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2016年11月25日 (金)

【映画評 感想】ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

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 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
FANTASTIC BEASTS AND WHERE TO FIND THEMを見ました。ハリー・ポッター・シリーズの正統な続編、というか前日譚にあたる物語で、脚本はJK・ローリング本人が担当。監督はハリ・ポタ後期作品を手がけたデイビッド・イェーツです。ハリーたちが学んだホグワーツ魔法学院の必読教科書である『幻の動物とその生息地』の著者、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの活躍を描く新シリーズ、ということです。原題は、この教科書のタイトルそのものになっております。一応、児童向けという前提だった(とはいえ、終盤になるとかなりダークなファンタジーになりましたが)ハリー・ポッターと異なって、まず20世紀初めを背景とする時代劇であり、またかなりダークな描写や、処刑シーン、一般人の死傷者も出るような凄惨な展開、それに恋愛模様も描かれて、かなり大人向けの内容になっています。

 

 時は第一次大戦の惨禍から10年ほどが経った1926年。禁酒法時代のアメリカ、ニューヨークが舞台です。アメリカでは英国と異なる独特の魔法文化が栄えておりますが、欧州よりも法的締め付けが厳しく、ピッカリー議長(カーメン・イジョゴ)が率いるアメリカ魔法議会MACUSAが厳しく一般人(米国ではマグルではなく、ノー・マジと呼びます)と魔法使いとのかかわりを規制。また「新セーレム救世軍」と名乗る、現代の魔女狩りを主張する過激な圧力団体も存在し、風土的に魔法に理解のない社会です。また、欧州で悪名高かった闇の魔法使いグリンデルバルドが、少し以前から姿を消しており、その行方に世界中の魔法界の警戒が高まっていました。

 ここに英国からやって来たスキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、ふとしたことから偶然、銀行で知り合ったパン屋志望の復員兵士、コワルスキー(ダン・フォグラー)とトランクケースを取り違えてしまいます。スキャマンダーのトランクには、彼が長年、探索して蒐集した世界中の珍しい魔法動物が収められていましたが、コワルスキーはそれと知らずトランクを開けてしまい、動物たちが街に逃げ出して大騒動に。

 スキャマンダーとコワルスキーは、MACUSAの元捜査官ティナ(キャサリン・ウォーターストン)と、その妹クイニー(アリソン・スドル)の協力を得て、動物たちの回収作戦を始めますが、その頃、ニューヨークでは魔法がらみと思われる怪事件が続発していました。そしてついに、ショー上院議員が演説会の最中に明らかに魔法を使った方法で惨殺される悲劇が発生。ショーの父親の新聞王ヘンリー・ショー・シニア(ジョン・ボイト)は激怒し真相究明を誓います。スキャマンダーとコワルスキー、ティナの3人は、MACUSA調査部長官グレイブス(コリン・ファレル)に逮捕されます。グレイブスは、上院議員の死や街で続く破壊事件の原因はすべてスキャマンダーの逃がした魔法動物のせいだと断定し、スキャマンダーとティナを処刑するよう命じます。この取り調べ中に、スキャマンダーはグレイブスが、自分とホグワーツ学院の恩師ダンブルドアの関係など、妙に英国の事情に詳しいことに不審を抱きます。

 クイニーの機転で脱出に成功した3人ですが、グレイブスに追われる身に。さらにそのグレイブスは、新セーレム救世軍の創設者ベアボーン(サマンサ・モートン)の養子で屈折した青年クリーデンス(エズラ・ミラー)と密かに接触し、何かを企んでいる模様です。

 スキャマンダーは自らにかかった濡れ衣を晴らし、動物たちを救い出すことが出来るのでしょうか。そして、一連の怪事件とグレイブスの関わりは・・・。

 

 ということで、さすがに横綱相撲というのか、最初から最後まで見事に見せてくれます。まさに王道の娯楽作品です。ローリング本人が脚本を担当しており、いわばこれ以上に作者自身の世界観に則った正確な映画化はないわけで、それはもう見ていて安心です。映像的にも、今の技術でなければ描けない魔法動物の数々には脱帽です。その中には伝説のアメリカの怪鳥サンダーバードのような有名なものも含まれます。

 1920年代を再現する映像や衣装に手抜かりはなく、「華麗なるギャツビー」に負けていません。出てくる人は皆、その人物の立場として考え抜かれた、しかも時代考証的にも妥当なものを身に付けており、さすがは衣装デザインにアカデミー受賞者のコリーン・アトウッドを起用しているだけのことはあります。

