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2014年7月11日 (金)

トランセンデンス

 トランセンデンスTRANSCENDENCEという映画を見ました。ジョニー・デップの新作です。トランセンデンスという言葉の原義は「超越」です。本作で何を意味するかというと、コンピューターの能力がますます上がって、ついに自我や意識、自立した感情を持ち、人類の脳を超越する、ということ。一般的な用語ではシンギュラリティ(特異点)ということが多いようです。
 人工知能が完全に人間を超えて、意識と自我を持つとはどういうことか。よくこれはチューリング・テストによって判定できる、とされます。人間が質問し、コンピューターの答えが、人間によるものとまったく区別できないようになったら、それはもう機械ではなくて意識のある人工知能である、というもの。アラン・チューリングという学者が提唱したものですが、これにちなんで、本作でもヒロインが訳あって身を隠しホテルに宿泊する際、フロントで「予約していたチューリングですが」と偽名を名乗るシーンがあります。
 さてそれで、すでにそういう人工知能と呼べるレベルのコンピューターが実用化し、そこに科学者の記憶をすべて移したらどうなるか・・・。これはSFではそんなに珍しい設定ではないですよね。しかし、いかにも漫画的な遠い未来の話ではなく、もはや目の前に迫ったリアルな問題として取り上げているのが、本作の特徴です。
 ◆  ◆  ◆
 天才科学者ウィル・キャスター博士(デップ)。彼は妻のエヴリン・キャスター博士(レベッカ・ホール)と共に人工知能の開発に明け暮れ、やがてコンピューターが人類の能力を凌駕するトランセンデンスが起こり、人類の歴史が変わるだろうと予測していました。しかし、そのような事態に反対する組織RIFTは、有力な科学者たちを一斉に殺害する同時テロを断行。ウィルも銃撃を受け負傷します。軽い傷だったため、夫妻の恩師であるタガー博士(モーガン・フリーマン)やFBIのブキャナン捜査官(キリアン・マーフィー)の来訪を受けて、現在、極秘に開発中の新型人工知能PINNを披露します。PINNはすでにチューリング・テストをパスするレベルのものでした。しかしその後、ウィルの容体が悪化。テロリストの銃弾には放射能が仕込まれており、ウィルは被曝、あと数週間の命であることが分かります。
 エヴリンは夫妻の共通の友人であるマックス・ウォーターズ教授(ポール・ベタニー)の協力を得て、ウィルの記憶をPINNのシステムに写し、その自我をコンピューター上に保存することを決意。やがて静かにウィルは亡くなり、実験も失敗したかに思えましたが、ついにコンピュータ画面に「誰かいるか?」というメッセージが現れます。ウィルはこうしてコンピューターの中にダウンロードされたのでした。しかし、ことの重大さにマックスは悩みます。
 酒場にて、突然、謎めいた女性ブリー(ケイト・マーラ)が近づいてきます。彼女はRIFTのリーダーであり、マックスを拉致するとエヴリンの実験室を急襲。しかし一足早く、ウィルの意識は人工衛星の通信回路を経てネット上に逃げ延び、エヴリンも逃走していました。
 ネットと接続されたことで、世界中のあらゆるデータとアクセスすることができるようになったウィルは、まさに全能の天才となり、今や神のごとき存在となります。彼はRIFTのメンバーの情報をFBIのブキャナンに送って一網打尽に逮捕させる一方、エヴリンを田舎町に向かわせ、そこで巨大な研究設備を構築、要塞化します。
 そして2年後。もともとの天才的知性に加えて、疲れを知らない無限の演算能力と情報記憶力を持ったウィルは、ナノテクノロジーを究極的なレベルに進化させていました。もはや人類の歴史は変わろうとしています。タガーとブキャナンはウィルの要塞を訪れ、脅威を感じます。一方、RIFTの協力者となっていたマックスも、事態の進展を知ってウィルを止めなければ、と考えます。さらに、エヴリンも止まるところを知らないウィルの行動に疑問を持ち始めていました。そもそもこのウィルは、本当にあのウィルなのだろうか。こうして、FBIと軍部、そしてRIFTが手を組んでウィルの施設を攻撃することになりますが・・・。
 ◆  ◆  ◆
 とにかく重いテーマです。絵空事ではないだけに、考えさせられてしまう内容です。2時間ほどでそんなに長いわけではないのですが、後味は非常にヘビーです。そして、これは夫婦の愛の物語でもあります。なんとしても愛する人を助けようとする妻、そして、その妻を守り抜こうとする夫・・・。悲しいラブストーリーという側面も強い一作です。
 デップ、ホール、フリーマンらの重厚な演技が、近未来的なお話を決してSFチックな枠に収めてしまいません。
 専門家の話では、実際にトランセンデンス、あるいはシンギュラリティはあと30年ほどすると実現するのではないか、ということです。つまり2045年ごろ、というわけです。今、生まれた赤ん坊が30歳のときです。もうほんのすぐそこ、です。社会は一体、どうなるのでしょうか? 今のような労働とか、社会通念とか、経済とか・・・想像もつきません。
 そのころ私は80歳近くになっていますので、そろそろもうどうでもよくなっていそうですが、しかしそういう時代を目撃する可能性は十分にありそうです。
 本作は、後になって、そういえばこんな予言的な映画があったな、と言われる作品になるのかもしれません。20140711030708

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