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2014年11月 6日 (木)

ドラキュラZERO

 ただ今、私たち辻元夫婦は、実は新作の最終追い込みをしておりまして、かなり毎日、厳しいのですが……そんな中、見に行きましたのが「ドラキュラZERO」DRACULA UNTOLDという映画。近年、人気急上昇中のルーク・エヴァンス主演の作品です。「インモータルズ」とか「三銃士」で存在感を見せて注目され、「ホビット」シリーズで準主役に抜擢。そして今作はユニバーサル映画が、マーベル・コミックの「アベンジャーズ」シリーズの向こうを張って制作を計画しているというユニバーサル・モンスターのリメイク計画の第1作の主演を任されたわけ。責任重大なんですね。
 ブラム・ストーカーがドラキュラ伯爵なるモンスターを創造した原作小説の「ドラキュラ」を発表したのは1897年。そして、それを基に作られた吸血鬼映画の走りといえば、1922年にドイツで製作された「吸血鬼ノスフェラトウ」だとよくいわれます。しかし、ドラキュラという名前を使って初めて製作されたのは、ユニバーサル映画が、あのベラ・ルゴシを主演にして世に放ったドラキュラ映画の第一作「魔人ドラキュラ」(1931年)なんですね。つまりドラキュラ映画の元祖はユニバーサル、なわけです。しかしドラキュラ映画は、1958年にハマー・フィルムがクリストファー・リーとピータ・カッシングを起用して作った「吸血鬼ドラキュラ」が大ヒットして、それからハマーは70年代までに9本も製作、ユニバーサルとしてはすっかりお株を奪われてしまった次第。1992年にはトライスターが製作したフランシス・コッポラ作品「ドラキュラ」がヒットしました。まだ知名度の低かったゲイリー・オールドマンやキアヌ・リーブスを有名にした映画でしたね。
 どの作品もブラム・ストーカーの原作を下敷きにしているのですが、そもそも原作からしてその「ドラキュラ」なる人物が何者なのか、はっきり描いていない。それもそのはず、ストーカーは15世紀に実在したルーマニア、ワラキア公国の歴史上の君主、ドラキュラ公ことヴラド3世の伝説を基にオリジナルの吸血鬼物語を創作したわけで、そもそもなんでこういう吸血鬼が生まれたか、なんてところはそんなに描写がない。ただ、92年のコッポラ版では、ヴラド公がなんで吸血鬼になっちゃったのか、冒頭部分でそれなりに丁寧に描いていました。
 で、今回のユニバーサルによるドラキュラ・リブート計画としましては、その原点、15世紀に実在のドラキュラ公ヴラドが、なんで吸血鬼ドラキュラになっちゃったのか、というのを描くことにしたわけであります。
 史実では、ワラキアは強大なオスマン帝国に臣従を余儀なくされ、ヴラド公は子供のころに人質に出されています。当時、オスマン皇帝は旺盛な征服欲で有名だったメフメト2世。東ローマ帝国を滅ぼし、コンスタンチノポリスを征服してイスタンブールとし、しきりに欧州に侵攻を重ねておりました。ヴラド公はその中で果敢にオスマン軍に抵抗を試み、何度も勝利を重ねています。いわばメフメトが最も恐れた敵だったわけ。だからヴラド公はルーマニアでは今でも最高の英雄で、魔物だなんてとんでもない。一方のメフメトは1481年に陣没していますが、その最後ははっきりしていないそうです。このへん、この映画化のために都合がよかったわけですが…。
 ◆  ◆  ◆
 ときは15世紀後半。幼いころにオスマン帝国に人質として出され、苦労したヴラド3世(エヴァンス)も、ワラキア公として即位してからは、美しい妻ミレナ(サラ・ガドン)と結婚して世継ぎの息子も生まれ、オスマン帝国ともうまく付き合って幸せな10年間を過ごしていました。しかし現在のオスマン皇帝であり、かつてヴラドの戦友でもあったメフメト2世(ドミニク・クーパー)はついに欧州侵攻の野心をむき出しにし、本性を現します。メフメトは貢納金と共に自分の親衛隊イェニチェリの兵士として、ワラキアから1000人の子供を差し出すように要求、ヴラドの一人息子も人質として出すように命じてきました。もちろん、それに従えばよし、逆らえばこれを口実にワラキアを武力で併合する魂胆です。苦悩したヴラドですが、ついにオスマン帝国の使者を斬り捨て、オスマン帝国との開戦を決意します。
 とはいえ、当時、世界最強のオスマン軍を相手に小国ワラキアがまともに抵抗できるはずもなく、領民と妻子を守るには尋常の手段ではとても……。
 悩みに悩んだ末、ヴラドは自分を犠牲にしても国と愛する者たちを守り抜こうと決意します。それは、領内の山奥に数百年も生きる伝説の吸血鬼(チャールズ・ダンス)と取引し、悪魔の力を手に入れてオスマン軍を破る、というもの。しかし吸血鬼が言うには、力を手に入れると同時に、人の血を渇望するようになる、3日間その渇きに耐えれば人間に戻れるが、誘惑に負けて血を飲んでしまえば、永遠に吸血鬼のしもべとして生きることになる、というもの。
 ヴラドは3日の間にオスマン軍を破り、平和を取り戻そうとしますが、ミレナをはじめ周囲の人たちはヴラドの身に起こった異変に気付きます。オスマン軍の先鋒隊1000人をたった一人で全滅させてしまったヴラドの超人ぶりに、山の魔物と取引したのでは、という噂が流れ始め……。
 さて、ヴラドは迫りくるオスマン軍の脅威と、吸血の誘惑に打ち勝つことができるのでしょうか?
 ◆  ◆  ◆
 ということで、鍛えまくって本当に戦士の体形を手に入れたエヴァンスの肉体美と殺陣まわりの見事なこと。この人は本当にカッコいいですね。これは彼の一つの代表作になっていくのでしょうが、時代劇が本当に似合いますね。それと、山の吸血鬼を演じたチャールズ・ダンスがすごくいいです。存在感があります。後半、アッと驚くような変貌ぶりを見せますが、これが見ものです。ミレナ役のガドンはまだほとんど無名の人ですが、清新な演技でいいです。全体に悲劇的で暗い話なので、この人がとにかく光の部分を担っています。
 20141106044321


 まあ、結末は吸血鬼ドラキュラが誕生する、ということですから、伏せておくべき落ちもなにもないのですけれど、史実そのものがオスマン帝国の侵攻を前提とした、かなり可哀そうなお話なので、どうしても暗い感じに。上映時間1時間32分といいますが、もっと長い作品に思えました。しかし最後、救いもある描き方に。今後、シリーズ化が見込まれていますが、展開が楽しみです…まあ、時代劇としては今回限りになるかもしれないのが残念ですけれど。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「ラスト・サムライ」の衣装担当ナイラ・ディクソンが参加していて、コスチュームも見ものです。史実とオリジナルをうまく組み合わせた素晴らしい重厚な衣装です。ヴラドやメフメトのまとう甲冑などもよく出来ていますね。オスマン軍の軍装も、まあ有名なイェニチェリ軍団は描かれていないようなんですが、かなりしっかりと作られているようです。

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