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2014年11月28日 (金)

インターステラー

 

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 クリストファー・ノーラン監督の話題作「インターステラー」Interstellarを見ました。原題は「星間」という意味。星の海を越えて遠い宇宙の果てに至る冒険を大きなスケールで描いています。
 それにしてもこの作品、大変に重量級のキャストの布陣ぶりです。主演にアカデミー賞俳優のマシュー・マコノヒー、ヒロインにやはりアカデミー賞のアン・ハサウェイ、共演のベテランにはこれまたオスカー受賞のマイケル・ケイン、エレン・バースティン。ほかの出演者もジェシカ・チャステイン、ケイシー・アフレック、ジョン・リスゴー・・・とオスカー・ノミネート歴のある実力派ばかり。また大事な役どころにマット・デイモンまで出ています。
 実際、本作はかなり哲学的なSF映画です。何に似ていると言えば、やはり「2001年宇宙の旅」に非常に似た持ち味があります。中盤からは宇宙船の中の密室劇で、難解な設定や、異常な極限状態を俳優の演技力でしっかり描かないと全く様にならない難しい作品だったと思います。SFといっても、派手なCGさえ使えば今やなんでも描けるわけですが、本作はそういう薄っぺらい映画ではなく、重厚です。3時間近い長尺ですが、それだけの濃さがあります。
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 かつてNASAの宇宙飛行士の訓練を受けたクーパー(マコノヒー)ですが、突然の重力異常による墜落事故で引退し、今はトウモロコシ農家となっています。妻に先立たれ、長男トムと10歳の長女マーフ(マッケンジー・フォイ)、それに父親のドナルド(リスゴー)と暮らすクーパーですが、実際は農夫としての現在の生活に疑問を抱いています。しかし、地球の環境は急速に悪化し、すべての技術開発は農業以外は放棄され、食料の生産をする農家と農業技術者のほかは無用、ということでNASAも10年前に組織として廃止されていました。
 異変はマーフの部屋で起こります。毎晩のように本棚の本が規則的に落ちるのです。幽霊の仕業か、というマーフをクーパーは一笑に付しますが、やがて、その本の落ち方は明らかに人為的なもので、重力を用いてある座標を示している暗号だと気付きます。
 その地点にたどり着いたクーパーは、解散したはずのNASAが秘密裏に活動を再開していることを知ります。熟練の飛行士を探していたブランド教授(ケイン)は、人類を救うべく外宇宙に宇宙船を派遣する計画があることをクーパーに告げ、パイロットとして協力するように要請します。40年以上前に、土星周辺で重力異常が起き、外宇宙につながっているらしいワームホールが発見されていたのです。すでに10年以上前から、勇敢な12人の志願者がワームホールを抜けて探査の旅に出かけていました。そして、マン博士(デイモン)ら3人の到着した惑星から、人類の移住に有望という信号が届いていたのです。
 人類の未来をかけて地球を離れる決意をするクーパーですが、マーフは自分を見捨てていく父親を理解できません。クーパーは「必ず帰ってくる」と約束します。しかし、いったい何年かかるのか、誰にも分からないことなのでした。
 クーパーは、ブランド教授の娘アメリア(ハサウェイ)らと宇宙船エンデュアランス号で飛び立ち、まずは土星までの数年の旅を経験します。さらにその先、どこか異なる銀河系に向かうクーパーたちには過酷な運命が待ち受けています。
 一方、地球に残されたマーフはブランド教授を補佐する科学者の道を選びます。宇宙空間の異なる時間を生きるクーパーにとっても残酷なことに、地球の時間はどんどん早く経過し、とうとうマーフ(チャステイン)は父親クーパーが地球を出て行った年齢を超えてしまいます。
 親娘は本当に再会することができるのでしょうか? そして人類の運命は・・・。
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 ということで、先にも書きましたがS・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」の現代版という感じもする本作。土星の重力異常を感知して探索の旅に出る、という基本の部分がよく似ています。あちらではコンピューターが乗組員を裏切るのですが、今作でも人工知能搭載のロボットが大活躍します。その描き方がどう違うのかは一つの見ものです。また、この計画にはクーパーも、責任者ブランド教授の娘アメリアさえも知らされていない秘密があるわけです。そういう何か後ろめたいものがある、という設定も「2001年」に似ているかもしれません(その後ろめたさゆえに、2001年のコンピューターHALは発狂してしまうわけでした)。
 マシュー・マコノヒーは「マジック・マイク」あたりから急激に演技派という呼び声が高まりアカデミー俳優にまでなりました。今回もこの人でなければ成り立たない作品だったのではないかと思います。アン・ハサウェイをはじめ共演者も、冒頭に書きましたが実は演技力が勝負の重厚な作品ですので、すごく難しかったのではないかと思います。実際、一人でも足を引っ張るようなキャストがいたらダメな作品かもしれません。
 最後にどうなるか、はもうここでは決して明かせません。とにかく最後まで見応えのある作品でした。クリストファー・ノーラン恐るべし、です。
 

