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2016年9月18日 (日)

【映画評 感想】スーサイド・スクワッド

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 映画「スーサイド・スクワッド
SUICIDE SQUAD」を見ました。原題は意味としては「自殺部隊」です。マーベルと並び立つアメリカン・コミック界の雄、DCコミックスが生んだヴィラン(悪役)を集めた悪人版アベンジャーズ、といったところ。スーパーマンやバットマンといったスーパーヒーローとは対極の存在。重罪人である彼ら彼女らに、死ぬのが必至のまさに「自殺的な」危険な作戦を遂行させる、死んでもどうせ元から死刑か無期懲役の連中だから問題にはならず、万が一、作戦に成功して生き延びたら減刑してやる、といった条件で戦わせるという発想です。

が、こう聞くと思い出されるのが、かつての名作映画、1967年の「特攻大作戦」(ロバート・アルドリッチ監督)です。ノルマンディー上陸作戦の直前、警備厳重なドイツ軍の将校クラブを襲撃するべく、米軍刑務所に収監されている凶悪犯罪者の兵士が集められ、決死隊が編成されます。演じたのはチャールズ・ブロンソン、アーネスト・ボーグナイン、テリー・サバラスといった一癖ある俳優ばかり。リー・マービン演じる型破りの少佐が囚人部隊を統率していく過程が非常に面白く、映画はヒットしました。私はこの映画を小学生のころに初めて見て、「デス・バイ・ハンギング(絞首刑)」という英語を覚えました。というのも、兵士たちのプロフィールが冒頭に紹介されるのですが、どいつもこいつも「軍法会議の結果、絞首刑」ということで、デス・バイ・ハンギングという言葉を何度も聞くことになったからです。

それで、映画のパンフレットによれば、本作のデヴィッド・エアー監督は「特攻大作戦を参考にした」と明言しております。もともと軍歴があり、脚本家として「U-571」、監督して「フューリー」といった純然たる戦争映画も手掛けている同監督は、アメコミの映画化というよりも、一種の戦争映画としてこの作品を作った、といいます。実際、本作のテイストには、ひとつひとつの戦場の状況把握、敵味方の心理を追う手法やら、非常時において、必死に戦う前線の兵士と裏腹に、ひたすら保身に走る上層部の姿、といった描き方に、戦争映画的なリアリティーを感じます。いかにもコミック的な非現実的ファンタジー、という作品ではありません。あえていえば、怪獣映画なのだけど、実際には戦争映画であり政治映画である「シン・ゴジラ」と、どこか似ているのではないでしょうか。

 

スーパーヒーロー、スーパーマンが死に、国葬が行われます。アメリカ国民は悲嘆に暮れていました(コミックの設定的には、古代の異星人が作り上げた生体兵器ドゥームズデイとの戦いで、スーパーマンが命を落とした時期、ということだそうです・・・結局その後、復活したようですが)。

そして、スーパーマン亡き今、また別の危険な化け物、通常の警察や軍隊では手に負えない未知の危険が出現したらどうするのか、が安全保障上の大問題になりました。

そこで、政府諜報部門の高官アマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)は一計を案じ、かつて存在した秘密の犯罪者による特殊部隊「タスク・フォースX」を再編成することを軍高官に認めさせます。どうせ犯罪者集団なので、作戦上で問題が起きても政府は責任を問われることもなく、隊員が死傷しても知ったことではない。このアイデアの下、スーパーマンやバットマンに捕らえられ、連邦刑務所に収容されている悪人たち、特に釈放される可能性のない重犯罪者たちが集められます。

無数の生命を奪った暗殺犯で、狙撃の名人デッドショット(ウィル・スミス)、元は精神科医だったが、犯罪都市ゴッサムシティの闇社会の帝王ジョーカー(ジャレッド・レト)の愛人になることで悪に落ちたハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、殺人ブーメランが武器のその名もブーメラン(ジェイ・コートニー)、ナパーム弾のように何者も焼き尽くしてしまう人間火炎放射器ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)、ロープ使いの名人スリップノット(アダム・ビーチ)、爬虫類のような無敵のワニ男キラークロック(アドウェール・アキノエ=アクバエ)。