 なんといってもレッドメインははまり役。文句なしですね。それとチームを組む女性2人と一般人のバランスもとてもいい。最後まで見れば、この4人の人間模様が本当にいいんです。このへんが、子役を中心とした学園ものだったハリー・ポッターと異なる大人向け、という要素ですね。

コリン・ファレルは今回、基本的に憎まれ役、悪役と言っていいのですが、なかなかいいじゃありませんか。陰のある悪い二枚目、という感じで芸風が広がったかも。

 クリーデンス役のエズラ・ミラーは「バットマンVSスーパーマン」や「スーサイド・スクワット」で、アメコミ・ヒーローのフラッシュ役に抜擢され、知名度を上げてきた若手。今回の作品でもキーマンであり、これからますます活躍が期待されそうです。

 それから、ロン・パールマンが出てくるのですが、これまでもモンスター役をやってきた彼のこと、一体、どんな怪物役なのかと思うと・・・本当に意外な役柄です。声ですぐにわかりますが。

 注目なのが、カメオ出演であの人が出ています! 「パイレーツ・オブ・カリビアン」のあの人、といえば誰でもわかりますね。しかし、いわゆる顔出しだけのチョイ役ではありません。実は最重要な役柄です。

 

 ところで、この映画の背景には、あのヴォルデモートが登場するまでは最強最悪の闇の魔法使いとされていたゲラート・グリンデルバルドの存在がちらついています。このグリンデルバルド、実は後の時代にヴォルデモートとハリー・ポッターの戦いのカギを握った最強の魔法の杖「ニワトコの杖」を世に出した人物です。本作の時代から少し後の1945年、ダンブルドアとの一騎打ちに敗れ、杖を奪われた、それが後々、ハリーとヴォルデモートの決戦に関わってくる、ということだそうですね。

 おまけに、設定としてダンブルドアは若いころ、グリンデルバルドと親友、同志であり、それどころか同性愛関係にあった、という設定まであるとか。この世界も奥が深いですね・・・。当然ながら、今回もシリーズとして続いていくのでしょうが、若き日のダンブルドア先生、なんてものも出てくるかもしれませんし、その後のハリー・ポッターの時代につながっていく話も出てくるかもしれません。今後の展開が楽しみです。

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2016年11月18日 (金)

ダイエーのピーターラビット・キャンペーンで「ミセスラビット」もゲット!

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 ダイエーでは、現在「ぬいぐるみを手に入れよう!」キャンペーンを実施しています。今回は人気の高い「ピーターラビットのぬいぐるみ」がテーマ。
 ダイエーで買い物をして、1000円ごとにレジでシールを一枚もらえ、そのシールを集めて専用台紙に貼り、15枚集まるとメーカー希望小売価格3240円する、座高28センチのぬいぐるみが激安880円で買えます! なお、レジで「シールを集めています」と自分で申告しないとくれない場合が多いので、必ず申し出ないといけません。
さらに20枚集めると40センチ、5184円の物が1528円に、30枚集めますと、本来なら8100円もする55センチの巨大なぬいぐるみが、2639円でゲットできる、という仕組みです。そもそもダイエーで日用雑貨を購入している方ならすぐに集まるでしょう。20161118114337



28センチの物にはピーターラビットのほか、ピーターの従兄ベンジャミン・バニー、ピーターの妹フロプシーのものがあります。40センチの物はピーターとピーターの母親ミセスラビットの2種類、55センチの物はピーターのみです。つまり全部で3サイズ、6種類があるということです。20161118114452



 私は前に、ベンジャミンとフロピシーを買いましたが、今回はお母さんのミセスラビットをゲットしました。一回り大きいのでいかにもお母さんな感じ!
 今回のキャンペーンは2017年1月8日までシール配布、同15日まで商品販売します。興味がある方はお早めにどうぞ。

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2016年11月11日 (金)

服飾評論家・遠山周平先生がご紹介くださいました。

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服飾評論家の遠山周平先生からご連絡がありまして、

M-43フィールドジャケットの話しをウェッブマガジンのBYRONにアップしました。辻元さんの本のことも軽く触れておきました。モード逍遥#20というコラムです」とのことで、さっそく見てみました。

 

https://byronjapan.com/

 

 

ポーランドの名匠で10月に90歳で亡くなったアンジェイ・ワイダ監督の名作映画「灰とダイヤモンド」を取り上げ、第二次大戦下のポーランドでレジスタンス活動をする主人公が着ていたM43フィールドジャケットについて書いておられます。ぜひ皆様も、遠山先生の達意の名文をご一読ください。

 

該当の部分をちょっと紹介させていただきますと・・・。

 

