« レヴェナント 蘇えりし者 | トップページ | 音舞の調べ(芸大にて) »

2016年5月12日 (木)

キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー

20160507022736


 映画「キャプテン★アメリカ/シビル・ウォー」
CAPTAIN AMERICA : CIVIL WARというものを見ました。シビル・ウォーと英語でいえば、「内戦」という一般名詞になりますが、しかし通常は、まずアメリカの19世紀の「南北戦争」を意味します。また英国では17世紀の清教徒革命時の「イングランド内戦」の意味でもあります。要するに外国の侵略軍との戦争でなく、同じ国民同士の内輪もめ、同士討ちの意味です。マーベル・コミックの世界では、日頃は味方として悪人や宇宙からの侵略者などと協力して戦っているヒーロー同士が、考え方の相違から同士討ちを始める物語が展開されており、本作はその枠組みを取り入れたものです。

本作はマーベル・コミックス・シリーズ「キャプテン・アメリカ」の3作目であると共に、「アベンジャーズ・シリーズ」を含めたマーベル・シネマティック・ユニバースの通算13作目に当たります。しかしまあ、2008年に「アイアンマン」が世に出てから8年の間に、13作品ですか。よく続くものです。

 実際、本作のパンフレットによりますと、シリーズ全体で、作中で死亡しておらず、今後も映画に登場可能なキャラクターが現時点で65人もいる、のだそうです。もちろん回想シーンや過去に遡った作品などを入れれば故人も登場可能なので、何人になるかわかりません。なんとも巨大な大河シリーズとなったものです。

 キャプテン・アメリカは第二次大戦中に登場したスーパーヒーローの最古参。アベンジャーズ・チームの司令塔です。だから彼の登場するシリーズは、映画化シリーズの中でも骨格に当たるストーリーになっており、今作もマイティ・ソーとハルク以外はアベンジャーズのメンバーが総出演しているので、全体の展開上からも見逃せない一本になっております。

 逆に言えば、本作はこれまでの作品を全然、見ていないと流れが分かりにくいと思われます。ごく簡単に振り返りますと、第二次大戦中にナチスの特殊組織ヒドラと戦うために超人として生まれ変わったスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は、戦略科学予備軍SSRの英国人将校ペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル)と恋に落ち、「キャプテン・アメリカ」と名乗って連合軍の勝利に貢献します。作戦中に幼馴染のバッキー・バーンズ軍曹(セバスチャン・スタン)を失い、自身も事故により極地の氷の中で永い眠りにつきます・・・。

 66年後、目覚めたスティーブは、すでに年老いたペギーと悲しい再会をします。彼は世界を守るための超人集団アベンジャーズに参加し、かつてペギーが設立した組織の後身「シールド」の一員として働くことになります。しかし、シールドの中にはヒドラの残党が食い入っていること、さらにバッキーが生き残っていて、ソ連KGBに巣食っていたヒドラ残党の暗殺者となり、現在に至るまで人殺しを重ねている事実を知ります。シールドはヒドラの画策が露見して解散し、アベンジャーズはアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)の財力に頼った民間組織となります。しかし、トニーは個人的に地球を防衛するシステム「ウルトロン」を開発したものの、これが暴走。アベンジャーズは人類を滅ぼしかねないウルトロンを止めることに成功はしましたが、東欧の小国ソコヴィアを壊滅させてしまったのでした・・・。

 ということで、何度も人類の危機を救ってきた超人たちですが、そのために払った犠牲も大きく、特に1年前の戦いで一国を滅ぼしてしまったことは、多くの人々に疑問を抱かせることとなりました。本作はそこから始まることになります。

 

 アフリカはラゴスで、元シールド隊員でヒドラ残党であるラムロウ(フランク・グリロ)のテロを未然に防いだアベンジャーズ。しかしワンダ(エリザベス・オルセン)の少しのミスがもとで、多数の一般市民を犠牲にしてしまいます。これを契機に、アベンジャーズを野放しの任意組織として放置しておくことは危険だ、という声が高まり、世界中の国がヒーロー集団を国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」を締結することで合意。かつて陸軍軍人としてハルクを追ったことのあるサディアス・ロス国務長官(ウィリアム・ハート)は合衆国政府を代表し、ヒーローたちに協定書への署名を求めてきます。トニーは真っ先に署名に同意し、軍人でもあるウォーバード(ドン・チードル)はもちろんのこと、ヴィジョン(ポール・ベタニー)、ナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)もこれに賛成しますが、これまでの経験から組織というものに懐疑的なスティーブは署名を拒否。サム(アンソニー・マッキー)とワンダも署名を拒みます。そんな中、ロンドンでペギー・カーターが亡くなった、という連絡が入り、スティーブは葬儀で彼女の棺を担ぎます。この場でスティーブは、かつてシールドの諜報員として自分の監視役「エージェント13」だったシャロン・カーター(エミリー・ヴァンキャンプ)が、ペギーの姪にあたる事実を知り驚きます。