これを率いる部隊長は、リック・フラッグ大佐(ジョエル・キナマン)ですが、当然、普通のやり方でこの連中が言うことを聞くはずはありません。そこで、隊員たちには全員、首筋にナノ爆弾を埋め込み、責任者のアマンダか隊長のフラッグが端末を操作すれば、瞬時に爆発して頭部が吹き飛ぶ、という仕掛けにしました。さらにお目付け役として、フラッグの用心棒である日本人の女性剣士カタナ(カレン・フクハラ)が従い、命令に服さない隊員は容赦なく必殺の日本刀で斬り捨てる構えです。デッドショットが自嘲して言います。「つまり俺たちは、自殺部隊というわけだな?」

しかし実は、もう一人、本来は部隊の最強メンバーとなるべき候補者がいました。彼女の名は考古学者ジューン・ムーン博士(カーラ・デルヴィーニュ)。ただ一人、犯罪歴などない全くの善良な民間人です。しかし不幸なことに、ジューンはかつて密林の奥の遺跡で古代の危険な呪術の遺物にふれ、実に6000年以上も前から女神、魔女として君臨する悪霊エンチャントレス(デルヴィーニュの一人二役)に取り憑かれてしまったのです。ジューンはエンチャントレスをいつでも呼び出すことが出来ますが、呼び出したが最後、ジューンの意思は失われ、制御は出来なくなります。そこで、ジューンを保護したアマンダは魔女の弱点である心臓を手に入れ、魔女が従うしかない状況にして、無理やり言うことを聞かせることにします。さらにフラッグにジューンを警護させることで、アマンダのねらい通りに二人は恋に落ち、フラッグもこの危険な任務から逃れられない状況を作って、すべてを統制した、はずでした。

しかしエンチャントレスはそんな甘い相手ではなく、弟の魔神も現世に呼び出して力を増強させると、アマンダの支配から逃れて世界征服に乗り出します。

この状況で、タスク・フォースXに出動命令が下りますが、単なるテロリスト掃討が目的と告げられて、相手が何者なのかは知らされていません。施設に取り残された要人を救出しろ、という命令に従い彼らは出撃しますが、襲ってきたのはエンチャントレスによって醜い化け物に変身させられた無数の人々のなれの果て。話が違う・・・と混乱するメンバー。脱走を企てる者、疑問を持つ者、もともと強制的な命令に従っているだけの部隊の弱さというもので、メンバー間では不信感が募り、結束がバラバラになりそうな中、はたして彼らはエンチャントレスの完全復活を阻止できるのでしょうか・・・。

 

ということで、とにかくハードでダークなアクション映画ですが、単なるけれん味で見せるコミックものではなく、先にも書いたように、戦場ものとしてのリアリティーがある作風です。歴代の名優が引き継いできたジョーカー役を引き受けたジャレッド・レトは、本人も非常に重圧だったと言いますが、クレイジーかつ繊細な、新しいジョーカー像を生み出していると思います。マーゴット・ロビーは「ターザン/REBORN」でターザン夫人ジェーンを演じていました。芯が強いとは言えヴィクトリア朝の貴婦人役だったターザンと違い、今回は作品中でも最も常軌を逸したキャラクターですが、設定的に単なる下品な悪役ではダメで、非常に高い知性とその裏返しの狂気を表現しなければならない難しい役所ですが、魅力的に演じきっています。ウィル・スミスの加入は、監督がキャスティングで最初に望んだことだったそうですが、根からの悪党でない、実は心優しい面や正義感も隠し持っている孤独な狙撃手、そして全体のリーダー的存在というポジションをしっかり固めています。

注目されたのが、今作が映画デビューという新人のカレン・フクハラ(福原かれん)。この人は日系アメリカ人で、どうもまだ大学生らしいですが、日本語もしっかり出来るようで、劇中の彼女の日本語セリフは安心して聞いていられます。今まで剣術の経験はないとのことですが、武術は習っていたそうで、見事な女サムライぶりです。日本人としては応援したくなりますね。

スーパーモデルのカーラ・デルヴィーニュは、映画デビューの「アンナ・カレーニナ」などではセリフもほとんどない役でしたが、いよいよ本格的な女優業に乗り出してきました。この人はやはり存在感がありますし、当たり前ですが奇麗ですね。もうちょっと魔女ではなくて、ジューンの状態の姿を見たかったと個人的には思いました。

またベン・アフレックが、ブルース・ウェイン(バットマン)として出演しています。

そもそも、私は「ターザン」のマーゴット・ロビーが出ていると聞いて、どのぐらい違うキャラになっているのか見てみたくて観賞した作品でしたが、これは一見の価値がありました。手応えのあるコミックもの、を見てみたい方はぜひ劇場の大画面でご覧を。

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