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2014年11月27日 (木)

自衛隊QMフェアと「酵母工業」のパン。

 陸上自衛隊の松戸駐屯地にある陸上自衛隊需品学校にて、QMフェアというものが開催されました。QMとはQuartermasterつまり主計、需品(じゅひん)、兵站(へいたん)、補給というような意味。要するに自衛隊の物資調達・補給部門に納品している業者、あるいは納入したい業者さんがさまざまな展示品を披露する、自衛隊関連物資の見本市、というようなものです。20141126152446



 なぜかこの日、木更津市のキャラクター「きさポン」が、自衛隊の迷彩戦闘服を着て場内で愛嬌を振りまいておりましたが…なぜ木更津から松戸に? もちろん木更津にも駐屯地があるわけではありますが。でもかわいいので、広報の女性自衛官の方に記念撮影してもらいました。20141126152511



 会場を回りますと、何しろいろいろな業者さんが試供品をくれます。特に最後の方に伺ったので、大盤振る舞い状態。戦闘糧食とかパンとか…しかし、本当に最近のこういう食品はうまいですね。驚くほど美味です。非常食とか戦闘食だとは微塵も思えないよい味です。
 ということで、帰ってみたらどっさり山盛り、食料品をいただいていました。これは助かります…。20141126182909



 中でも岐阜県可児市の「酵母工業有限会社」のロングライフパンは、非常に美味いので驚きました。ロングライフうんぬんを抜いて、純粋に美味です。
 楽天で通販もしている模様。http://www.rakuten.co.jp/koubo-panettone/
 こちら、90個で5000円! とかすごいセール売りもしているようですよ。Photo



 

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2014年11月26日 (水)

「華麗なるナポレオン軍の軍服」モデルアートと繊研新聞に書評

 

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私どもの翻訳書「華麗なるナポレオン軍の軍服」ですが、このほど「モデルアート」様と「繊研新聞」様から書評をいただきました。ありがとうございました。いずれもリュシアン・ルスロ氏の研究を高く評価していただき、日本に紹介できた私どもにとっても喜びです。また、モデルアートの方では「邦訳も信頼の置けるもの」という一言をいただきました! まあ実際、こういう特殊な分野となると翻訳もいろいろと…単に英語やフランス語に堪能、というだけではダメであって、19世紀当時のフランスの軍事用語を理解できないとどうにもならないわけで、そのへんも読み取っていただけて嬉しいです。重ねて御礼申し上げます。

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2014年11月20日 (木)

ダイエー・テディベア「ミディアム」も我が家に。

 

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前にちょっと触れたダイエーの一部店舗で展開中の「テディベア・キャンペーン」というものですが、1000円分の買い物をするとシールが1枚もらえ、これを台紙に張って提出すると・・・テディベアがもらえる、というわけではなく、しかし非常に安く手に入る、というキャンペーンです。①ベビーベア(座高16センチ)の場合、シール10枚で、希望小売価格1026円のクマが300円で買える、というわけ。以下、②スモールベア(24センチ)がシール15枚で2484円のものを700円で、③ミディアムベア(34センチ)だとシール20枚で3726円のものが1100円で、④ラージベア(46センチ)になると、シール30枚にて6156円のものが2000円で買える、というわけで、じつは我が家にはすでにラージベア君が鎮座しておるのですが、このほどさらに、ミディアムベアも手に入れました。20141119233557



 ラージと並べてみると、一回り小さいですが、34センチは十分な迫力です。これで1100円ならいいんじゃないでしょうか。20141119233717


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2014年11月11日 (火)

