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2014年5月 1日 (木)

トム・ヒドルストン「コリオレイナス」

 オープンしたばかりの日本橋・室町コレド2のTOHOシネマズ日本橋にて、トム・ヒドルストン主演の舞台を映像化したナショナル・シアター・ライヴ「コリオレイナス」を見ました。これは2月までロンドンで公演していたお芝居で、4月25日~30日の6日間限定で全国の東宝系映画館で公開されました。事前に申し込んで抽選で予約できる、というシステムで、最後の30日の回も会場は満席でした。
 原作はかのウィリアム・シェークスピア。「オセロ」とか「ハムレット」みたいな知名度はない演目ですが、古代ローマ時代の悲運の名将をテーマにした非常に考えさせられる内容。400年も前のエリザベス朝に書かれたとは思えないほど現代的な内容で、ことに民主主義とは何か、という政治的な重いお話を扱っています。
 主演のトム・ヒドルストンは「マイティ・ソー」シリーズのロキ役でブレイクし、今や「トムヒ」の愛称でアイドル的な人気を誇ります。ある雑誌で「世界一セクシーな男性」に選ばれたこともあって、女性ファンの注目度は絶大。しかしこの芝居での彼は、重厚なシェークスピア史劇を渾身の力で演じています。かつてはイアン・マッケランの当たり役だったという難しい役どころを、全身血まみれになったり、頭から水を被ったり、男性とのキスシーン、さらに天井から逆さづりになったり、と大変な体当たり演技で見事にこなしておりました。
 時代は都市国家ローマがまだイタリア半島の小さな勢力だったころの物語。王政が廃止されて貴族と市民の合議による共和制に移行したばかり、貴族が牛耳る元老院と一般市民の対立を調停する護民官が任命されるようになった、という時期が背景です。ローマ軍の最優秀の将軍であるマーシアス(ヒドルストン)は、数々の武功に輝いていましたが、一般市民に対する態度は尊大で、旧友の貴族メニーニアスのとりなしにもかかわらず、はなはだ人気がない人物。そんな彼の人間性は野心家の母親ヴォラムニアの育て方によるもので、彼女の望みは、息子がさらに立身して共和時代ローマの最高官職である執政官になることでした。今回の戦争でも、隣国ヴォルサイの将軍オーフィディアスを破って都市コリオライを陥落させ、コリオレイナスという名誉称号をコミニウス将軍から与えられます。得意の絶頂となったコリオレイナスはローマに凱旋、執政官の候補となり、市民の投票を経て正式に就任しようとしますが、これを嫌った護民官たちが民衆を扇動してコリオレイナスを失脚させ、ついに国外追放にしてしまいます。復讐の念に燃えたコリオレイナスは、これまでの宿敵であるオーフィディアスの元に身を寄せ、ヴォルサイ軍の司令官としてローマを滅ぼすことを決意。コリオレイナス率いるヴォルサイ軍はついにローマを陥落寸前に追い込みますが、その前に現れたのはかつての親友メニーニアスと、妻子、そして母親でした・・・。
 というような話で、突出した存在を英雄として持ち上げておいて、後で嫉妬と誹謗中傷をまきちらして失脚させる、という民主主義の衆愚化の傾向を見事に描き出しています。今ならマスコミの役割を果たしていそうなのが護民官たちで(事実、護民官=トリビュヌスの名が今の新聞社の名称、たとえばシカゴ・トリビューンなどと使用されています。マスコミは権力と市民の間に立つ護民官の後継者という側面が本来、あるわけです)、その舌先三寸で民衆は右に左に簡単に態度を変えていく。非常に嫌な後味があります。
 20140430234447 20140430234337 それにしても、なんだかキスシーンが多い作品でして・・・。男女のノーマルなキスもかなり何度も出てきますし、何よりも男性同士のぶっちょりシーンはかなりビックリしました。いえ、この作品でこういうBL的な演出が出てくるとは思っていなかったもので・・・。トムヒ様ファンの女性はドキドキしてしまったのでは?
 もともとバナナ倉庫だったという狭い舞台をあらゆる手法で端から端まで使い、よくもこんな風に効果的に見せるものだなと感心させられました。派手なセットもなく衣装も地味。なのにスケールの大きな史劇にちゃんと見えるのがすごいです。
 それにしてもトム・ヒドルストン、大変な演技派です。ただのアイドル的な俳優ではありません。その実力のほどがよく分かりました。本当に6日間だけの限定的な公開でしたので、見られてよかったです。=写真は「スクリーン」5月号の紹介ページ=。

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