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2017年2月24日 (金)

【映画評 感想】ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

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「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」
Miss Peregrine's Home for Peculiar Childrenという映画を見ました。ティム・バートン監督の新作です。なんというか、X-Menとハリー・ポッターとメリー・ポピンズを足して、そこにタイム・ループもの(特定の同じ時間を何度も繰り返す)の要素を加えた、という感じの非常に独特の世界観です。話の内容的に、映像化がかなり難しそうなものなのですが、随所に工夫が凝らされており、映画として非常に面白いと思います。タイム・ループものでは、少し前の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」などもありましたが、今回はダーク・ファンタジーとしての持ち味と、SF的な設定の融合が興味深いです。

 原作は2011年に発表されてベストセラーとなったアメリカの小説で、大筋はそのままなのですが、映画化に当たってかなり変更している点もあるそうです。現代のアメリカと、第二次大戦中の英国ウェールズが主要な舞台となります。その時代設定が原作とはちょっとずれているのですが(原作では1940年、映画では1943年)、ラストシーンの設定のための変更らしく、なかなかよく考えられております。

 

 2016年、アメリカ・フロリダに住むジェイク(エイサ・バターフィールド)は、周囲となじめない16歳の孤独な少年です。学校では友達もできず、家庭では両親とも疎遠。祖父エイブ(テレンス・スタンプ)に育てられたおじいちゃん子のジェイクは、ある日、祖父の身に異変が起きたことを知って、アルバイト先の上司シェリー(オーラン・ジョーンズ)と共にエイブの家に駆けつけます。

 家は荒らされ、エイブは両目をくりぬかれて瀕死の状態で倒れていました。彼はジェイクに、ウェールズのケインホルム島に行き、孤児院の管理人ミス・ペレグリンに会うように言い残して死亡します。その場で、腕の長い不気味な化け物の姿を見たジェイクは、拳銃を携帯していたシェリーに射撃するように言いますが、シェリーには化け物の姿は見えず、銃弾も命中しませんでした。

祖父の無残な死にショックを受けたジェイクは、両親の勧めで精神科医のゴラン医師(アリソン・ジャニー)の診療を受けることになりますが、もともと、浮世離れしたおとぎ話のようなことばかり語るエイブと、そのエイブに育てられたジェイクの正気を疑っていたジェイクの父親フランク(クリス・オダウド)は、今回の件でもエイブの言うことなど真に受けるはずがありません。やがてジェイクの誕生日に、叔母スージー(ジェニファー・ジャラッカス)からエイブの形見の詩集を渡されたジェイクは、その中に挟まれていた書簡から、祖父エイブが実際にケインホルム島のミス・ペレグリンと最近まで交流していた事実を知ります。

第二次大戦中に、エイブはミス・ペレグリンが管理するケインホルム島の孤児院で、奇妙な子供たちと生活していた、と聞かされて育ったジェイクは、それまでその話を作り話だと思っていましたが、それが実話であるかもしれないと思い立ち、ウェールズに行くことにします。意外なことに、現地に行って現実と空想の整理をすることは、精神的に良いことだ、とゴラン医師も後押ししたため、父フランクと共にジェイクはケインホルム島に渡ることになります。

島で、口実を付けてフランクと別行動をとったジェイクは、地元の少年たちの案内で孤児院の廃墟にたどり着きます。そこは大戦下の1943年9月3日に、ドイツ空軍の爆撃で破壊されたのですが、やがてそこで、かつてエイブから聞いていた奇妙な子供たち――空気より軽い少女エマ(エラ・パーネル)や、手から炎を発するオリーヴ(ローレン・マクロスティ)、透明人間のミラード(キャメロン・キング)といった人物に実際に会うことになり、1943年の世界に行き着きます。孤児院は爆撃前の姿で立っており、ジェイクを出迎えたのは学院長ミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)でした。超能力を持つ奇妙な子供たちを世間から隔離するために、安全な一日を選んで「ループ」を作るのが、ペレグリンのような鳥に変身できる種族「インブリン」の仕事であり、1943年9月3日を数えきれないほど長い年月、繰り返しているというのです。ドイツ軍爆撃機の爆弾が直撃する直前で、前の日に戻る・・・永遠に続く9月3日。しかしそれは、単に世間の人とドイツ軍から子供たちを守るだけではなく、もっと別の脅威からも守る秘密がミス・ペレグリンにはあるようです。祖父エイブが異常な死に方をした、と聞いたペレグリンと子供たちに緊張が走ります。

