« 「タミヤ・ニュース」に『軍装・服飾史カラー図鑑』紹介。 | トップページ | 【映画評 感想】スーサイド・スクワッド »

2016年9月17日 (土)

【映画評 感想】キング・オブ・エジプト

20160916023042


 「キング・オブ・エジプト
GODS OF EGYPT」という映画を見ました。「エジプトの王様」というタイトルなわけですが、原題をよく見ると「エジプトの神々」。実際、この話の設定ではエジプトを最初に統治したファラオたちは、本当に神々であって、肉体的にも巨人だった、ということになっております。だから時代考証的な古代エジプトではなく、ファンタジー的な古代エジプトということです。かつてレイ・ハリーハウゼンが作ったギリシャ神話やアラビア神話ベースの娯楽映画の現代版、という感じですね。「アイ,ロボット」「ノウイング」などで知られるアレックス・プロヤス監督の7年ぶりの作品です。

 古代神話ではあちこちに見られる兄弟神の相克の物語。エジプト神話においては、太陽神ラーの息子であるオシリスと、その弟のセトが対立します。オシリスがセトに殺されてしまうと、オシリスの妻イシスと、その子ホルスがセトを打倒し、オシリスは冥界の王に、ホルスがエジプトの統治者になる・・・そんな話です。この映画は、そのあたりのお話を大胆にファンタジー化したものです。これまでギリシャ神話や北欧神話はかなり題材として取り上げられてきました。エジプト神話というのは、エジプト生まれのプロヤス監督らしい着眼だと思われます。

 

 古代エジプト文明の黎明期。1000年にわたり善政を布いて民から慕われてきた全エジプトの王、オシリス(ブライアン・ブラウン)が退位し、息子のホルス(ニコライ・コスター=ワルドー)が王位に就くことになります。しかし実際には、ホルスには国王になるだけの器量がなく、愛人のハトホル(エロディ・ユン)は密かに危惧しています。

 即位式典の当日、荒涼たる砂漠の統治者でオシリス王の弟セト(ジェラルド・バトラー)が遅れて会場にやってきます。甥であるホルスの即位を祝いに来た・・・と見せかけて、その実は兄に対する反逆を企てていたのでした。砂漠の軍勢が会場に押し寄せる中、セトは兄オシリス王を殺害し、ホルスを叩きのめして、その両目を抉り取ってしまいます。失明したホルスは逃げ去り、王妃イシス(レイチェル・ブレイク)は自害。ハトホルはセトの愛人となります。クーデターを成功させたセトは人間たちを奴隷として使役し、権力欲を丸出しにして強権政治に走って行きます。

 セトの悪政を倒すには、ホルスの目を奪い返すしかない。セト専属の冷酷な主任建築士ウルシュ(ルーファス・シーウェル)に仕える女奴隷のザヤ(コートニー・イートン)は、ホルスの目を保管しているピラミッドの設計図を盗み出し、恋人である盗賊ベック(ブレントン・スウェイツ)に渡します。ベックはホルスの右目だけをなんとか盗み出し、ウルシュの追撃から逃れることに成功しますが、その途中でザヤはウルシュの放った矢を受け、死んでしまいます。

 悲嘆にくれたベックは、ホルスの神殿を訪れ、ホルスに右目を渡す条件として、ザヤを蘇らせるよう取引を試みます。ホルスは、8日以内ならば死者を現世に呼び戻すことができる、それまでに左目も手に入れるべく、協力するようにベックに要求します。

 2人は、ホルスの祖父である世界の創始者、太陽神ラー(ジェフリー・ラッシュ)の元を訪れ、セトのパワーの根源、砂漠のピラミッドの炎を消すことができる「創造の水」を入手します。

 その間、セトの暴政はエスカレートし、反逆する神々が続出。ついにセトの元妻であるネフティス(エマ・ブース)まで反逆に加担し、怒ったセトはネフティスの翼を切断します。

