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2016年6月11日 (土)

デッドプール

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 マーベル・コミック・シリーズの新作映画「デッドプール」を見ました。主に「アベンジャーズ」シリーズの世界観と、「
X-MEN」シリーズの世界観の二本立てで展開している現在のマーベル関連の映画化ですが、デッドプールはX-MEN人脈のキャラクターです。すでに「ウルヴァリンZERO」でライアン・レイノルズ演じるウェイド・ウィルソン(後のデッドプール)が登場していました。しかし、あくまでウルヴァリンの引き立て役であり、この作品の冒頭で「ウルヴァリンにとにかくゴマをすってスピンオフを作ってもらおうと運動した」とありますように、実際にいろいろ紆余曲折を経て、本作の映画化が実現した、という次第です。

 何しろデッドプールというのは、ミュータント・ヒーローの世界でも決して保守本流を歩んでいるキャラクターではなく、かなり型破りな人物です。一匹狼的なアウトローという意味ではウルヴァリンも幾分、そうなのでしょうが、デッドプールは正真正銘のアンチヒーロー的な存在で、しかもコメディー・ヒーローです。優等生的な要素はかけらもない、常に減らず口をたたいて暴れまくるとんでもない男です。さらにこのキャラは、原作コミックでも「第四の壁を破る能力」を持つ特殊キャラとして描かれています。つまり、物語の進行を無視して、突然、読者に語りかけるという、つまりその世界から超越しているというか、相対化しているというか、作品の中の役柄を演じながら自己批評しているメタ的なキャラなのです。よって本作でも、デッドプールはしばしば周囲の人間を無視し、物語の展開から逸脱して、観客に向かって説明を始めてしまいます。

 この特異な世界観を、どのように生かして描くか。デッドプールの映画化はその点が初めから注目されていたようですが、本作は見事にうまくいっているようですね。

 

 かつて軍の特殊部隊のエリート兵士だったウェイド・ウィルソン(レイノルズ)ですが、今はその日暮らしの何でも屋稼業で、旧友ウィーゼル(T.J.ミラー)の経営する酒場を拠点にして、ちょっとしたトラブルの解決から、しばしば傭兵として危ない仕事まで請け負っています。ある日、街で出会った高級娼婦のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)に本気で恋をしたウェイドは、ついに結婚の約束までしますが、幸せな日々は長くは続きません。突然、倒れたウェイドは医師から末期がんであることを告げられます。

 死を覚悟して絶望するウェイドですが、ウィーゼルの店を訪れたあやしげなエージェントから「がんを治す特効薬があり、うまくいけば不死身の肉体になれるが、その実験台にならないか」と持ちかけられます。迷った末に実験台なることを決めたウェイド。しかし、実験の責任者エイジャックス(エド・スクライン)は、自らも超人になる血清を肉体に投与してミュータント化した恐るべきサディストであり、瀕死の人々を集めては超人化実験をし、うまくいった者は売り飛ばす、といった非道な行為を繰り返す悪人でした。

 ウェイドも血清を投与された後、エイジャックスと、その手下の怪力の女性エンジェル(ジーナ・カラーノ)からなぶりものにされ、拷問のような虐待を受け続けます。そしてついに彼の肉体の中で超人因子が発動し、肉体が変化しますが、二目と見られないような恐ろしい顔に変貌してしまいます。

 怒りを爆発させたウェイドはエイジャックスの施設を破壊し、逃げ出しますが、恐ろしい化け物となってしまった姿でヴァネッサの前に現れる勇気が出ません。まずはエイジャックスを探し出し、復讐するとともに、顔を元に戻させなければ。ウェイドは自ら作った赤いコスチュームに身を包み、ウィーゼルの店で流行っていた死を賭けた賭博にあやかって、デッドプールと名乗り殺戮と破壊を開始します。しかしそんな彼の非凡な能力に目を付けたX-MENメンバーのコロッサスと、その教え子のネガソニック(ブリアナ・ヒルデブランド)が介入してきて、デッドプールをX-MENに勧誘してきます・・・。

 

 ということで、本作で主人公本人が何度も強調するように、「これはラブストーリー」です。実際のところハチャメチャなキャラによるギャグや、かなり陰惨な殺戮シーン、それに拷問シーンなどが延々とあって、中盤は決して明るいコメディーではなく、それにもかかわらず全編のトーンは純愛ものと言ってよい。何しろ、最後の決めはWHAM!の名曲「ケアレス・ウィスパー」だったりします。それがまたぴったりのムードの映画です。

 今まで、スカーレット・ヨハンソンの元夫、というイメージばかり強く、知名度の割に今一つ代表作のなかったライアン・レイノルズにとって、デッドプールは、はまり役にして当たり役となったようです。レイノルズ自身も、デッドプールの人格は非常に自分の地のままに近いと言っているようです。

 ヒロインのモリーナ・バッカリンはブラジル出身。これまでテレビ中心で活躍していた人のようですが、すごい美人! ハリウッドには、こんな人がまだ埋もれていたんだな、と驚かされます。これは本作で一躍、注目されるでしょう。

 「トランスポーター」シリーズで主演するエド・スクラインと、本物の武闘家で女優でもあるジーナ・カラーノの2人の悪役コンビが魅力的です。

 おふざけやパロディー満載の本作ですが、先ほども申したように中盤はかなり陰惨です。しかしここを乗り越えないと、最後が利いてこない。最後はとてもいいお話だった、と素直に見られる久々の快作です。

 ところで。デッドプールは背中に2本の日本刀のような刀を装備していますが、原作コミックではなんと、日本で修業したことになっているとか。しかもなぜか「相撲部屋」で修業したのだそうです。どうもそのへんは日本人から見ると違和感がありますが、彼が日本的な武器を操るのも、そういう背景があるからだと言います。

 さらに、デッドプールの戦闘中だろうが、シリアスな場面だろうが構わず放言を繰り出し続けるあのキャラ設定には、先日、亡くなったばかりの偉大なボクサー、モハメド・アリ氏が参考にされているのだとか。アリ氏もファイト中、ずっといろいろ相手を挑発するような放言を続けることで有名でした。もちろん口だけでなく、実力も伴っていたので人気があったわけですが、デッドプールもアリ氏の「有言実行」スタイルを引き継いでいるわけです。

 それにしても、私ぐらいの世代だと、久々にWHAM!を聞いてみたくなるような作品でした。なにがなし古き良き時代と、殺伐とした今とがクロスオーバーするような感覚を味わえる作品でした。

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