で大会公式スポーツ食品として大人気を得まして、その後、ドイツ軍に納入され、戦時中にドイツ空軍のパイロットとか、潜水艦(Uボート)の乗組員、戦車兵といった「きつい任務」の兵士たちに公式食料として支給された「軍用チョコレート」でもあります。たとえば夜の当直勤務などで、眠気覚ましに支給されたわけですね。戦前や戦中のものは、パッケージにドイツ軍の鷲の紋章とか、柏葉のデザインなどが施されたものがあったようです。

 それで、戦後もずっと作られているわけで、日本でもKALDIコーヒーで販売しております。さすがにチョコ好きのドイツ人の作る物。そもそもチョコとして非常においしいです。そして、食べると確かにすっきり、目が覚める感じがします。コーヒーを飲みたいところだけれど時間がない、というような場合に非常にいいですね。

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2017年3月 6日 (月)

中西立太先生の名作『壮烈! ドイツ機甲軍団』が復刊!

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 すでに手に取られた方も多いと思いますが、リクエストにこたえて過去の名著を復刊する「復刊ドットコム」により、1975年に刊行された中西立太先生の名作『壮烈! ドイツ機甲軍団』が現代に蘇りました。私も小学生当時、この本を読んで、ミリタリーの世界に興味を持った一人です。そして、今ではその影響で『軍装・服飾史カラー図鑑』とか『軍服の歴史5000年』とかの本を自分で書いているわけです。まさに中西先生のこの本こそ私の活動の原点です。20170306021921



 中西先生ご本人から伺った話ですが、この『壮烈! ドイツ機甲軍団』は当時、韓国語版の話があり、原画一式を韓国の会社に貸したところ、そのまま立ち消えとなって原画もすべて返ってこなかったので、もう再販は出来ないんです、と仰っていました。今回は、今日まで現存していた本からデジタル技術で復刻したものと思いますが、本当によくやっていただきました! 中西先生はすでに亡くなられていますが、きっとこの復刊を喜んでおられると思います。

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2017年3月 4日 (土)

週刊ダイヤモンドに遠山周平先生の『軍装・服飾史カラー図鑑』書評が載りました。

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 発売中の「週刊ダイヤモンド」2017年3月4日号(ダイヤモンド社)の109ページ、ブックレビューBook Reviewsにて、服飾評論家の遠山周平先生が、私ども(辻元よしふみ著、辻元玲子・画)の『軍装・服飾史カラー図鑑』(イカロス出版)をご紹介くださいました。
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 「軍装史に関しては日本の第一人者といえる夫妻が3年半の歳月をかけて著した『軍装・服飾史カラー図鑑』は、どのページも眺めているだけで楽しく、また新しい発見がある。ディテールや後ろ姿まできちんと描き込まれた図版と適切な解説文によって、ネクタイ、ドレスシャツ、ジャケット、ボタン、カフリンクスの起源が軍服にあることを知ることができる。デザイナーや服飾関係者が座右に置くべき名資料となろう」という評をたまわりました。遠山先生、ありがとうございました。

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2017年3月 2日 (木)

【映画評 感想】ラ・ラ・ランド

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話題のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」
La La Landを見ました。先月末に発表された米アカデミー賞で13部門14ノミネート(あの「タイタニック」と並ぶ史上タイ記録)され、主演女優賞のエマ・ストーン、監督賞のディミアン・チャゼルなど6部門を制する快挙を成し遂げました。なお、私が見た千葉県市川市のTOHOシネマでは、パンフレットが売り切れとなっておりました。

前作「セッション」で一躍、有名になったチャゼル監督ですが、本当に作りたいのは実は、ミュージカルだ、といって奮闘した結果が今回の大成功。アカデミー監督賞受賞者としては32歳という史上最年少となりました。ちなみに、これまでの最年少者は1931年に第4回アカデミー賞で監督賞を受けたノーマン・タウログ監督。同じ32歳でしたが、チャゼル監督の方が数か月、若いとか。このタウログ監督もチャゼル監督と同様、音楽映画が得意な人で、特に60年代のエルヴィス・プレスリー主演の映画、たとえば「GIブルース」「ブルー・ハワイ」などは、この人が手がけたことで知られています。

