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2015年4月 3日 (金)

ジュピター

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 ウォシャウスキー姉弟監督による新作映画『ジュピター』
Jupiter Ascendingというのを見ました。原題の意味は、「木星が昇る」、つまり占星術でいう木星が上昇宮にあって昇っていることを指しますが、もう一つ、「ジュピターが即位する」という意味にもなります。

前作「クラウド・アトラス」からは3年ぶり、そして完全オリジナル脚本の作品としては、2003年の「マトリックス・レボリューションズ」以来、12年ぶりという作品です。16年前に「マトリックス」で映画界を震撼させた鬼才姉弟の期待の新作なわけですが、その中身やいかに・・・。

 主演に「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンのライバル役で名を上げたウクライナ出身のミラ・クニス、お相手役に異色の男性ストリップ映画「マジック・マイク」が大ヒットしたチャニング・テイタム、そして「ロード・オブ・ザ・リング」でボロミアを演じたショーン・ビーンや、「博士と彼女のセオリー」でホーキング博士に扮して見事にアカデミー賞俳優となったエディ・レッドメインを配し、キャスティングは鉄壁といえます。

 

 お話は少し昔のロシア、ペテルスブルクから始まります。天体観測が生きがいの英国人マクシミリアン・ジョーンズ(ジェームズ・ダーシー)と恋に落ちたロシア人女性アレクサ(ユリア・ドイル・ケネディ)は妊娠。しかし、強盗に襲われてマクシミリアンは殺されてしまいます。残されたアレクサは故国を見捨て、アメリカに向かう大西洋上で娘を出産、マクシミリアンの遺言に従って、赤ん坊に、木星を意味するジュピターと名付けます。

 そして現代のアメリカ、シカゴ。母や叔母夫婦と暮らすジュピター・ジョーンズ(クニス)は、無国籍の移民という身分でアメリカ社会のまさに最底辺にあって苦労しています。毎朝4時45分に起きると、分刻みでトイレ掃除にベッドメイクなど、請け負っている数軒の家庭の家政婦として働いており、疲れ切ってすっかり人生に幻滅しています。

 そんなとき、ネットで見つけたのは高額の天体望遠鏡。亡き父が愛していたものと同じモデルです。望遠鏡を買うのに、どうしてもお金が必要になったジュピターは、いとこのヴラディ(キック・ガリー)に唆されて、婦人科病院で卵子を提供して売り、お金を得ようとします。

 ところでジュピターは日ごろから、用心のために婦人科病院では、友人のキャサリン・ダンレヴィー(ヴァネッサ・キルビー)の名を使って受診していました。ある日、突然ジュピターの目の前で、キャサリンが謎の醜い生物に襲われる事件が起こります。ジュピターはそのさまをスマートフォンで撮影しますが、次の瞬間、ジュピターもキャサリン本人もその記憶を失ってしまいます。

さて、いよいよ婦人科病院でキャサリンの名を名乗り、手術を受けようとするジュピターですが、スマホに入っているエイリアンの写真に気が付いて衝撃を受けます。本当にエイリアンたちに狙われていたのはキャサリンではなく自分なのかも、と思い至ったジュピターは、急激に不安を覚え、手術を回避しようとしますが、時すでに遅し。医師や看護師たちは正体を現しますが、やはり彼らは人間ではなく、キャサリンを襲ったのと同じ醜いグレイ・タイプのエイリアンでした。

 そこに現れて危機を救ったのは、ケイン(テイタム)という逞しい青年。空中を飛行できるブーツを履き、超人的な活躍でジュピターを助けたケインは、自分たちが異星人であることを告白します。さらにケインはジュピターに、地球人類とは異星人によって管理され、ある目的のために「栽培されている」家畜のような存在である、という事実を告げます。彼の話によれば、長年にわたり宇宙を支配してきたアブラサクス王家の女王が亡くなり、現在は長男のバレム(レッドメイン)、長女のカリーク(タッペンス・ミドルトン)、次男のタイタス(ダグラス・ブース)の3人が熾烈な跡目争いをしているとか。今、地球の「所有者」は長男バレムですが、その手先の異星人が、ジュピターの命を狙っているのだ、といいます。ケインは次男タイタスの依頼で、バレムの手の者の攻撃からジュピターを助けに来た、というのです。

 ケインはジュピターを伴い、農夫を装って地球に暮らす元宇宙連邦軍「イージス」の軍人スティンガー(ビーン)の元に身を寄せますが、スティンガーはジュピターに会って、一目で彼女の正体を見抜き、「陛下」と呼びかけます。それはなぜかといえば、ジュピターも実はアブラサクス家の人間であり、正統な王位継承者で、地球の所有権を持っているからだ、というのです。長男バレムがジュピターの命を狙うのもそれが原因だといいます。そしてスティンガーによれば、10億年も前に宇宙に誕生した人類は各地に植民惑星を開拓、地球もアブラサクス家が意図的に先住生物である恐竜を滅ぼしたうえで、人類を「栽培」するための農場として整備してきたもので、やがて「収穫」するときが来る、というのです。

 あまりに荒唐無稽な話に混乱するジュピターですが、すぐにバレムに雇われた異星人の賞金稼ぎ「ハンター」たちが襲撃してきます。そしてジュピターはあわや、殺されそうになる寸前。しかしピンチの中、ハンターの一人ラゾ(ペ・ドゥナ)が裏切り行為に走り、バレムの手下たちを皆殺しにしてしまいます。ラゾはジュピターを拉致して、長女カリークの星に連れて行き、ケインはその後を追いすがって行きます。