やがて、ジェイクは奇妙な子供たちを狙う恐怖の敵バロン(サミュエル・L・ジャクソン)の存在を知り、祖父の死にそのバロンと、彼が従える化け物ホローガストが関わっていた事実を知ります。近隣のループ地ブラックプールがバロンたちに襲撃され、管理人ミス・アヴォセット(ジュディ・デンチ)が負傷して逃れてくると、事態は緊迫化。さらに、親しくなったエマから「普通の人はループの世界に入れない」と聞かされたジェイクは、自分も「奇妙な子供たち」の一人であり、特殊な能力を持っていること、祖父エイブもそうであったことを悟りますが・・・。

 

ということで、物語は思いがけない方向に急速に動いていきますが、相当に複雑なお話を力技でまとめ上げている感じ。さすがティム・バートンなのですが、しかし、案外にティム・バートン臭さはない感じもします。そこはやはり、今回は常連ジョニー・デップが出ていないからでしょうか。

エヴァ・グリーンが何と言ってもはまり役です。尋常でない人物像ですので、このぐらい存在感がある人でないと全く務まらないでしょう。現在19歳のエイサ・バターフィールドは「縞模様のパジャマの少年」で見出された逸材で、マーティン・スコセッシ監督の「ヒューゴの不思議な発明」でブレイクし、「エンダーのゲーム」でも主演、そして本作と、まさに昇り竜の若手注目株。繊細な演技が要求される本作でも、見事に演じきっております。ヒロイン格のエマを演じたエラ・パーネルは「キック・アス/ジャスティス・フォーエバー」などに出た後、ディズニーのヒット作「マレフィセント」でアンジェリーナ・ジョリーが扮した魔女マレフィセントの少女時代を演じて、一躍注目されました。こちらも1996年生まれで、これから有名になりそうです。そして、重鎮サミュエル・L・ジャクソンとジュディ・デンチが作品をしっかり支えています。こういうファンタジーに説得力を与えるのは、実力派の大物俳優の存在です。いい仕事をしています。その意味では、二つの時代をつなぎ全体のカギを握る祖父エイブ役のテレンス・スタンプも重要ですが、1960年代から活躍する大ベテランの演技が光ります。また、冒頭で活躍するシェリー役のオーラン・ジョーンズは「シザー・ハンズ」や「マーズ・アタック!」にも出ていたバートン監督とは縁の深い女優さんです。

ところで、こういうファンタジー映画というと、第二次大戦下の英国が舞台、というものがけっこう多いですね。そして、ドイツ空軍が必ず登場します。今回もハインケルHE111の編隊がやって来て、爆弾を落としていきます。まさに今回の隠れた主役です。ちょっと思ったのですが、ハインケルの爆弾倉は縦に爆弾を積む独特の形式だったような気がするのですが、この映画では横置きのようで、あのへんはどうなんでしょうか。

ほかにも、戦時中に軍に入隊したエイブがミス・ペレグリンに電話をかけてくるのですが、その背景で星の徽章を付けた軍用車が走っていたり、第二次大戦中のアメリカ海軍の戦艦の艦上シーンで整列した水兵を将校が検閲していたり、と細かいところで、ほんのワンシーンでとにかく手を抜かないのが素晴らしい。おや、なぜこんなシーンで日本の紙幣が映るのだろう、と思っていると、その後で東京に話がつながっていくとか・・・実に芸が細かいです。一瞬も見逃せません。後で何回も見直す必要があるような、凝った作品です。

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