« ダイバージェント | トップページ | 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第29回「マリンファッション」 »

2014年7月18日 (金)

オール・ユー・ニード・イズ・キル

 20140711030754


 トム・クルーズ主演の最新作「オール・ユー・ニード・イズ・キル
EDGE OF TOMORROW」を見ました。これは、日本の桜坂洋さんの小説『ALL YOU NEED IS KILL』を原作としていますが、英語である原作タイトルを、エッジ・オブ・トゥモロウ・・・なんでしょう、直訳すれば「明日の刃」とか「明日の先端」といった程度の意味でしょうか、そういうものにわざわざ変更しています。なんでも製作側の判断で、killという題名はよくない、ということだったそうです。英語圏の人には、「お前に必要なのは殺しだけ」という原題は、殺伐としすぎる印象があったようです。しかし日本では原タイトルで公開している次第です。

 そして、大筋では原作小説どおりなのですが、原作では日本人の新兵キリヤ・ケイジというのが主人公ですが、これをそのまま今や52歳になったトム・クルーズがやるわけにはいかないので(とはいっても、せいぜい40歳前後に見えますが、今でも)、宣伝広報担当の軟弱なアメリカ人、ウィリアム・ケイジ少佐、という設定に置き換えています。ヒロインのリタ・ブラタスキという名前は原作通りですが、これも少女という設定から、エミリー・ブラント扮する鍛え抜かれたベテラン兵士、という感じになっています。

 この話は、いわゆるループもの、です。つまりロールプレイング・ゲームのように、何回も同じ時間が繰り返されることで、登場人物の経験が増し、少しずつ問題が解決されていく、というタイプの物語です。

 時は近未来。謎の異星人ギタイが地球に侵攻してきて5年が経過しています。連中はまずドイツに降り立って欧州占領を図っており、すでにフランスも陥落、全欧州がギタイの支配下に入りつつあります。地球側は70か国が参加する統合防衛軍UDFを編成して抵抗していますが、徐々に打つ手がなくなってきています。最後の頼みの綱は、強力な新型パワー・スーツ。これを使用して鬼神のように暴れまくり、久々にフランス、ヴェルダンの戦いで地球側に勝利をもたらした女性兵士、リタ・ブラタスキ曹長(ブラント)は「ヴェルダンの女神」として英雄視されています。

 まもなくブリガム将軍(ブレンダン・グリーソン)が指揮するフランス奪還作戦が行われようとしており、アメリカ軍からUDFに出向している広報担当官ウィリアム・ケイジ少佐(クルーズ)はテレビに出まくって大いに宣伝に努めています。ロンドンのトラファルガー広場に軍用ヘリで降り立ったケイジは、ブリガム将軍の司令部に呼び出され、ノルマンディー海岸への上陸作戦に従軍し、最前線レポートをテレビ中継するよう命令されます。しかし、もともと広告マンで実戦経験ゼロのケイジは命令を拒否、将軍を激怒させます。ケイジは憲兵隊に逮捕されて、階級を剥奪され、脱走兵としてノルマンディー上陸部隊に送り込まれてしまいます。

 ファレウ曹長(ビル・パクストン)指揮する曲者揃いのJ分隊に二等兵として配属されたケイジは、慣れないパワー・スーツを着込み、ノルマンディー海岸に降り立ちますが、すぐに恐ろしい激戦に巻き込まれます。J分隊が全滅し、リタが戦死する様を目撃したケイジは、最後に一匹の見慣れないタイプの青いギタイを倒し、その血を浴びながら自分もあえなく戦死してしまいます。

 ところが次の瞬間、彼は自分が出撃前夜の英国の基地にいることを知ります。ファレウ曹長につかまり、J分隊のみんなに紹介され、訓練に出て・・・。全く同じ経験が繰り返されることにケイジは驚愕します。そしてまたノルマンディーに出撃し、戦死。ところがまた英国の基地に戻り・・・そう、なぜかケイジは何度でも死ぬと同じ場面まで人生がリセットされて繰り返されるというループ現象に巻き込まれたことを悟ります。

