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2013年9月26日 (木)

エリジウム ウォーム・ボディーズ

 話題作の公開が続く初秋。このほどニール・ブロムカンプ監督の新作「エリジウム」Elysiumと、ジョナサン・レヴィン監督の「ウォーム・ボディーズ」Warm bodiesを見ました。いずれも公開後の評価が高く、期待していた作品です。
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 エリジウムは、「第9地区」(2009年)で南アフリカから世界に衝撃を与えた奇才ブロムカンプの新作であり、マット・デイモンやジョディ・フォスターといったハリウッドの大物を起用して、かなり前から期待の高まっていたSF大作です。
 西暦2154年、人口爆発と環境の悪化で地球は生存の危機を迎えています。世界の二極化は極端に進み、富裕層は軌道上の宇宙ステーション「エリジウム」に住んでいます。ここは争いも病気も克服されたまさに人類の理想郷。最新鋭の医療技術で白血病やガンなどの難病も瞬時に完治するほどです。一方、荒廃した地球上に取り残された大多数の人々は貧困にあえいでいます。エリジウムの防衛長官デラコート(ジョディ・フォスター)は地球の貧困層がエリジウムに密航することを断固、阻止する方針を貫いていますが、その手段を選ばぬ強硬ぶりのために、政府高官たちとは対立関係にあります。
 地球のロサンゼルスにて、かつては無法者として鳴らしたマックス(マット・デイモン)は、逮捕されて保護観察の身となってからは、おとなしく軍事企業アーマダイン社の仕事をしています。しかし不慮の事故により放射線を被曝、余命5日の運命と告げられます。絶望したマックスですが、友人の元ギャング仲間フリオ(ディエゴ・ルナ)と共に闇の世界の頭目スパイダー(ワグネル・モウラ)を訪ねます。エリジウムに行って先端医療を受ければ、死なないで済むかもしれません。スパイダーは、マックスのエリジウムへの密航を助ける代わりに、富裕層の脳内にあるチップから資産情報を盗み出すという条件を提案。
 マックスは、アーマダイン社の経営者カーライル(ウィリアム・フィクトナー)を襲撃し、フリオを失いながら、その脳内情報を奪取することに成功します。しかしそれは予想を超える内容で、カーライルがデラコート長官と結託して企んでいた巨大な陰謀につながる機密情報を含んでいました。デラコート長官は、残忍さで知られる悪名高い傭兵クルーガー(シャールト・コプリー)にマックスを捕らえることを命じます。傷ついたマックスは、幼馴染で看護師になっているフレイ(アリス・ブラガ)の手当てを受けますが、そこで彼女の幼い娘が白血病で瀕死であり、エリジウムの先端医療を受けなければ助からない、という事実を知ります。クルーガーはマックスの立ち寄り先を調査する中で、フレイと娘を拉致。一方、マックスは自分の脳内情報を渡す代わりに治療を受けることを条件に、クルーガーに投降します。こうしてマックス、フレイとその娘はデラコートが待ち受けるエリジウムに向かうことに。一方、スパイダーたちもマックスの脳内情報が持つ価値の大きさを知り、エリジウムに潜入することになります。かくて、世界の未来をかけた戦いの幕が切って落とされることに・・・。
 ということで、なんといっても興味深いのがエリジウムで富豪たちが各家庭に標準装備している医療ポッドという装置。これで全身をスキャンすればものの数秒で病気を探知、それからまた数秒で「完治しました」というメッセージが出る代物。もはや病気というものは、エリジウムでは恐れるようなものではないのです。だから富裕層は事実上、不老不死に近く、デラコートも若く見えますが、なんと108歳という設定。しかし貧困層は死んでいくしかない、ということに。まあしかし、こういう技術があることがわかっているなら、一部で独占しておく、というのは実際には難しいような気もしますけれどね。
 ほかにも面白い描写は多くて、たとえばエリジウムの上流階級では社交の場の言語はフランス語になっていたりします。一方、ロサンゼルスでは英語とスペイン語やポルトガル語が半々になっていて、もはやラテン系の言葉の方が通りがいい。なるほど、ありそうな設定です。
 とにかく人がたくさん死ぬ展開になっていまして、見終わった後はかなり暗いです。アクの強さで知られ、「ローン・レンジャー」では主役を食うほどの存在感を見せたウィリアム・フィクトナーがせっかく出ているのに、あまり活躍しないのがちょっと残念。「第9地区」のちょっと情けない主人公から、今回は常軌を逸した殺人鬼的な性格の傭兵を演じるコプリーの熱演ぶりは見ものです。
