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2014年6月 4日 (水)

「Free&Easy」6月号が赤瀬川原平氏らの文章を「ねつ造」した問題について

 

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 私が所属している日本文藝家協会から「文藝家協会ニュース」最新号が届きました。その6~7ページには、「著作権管理部より・先月の相談から」というコーナーがあり、同協会が対応した5件の著作権侵害事件の実例が掲載されています。
 その5件目、「相談5」というものを見て驚きました。
 タイトルは「勝手に執筆原稿を創作して掲載・・・。とんでもない事件発生」とあります。
 以下、本文を長いですがそのまま引用します。
◆ ◆ ◆
 相談5:執筆した覚えもなく、インタビューも受けていないのに、自分の名前の文章が雑誌に掲載されていた、というとんでもない事件が発生しました。
 男性向けのファッション誌「Free & Easy」6月号に赤瀬川原平さんのコラムがあります。安西水丸さんの追悼特集ですが、追悼にはふさわしくなく、赤瀬川さんの書きぶりでもない不思議な文章です。
 奥様から「主人は入院中なので、書いてもいないし、インタビューも受けていない。編集部に確認したが、誠意のある対応ではなかったので、協会からも何事が起きたのか調べてほしい」とご連絡がありました。
 事務局:編集部に電話すると、奥様がおっしゃるように「担当者が不在でわかりません。連絡しますのでお電話番号を」という頼りない対応です。メールアドレスを伝えたところ、2日後に「説明したい」というメールが届き、ほどなく電話がありました。結論は、過去に2度、インタビューした編集者が、勝手に書いた文章でした。
 編集長と2人でお詫びに行くと言われたが、謝られてもしょうがないので、店頭からの回収とバックナンバーの販売をやめてくれるように伝える、と赤瀬川夫人。
 角田光代さんの文章が次のページだったので、確認したところ、「『週刊朝日』に以前に書かれたものを無断で話し言葉に書き直しました。申し訳ありません。店頭からは回収しました」という手紙が編集部から届いた、とのことです。
 各社の雑誌編集部は、真剣に懸命に仕事をしているのに、この件は、著作者のみならず、雑誌編集者たちを貶める重大な事件です。
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◆ ◆ ◆
 そして協会ニュースの編集後記では、この件を受けて「相談5のような言語道断の商業誌がまかり通っている」と糾弾しております。
 私は「フリー&イージーFree & Easy」誌は、ほぼ毎号、読んでおり、問題の安西水丸さんの追悼特集も読んでいたので、協会ニュースの記事が事実であるなら、まったく架空の文章を本人になりすましてねつ造して載せたことになり、それは本当に残念なことだと思いました。
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 問題の赤瀬川さんが書いた、ということになっていた文章の末尾はこんな感じです。「当時、スロンという言葉がありました。『ガロ』のなかで川崎ゆきおが使っていた表現ですが、この言葉と水丸さんが重なるんです。(中略)彼はスロンと生き、スロンと去って行った。誰の目にも触れず、誰にも迷惑をかけずにね」・・・というのですが、確かにこれは追悼文の結末としてはずいぶんとぞんざいで、変な気がいたします。
 繰り返しになりますが、事実とするなら残念なことです。
◆追記:その後、5日に共同通信が以下のような記事を配信しました。「出版社のイースト・コミュニケーションズが発行する雑誌「Free&Easy」が6月号で、作家で美術家の赤瀬川原平さんらが書いたかのように記事を捏造し、掲載していたことが5日、分かった。同社は7月号で「未許諾および不適切な引用」があったとして謝罪している。関係者によると、捏造したのは、3月に死去したイラストレーター安西水丸さんの追悼特集として掲載された記事。赤瀬川さんのほか、イラストレーター南伸坊さんの記事も同じように捏造されていた。過去のインタビューなどをもとに、安西さんについて思い出を語るエッセー風の記事に仕立てていた」。さらに6日の産経新聞では「問題があったのは、3月に死去したイラストレーター、安西水丸さんの追悼として組まれた記事。赤瀬川さんのほか、イラストレーターの南伸坊さんの記事も同じように、実際には直接会っていないのに、過去の記事などをもとに思い出を語る談話形式に仕立てていた。作家の角田光代さんの記事は、「週刊朝日」4月18日号の記事と酷似していた。担当者は「時間がなくネット上の記事などを参考にして作った」と話している。赤瀬川さんの家族が知人からの連絡で気づき、編集部に問い合わせたことで発覚した」という記事も。このように一般の通信社や新聞社も取り上げるようになりました。どうも南伸坊さんのエッセイもねつ造であったようですね。20140606024159