「最近は若い男女の間でMA-1ブルゾンなどのミリタリーアイテムが流行しているけれど、『灰とダイヤモンド』のなかでマチェックが着たM-43のコーディネートは、現代でもまったく色褪せていない。

 

ジャストタイミングで『軍装・服飾史カラー図鑑』(イカロス出版)の出版記念パーティが南青山のジュンコ・コシノ・ブティックで催されたので、著者の辻元よしふみさんにお聞きすると「アメリカの戦争映画を観ますとね。ベテランの俳優は古参兵としてM-41を着ているのですが、新兵役の若い俳優はM-43なのですよ」という、例の特殊な映画通の答えが返ってきた。

 

M-43が米軍に採用されたのは1943年。それまで使われていたM-41はブルゾンタイプだったが、これは着丈の長いジャケット式。たいへんに機能性に富んだジャケットだった。しかも衿が、その後に登場したM-65のスタンドカラータイプと異なり、カラーとラペルで形成される背広型だったから、シャツとの相性が抜群なのである」

 

 私も、米陸軍のフィールドジャケットを一つ挙げるとするなら、実はM-43が好きですね。戦争の終盤、ノルマンディー上陸後にドイツ軍と死闘を繰り広げた時期の米軍の主力被服で、私の中でGIといえば、くすんだオリーヴドラヴ色のM-43がイメージです。

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2016年11月 7日 (月)

ダイエー「ピーターラビット」キャンペーンでフロプシーをゲット!

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 ダイエーでは、現在「ぬいぐるみを手に入れよう!」キャンペーンを実施しています(ダイエーは現在、イオン・グループの傘下ですが、この作戦はダイエー店舗独自のもの)。数年前に「テディベアを手に入れよう!」キャンペーンを実施して、大きな評判を呼びましたが、今回は人気の高い「ピーターラビットのぬいぐるみ」がテーマ。

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ダイエーで買い物をして、
1000円ごとにレジでシールを一枚もらえ、そのシールを集めて台紙に貼り、15枚集まるとメーカー希望小売価格3240円する、座高28センチのぬいぐるみが激安880円で買えます!

 20枚集めると40センチ、5184円の物が1528円に、30枚集めますと、本来なら8100円もする55センチの巨大なぬいぐるみが、2639円でゲットできる、という仕組みです。そもそもダイエーで日用雑貨を購入している方で、時節柄、クリスマス・プレゼントを何にしようか思案中の人には、なかなか朗報かも。

 28センチの物にはピーターラビットのほか、ピーターの従兄ベンジャミン・バニー、ピーターの妹フロプシーのものがあります。40センチの物はピーターとピーターの母親ミセスラビットの2種類、55センチの物はピーターのみです。つまり全部で3サイズ、6種類があるということです。20161020231645


 私は前に、ベンジャミンのぬいぐるみを手に入れました。そして今回は、フロプシーを買いました。こちらも細部までよく出来ています。ベンジャミンと並べてみても、表情の違いなどもよく出ていますね。このベンジャミンとフロプシーは、大人になって結婚することになっています。

 今回のキャンペーンは2017年1月8日までシール配布、同15日まで商品販売します。興味がある方はお早めに。

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2016年11月 5日 (土)

日刊ゲンダイに「欅坂46の衣装 どこがアウトなのか」掲載。

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 本日、発売の「日刊ゲンダイ」
11月7日号(週末特別版)、4ページ下の「街中の疑問」コーナーにて、私、辻元よしふみが「欅坂46の衣装 どこがアウトなのか?」という記事でコメントしておりますので、ご覧いただけましたら幸いです。

 記事の一部を紹介しますと・・・。

「『軍装・服飾史カラー図鑑』(イカロス出版)の著者で服飾史評論家の辻元よしふみ氏はこう分析する。・・・ワンピースやマントは確かに黒色で、ナチスの親衛隊をイメージさせなくもありませんが、デザイン的にはごく平凡。帽子もどこにでもある19世紀以来の官帽子で、これがダメなら世界中のお巡りさんや警備員が訴えられます。ただ一点、帽子に付いていた“銀色のワシ”が決定的にアウトです」

「ワシのマークは・・・辻元氏によれば、そもそも古代ローマ帝国の国家章で、その後、ロシア帝国やナポレオン帝国、ドイツ帝国などが採用。米国がワシを用いているのもその影響だ。ナチス帝国もこれを流用。ワシが鉤十字をつかんだマークを親衛隊や国防軍の制服に採用したといういきさつがある」Photo_7


「・・・ナチスのワシは足で輪の中の鉤十字をつかんでいますが、欅坂46のものは鉤十字を他のマークに差し替えています。デザイナーは“鉤十字を使っていないから大丈夫”と判断したのでしょうが、軽率でしたね」