ということで、最年少で受賞と聞くと、さぞかしトントン拍子のスピード出世、という監督なのかと思ってしまいますが、実は決してラッキーなだけの人ではなく、若いころにはジャズ・ミュージシャンを目指して挫折。その後は名門ハーバード大学に進み、映画の脚本を書くようになったけれど、あくまでも頼まれ仕事ばかり。そうした苦い経験をもとに自分で書いた脚本を売り込んで「セッション」の成功をつかみ、さらに「今時、ミュージカル?」という疑問の声を抑えて、執念でこの作品を作ったということで、かなり根性の人です。確かに、「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」のように、すでに舞台でヒットして定評のあるミュージカル作品の映画化は近年でも珍しくありませんが、映画オリジナル脚本のミュージカル、というのは非常にまれです。

なお、本作はオペラのようにあらゆるセリフを楽曲にしている作品ではなく、普通のストレートな芝居のパートと、音楽のパートが交差する作品ですが、この辺が実に巧妙に使い分けされています。厳しい現実を描く通常のパートと、夢の世界を描くファンタジックなミュージカル・パート、というのが意識して配置されており、これが最後まで効果的です。

本作は、夢をつかもうと悪戦苦闘する売れない女優と、世間に才能が理解されないジャズ・ピアニストの姿が描かれますが、このへんも監督自身の下積み経験がにじみ出ているように思われます。「それでも、いつかは自分の夢をかなえたい」と思って奮闘している人すべてへの応援歌のような素晴らしい作品ですね。また、主演のエマ・ストーンも「アメイジング・スパイダーマン」で注目されるまでは苦しいオーディション巡りの日々だったそうで、その経験も大いに役作りに反映しているように見えます。本作は当初、あのエマ・ワトソンがヒロインという案もあったそうですが、結果から見てエマ・ストーンで正解だったように感じます。そういえばエマ・ストーンの方は、ギレルモ・デルトロ監督の「クリムゾン・ピーク」を主演する予定だったものを降板したことがありました。あちらはミア・ワシコウスカで正解だったように思われます。まあ、こういう役者と監督、作品の出会いも運命的なものといえますね。

ところでこの映画、恋愛ドラマとしてみると、けっこう切ない内容でもあります。全体に映像作りや音楽、色彩、衣装など、現代を扱っていながらどこか古き良き時代のノスタルジーを掻き立てる作品でもあり、あの名作ミュージカル映画「シェルブールの雨傘」にどこか似ている、という声が、見た人から上がっているそうですが、最後まで見るとそのわけが分かります。季節ごとに話が移ろう構成とか、ミアが書いた一人芝居の脚本での役名が「ジュヌヴィエーブ」であるとか、何よりラストシーンの後味が非常に似ているのです。そして、なるほど、人生とは、いたるところで分岐点があり、そこで自覚的に動けた人が夢に近づいていけるのかもしれない。しかしまた、そこで何かを犠牲にしてしまうかもしれない。いろいろなことを考えさせられる作品です。ディミアン・チャゼル監督、後生おそるべし。32歳にして人生、ここまで達観できているとは・・・。

言うまでもないですが、アカデミー作曲賞、主題歌賞をとった音楽が本当に素晴らしい! 全英、全米のヒットチャートでそれぞれ1位、2位となっているそうで、これは映画サントラ盤として、やはりミュージカル映画の傑作「レ・ミゼラブル」以来のヒットです。あえていって今時、はやりの映画音楽然としたスコアからすれば、非常にキャッチーで耳につく旋律は、それこそ「シェルブールの雨傘」などの時代の作品を想わせますが、それが実に素晴らしく、感動的です。また、挿入曲としてジャズの名曲が登場するのはもちろん、冒頭のチャイコフスキー「1812年」に始まり、往年のahaのヒット曲「テイク・オン・ミー」やら、セロニアス・モンクが編曲したジャズ・バージョンで、日本の滝廉太郎の曲まで使用しており、エンドクレジットで紹介しているので、いろいろ注目です。さらに、グラミー賞歌手のジョン・レジェンドがミュージシャン役で出演しており、「スタート・ア・ファイアStart A Fire」という曲を熱唱しています。これがまた、作品内では、主人公が正統派ジャズではない曲を不本意に演奏させられている、というシーンであるにもかかわらず、非常に名曲でカッコいいです。