 ウィーンでは、国連加盟国の代表が集まり、ソコヴィア協定の調印式が行われます。ここで謎の犯人による爆破テロが起こり、演説中だったアフリカのワカンダ国王が死亡。王太子のテイ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は復讐を誓います。

 爆破テロの実行犯は、監視映像からウィンター・ソルジャーことバッキーであることを知ったスティーブは、彼を止めるべく行動を開始。一方、バッキーを逮捕または殺すことを求めるロス長官の指令を受け、トニーはスティーブと鋭く対立します。こうして、自由な行動を求めるスティーブ派と、国連および政府の管理下に入ることを主張するトニー派に分かれて、ヒーローたちは争うことに。

ブカレストでバッキーに接触したスティーブは、彼がウィーンの爆破テロの犯人でないことを確信しますが、ついにファルコンともどもトニーたちに逮捕されてしまいます。

 そんな中、謎の男ジモ(ダニエル・ブリュール)が暗躍。彼はKGBでバッキーを暗殺者として使役していた旧ソ連軍大佐で、ヒドラ残党でもあるカルポフ(ジーン・ファーバー)から、バッキーを洗脳するための暗号書を奪取します。さらに1991年にバッキーが関与したある事件について執拗に追いかけます。その年は、かつてトニー・スタークの両親が何者かに殺害された年。そして、スターク夫妻が犠牲になった際、輸送中だった超人用の血清5人分も奪われており、その行方も分からなくなっています。一連の事件の背後であやしい行動をとるジモは何者で、何を企んでいるのか。そしてスティーブは旧友バッキーを守りきることができるのか。シビル・ウォーはテイ・チャラがヒーローとなったブラックパンサー、引退したはずのクリント(ジェレミー・レナー)、さらにアントマン(ポール・ラッド)、スパイダーマン(トム・ホランド)らも加わって、どんどんエスカレートしていきますが・・・。

 

 今回のキーパーソンであるヘルムート・ジモを演じたドイツ人俳優ダニエル・ブリュール。見覚えがあるなと思ったら、「戦場のアリア」でドイツ軍隊長ホルストマイヤー中尉を、「イングロリアス・バスターズ」ではドイツ軍のツォラー狙撃兵を演じていました。そんなわけなので、この人が英語で演技しているのを私は初めて見たことになります。それから、今回はおまけ的に登場したのが、スパイダーマンことピーター・パーカーの叔母メイ・パーカー役のマリッサ・トメイ。1992年のコメディー映画「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を獲得している彼女ですが、今回はトニー・スタークから「美人過ぎるおばさん」と呼ばれています。確かに51歳になった今も綺麗ですね。トム・ホランド主演のスパイダーマンでは、彼女が今後も出演してくれるのでしょう。

 それと、お約束のマーベル総帥スタン・リーさんが今回もしっかりセリフのある役で出演しています。93歳だそうですが、お元気ですね。

 という具合で、たくさんのキャラクターが出てきて大変そうなのですが、非常に巧妙な構成になっているためでしょう、これだけ多人数が絡んでも話がややこしくならず、ストーリーの展開ももたつくことなく、最後までぐいぐいと引き込んでいくのは見事なものだと思います。アメリカでの批評家筋や観客の評価も非常に高いそうです。テロリズムと復讐の連鎖、正義の相対性、そして組織と自由との対立・・・大変に重い課題が一本、背景に通っており、単純な勧善懲悪ものではない重厚さがあります。本作では、シンプルに倒していいような悪人、というのは出てきません。みなそれぞれの信念があり、想いがあって行動しており、その人の立場に立てば、こういう話にもなるだろう、と共感させられる部分が必ずある。みんな傷があり、苦悩があり、悲劇を背負っている、そういう描き方。混沌の現代ではヒーローものもこれほど深化するものなのでしょうか。

 といいながら、そこは娯楽作品で、笑えるシーンも実はかなり盛り込まれています。決して重々しいばかりの作品ではありませんが、見ごたえは相当にヘビーでもあります。単純明快なヒーローものだと思って甘く見ると、重い手応えに驚かされるかもしれません。

|

« レヴェナント 蘇えりし者 | トップページ | 音舞の調べ(芸大にて) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122224/63616535

この記事へのトラックバック一覧です: キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー:

« レヴェナント 蘇えりし者 | トップページ | 音舞の調べ(芸大にて) »