「もし意図的な差し替えなら、それがナチスのマークで、“そのまま使ったらやばい”ということを把握していた証拠だ。過去には沢田研二も“そのまんま”な衣装を着てトラブルになった。写真や映像があっという間に世界中に拡散される今、・・・これからの忘年会シーズン、そのコスプレがアウトかセーフか、着る前に冷静に考えた方がよさそうだ」

 

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 (写真は上から、1978年のヒット曲「サムライ」の舞台衣装を着た沢田研二氏、ナチス第三帝国、古代ローマ帝国、ロシア帝国、ナポレオンのフランス帝国、ドイツ帝国、アメリカ合衆国のワシ)

 ということで、あくまでも「あの衣装」のどこがアウトなのか、について語っております。私はあくまで服飾史と軍装史の研究家ですから、欅坂46のその他の要素、歌詞とかパフォーマンス、全体のイメージなどについては承知しておりません。なんでもナチス式敬礼のような右腕を高く上げるポーズも披露していたように聞きますが(追記:その後、道草様からのコメントにより、「欅坂46のデビュー曲『サイレントマジョリティー』の振り付けに含まれる右腕を高く上げるポーズは『モーセの海割り』をモチーフにしているという事を振り付けを担当したTAKAHIRO氏が以前から話しておられます、その振り付けの意味についても、ナチス式敬礼をモチーフにしている訳ではない」とのご指摘がありましたので、ここでご紹介します。道草様、ありがとうございました)。しかしおそらく、アメリカのユダヤ系団体サイモン・ヴィーゼンタール・センターも、日本のアイドルグループについて詳しく知っているわけはなく、最初はツイッターやブログに載った写真だけを見て「アウト」と判断したはずです。そして、彼らだって無闇に文句を付けて、逆に難癖だ、と反論されてしまっては元も子もないので、決定的にアウトだから自信を持って批判を始めたはずです。その決定的な部分は、どう見ても「ワシ」である、と申している次第です。仮にあの部分に、たとえばオレンジ色のカボチャとか、お化けとか、または漢字で「欅坂46」などと書いてあったとしたらどうでしょう? 少なくともアウト、というには根拠が薄弱で、また欅坂サイドもそれなりの反論が出来たに違いない。
 なお、私は欅坂メンバーの皆さまは気の毒な被害者だ、と思っております。本人たちには、なんらの落ち度もない。私は、問題があったのはあのワシのデザインだけである、と申しているわけでして、要するにデザイナー個人の不勉強が最大問題である、と言いたいのであります。仮にあのワシが、たとえば同じくワシであってもアメリカ軍のワシだったら?(それはそれで、なんの意味があっての意匠かは意味不明でしょうが)、しかし少なくとも在米の団体は抗議の対象にできなかったでありましょう。

 

 なお、ローマ帝国以来の歴代のワシの国家章・・・ナチス型のものは、非常にデザイン的に特徴があり、直線的なデザインとなっております。アメリカをはじめ、ほかの国家のワシ(場合によっては双頭のワシ)は、もうちょっと翼や形状が丸いというか、柔らかい。よって、ワシのマークそのものは別にアウトではないのですが、ああいう直線的なデザインで、下部に丸いマーク(本来ならそこに鉤十字が付く)のワシは「ナチスのワシ」と見なされてしまうのは致し方ない感じがします。ゲンダイの記事はあくまで記者さんがまとめたもので、私は事前に点検しておりませんが、ちょっと一読すると「ワシはナチスなのでアウト」とも読めてしまいますが、私が言った趣旨は少し違います。「ああいう直線的なデザインのワシはナチス独特のワシなのでアウトである」という方が正確です。さらに追加するなら、「帽章としてワシを用いることは、アメリカをはじめごく普通に行われているが、帽子のあの位置に独立したワシの徽章を付けるのは、ナチス時代の制服の特徴なのでやめた方がいい」ということもいえます。すなわち、ワシのマークはなんであってもすべてダメ、ということではない。

 ただいずれにしても、ワシは「帝国」の意味合いが強いので、そのへんの普通のファッションに、安易にかっこいいという理由だけで取り入れるのは、そもそもお薦めしません。当然ながら、欧米人はこのへん、日本人よりずっと知識があります。だから日本のデザイナーさんはもっと歴史を勉強してほしいし、自信がない場合は知識のある人に見てもらうべきだと思いました。

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2016年11月 2日 (水)