作品の最初の部分、実際に高速道路を借りて、渋滞する車の屋根に上ってテーマ曲を歌う群衆、というシーンに度肝を抜かれます。あのつかみ方で、監督の才能がいきなり垣間見えますね。それから、ほかに驚くべき点として、ピアニスト役のライアン・ゴズリングはすべてのシーンでピアノを実際に弾いているそうで、ほんの3か月ほどの特訓であれを弾いているとは、恐るべき努力と才能です。また、ゴズリングもストーンも、演技を撮影しながら実際に歌って生録りを敢行したそうで、これは「レ・ミゼラブル」でも行われた手法ですが、事前に録音した音に口パクするのとはわけがちがいます。事実上、舞台でライブを見るような臨場感ですが、当然ながら出演者は大変です。まあ、今年はちょっとトランプ大統領がらみで政治的な側面も見え隠れしたアカデミー賞でしたが、ああいう背景がなければ、本作はもっと受賞数を増やしたのではないかと、その点が残念に感じます。

 

高速道路の渋滞の中、オーディションのセリフ覚えで夢中な下積み女優のミア(エマ・ストーン)の愛車プリウスを、売れないジャズ・ピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)のオープンカーが追い抜きます。「何よ、感じの悪いやつね」。2人の出会いは最低でした。

ミアはカフェでアルバイトしながら、映画やテレビドラマのオーディションを受けては落選の連続。その日もオーディションを受けて手応えなしで、同じ女優志望のケイトリン(ソノヤ・ミズノ)らと、業界の関係者にコネを作るためパーティーに乗り込みますが、脚本家を自称する男グレッグ(フィン・ウィトロック)にしつこく言い寄られた以外、収穫なし。おまけに愛車を駐車違反で警察に移動され、失意のまま徒歩で帰宅することに。しかしそんな中、素晴らしいピアノの音が聞こえてきます。ふと通りすがりの店に立ち寄ると、演奏していたのはセブでした。

一方のセブは、姉ローラ(ローズマリー・デウィット)から「堅実な仕事に就きなさい」と諌められながら、ジャズ専門の店を開くという夢を諦めきれません。年末のその時期、クリスマス・ソングを弾くように店のオーナー、ビル(JK・シモンズ)に命じられていたのに、勝手に自分の好きな曲を弾いたことで、その場で解雇。ミアは「あなたの演奏に感動した」と近寄りますが、セブはふてくされて彼女を無視し、店を出て行ってしまいます。こうして、2人の偶然の再会も最悪なものでした。

ところがしばらく後、ある野外パーティーで演奏しているコピーバンドに目を留めたミアは、キーボードを弾いているのがセブだと気付きます。この会場でも、グレッグにつきまとわれていたミアは、セブに友人の振りをしてもらい、2人で会場を抜け出します。

ここまで、ずっと好感度ゼロでありながら、偶然の出会いが何度も続いたことで、急速に感情が高まっていくミアとセブ。お互いに売れない女優とピアニストである身の上で、夢を語り合ううちに意気投合していき、すぐに愛し合うようになります。

だが、そのままでは現実は何も変わりません。己が信奉する純粋なジャズだけを演奏する店を開きたいと考えるセブは、資金を貯めるために、旧友のキース(ジョン・レジェンド)が結成した新しいR&B系のバンドに参加。初めは乗り気ではなかったものの、このバンドが思いがけない成功を収めてしまい、長いツアーに出ることになります。ミアの方も、自分で脚本を書いた独り芝居を自費で上演し、一世一代の大勝負に出ようとします。こうして、徐々に2人の進む道は離れていきます・・・。

 

「セッション」のJK・シモンズが、チョイ役ながら顔を出しているのが嬉しいですね。それから、ヒロインの友人役のソノヤ・ミズノは東京生まれの日系英国人で、これまではモデル業中心でしたが(ユニクロの広告などでも活躍していました)本作が大注目となったので、映画界での活動も増えてきそうです。エマ・ワトソン主演で間もなく公開の実写版「美女と野獣」にも出演しているとのことです。

ということで、この作品は映画館で見るべき一作だと思いました。もちろん、このような話題作は遠からずDVDになり、テレビでも放映するでしょうが、これほど計算されつくした映像と音楽を味わうには、テレビではいかにももったいないですね。

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