「華麗なるナポレオン軍の軍服」が「朝雲」と「歴史群像」で紹介されました。

 このたび防衛省職員・自衛官向けの専門紙「朝雲」に、「華麗なるナポレオン軍の軍服」の書評が載りました。以下のような内容です。Napoleon_cover



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 2014年 10月30日付「朝雲」ブックレビュー

「華麗なるナポレオン軍の軍服」リュシアン・ルスロ著 辻元よしふみ・玲子監修翻訳

 派手な色に装飾品、出てくる言葉は「おしゃれ」の一言。陸軍の軍服といえば、カーキや迷彩服を思い浮かべるが、その真逆を行く絢爛豪華な軍服の数々に圧倒される。
 本書はフランス陸軍の公認画家を務めたリュシアン・ルスロ(1900│92年)が描いたナポレオン軍の制服を収録。さまざまな階級、軍種のあらゆる軍服パターンを網羅しており、その緻密さに驚かされる。
 19世紀の欧州を席巻したナポレオン軍の軍服は多くの軍が手本とし、明治期の日本陸軍が最も参考にしたことでも知られている。現代ファッションにも脈々と息づいており、その普遍的な価値は色あせることがない。
 それにしてもなぜこんなに"派手"なのか?
 監修翻訳者で軍装史研究の第一人者である辻元氏によれば、当時は小銃の性能が低かったため、砲煙が立ちこめる戦場で敵味方の区別をつけるためだったという。国内の繊維・服飾産業を振興させる目的もあった。
 軍服研究の一助にしてもよし、イラストの参考にしてもよし。とにかく見て楽しい一冊。手に取って見やすいA5判なのもうれしい。
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 また、学研「歴史群像」の12月号(通巻128号)にも書評を載せていただきました。こちらは12月6日の消印有効で、巻末ハガキで応募すると、この本を3名様にプレゼント、とのことです。ご興味のある方、ただで手に入るかもしれませんので、ご覧ください。

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2014年11月10日 (月)

美女と野獣

 