 さらにセトは、現在の愛人であるハトホルも、実際はホルスに今でも通じているのではないかと疑念を抱き始めます。ハトホルは殺される寸前、元々は冥府の入り口である西方の女王であった経験を生かし、冥界を潜り抜けてセトの元から脱出。そして、ホルスとベックに合流し、セトを倒すべく砂漠のピラミッドを目指します。しかしそこには恐ろしい怪物、スフィンクスが待ち構えており、謎かけに正解しなければ何人であっても生きて帰ることはできません。一行は、知恵の神であるトト(チャドウィック・ボーズマン)を味方に付けようとしますが・・・。

 

 というようなことで、とにかく派手な映像がこれでもか、と続きます。エンターテイメントとしてはこれ以上のものはないでしょう。まあ、変身した神々の姿がトランスフォーマーのロボットみたい、とか、エジプト神話の原話からかけ離れすぎている、といった批評もあるでしょうが・・・実際、原話ではオシリスの復活とセトの打倒、そしてホルスの即位に大きな貢献をした女神イシスが、この映画では、登場はするもののすぐに舞台から姿を消してしまう点などは、人によっては納得しないかもしれません。とはいえ、今作は神々と、とるに足りない人間の盗賊の間に生まれた信頼と友情、というところが焦点なので、神話の本筋としてはかなり異なった展開をあえて選んでいるのでしょう。

 物語の大詰め、分かっていても、ありがちな展開と言えば言えるシーンでも、感動的に描けているのはプロヤス監督の手腕なのではないでしょうか。うまいものだと感心させられました。

 配役ではやはり、太陽神ラーのジェフリー・ラッシュです。今回も一癖ある、本当は何を考えているか底知れない、誰の味方なのかわからない絶対神、という感じで、単純に善玉でも悪玉でもない、という超越的なキャラクターはこのアカデミー俳優にぴったりです。

 「マレフィセント」では冴えない王子様だったブレントン・スウェイツは、今回は体を張ったアクションで主演の一人として大活躍。そして「オペラ座の怪人」や「300」のジェラルド・バトラーは、今作では悪人そのもの、いいところは一つもない役柄ですが、こういう役をやってもカッコいい。もう一人の主演といえるニコライ・コスター=ワルドーは日本ではあまりなじみがないですが、人気テレビ・シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で活躍している人。映画では「ブラックホーク・ダウン」「キングダム・オブ・ヘヴン」「オブリビオン」などで脇役を演じています。ハトホル役のエロディ・ユンはフランスの女優さんで、本当にきれいな人です。これで国際的な知名度も一気に上がりそう。ザヤ役のコートニー・イートンは「マッドマックス」最新作で注目された新星ですが、モデル出身でまだ20歳。10年後が楽しみな人かも。

 私は本作を見て、悪人だが才気あふれる建築士ウルシュを演じているルーファス・シーウェルの、ちょっとしゃがれていて、しかしトーンの高い声とか、独特の嫌味な語り口とか、どこかで聞いたな、とずっと思っていました。経歴を調べて、「レジェンド・オブ・ゾロ」とか「リンカーン/秘密の書」の悪役を演じていたことを知り、ああ、この声と口調に聞き覚えがあるんだな、と思い至りました。ルックスではなく、声で思い出した俳優というのは、私の中では珍しい存在です。

 とにかく、大画面で楽しむべき大娯楽作品です。しかしそれでいて、神も人も人生において試練を乗り越え、最後にどう生きたかの裁定を受けなければならない、という世界観からは、人がこの人生で生きるというのはどういう意味があることなのか、といった問いかけも感じられる一作です。私はこういう作品は大好きですね。

|

« 「タミヤ・ニュース」に『軍装・服飾史カラー図鑑』紹介。 | トップページ | 【映画評 感想】スーサイド・スクワッド »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122224/64215392

この記事へのトラックバック一覧です: 【映画評 感想】キング・オブ・エジプト:

« 「タミヤ・ニュース」に『軍装・服飾史カラー図鑑』紹介。 | トップページ | 【映画評 感想】スーサイド・スクワッド »