一方、王室の女性が拉致された、という事実は連邦軍の知るところとなり、ディオミカ・トゥシン艦長(ニキ・アムカ・バード)が指揮する宇宙戦艦が出動。王家の内紛からジュピターをめぐる宇宙規模の大騒動が勃発することに。さて、ジュピターと、地球の運命やいかに・・・。

 

ということで、典型的なスペースオペラで、またまさに底辺の女性が実は高貴な身分、というシンデレラ・ストーリーなわけですが、何か描き方が物足りなく、映像の素晴らしさは申し分ないのですが、実はちょっと見応えには不満がありました。どうしてもウォシャウスキー作品というと、見る側も期待が過剰になってしまうのでしょうか。ヒロインのジュピターが、どんな外的要因が変化しても、芯が変わらない強固な自我を持っている強い女性、という設定なのは分かりましたが、それがために、本当に最初から最後まで、あまり人物造形が変わらないのです。むしろ立場の変化で、弱々しい無力な女性が、強くたくましく成長し、やがて偉大な存在になるようなお話の方が盛り上がるのではないでしょうかね。前の「クラウド・アトラス」でペ・ドゥナが演じたソンミのような話の方が。

突然、つまらない自分がいかに重要人物であるか知らされ、面食らいながら謎の男性に助けられて自覚に目覚め、命がけで逃亡する、という構図は「ターミネーター」を思わせますが、あれはサラ・コナーの成長と、男性との切ない恋、そしてあまりにも強すぎる敵、という要素がはっきりしていて面白かったのですが、本作はその辺が弱いような気がいたします。現代の地球人類では太刀打ちできないシュワちゃんの無敵ぶりも、いかに異質な世界の存在が突出しているか、そしてそのような強敵が死力を尽くして命を狙う事実から、間接的に、いかにヒロインが重要な存在なのか、というのを見せつけて効果的でしたが、本作に出てくるエイリアンは、手先の連中はハイブリッド(異種混合種)のモンスターですが、メインになるアブラサクス王家の人々などは、いかにも地球人と変わらないので、どうもピンとこない感じもします。確かに地球は彼らの植民地なので、地球人と地球の文明が彼らのそれに似ているのは当然、という理屈なのでしょうが。

また、以前の女王がどれだけ偉大な人物だったか、というのも全く描写がなくて、その女王とジュピターのどこが同じで、どこが違うのか、ルックス面でも似ているのか、意外に似ていないのか、というのもよく分かりませんでした。やはり女王が崇拝されていた時代の回想シーンは欲しかったように思うのですが。

そして、手続きを経て女王に「即位」したはずのジュピターに対する周囲の反応のおざなりで冷たいこと。結局、何がそんなに重要だったのか、よく分からない描き方なのも違和感がありました。

全体に、「実はこの人は、本当はすごい人なのだ」という水戸黄門的なカタルシスを見る人は求めてしまうと思いますが、そういう点が非常に弱いのが、弱点だと思いました。スティンガーが跪いて「陛下」と呼ぶあたりまでは、良かったと思うのですが・・・。

 

しかし、キャスティングという面ではなかなか、主演、準主演の人たち以外にも注目株がそろって、興味深い一作だと思います。

やはり、オスカー俳優エディ・レッドメインの演技力は群を抜いていました。肉親をも手に掛ける血塗られた王子という役どころの彼は、そのシーンだけ、シェークスピアやギリシャの古典悲劇を思わせる見事な演技です。「レ・ミゼラブル」ではマリウス役を軽々とこなし、ミュージカル界のトップ俳優として圧倒的な歌唱力も披露しており、向かうところ敵なし。こういう娯楽作品でも隙のない存在感を示して、今後ますます活躍しそうです。今回も、映画の終盤はこの人の演技力で支えられていた感がありますね。

他のキャストで気になったところでは、タイタス役のダグラス・ブース。「ノア 約束の舟」でノアの長男セムを演じて名を知られるようになった新鋭ですが、なかなかのイケメンぶり。今後、人気が出てくるかもしれません。長女カリーク役のタッペンス・ミドルトンは、同時上映中の「イミテーション・ゲーム」でもベネディクト・カンバーバッチ扮する主人公に、ドイツ軍の暗号を破る重要なヒントを与える役どころとして登場。これから出番が増えそうな人です。いとこのヴラディー役を演じたキック・ガリーは、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」でトム・クルーズと共に戦う分隊の兵士役で出ていた人、それからジュピターの父親マクシミリアンをやっているジェームズ・ダーシーは「マスター&コマンダー」で若い英海軍士官を演じて有名になり、「クラウド・アトラス」では同性愛の原子物理学者シックススミス博士をやっていました。

「クラウド・アトラス」組と言えばラゾ役のペ・ドゥナも顔を見せていますね。前作ではほぼ主演だった彼女ですが、今回の出番はごく少ないです。しかし、青い髪の謎めいたハンター役は、非常にクールでカッコいいです。もっと最後まで活躍してほしいキャラでした。

意外なところで、ジュピターの即位を認定する紋章官としてテリー・ギリアムが登場。彼の監督作品「未来世紀ブラジル」を思わせるシーン展開は、実際に同作品へのオマージュでもあるそうです。

それからもう一人、タイタスの副官として、シカの遺伝子を組み込んだ女性エイリアンが登場しますが、これはググ・バサ・ローが演じていました。とても美しい人で、若いころのハル・ベリーを思わせます。これまでもジュリア・ロバーツとトム・ハンクスの「幸せの教室」の女子大生役などで注目されていましたが、これを契機に一層、注目されてくるかもしれません。

とまあ、実はこれから期待されそうな人が目白押しの作品、ではありますので、そういう興味でご覧になってもいい映画であるかもしれません。

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