  7月号を見ますと、お詫び文が1ページ、あまり目立たない中ほどに掲載されており、厳正な社内処分をする、とは書かれているようですが、一方でこのページの見開きは「スタッフ募集」記事でどうも不謹慎な感じは否めず、バックナンバー通販のページでは6月号はSOLD OUTと書かれていますが、上記のような事情で回収したのなら「売り切れ」ではなくて「絶版」と明記するべきでしょうし、20140606024342


また読者のファンレター紹介コーナーでは「安西水丸さんの追悼特集がよかった」などというものを載せてしまっており(ねつ造だらけと知っていたら、これは載せられないでしょうし、読者の方にも失礼です)何やらかなり慌ててお詫びだけ、間に合わせに掲載した感じです。7月号のタイトルは「本物には理由がある」というものですが、どうも皮肉なものに感じられます・・・。新聞社やテレビ局はこの種の問題が発覚したら外部委員会を設置して調査し、社内での懲罰や懲戒解雇、減俸などの処置を公表し、特別番組や特別紙面で「どうしてこのような間違いを犯したか自己検証します」というようなことをやります。ファッション誌といえども、次号以降でそのぐらいはやらなければ、けじめはつかなのではないでしょうか。
 
 

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コメント

この雑誌のねつ造(妄想?)は、この業界では有名な話で、特に巻頭のコラム内で海外の著名人の文章がある場合、それは副編のN岡氏の手によるものです(全てO野里氏の指示<強要?>ですが)。まったく許可を取らないで著名デザイナーブランドRLの特集及びデザイナーインタビュー(妄想)を載せたこともあり、未だに出禁となっています。興味があれば過去の記事を掘ってみれば、この雑誌いくらでも埃が出てきます。

投稿: 元出入りのライターより | 2014年6月 6日 (金) 14時36分

元出入りのライター様

 コメントいただきありがとうございます。なるほど・・・やはり体質的なものがあるのですね。かなり誇大妄想的な雑誌であることは、部外者でも察していたのですが。RLの特集も読んだ記憶があります。そうですか、あれも創作だったのですか。今回の問題は、ファッション業界とかファッション誌という枠を外れ、一般の文芸家や日本文藝家協会といった、彼らのいつもの対応では決して理解してくれない、著作権侵害を決して許さない相手を対象にしてしまった、ということなのでしょうね。私もそういう意味で、文藝家協会の会報という、逆にファッション業界系の人たちには目に触れにくいだろう媒体の記事を紹介したくなった次第です。まことにありがうございました。

投稿: 辻元よしふみ | 2014年6月 6日 (金) 15時43分

過去に掲載したエリック・クラプトンの記事も同様です。捏造記事は今に始まった事ではなく不通に常習化してます。以前このようなケース取材対象者からクレームが入った時は恫喝して事を澄ましました。その際は懇意にしていた百〇氏(ヤクザ)が動きました。今回は偶々バレちゃったレベルで何も反省はないでしょう。過去に在籍していた社員もこの様な事を咎めたりすると大概O編集長によるパワハラに遭い精神に支障をきたし何人も退社しています。O編集長は親会社のイースト(TV制作会社)の役員も務めいていてF&Eが廃刊になっても全く問題ないでしょう。かなり問題を抱えた出版社であることは間違いなく。以前は百〇氏が後ろ盾になって事なきを得ていましたが、百〇氏が亡くなってからはかなり苦戦しているようです。百〇氏が存命であったなら今回の件は間違いなく揉み消されていた事でしょう。PS:O編集長のパワハラにより自殺未遂まで社員もいました。揉み消されましたが…。

投稿: 最近まで出入りライター | 2014年6月 6日 (金) 21時34分

最近まで出入りライター様

 コメントありがとうございます。なるほど、まあなんとなく想像はしていたわけですが、やはりそのような雰囲気なわけですね。なんとも恐ろしい話です・・・。今回は文藝家協会に加え週刊朝日あたりまで敵に回してしまい、そう簡単に誤魔化せなくなってしまったようですね。恫喝というのも相手次第であって、それで黙る相手もいれば、かえって倍返しする相手もいるでしょうし。今後、どうなっていくのか注目されますね。
 

投稿: 辻元よしふみ | 2014年6月 6日 (金) 21時46分

あってはならないことです、残念に思っています。自分は、主に取材ライターとして使っていただく中で幾度も取材に出向きましたし、お世話になった同誌の編集さんやカメラマンさん方は真摯にお仕事なさる方々でした。故に悔しい思いです。自分の場合、同僚や上司が担当したページのゲラが回ってきたとき「この記事は捏造ではないだろうか」と脳裏をよぎった経験は皆無です。そこを疑わずにきた自分が甘いのか、他の編集者や校正者は日々そこから疑って確認しているのか、正直わかりません。甘いと笑われるかもしれませんが、自分の目には真摯に仕事なさっていた他のスタッフさん方の心中を思うとやりきれない。可能な限りの対応と体制改善に努めて、願わくば継続してほしいと個人的には思っています。

