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2016年10月29日 (土)

【映画評 感想】スター・トレック BEYOND

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 「スター・トレック
BEYONDSTAR TREK BEYONDを見ました。2009年に再始動した「スター・トレック」シリーズの3作目、そして1979年の劇場版第1作「スター・トレック」から数えると、映画としては13作目になります。さらに言えば、最初のテレビシリーズ「スター・トレック/宇宙大作戦」の放送開始が1966年であるため、本作品はシリーズ50周年記念作品でもあります。

 2009年のリブートで、ロミュラン人ネロ(エリック・バナ)の策略によりバルカン星が滅亡し、スポック大使(レナード・ニモイ)が未来から戻ってきて時間軸が変化、従来のシリーズとは同じ世界ながら、歴史が変わってしまったことは、シリーズをご覧になった方には周知のとおり。その際に宇宙船USSケルビンが犠牲となり、船長代理のジョージ・カーク(クリス・ヘムズワース)が殉職。このために、本来の歴史なら父の背中を見て順当に宇宙艦隊に入隊するはずだったジョージの息子ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)や、若きスポック(ザカリー・クイント)の人生も狂ってしまう・・・そんな話でした。

 それで、09年の新シリーズ1作目では、とにかく「あのカーク船長」と「スポック副長」がエンタープライズ号に乗り組むようになるまで歴史が軌道修正される様が描かれ、13年の2作目「イントゥ・ダークネス」では、旧シリーズの2作目で登場した悪役カーンにベネディクト・カンバーバッチを起用、超強敵の出現により、カークとスポックの絆がようやく深まり、本来のエンタープライズ号の陣容が固まるところまでが描かれました。

 こうして、エンタープライズ号はついに、ジェームズ・T・カークの指揮の下、5年間の深宇宙探査の航海に出る・・・いってみれば、ここまでの2作で、ねじれた歴史が修正され、やっと最初の「スター・トレック」の航海の段階に戻った、というわけでしたので、実は本番と言えるのは今回から、なのですね。

 

 前作の後、5年間の深宇宙探査に出たエンタープライズ号。通常の攻撃的軍隊ではなく、あくまでも平和維持部隊としての重責を帯びる宇宙艦隊の任務には気苦労が多く、また無限に続く宇宙空間は果てしなく、船長カーク大佐は自分たちのあり方に疑問を抱くようになっていました。それを察した医療部長マッコイ少佐(カール・アーバン)はカークを気遣います。一方、副長スポック中佐も通信士・ウフーラ大尉(ゾーイ・サルダナ)との恋が行き詰まり、ひそかに悩んでいます。

 補給と休養のために立ち寄った惑星連邦の宇宙基地ヨークタウンで、スポックはもう一人の自分であるスポック大使(ニモイ)が亡くなったことを知り、ショックを受けます。彼はバルカン星の復興に尽くすために宇宙艦隊を辞職する考えを抱きます。同じころ、カークもヨークタウン基地の司令官パリス准将(シューレ・アグダシュルー)に異動願を提出。船長の任を離れてヨークタウン基地の副司令官にしてもらえるよう依頼します。こうして、カークもスポックもそれぞれ、エンタープライズ号を降りる決意を固めているさなか、それまで連邦が接触したことのない文明の異星人女性が救助を求めてヨークタウン基地に飛来します。

 未知の惑星アルタミッドで宇宙船が遭難した、という女性の訴えを聞き、エンタープライズ号は救助活動のために出動します。しかしその星でエンタープライズ号は正体不明の敵に奇襲されてコントロールを失い、あえなく地上に墜落。この星を支配するのはクラール(イドリス・エルバ)という狂信的な異星人で、なぜかエンタープライズ号、カーク船長のことまでよく知っており、惑星連邦と宇宙艦隊に対する憎悪をみなぎらせています。そして、エンタープライズ号が保管していた古代の恐ろしい兵器アブロナスを手に入れようと躍起になっています。

 クラールの捕虜となったウフーラ、操縦士のスールー大尉(ジョン・チョー)は敵の目を盗んでヨークタウン基地に救援信号を放ちましたが、それもまたクラールの罠で、宇宙艦隊が出動した隙を突き、ヨークタウン基地を襲撃するのが真の狙いでした。

