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2015年10月24日 (土)

ジョン・ウィック

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 「ジョン・ウィック」JOHN WICKなる映画を見ました。これ、久々にアクション映画に復帰したキアヌ・リーブスの新作です。しかし、本作のアメリカでの公開は昨年の10月。もう丸一年遅れでの日本上陸となりました。それは恐らく、日本での公開がためらわれた、のでしょう。1990年代に入って「リトル・ブッダ」「ドラキュラ」あたりから俄然、注目され、1994年の「スピード」から「マトリックス」三部作(99年~2003年)、「コンスタンティン」(05年)「イルマーレ」(06年)と大活躍したキアヌは正に飛ぶ鳥落とす勢いのトップスターでした。何か失速し始めたのは「地球が静止する日」(08年)で、興行的には成功を収めたにもかかわらず、批評家筋からは思わぬ不評を浴びたあたりから。ちょうど年齢も40代後半から50代に差し掛かり、彼自身、監督業や製作への関心も高まって出演数が減り、忠臣蔵をテーマにした「47 RONIN」(13年)も成功したとは言えず、ちょっとここ数年は、話題と言えば日本にお忍びでやって来てラーメン店巡りをしたとか、ストレスで激太りした、というようなものばかり。
 しかし、ここに来てアクション・スターとして完全復帰を果たした、といわれるのが本作です。好評を得て続編の製作も決まったようで、その高成績を受けて日本の劇場もようやく公開する気になったのでしょう。
 お話としては、非常に分かりやすい「孤独な殺し屋による復讐もの」です。昔から無数にある類型の一パターンですが、しかし脚本に無駄がなく、細かいところの描写、アイデアが秀逸で不思議なスタイリッシュさに満ちた斬新な一本になりました。
 
 ニューヨーク近郊の豪邸に住む謎めいた男ジョン・ウィック(リーブス)。彼は最愛の妻ヘレン(ブリジット・モイナハン)を病気で失い、失意のどん底に落ち込んでいました。葬儀の終わった後、思いがけない荷物がジョンの元に届きます。中身はデイジーという名前の一匹の子犬で、亡きヘレンからの「あなたには私に代わって愛するものが必要。自動車ばかりに夢中ではいけないわ。この子を愛してあげて」というメッセージが添えられていました。涙にくれるジョンですが、デイジーが彼の心を癒してくれそうでした。
 そんなある日、ジョンはガソリンスタンドで自慢の愛車69年型フォード・マスタングに給油をしていました。それに目を付けた街のチンピラ、ヨセフ・タラソフ(アルフィー・アレン)は「この車はいくらだ」と聞きます。ジョンはその申し出を断りましたが、その夜、ヨセフは手下を引き連れてジョンの家に押し入り、デイジーを殺し、ジョンに暴行を働いてマスタングを盗んでいきます。
 怒りを爆発させたジョンは、密かに封印していた過去の自分を取り戻すことにします。彼はもともと、最強の殺し屋として名をはせた人物だったのですが、5年前、ヘレンとの生活を選んで引退していたのでした。
 ヨセフの父親でマフィアのボス、ヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクヴィスト)は、愚かな息子がしでかした過ちに狼狽します。ジョン・ウィックを敵に回せば、全員皆殺しにされるかもしれない・・・。案の定、差し向けた手下は全員、ジョンに返り討ちにされます。ヴィゴは腕利きのベテラン狙撃手で、かつてジョンの相棒だったマーカス(ウィレム・デフォー)に200万ドルでジョンの命を奪うことを依頼します。
 ジョンは殺し屋や裏稼業の連中が宿泊するホテル「コンチネンタル」に久しぶりに赴きます。闇の世界に隠然たる力を持つホテルのオーナー、ウィンストン(イアン・マクシェーン)は、ホテル内で仕事(殺し)をすることを禁じており、ホテルの中だけは安全な中立地帯となっていて、このルールを破った者には厳罰が科せられることになっています。ホテルには世界中の危険な商売に手を染める者が出入りしており、ジョンと旧知の女殺し屋パーキンズ(エイドリアンヌ・パリッキ)の顔も見られました。
 ウィンストンから、ヨセフがナイトクラブ「レッド・クラブ」にいる、との情報を得たジョンは単身、その場に向かいます。それはヴィゴがヨセフを囮として張り巡らせた罠でしたが、ジョンは危険を承知で乗り込んでいきます・・・。

 というような展開で、特に「殺し屋専門の高級ホテル」といった描写がとても面白いです。また死体処理専門の回収業者もあり、「ディナーを頼む」と電話すると来てくれるとか、裏稼業専門の口の堅い医者がいるとか・・・ディテールが非常に凝っています。
 徹底的に鍛えぬいたキアヌのアクションは、まさに完全復活の名にふさわしいもので、格闘、射撃、また格闘・・・と息つく暇もない戦闘マシーンのような彼のアクションは見事の一言です。しかし、シュワちゃんのターミネーターのような無敵な感じではなく、傷を負い、血を流しながら不屈の闘志で戦い抜くファイターです。また、ジョン・ウィックは機械のように冷静非情、ということもなく、狂信的な殺人鬼でもありません。妻や子犬に向けた優しいまなざしは今も孤独な仮面の下にあり、時に感情を爆発させ、微笑み、涙し、冗談を口にする・・・そのような人間味もあるジョン・ウィックの人間像は、一般的な観客から見ても共感を覚えるものでしょう。
 マフィアのボス、ヴィゴを演じているのはスウェーデン出身のミカエル・ニクヴィスト。「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」以下シリーズ三部作や「ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル」の悪役で有名な人です。それから注目されたのが、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の新シリーズで海賊黒ひげを演じて有名になったイアン・マクシェーン。今回は謎めいたホテルのオーナー役で、実に素晴らしい存在感です。この役柄はカッコいいですね。ちなみにこのマクシェーン、60年代の戦争映画「空軍大戦略」のころから出演歴がある大ベテランです。
 それから、いい味を出していたのが哀愁漂うジョンの理解者、マーカス役のウィレム・デフォー。実年齢はまだ60歳だそうですが、もっと年季の入った人に見えます。この人はアクションから戦争映画、ファンタジー、ヒーローものまで幅広く活躍していますが、一般には「スピード2」や「スパイダーマン」「レジェンド・オブ・メキシコ」などでの癖の強い悪役俳優のイメージが強いかも。なんといっても出世作は1986年の「プラトーン」で扮したエリアス・グロージョン軍曹役。ところが、そういえばその前の84年に、ダイアン・レイン主演でヒットした青春ロック映画「ストリート・オブ・ファイヤー」で、ヒロインを拉致する暴走族のリーダー(だからやっぱり悪役)を演じて最初の注目を集めた人でもあります。
 もう一人、元プロレスラーで、今、同時上映中の「マジック・マイクXXL」では男性ストリッパーを演じているケヴィン・ナッシュが、ナイトクラブの警備責任者フランシスの役で登場しています。短いシーンですが、ジョンとの昔からの付き合いが垣間見え、ジョンが単なる血に飢えた殺し屋ではなく、人情の人であることをさりげなく語る印象深いやりとりがあります。
 ということで、ジョン・ウィック・シリーズが新たなキアヌ・リーブスの代表作となっていくのでしょうか。今後の展開が楽しみです。

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