« 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第32回(最終回)「夜の夏の帽子の扱い」 | トップページ | 日刊ゲンダイ9月8日号に辻元よしふみのコメント掲載。 »

2014年9月 4日 (木)

ルーシー LUCY

20140903222638


 リュック・ベッソン監督、スカーレット・ヨハンソン主演の新作「ルーシー」LUCYを見てきました。ルーシーというのはヒロインの名前ですが、また人類の祖先である一人の女性(の原人)の名前でもあります。ちなみに、その人類の祖とされる女性原人の名がルーシーであるのは、ビートルズの曲名「ルーシー・インザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド」からとられた、というのは割とよく知られた話ですよね。
 リュック・ベッソン監督は、ナタリー・ポートマンとかミラ・ジョヴォビッチを発掘したことで知られる名匠です。女優さんを見る目があって、魅力的に撮るんですね。また、戦うヒロインを描くのがうまい。「ニキータ」とか「フィフス・エレメント」、「ジャンヌ・ダルク」などですね。今回もそういう流れの作品ではあります。今作の起用はすでに有名女優であるスカーレット・ヨハンソンで、それにヨハンソンは戦う強いヒロインという役柄も「アベンジャーズ」シリーズなどで経験済みですが、それとは違う、新たな魅力を引き出しています。今作は、初めは全く平凡で取り柄のない女の子、というような設定なんですが、本当にそう見えるのです。それが、あることをきっかけに普通の女の子ではなくなってしまうのですが・・・そのへんの描き方が見事です。
 何に似ているかといえば、前半はアクション、ヴァイオレンス路線で、やはり「フィフス・エレメント」とか、ミラ・ジョヴォビッチが以前に主演したスーパーヒロインの活躍を描く「ウルトラ・ヴァイオレット」なんかに似ているんです。しかし、後半になるとですね・・・あの「2001年宇宙の旅」に雰囲気が似てきます。それから少し前にジョニー・デップ主演で公開された「トランセンデンス」にも似てきますね。つまり、すごく哲学的な深淵で崇高といってもいい話になってきます。このへんは、さすがにフランス人監督、娯楽的な作品であっても、やはりハリウッド王道の路線と少し異なりますね。
 ◆  ◆  ◆
 台湾の台北に住んでいる平凡な女性ルーシー(ヨハンソン)。彼女は1週間前に知り合ったばかりの軽薄な男リチャード(ピルウ・アスベック)に、高級ホテルの前に呼び出されます。そして何かが入ったジュラルミンのカバンを持ってホテルのフロントに行き、チャン氏に渡してくれ、と頼まれます。胡散臭いものを感じたルーシーは断ろうとしますが、強引に頼まれてしまいます。言われたようにすると、黒ずくめのアジア系のマフィアたちが現れて、リチャードは射殺され、ルーシーは韓国人マフィアのボス、チャン(チェ・ミンシク)の前に引き立てられます。カバンの中身は得体のしれない青い薬品で、ルーシーは無理やり、ビニールに入ったその薬を下腹部に埋め込まれてしまい、海外への運び屋になるよう強要されます。ほかにも数人の男が運び屋にされるようでした。
 しかし、ルーシーは移送の途中で、組織の下っ端の中国人チンピラに強姦されそうになり抵抗、下腹部を激しく蹴られてしまいます。袋が破れて青い薬はルーシーの体内で急速に変化を始めます。この薬とは、人類の脳を覚醒させ、通常なら10%しか使われていない脳細胞を、最終的には100%にまで高めて超人化させてしまう代物なのでした。目覚めたルーシーは平凡な女の子から、すべてを支配できる神のごとき恐るべき能力を開花させていきます。彼女は組織の監視から脱出すると、自分以外の運び屋とされた3人の男を止めるべく、フランスの警察官ピエール(アムール・ワケド)に連絡を取り協力させます。また自分自身もパリに行き、脳科学の権威ノーマン博士(モーガン・フリーマン)に会おうとします。チャンの組織は執拗に彼女の後を追いますが、ルーシーは自分自身があと24時間もすれば「死ぬ」・・・いや、いわゆる死ぬのではなく、今の自分としては存在できなくなってしまうことを悟っていました。すでに彼女の能力は暴走を始めており、ルーシーは超人に近づいていくほどに、徐々に本来の人間性や感情が希薄になっていくことを止められなくなっていました・・・。
 ◆  ◆  ◆
 ということで、能力に開花したスーパーヒロインのルーシーが、マフィアたちを相手に恐るべき戦闘能力を発揮する、みたいなありがちな、分かりやすい展開は中盤まで、なんです。あっという間に彼女は人知を超えた高みに上って行ってしまうのですが、そのへんから後はもう、本当に人類とは何者か、生命とは・・・そんな超越的な、哲学的な、あるいはスピリチュアル的と言ってもよいお話に変貌していくあたりが本作の特徴。そこをどう見るかで評価も変わりそうですが、私はこの後半のどこか物悲しさ、考えさせられるテーマ性に引きつけられました。1時間半ほどの短編といってよいコンパクトな作品で、扱うのもほんの2日間ほどの出来事。出てくる主要キャストもそんなに多くありません。なのに、壮大といってもいいスケールの話になってくるのは、リュック・ベッソンらしいところでしょう。そんなお話の魅力をモーガン・フリーマンの知的な存在感が大いに引き立てています。
 チェ・ミンシクの演じるマフィアもとことん悪でいいですね。その初めは圧倒的で恐ろしい悪も、ルーシーが背負ってしまった運命の前には、だんだん詰まらない、どうでもいい存在に見えてくるのです。
 短いのに、まことに印象的な一本でした。さすがにベッソン監督はうまいですね。
 

|

« 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第32回(最終回)「夜の夏の帽子の扱い」 | トップページ | 日刊ゲンダイ9月8日号に辻元よしふみのコメント掲載。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122224/60256785

この記事へのトラックバック一覧です: ルーシー LUCY:

» 映画「LUCY/ルーシー」リミッターが外れると自分じゃなくなる [soramove]
映画「LUCY/ルーシー」★★★☆ スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン チェ・ミンシク出演 リュック・ベッソン監督、 89分 2014年8月29日日本公開 2014,アメリカ,東宝東和 (原題/原作:LUCY) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい← 「マフィアの闇取引に巻き込まれたルーシーは、 特殊な薬が入った袋を体 に埋め... [続きを読む]

受信: 2014年9月 5日 (金) 09時02分

« 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第32回(最終回)「夜の夏の帽子の扱い」 | トップページ | 日刊ゲンダイ9月8日号に辻元よしふみのコメント掲載。 »