 離れ離れに地上に降りたスポックは瀕死の重傷を負いますが、行動を共にしているマッコイの手当てを受けて、どうにかしてウフーラたちを救い出そうとします。

 一人で地上に降りた機関長スコット少佐(サイモン・ペッグ)は、この星で暮らす異星人ジェイラ(ソフィア・ブテラ)に助けられます。カークと航海士チェコフ少尉(アントン・イェルチン)も合流します。彼らが驚いたことに、ジェイラが住まいとしていたのは、100年も前に消息不明となった連邦の初期の宇宙船USSフランクリン号でした。彼らはこの旧式宇宙船を再起動し、クラールの手からウフーラやスールーらエンタープライズ号のクルーを取り戻そうとします。彼らの目論見はうまくいくのか、そして、ヨークタウン基地を守り抜くことができるのか・・・。

 

 というようなことですが、今回、注目なのが、脚本を書いたのはスコット役のサイモン・ペッグだということ。もともとスター・トレックの熱狂的なファンであるペッグの脚本は、現代的なスピード感にあふれつつ、セリフの端々に60年代、70年代のシリーズ初期にあったユーモア感覚や温かみを強く感じさせます。本作の持ち味に大きく貢献していると思います。

 実際、50周年記念作品ということもあり、昨年2月に亡くなったレナード・ニモイへのトリビュートとして、写真だけですがニモイのスポックと、おまけに旧シリーズのウィリアム・シャトナーらオリジナル・クルーの写真まで登場します。旧作との強いつながりを意識した配慮は見事なものです。

 今回、大いにフィーチャーされているのがマッコイ役のカール・アーバン。どちらかといえば脇に回りがちな船医という役どころですが、今回はクルーの中の兄貴分として、大きな存在であることをアピールしており、戦闘にも駆り出されて出番もたっぷりあります。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでローハン王国の騎士エオメル役に抜擢され、一躍有名になったアーバンですが、このシリーズのマッコイ役は、彼の新たな代表作となったようです。

 お子さんを生んだばかりだったというウフーラ役のゾーイ・サルダナは、アクションは控え目ですが、今作では新たな魅力を発揮しています。やはりお母さんとなったからなのか、優しさとか、情愛といった感情表現の深化を感じました。相変わらず美しい人ですが、内面的な美しさも感じさせるような役作りでした。聞けば彼女は今後、出世作「アバター」の続編に出演するようですね。

 新顔ジェイラ役のソフィア・ブテラは、大ヒット作「キングスマン」で義足の女殺し屋を演じて大ブレイクしたアルジェリア出身の新星ですが、もともとダンサーであり、切れのある動きは今回も見事なものです。この人は今後、このシリーズのレギュラーに入ってくるのでしょうか、楽しみです。ただ、何しろ4時間もかけた特殊メークのために顔は全然、分からないのが残念ですが・・・。

 悪役クラールを演じたイドリス・エルバは、今や引く手あまたの売れっ子俳優。この人物の正体が誰なのか、が本作の最大の見どころです。なんでも007ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグ降板後の有力候補の一人だとも噂されているエルバですが、本作品でも確かな演技力とスケールの大きさを見せつけており、そういう声が出るのも当然と思われます。

 それから忘れてならないのが、本作はアントン・イェルチンの遺作であること。今年の6月に27歳の若さで、不慮の事故で亡くなり、この作品でのチェコフ役が最後のスクリーン上での活躍になってしまいました。本作でも彼の存在感は非常に大きく、ロシア訛りの強い早口でまくし立てる生き生きとした演技に接すると、彼が実際にはもう鬼籍に入っていることが信じられません。あまりにもはまり役だったので、今後、このシリーズでのチェコフはどうなるのだろうと心配になってきます。

 作品の最後に、レナード・ニモイとアントン・イェルチンに対する献辞が置かれています。「IN LOVING MEMORY OF LEONARD NIMOY FOR ANTON」ジーンときますね・・・。

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