投稿: 昨年までお世話になったライター | 2014年6月 7日 (土) 12時22分

昨年までお世話になったライター様

 コメント有難うございます。そうですか。よく分かります。同じ組織の中でもいろいろな人がいるはずです。いうまでもなく真摯に仕事をされている方が現場ではほとんどなのだろう、と思います。想像するに、イースト社はテレビ制作会社が母体なので、やはり伝統的に手堅い仕事をしてきた活字系媒体の出版社や新聞社と比べて、ちょっと意識が異なるのでは、と感じます。活字の会社は、テレビと違い、瞬間的にうまくいけばいい、とは考えません。出版してしまったものは後に残るので、慎重になりますが、テレビは放映してしまえば忘れられてしまいますし、成績も、地道な営業活動で部数を積み上げるのではなく、瞬間的な視聴率です。だからメディアとしての信頼度、という感覚がかなり異なるのではないでしょうか。仰る通り、体質を改善できればいいのだろう、と感じる次第です。大風呂敷なちょっと独善的な感じが、むしろ魅力となっていた雑誌なので、持ち味との両立は難しいのかもしれませんが。

投稿: 辻元よしふみ | 2014年6月 7日 (土) 15時59分

2002年に、浜崎あゆみさん特集の号がありまして、かなり読み応えありましたが、インタビュアーと編集の方による、捏造、誤字脱字だらけのゲラを読んだ彼女が編集長のもとへ殴り込んで来たエピソードを編集後記で読みました。もうずっと当たり前に起き続けたことみたいですね。邦楽業界で当時の浜崎さんも、AVEXの松浦勝人さんも、凄い伸びまくりの時期でしたから、指摘を受けたら逆らえなかった編集長、かなり必死で全て書き直したらしいですが、何でしょうね。いろいろ残念です。

投稿: はくしん。 | 2014年6月 8日 (日) 21時53分

はくしん。様

 ありがとうございます。そうですか、私はその頃はこの雑誌の存在も知らなかった時期なので、浜崎さんの特集の件は存じませんでした。しかしその件の場合は、一応、ゲラの段階で取材対象者の指摘を受け入れて修正に応じた、ということになるわけですね。そういう、活字の媒体としてどこの新聞社でも出版社でもやっている当たり前の努力を、常に省くことなくしてくれていればいいわけですが。ありがとうございました。

投稿: 辻元よしふみ | 2014年6月 8日 (日) 22時25分

最新情報です。
担当者は解雇、F&Eは廃刊だそうです。
まぁ、親会社(イースト)も今「テラスハウス」のヤラセ問題やセクハラ問題で大変でしょうから、取敢えず目先の問題からさっさと片付けたかったのでしょうあ。

投稿: 元関係者 | 2014年6月17日 (火) 12時03分

元関係者様

 情報いただきありがとうございます。そうなのですか、驚きました。私は事実確認はできませんが、仰る通りなら驚くべきことです。
 出版の世界もテレビの世界も、決して楽な時代ではないと思いますので、そういう選択もありうるのかもしれませんね。
 ありがとうございました。

投稿: 辻元よしふみ | 2014年6月17日 (火) 13時22分

昨日、発売になった最新号によると、担当編集者の懲戒解雇と代表取締役の懲戒減給の処分に留まるそうです。廃刊にはならないし、編集長も辞職しない見込みです。

投稿: 無関係者 | 2014年7月 1日 (火) 07時01分

無関係者様

 ありがとうございます。そのようですね。まあ、これでいわゆる「禊は済んだ」ということで、あとはなんとなく忘れてもらおう、という態勢なんでしょうね。きっと、そんなところだろうとは予測しておりましたけれど。

 でも、もうちょっと、みんながアッと驚くようなドラマティックな展開をしてくれたらいいのに、と内心では思っております。あれだけラギッドだのワイルドだのと日頃から仰っている会社ですからね。
 
 ありがとうございました。

投稿: 辻元よしふみ | 2014年7月 1日 (火) 08時09分

結局トカゲの尻尾切りに終わりましたね。担当編集氏はO氏の指示通り原稿を書いただけだったのですが解雇とは、、、まああの様なトコに居ても何も良い事はないでしょうから。しかし過去を鑑みると相当脅されていることは容易に想像がつきますが。

投稿: 元出入りのライター | 2014年7月 8日 (火) 13時20分

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