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 フランス、ドイツ合作映画「美女と野獣」LA BELLE ETLA BETEというものを見ました。「ブラック・スワン」のヴァンサン・カッセル、「イングロリアス・バスターズ」や「ロビン・フッド」のレア・セドゥが共演。作中は全編フランス語という作品ですが、これがいい。1991年の大ヒットしたディズニー・アニメのイメージが強いこの作品ですが、やはり本国が手掛けると一味違います。監督はクリシュトフ・ガンズ。
 ディズニーのアニメをはじめ、何度も映像化されているこのテーマですが、一般に知られている原作は1756年発表のボーモン夫人のおとぎ話。しかしこの前、1740年にヴィルヌーヴ夫人が書いた長編が本当の原作だとされております。今回はそのヴィルヌーヴ版を深く掘り下げて今までにない要素を加え、ことに従来、はっきりしなかった「どうして王子が野獣になっていたのか。王子はどんな罪を犯したのか」という部分を強く打ち出しています。
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 お話は、お母さんが寝物語に子供たちに絵本「美女と野獣」を読み聞かせる形で始まります……。
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 時は1800年代初め、ナポレオン1世のフランス第一帝政期。裕福な商人(アンドレ・デュソリエ)は所有していた3隻の船が一度の航海で沈没し、瞬く間に破産。3人の息子と3人の娘を連れてパリを離れ、田舎暮らしを余儀なくされます。まもなく、3隻のうちの1隻が見つかり港に戻ってきますが、積荷ともども債権者に差し押さえられ、ぬか喜びに。長男は自暴自棄となり借金を重ね、盗賊まがいの悪党ペルデュカス(エドュアルド・ノリエガ)に追われる身となってしまいます。そのとばっちりを受けることとなった商人は、ペルデュカス一味の追跡を逃れて雪の中をさまよい、道に迷ってしまいます。深い森の中で見つけたのは、数百年も放置されている古い城でした。商人はその城の庭で、末娘のベル(セドゥ)が望んでいた美しいバラの花を見つけ、とってしまいます。すると、城主である恐ろしい野獣(カッセル)が現れ、バラと引き換えに命で償うように要求、これに従わなければ家族全員の命を奪う、と告げます。
 商人は家に戻り、この話を娘、息子たちに披露します。自分が望んだバラの花で、父が命を落とすことに耐えがたいベルは、自らが身代わりとして野獣の城に向かうことを決意します。野獣はしかし、ベルに「毎晩7時には食事を共にすること」以外の要求はせず、城内を自由に歩くことも許可します。そこでベルは、夢でこの城のいにしえの栄華の時代を見るようになります。城主の王子(カッセル)の傍らには、美しい妃(イボンヌ・カッターフェルト)の姿が。その妃は度を越して狩猟にのめりこんでいる夫に嫌気がさしていました。やがてベルは、妃の墓所を城内で発見します。一体、何があったというのか。ベルは強い好奇心を抱きます。
 ベルは野獣とダンスをすることを条件に、一度だけ家に帰らせてくれるように嘆願。野獣は意外なことにこれを許可します。喜び勇んでベルが家に戻ると、一家はペルデュカス一味に脅かされて息をひそめて暮らしており、父の商人は寝込んで瀕死の状態になっていました。一方、長男から野獣の城の話を聞いたペルデュカスは、城に行けば財宝が手に入ると考え、手下を引き連れて城に乗り込んできます。ベルは野獣との約束を守り、城に戻ろうと急ぎますが……。
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 ということで、かつての王子と妃の描写が、今までの映画化にはなかった要素ですが、ここがいいんです。本作における「現代」は19世紀初め。すでにフランス革命を経験し、商人のような中産階級も台頭している時代です。一方、かつての数百年前の時代は、まさに中世。ブルボン王朝の初期あるいはそれより前の時代、ということになりそうです。
 注目なのは豪華な衣装。19世紀の紳士たちはみな、燕尾服やフロックコートにベスト、頭には二角帽かトップハットといういでたち。襟の形は、ラペルとカラーの間に大胆なカットが入っている「M字ラペル」です。18世紀末から19世紀初めに一世を風靡した襟形です。
 女性はエンパイア・スタイルという直線的なドレス。これはブルボン王朝時代に流行ったマリー・アントワネットが好んだような釣鐘型の大きなスカートと異なり、フランス革命期から流行りだした、古代ローマ風の身体のラインをはっきり出すドレス・スタイル。
 しかし一方で、中世の世界の人々は全く異なる服装です。15世紀ごろと思われる時代の王子=野獣は豪華な生地のダブレットという裾が短い上着に半ズボンという、いかにも中世の王子様のスタイル。妃や侍女たちは当然、釣鐘型の優雅なドレス姿です。そして、野獣の城に住むことになり、いわば数百年もタイムトリップするような状態になったベルも、城の中では野獣が与えた当時としても古いスタイルのドレス姿になる…彼女が古風な中世のプリンセス姿になることが、城にとどまる運命を受け入れる覚悟をしたことを意味するわけで、視覚的にその表現がよく分かるわけです。このへんは実はレア・セドュがガンズ監督に提案したのだとか。監督は城内の衣装もすべて、ナポレオン時代のエンパイア・スタイルにしようと考えていたそうですが、セドゥが城内ではスタイルを変えることを主張したとか。結果的にそれは大成功だったと思います。何しろコスチュームの要素がとても大事なドラマですからね。
 孤独な影のある野獣に扮するカッセル、どこか子供っぽさの残る不思議な魅力があるセドゥのキャスティングは、まさにはまり役。そして、シックでどんなに激昂しても興奮しても、あまり声を張り上げない感じのフランス語というのが、やはりいい。仮に日本語で吹き替えをやれば、ベル役の声優さんはおそらくずっと高い声で演じるでしょう…日本語では女の子とか、お姫様は高い声、という一種の記号的な声があるからです。が、フランス語だと、日本人の感覚からすれば女性の声もものすごく低いのですが、これが魅力的です。なにか説得力が増すというか、おとぎ話的であるより、大人の物語に見えてきます。
 それから注目されたのが、お妃役のイボンヌ・カッターフェルトというドイツの女優さん。これが美しいんです。ドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏では何度もヒットチャートの1位をとったことのある有名な歌手で、ドイツの映画やテレビでは引っ張りだこの人ですが、国際的な作品に出るのは本作が初めてではないでしょうか。これでぐっと知名度を上げてくるかもしれませんね。
 ディズニー版のアニメもとても良かったですが、もともとフランス語で書かれ、フランスの物語であるこの美女と野獣、エンディングも、設定をフランス革命後の時代背景にしたこともあって、ちょっと従来のものとは異なります。ぜひ絢爛豪華なセットや衣装を大画面で見ていただきたい作品です。
 

