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2015年6月12日 (金)

メイズ・ランナー(+訃報クリストファー・リー氏)

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 この6月7日に、名優サー・クリストファー・リーさんが93歳で亡くなったそうですね。私は本当にこの方のファンでしたので悲しいです。「戦艦シュペー号の最期」のチョイ役(上の写真の左端、若い!)あたりでデビュー。大戦中には空軍大尉にまでなっていたリー様、さぞかし凛々しい軍人役なのか、というと、なんとドイツ戦艦シュペー号が沈没する様を見に来た野次馬群衆の一人、という本当のチョイ役です。しかし背の高さ、存在感は初めからありますね。その後は吸血鬼ドラキュラ伯爵役で一世を風靡。いとこのイアン・フレミング原作である007シリーズでは「黄金銃を持つ男」で鮮烈な印象を残しました。しかしこの方は、キャリアの後期になるほど、さらにどんどん仕事の幅を広げ、「スター・ウォーズ」シリーズでは中盤の盛り上げ役だったドゥークー伯爵を好演、さらに「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」6部作で魔法使いサルマン役を演じて、さらに代表作を増やします。まさに生涯現役、すごい方でした。ご冥福をお祈りいたします。
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  さて、それで私、このほど「メイズ・ランナー」THE MAZE RUNNERという作品を見ました。「迷路を走る人」という意味合いですが、これは何なのでしょう? 登場人物は、巨大な迷路に囲まれた監獄のような場所に閉じ込められてスタートします。その間の経緯は一切不明、自分が何者でどうしてここにいて、何をしなければならないのかわからない、という状況から始まる作品ですが、まさに人生とはそうやって、突然、迷路に放り込まれて手さぐりする実験みたいなもの。そういう意味では人生の暗示とか縮図そのものとも読めます。そのテーマそのものが、近年アメリカではやりのジュブナイル小説の一派、ヤングアダルト(YA)の典型例といえそうですね。このところのハリウッド作品には、「トワイライト」「ハンガー・ゲーム」「ダイバージェント」といったYA文学の映画化が多いですが、日本の「ライトノベル(ラノベ)」とテーマ的な部分や作風において似たような位置にあるのですけれど、まあ全体にディストピア(ユートピア=理想郷の逆、暗黒世界)色が強いのがYA文学の特徴。このメイズ・ランナーはそういう意味で代表選手的な一作のようです。
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 主人公(ディラン・オブライエン)は突然、自分が猛スピードで上昇するリフトに載せられていることに気付きます。なぜここにいて、どこに行くのか、そもそも自分が何者なのか、名前さえ思い出せません。混乱する中、地上に付くと、見知らぬ少年たちが待ち構えています。少年たちのリーダーであるアルビー(アムル・アミーン)と、副リーダーのニュート(トーマス・ブロディ=サングスター)、それに世話係となった面倒見のいいチャック(ブレイク・クーパー)から、この地は巨大な迷路に囲まれた謎の世界で、月に一度、記憶を意図的に消去され、名前さえすぐには思い出せない少年が一人だけ、リフトで送り込まれてくること、この地がどういう意味を持ち、自分たちがここに送り込まれた理由はだれにも分からないこと、迷路は定期的に位置を変える仕組みであるうえ、グリーバーという化け物が通路内に潜んでおり、容易に脱出できないこと、よってこの地では①役割を果たすこと②仲間を傷つけないこと③無断で迷路の壁を決して越えようとしないこと…の3箇条のルールを守るよう求められます。しかし、そういう消極的にこじんまりとコミューンを作って待つような姿勢に、主人公は初めから違和感を覚えます。仲間たちの中で、ミンホ(キー・ホン・リー)率いる俊敏さと決断力のある数名の者だけが、ランナーと名乗り、毎日、迷路に潜入して構造を探っています。
 初めから威圧的で主人公を毛嫌いしていた少年ギャリー(ウィル・ポールター)から勝負を挑まれた主人公は、頭を強打した瞬間、自分の名前が「トーマス」であることを思い出します。