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 ウォーム・ボディーズは一転してゾンビ映画ですが、よくあるこの種の作品と一線を画するコメディー作品となっています。原作はアイザック・マリオンの『ゾンビRの物語』という小説で、決して大作というものではなかったのですが、内容のユニークさでヒットし、話題作となっています。
 一言で言えば、ロミオとジュリエットを人間の女性とゾンビの男性の話に置き換えた、ということですが、特に面白い設定なのが、ゾンビというのがよくある、心も知性も人格も失った全くの屍(しかばね)ばかりではない、というところ。感染した被害者は徐々に記憶を喪失して肉体と人格が崩壊し、かなり時間をかけて死体化、最終的には完全な化け物である白骨化したガイコツになる、ということになっています。よって、感染初期のゾンビはまだまだ自立的にものを考えたり、感じたり・・・そして人を愛することすらできる、というわけですね。そんな一人のゾンビとなりつつある若者が起こした奇跡の物語、なわけです。
 世界のゾンビ化が進む終末の世界。初期ゾンビの青年R(ニコラス・ホルト)は、自分の頭文字がRだったこと以外は過去の記憶を失い、何もかも分からなくなり、進行していく自分のソンビ化と戦っています。空港に留まっている旅客機を住みかとし、レコードを聴いたり、いろいろなコレクションを眺めたりしながら、少しでも人間性を失わないように努力しています。
 ある日、人間狩りの最中、人間の少女ジュリー(テリーサ・パーマー)と出会い、彼女を好きになってしまいます。初めは恐れていたジュリーも、Rに人間性が残存している事実を知り、そして愛する心から彼が徐々にゾンビから「人間化」していくことを悟ります。Rとジュリーの関わり合いを見たRのゾンビ仲間M(ロブ・コードリー)も、自分の中で人間性が回復しつつあることに気付きます。
 しかし、ジュリーの父親グリジオ大佐(ジョン・マルコビッチ)はゾンビ狩りの指揮を執る軍の部隊の指揮官。当然ながら娘がゾンビと交際することなど認めるはずもありません。人目を忍び、ロミオとジュリエットのように禁断の愛を実らせていく2人は、彼ら2人の関係のみならず、やがて世界に大きな変化をもたらしていくことになります・・・。
 というわけで、初めはコミュニケートもままならないゾンビRが、だんだん表情も豊かになって人間に戻っていく様が感動的に描かれます。面白いのが、人間の脳みそを食うとその相手の記憶を手に入れることができる、という設定。それでRは、ジュリーの恋人だったペリー(デイヴ・フランコ)の脳を食ってジュリーの生活ぶりやペリーとの関係を知る、というのがユニークかつブラックです・・・が、そこはコメディーなので、あまり深刻な話にはなりません。そして、ゾンビ化そのものは感染症の一種なのですが、ゾンビからガイコツになるのは本人の気の持ちようが大きく、人間性を放棄し、絶望した者がいち早くガイコツに堕落していく、という描き方が興味深いです。
 Rが音楽好きという設定なので、たくさんの挿入曲が効果的に使われています。「プリティ・ウーマン」のような定番曲などいろいろですが、中でも前奏だけですが、スコーピオンズの名曲「ロック・ユー・ライク・ア・ハリケーン」が使われているシーンには個人的ににんまりしてしまいました。
 「ジャックと天空の巨人」で注目されたホルトの、ゾンビになっても爽やかな好青年ぶりが大注目。この人はこれからもっと活躍しそうです。「魔法使いの弟子」などで知られるヒロインのパーマーの生き生きした魅力も印象に残ります。いつもながらどこかつかみどころのない怪優マルコビッチが、やや狂信的な軍人役で映画の格を上げています。そして本作ではチョイ役といえるのですが、ジュリーの彼氏ペリーに扮したデイヴ・フランコ。この人は「スパイーダマン」「オズ」のジェームズ・フランコの実弟で、今後も出演する大作が待機しており有望株です。
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 しかしながら、最近は終末的な近未来をテーマにした映画が多いですね、異常な気象や災害、環境問題や人口爆発、経済の動揺など、世界的に時代の気分なのでしょう。そんな中で見た上記の2本ですが、かなり暗い「エリジウム」と、心温まる「ウォーム・ボディーズ」。対照的な持ち味の両作、もし私のように2本立てで見るなら、やはりこの順番で見るのがよろしいかと思います。まずビターなもの、そのあとは口直しに・・・という具合。しかしどちらも好評な理由がよく分かる、とてもよく出来た映画だったと思います。

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