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2014年11月 6日 (木)

ドラキュラZERO

 ただ今、私たち辻元夫婦は、実は新作の最終追い込みをしておりまして、かなり毎日、厳しいのですが……そんな中、見に行きましたのが「ドラキュラZERO」DRACULA UNTOLDという映画。近年、人気急上昇中のルーク・エヴァンス主演の作品です。「インモータルズ」とか「三銃士」で存在感を見せて注目され、「ホビット」シリーズで準主役に抜擢。そして今作はユニバーサル映画が、マーベル・コミックの「アベンジャーズ」シリーズの向こうを張って制作を計画しているというユニバーサル・モンスターのリメイク計画の第1作の主演を任されたわけ。責任重大なんですね。
 ブラム・ストーカーがドラキュラ伯爵なるモンスターを創造した原作小説の「ドラキュラ」を発表したのは1897年。そして、それを基に作られた吸血鬼映画の走りといえば、1922年にドイツで製作された「吸血鬼ノスフェラトウ」だとよくいわれます。しかし、ドラキュラという名前を使って初めて製作されたのは、ユニバーサル映画が、あのベラ・ルゴシを主演にして世に放ったドラキュラ映画の第一作「魔人ドラキュラ」(1931年)なんですね。つまりドラキュラ映画の元祖はユニバーサル、なわけです。しかしドラキュラ映画は、1958年にハマー・フィルムがクリストファー・リーとピータ・カッシングを起用して作った「吸血鬼ドラキュラ」が大ヒットして、それからハマーは70年代までに9本も製作、ユニバーサルとしてはすっかりお株を奪われてしまった次第。1992年にはトライスターが製作したフランシス・コッポラ作品「ドラキュラ」がヒットしました。まだ知名度の低かったゲイリー・オールドマンやキアヌ・リーブスを有名にした映画でしたね。
 どの作品もブラム・ストーカーの原作を下敷きにしているのですが、そもそも原作からしてその「ドラキュラ」なる人物が何者なのか、はっきり描いていない。それもそのはず、ストーカーは15世紀に実在したルーマニア、ワラキア公国の歴史上の君主、ドラキュラ公ことヴラド3世の伝説を基にオリジナルの吸血鬼物語を創作したわけで、そもそもなんでこういう吸血鬼が生まれたか、なんてところはそんなに描写がない。ただ、92年のコッポラ版では、ヴラド公がなんで吸血鬼になっちゃったのか、冒頭部分でそれなりに丁寧に描いていました。
 で、今回のユニバーサルによるドラキュラ・リブート計画としましては、その原点、15世紀に実在のドラキュラ公ヴラドが、なんで吸血鬼ドラキュラになっちゃったのか、というのを描くことにしたわけであります。
 史実では、ワラキアは強大なオスマン帝国に臣従を余儀なくされ、ヴラド公は子供のころに人質に出されています。当時、オスマン皇帝は旺盛な征服欲で有名だったメフメト2世。東ローマ帝国を滅ぼし、コンスタンチノポリスを征服してイスタンブールとし、しきりに欧州に侵攻を重ねておりました。ヴラド公はその中で果敢にオスマン軍に抵抗を試み、何度も勝利を重ねています。いわばメフメトが最も恐れた敵だったわけ。だからヴラド公はルーマニアでは今でも最高の英雄で、魔物だなんてとんでもない。一方のメフメトは1481年に陣没していますが、その最後ははっきりしていないそうです。このへん、この映画化のために都合がよかったわけですが…。
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 ときは15世紀後半。幼いころにオスマン帝国に人質として出され、苦労したヴラド3世(エヴァンス)も、ワラキア公として即位してからは、美しい妻ミレナ(サラ・ガドン)と結婚して世継ぎの息子も生まれ、オスマン帝国ともうまく付き合って幸せな10年間を過ごしていました。しかし現在のオスマン皇帝であり、かつてヴラドの戦友でもあったメフメト2世(ドミニク・クーパー)はついに欧州侵攻の野心をむき出しにし、本性を現します。メフメトは貢納金と共に自分の親衛隊イェニチェリの兵士として、ワラキアから1000人の子供を差し出すように要求、ヴラドの一人息子も人質として出すように命じてきました。もちろん、それに従えばよし、逆らえばこれを口実にワラキアを武力で併合する魂胆です。苦悩したヴラドですが、ついにオスマン帝国の使者を斬り捨て、オスマン帝国との開戦を決意します。