 何回でも同じ経験を繰り返せるため、ズブの素人だったケイジも少しずつ経験を蓄積し、また次に起こることが予測できるため、戦闘能力が向上していきます。そして、あるループでリタから、「今度、目覚めたら私を探して」と言われます。次の機会からケイジは、できるだけ早くJ分隊から離れ、施設でトレーニング中のリタに出会うようにします。リタは驚くべき話をし始めます。つまり、リタも以前に同じようなループ状態になることで戦闘能力を増し、ヴェルダンの戦いで超人的な活躍をすることができたのだ、というのです。しかし負傷して輸血を受けた後、リタからその能力は失われてしまいました。

リタはループの秘密を共有するカーター博士(ノア・テイラー)にケイジを会わせます。博士によれば、ギタイは時間を操り、何度も同じ経験を積むことで戦局を有利にする、という能力があるといいます。その能力を持つ特殊な青いギタイが「アルファ」で、その血を浴びた者は自分もループするようになるのだとか。しかし、本当に「アルファ」を操っているギタイの中枢といえる個体が「オメガ」で、これを倒さない限り、ギタイに勝利することはできないというのです。リタにループ能力がなくなった今、戦局を打開してギタイ・オメガに迫ることができる者は、ケイジのほかにはいません。こうして、何度も生き返ってはリタにしごかれ、トレーニングを繰り返して、出撃し、戦死する。また蘇って同じ経験をするが、少しずつ強く賢くなり、今まで試していない手を試して試行錯誤し・・・という経験を何百回と繰り返す日々をケイジは生きることになりました。

ケイジは無限に繰り返されるリタとの訓練と、彼女の戦死を見ているうちに、自分が彼女に特別な感情を抱きつつあることに気付きます。しかし、リタにとってはいつでもケイジは初対面のよく知らない男です。そんな一方通行の思いの中、ケイジはリタを守り抜き、人類の危機を打開し、そして地獄のループから抜け出すことができるのでしょうか・・・。

このお話はヴェルダンとかノルマンディーとか、かつての人類の世界大戦を彷彿とさせる地名が舞台設定されているのが興味深く、ケイジやほかの将校が着ている統合軍の制服も、近未来の話と言いながら、とてもクラシックで、大戦中を思わせます。パワー・スーツという新しい要素も、現在、各国で実際にこの手のものが研究されていますが、もちろん撮影に使っているのは見かけ倒しの偽物ですので、パワーなどなく、重いだけの代物。重量4050㌔にもなるというそれを着込んで、熱演する兵士役の皆さんには拍手を送りたいです。とにかく見るからに撮影は過酷だったろうな、と思わせる映像が目白押しで、何度も何度も同じようなシーンを繰り返して撮る現場はさぞかし厳しいものだったろうな、と。

日本の原作ということで、イギリスの統合軍基地では英語やドイツ語に混じり、日本語が聞こえてくるシーンがあり、またパワー・スーツの武器も日本製らしく、コンピューターが日本語で「安全装置、解除!」などと言う興味深いシーンもあります。

主演のクルーズとブラントの2人。情けない口先野郎から戦闘マシーンに変貌していくクルーズの演技力はすごいです。1981年に映画「タップス」で狂信的な陸軍幼年学校の生徒役で注目された頃を覚えていますが、あれから30年以上たって、今でも一番人気のあるスターであり続けている・・・毀誉褒貶いろいろあると思いますが、とにかくこれだけ長くハリウッドに君臨するというのは、すごい人です。またエミリー・ブラントは、これまで「プラダを着た悪魔」や「ヴィクトリア女王~世紀の愛」での演技が絶賛されてきた女優さんですが、こういう激しい戦争アクションの役柄は初めて。しかしどこから見ても筋金入りの鬼曹長に見え、なんとも凛々しい女戦士ぶりに、心ときめいてしまいます。

ループものとしての面白さと、謎解きの興味深さもあって、2時間があっという間にすぎさりました。エンディングへの盛り上げ方と、落ちの付け方も秀逸。これは快作だと私は思いましたよ。原作を読んでいる方も、どこらへんがどう、味付けが変わっているのか、見てみると興味深いのではないか、と思いました。

|

« ダイバージェント | トップページ | 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第29回「マリンファッション」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122224/60004348

この記事へのトラックバック一覧です: オール・ユー・ニード・イズ・キル:

« ダイバージェント | トップページ | 日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第29回「マリンファッション」 »