 トーマスはある日、錯乱したランナーのベン(クリス・シェフィールド)に殺されかけます。ベンは、迷路でグリーバーに襲われ、毒針を刺されており、この毒で一度、錯乱した者は治ることはなく、ベンはやむなく迷路に「追放」され、見殺しにされます。この件を受けて、アルビーはミンホと共に迷路に入り、グリーバーの動きを探りに行きますが、アルビー自身もグリーバーの毒牙にかかってしまいます。2人を救出しようと、ルールを無視して迷路に入ったトーマスは、それまで誰も姿さえまともに見たことがなかったグリーバーと格闘したうえ、ついに倒してしまいます。
 新入りの分際で、グリーバーを倒し、アルビーを救い出したトーマスが英雄視されることを我慢ならないギャリーは、トーマスを異端者として排除しようとし、一方、ミンホやニュートは、トーマスの好奇心と度胸のよさに惚れ込んで、彼を支持します。こうして仲間たちの間に亀裂が走ります。さらにそこに、衝撃的な展開が待っていました。つい3日前にトーマスが来たばかりであるため、来月まで次の新入りは来ないはずなのに、急にリフトが動き出し、そこには一人の少女(カヤ・スコデラリオ)が乗っていたのです。この地での生活が始まって以来の3年間、送り込まれたのは全員が少年だったのに、です。しかも、彼女は手に「彼女が最後の一人」と書かれたメモを握っていました。少女は初めから自分の名前がテレサであることを記憶しており、そしてなぜか、トーマスの名前を知っていました。トーマスも、自分の夢の中にたびたび出てきた謎の少女がテレサであることに気付きます。2人には、こちらにやってくる前に何かがあったはずですが、思い出せません。しかし、トーマスとテレサが相次いで送り込まれたことには、何らかの意味があるはずです。
 平穏な日々が終わり、変化の時が訪れたことをトーマスたちは悟ります。グリーバーと戦い、迷路を抜け出し、自由を得ようとするトーマスたちと、現状維持を望むギャリーたちの対立が深まる中、これまで決して迷路から出て来ることがなかったグリーバーたちが一斉に攻撃してきます。さて、彼らは絶体絶命の状況から、巨大な迷路を抜けて生き延びることができるのでしょうか…。
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 というような展開で、この後、一応、この作品の謎ときというか、迷路を越えた向こうの世界がどういうことになっていて、この場所がなんで、彼らが何者だったのか、ということが明らかになりますが、本作は3部作の第一部ですので、どうもこの「暫定的な謎解き」がすべて真実だとも思われず、何やら大きな陰謀が背後にあるようで、次回作につながっていくようです。
 ギャリー役のポールターは、見覚えがあるなと思えば、「ナルニア国物語」の3作目でベベンシー兄妹のひねくれ者の従弟ユースチスを演じていたあの子役です。大人になり、立派な個性派俳優に成長していましたね。こういう人って貴重です。今後もどんどん活躍しそうです。
 紅一点のテレサ役スコデラリオという人が、後半に登場なんですが、とにかく野性的な魅力があり、綺麗な人です。すでに「パイレーツ・オブ・カリビアン」の新作でヒロインに抜擢されているそうで、これはきっと有名な人になりそうです。
 主人公トーマス役のオブライエンは好演していますが、ちょっと役柄から求められているカリスマ性が不足かも。しかしまあ、徐々に成長していく、というのがこういう物語の基本なので、この人自身も3部作をやれば変わっていきそう。ちなみにこの人、いま上映中の「トゥモローランド」のヒロインであるブリット・ロバートソンと交際中、とのことです。
 けっこうこの映画、辛口な批評が日本では多いようですが、虚心に見てみると、十分に面白い作品だし、今後の展開も大いに楽しみな作りになっています。YAものが好きな人は見ておいて損はない一作だと思いますし、またこういう若手が多数出ている群像ものは、後で「ああ、やっぱりこの人は大物になったな」という見方の楽しみがあります。本作もきっと、10年ぐらいたつと「あの○○が駆け出し時代にあんな役で出ていたのか」というのがありそうです。「戦艦シュペー号の最期」で全くのチョイ役だったクリストファー・リーさんのように、です。

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