欅坂46の帽子と「ナチスのワシ」の意味。

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 アイドルグループ「欅坂46」がハロウィーンで使用した衣装が、ナチス親衛隊を思わせるとして問題になりましたね。ナチス親衛隊というのは、ドイツ国家の正規軍ではなくて、ヒトラーの個人的な私兵部隊です。
 それで、私も軍装史と服飾史の研究家として、「どれだけ似ているのだろう」と思ってみてみたのですが、正直のところ、黒いワンピースとマントは平凡なもので、あれだけなら全く問題にならなかったでしょう。確かにナチス親衛隊と言えば黒地に銀の装飾ですが、それがダメだと言ってしまったらリクルートスーツだってダメということになりかねません。
 完全にアウトだったのは制帽型の帽子ですね。これも、ああいう型の帽子そのものは、19世紀以来、世界中で使用されている帽子なので、特に問題ではない。あれがダメなら警察も消防も鉄道員もダメということになります。20161102131840



 決定的にアウト、なのは帽子の正面に付いていた「銀色のワシ」、ですね。あれは確かにどうしようもない。いわゆるナチス型のワシです(ただ厳密に言えば、親衛隊型ではなくて、国防軍型のワシ)。デザイナーさんは不用意だったですね。もちろんナチスのワシは、脚で例のハーケンクロイツ(鉤十字)をつかんでいます。欅坂の物はよく見ると、あの部分をほかのマーク、欅坂を意味するKでしょうか、に差し替えている。鉤十字を使っていないから大丈夫だろう、と判断したのでしょうが、いかになんでもあのタイプのワシで、黒地に銀色、というのは、確かに似過ぎていると思われてしまいそうです。

 さて、あのワシは何の意味かと申しますと。
 「軍装・服飾史カラー図鑑」の188ページ上、185ページ下、183ページ解説、189ページなどに書きましたが、あのワシは「帝国」の象徴です。単なる世襲の王政ではなくて、基本的には共和制を前提として、選挙で選出された皇帝をいただく国家が、あれを継承するのです。
 そもそもは古代ローマ帝国の国家章でしたが、その後、その流れをくむ、あるいはその精神を汲むとする国家がワシを国家章にしてきました。ロシア帝国、ナポレオン帝国、歴代のドイツ帝国などです。アメリカがワシを用いているのも、インディアンがもともとハクトウワシを崇めていたことも理由の一つとしていますが、古代ローマ帝国の影響下にあるのは明白です。
 そして、ナチス帝国もこれを流用し、ワシがハーケンクロイツ(鉤十字)をつかんだマークを採用しました。少なくとも1923年にはナチ党として使用し始め、問題になっている黒い親衛隊制服としては1932年、そしてナチス政権樹立後の1934年になると、本来、ナチ党と関係のなかった国家の正規軍(国防軍)の制服にも付けるようになります。20161102131937



 今回の欅坂の制服の帽子についているワシは、どう見てもナチス型のワシなので、言い逃れできないのは無理もありません。

 なお、ローマ帝国以来の歴代のワシの国家章・・・ナチス型のものは、非常にデザイン的に特徴があり、直線的なデザインとなっております。アメリカをはじめ、ほかの国家のワシ(場合によっては双頭のワシ)は、もうちょっと翼や形状が丸いというか、柔らかい。よって、ワシのマークそのものは別にアウトではないのですが、ああいう直線的なデザインで、下部に丸いマーク(本来ならそこに鉤十字が付く)のワシは「ナチスのワシ」と見なされてしまうのは致し方ない感じがします。ゲンダイの記事はあくまで記者さんがまとめたもので、私は事前に点検しておりませんが、ちょっと一読すると「ワシはナチスなのでアウト」とも読めてしまいますが、私が言った趣旨は少し違います。「ああいう直線的なデザインのワシはナチス独特のワシなのでアウトである」という方が正確です。さらに追加するなら、「帽章としてワシを用いることは、アメリカをはじめごく普通に行われているが、帽子のあの位置に独立したワシの徽章を付けるのは、ナチス時代の制服の特徴なのでやめた方がいい」ということもいえます。すなわち、ワシのマークはなんであってもすべてダメ、ということではない。

 ただいずれにしても、ワシは「帝国」の意味合いが強いので、そのへんの普通のファッションに、安易にかっこいいという理由だけで取り入れるのは、そもそもお薦めしません。当然ながら、欧米人はこのへん、日本人よりずっと知識があります。だから日本のデザイナーさんはもっと歴史を勉強してほしいし、自信がない場合は知識のある人に見てもらうべきだと思いました。
 
 ぜひ、「軍装・服飾史カラー図鑑」を読んでいただきたいですね(笑)。一般の方々が詳しく、こんなマニアックな知識を知るべきだとは言いません。でもデザイナーと名乗るような方は勉強しておく必要があると思います。

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