 とはいえ、当時、世界最強のオスマン軍を相手に小国ワラキアがまともに抵抗できるはずもなく、領民と妻子を守るには尋常の手段ではとても……。
 悩みに悩んだ末、ヴラドは自分を犠牲にしても国と愛する者たちを守り抜こうと決意します。それは、領内の山奥に数百年も生きる伝説の吸血鬼(チャールズ・ダンス)と取引し、悪魔の力を手に入れてオスマン軍を破る、というもの。しかし吸血鬼が言うには、力を手に入れると同時に、人の血を渇望するようになる、3日間その渇きに耐えれば人間に戻れるが、誘惑に負けて血を飲んでしまえば、永遠に吸血鬼のしもべとして生きることになる、というもの。
 ヴラドは3日の間にオスマン軍を破り、平和を取り戻そうとしますが、ミレナをはじめ周囲の人たちはヴラドの身に起こった異変に気付きます。オスマン軍の先鋒隊1000人をたった一人で全滅させてしまったヴラドの超人ぶりに、山の魔物と取引したのでは、という噂が流れ始め……。
 さて、ヴラドは迫りくるオスマン軍の脅威と、吸血の誘惑に打ち勝つことができるのでしょうか?
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 ということで、鍛えまくって本当に戦士の体形を手に入れたエヴァンスの肉体美と殺陣まわりの見事なこと。この人は本当にカッコいいですね。これは彼の一つの代表作になっていくのでしょうが、時代劇が本当に似合いますね。それと、山の吸血鬼を演じたチャールズ・ダンスがすごくいいです。存在感があります。後半、アッと驚くような変貌ぶりを見せますが、これが見ものです。ミレナ役のガドンはまだほとんど無名の人ですが、清新な演技でいいです。全体に悲劇的で暗い話なので、この人がとにかく光の部分を担っています。
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 まあ、結末は吸血鬼ドラキュラが誕生する、ということですから、伏せておくべき落ちもなにもないのですけれど、史実そのものがオスマン帝国の侵攻を前提とした、かなり可哀そうなお話なので、どうしても暗い感じに。上映時間1時間32分といいますが、もっと長い作品に思えました。しかし最後、救いもある描き方に。今後、シリーズ化が見込まれていますが、展開が楽しみです…まあ、時代劇としては今回限りになるかもしれないのが残念ですけれど。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「ラスト・サムライ」の衣装担当ナイラ・ディクソンが参加していて、コスチュームも見ものです。史実とオリジナルをうまく組み合わせた素晴らしい重厚な衣装です。ヴラドやメフメトのまとう甲冑などもよく出来ていますね。オスマン軍の軍装も、まあ有名なイェニチェリ軍団は描かれていないようなんですが、かなりしっかりと作られているようです。

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2014年11月 2日 (日)

「華麗なるナポレオン軍の軍服」おかげさまでアマゾン部門1位

 

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 先日、刊行した『華麗なるナポレオン軍の軍服』(マール社刊 リュシアン・ルスロ原著。辻元よしふみ、辻元玲子翻訳監修)ですが、11月2日未明(午前4時過ぎ)アマゾンの「フランス史」分野で1位を獲得しました。皆様、まことにありがとうございます。20141102045145_2

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2014年11月 1日 (土)

日刊ゲンダイに辻元よしふみのコメント掲載「ファッション用語」

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11月1日発売「日刊ゲンダイ」のp5(白黒)に私、辻元よしふみのコメントが掲載されました。「巷の言い換えカタカナ大研究」の中の「ファッション用語は文化のバロメーター?」という一節です。ジーパンがジーンズになり、デニムになり・・・面白いものですね。

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