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2013年9月26日 (木)

エリジウム ウォーム・ボディーズ

 話題作の公開が続く初秋。このほどニール・ブロムカンプ監督の新作「エリジウム」Elysiumと、ジョナサン・レヴィン監督の「ウォーム・ボディーズ」Warm bodiesを見ました。いずれも公開後の評価が高く、期待していた作品です。
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 エリジウムは、「第9地区」(2009年)で南アフリカから世界に衝撃を与えた奇才ブロムカンプの新作であり、マット・デイモンやジョディ・フォスターといったハリウッドの大物を起用して、かなり前から期待の高まっていたSF大作です。
 西暦2154年、人口爆発と環境の悪化で地球は生存の危機を迎えています。世界の二極化は極端に進み、富裕層は軌道上の宇宙ステーション「エリジウム」に住んでいます。ここは争いも病気も克服されたまさに人類の理想郷。最新鋭の医療技術で白血病やガンなどの難病も瞬時に完治するほどです。一方、荒廃した地球上に取り残された大多数の人々は貧困にあえいでいます。エリジウムの防衛長官デラコート(ジョディ・フォスター)は地球の貧困層がエリジウムに密航することを断固、阻止する方針を貫いていますが、その手段を選ばぬ強硬ぶりのために、政府高官たちとは対立関係にあります。
 地球のロサンゼルスにて、かつては無法者として鳴らしたマックス(マット・デイモン)は、逮捕されて保護観察の身となってからは、おとなしく軍事企業アーマダイン社の仕事をしています。しかし不慮の事故により放射線を被曝、余命5日の運命と告げられます。絶望したマックスですが、友人の元ギャング仲間フリオ(ディエゴ・ルナ)と共に闇の世界の頭目スパイダー(ワグネル・モウラ)を訪ねます。エリジウムに行って先端医療を受ければ、死なないで済むかもしれません。スパイダーは、マックスのエリジウムへの密航を助ける代わりに、富裕層の脳内にあるチップから資産情報を盗み出すという条件を提案。
 マックスは、アーマダイン社の経営者カーライル(ウィリアム・フィクトナー)を襲撃し、フリオを失いながら、その脳内情報を奪取することに成功します。しかしそれは予想を超える内容で、カーライルがデラコート長官と結託して企んでいた巨大な陰謀につながる機密情報を含んでいました。デラコート長官は、残忍さで知られる悪名高い傭兵クルーガー(シャールト・コプリー)にマックスを捕らえることを命じます。傷ついたマックスは、幼馴染で看護師になっているフレイ(アリス・ブラガ)の手当てを受けますが、そこで彼女の幼い娘が白血病で瀕死であり、エリジウムの先端医療を受けなければ助からない、という事実を知ります。クルーガーはマックスの立ち寄り先を調査する中で、フレイと娘を拉致。一方、マックスは自分の脳内情報を渡す代わりに治療を受けることを条件に、クルーガーに投降します。こうしてマックス、フレイとその娘はデラコートが待ち受けるエリジウムに向かうことに。一方、スパイダーたちもマックスの脳内情報が持つ価値の大きさを知り、エリジウムに潜入することになります。かくて、世界の未来をかけた戦いの幕が切って落とされることに・・・。
 ということで、なんといっても興味深いのがエリジウムで富豪たちが各家庭に標準装備している医療ポッドという装置。これで全身をスキャンすればものの数秒で病気を探知、それからまた数秒で「完治しました」というメッセージが出る代物。もはや病気というものは、エリジウムでは恐れるようなものではないのです。だから富裕層は事実上、不老不死に近く、デラコートも若く見えますが、なんと108歳という設定。しかし貧困層は死んでいくしかない、ということに。まあしかし、こういう技術があることがわかっているなら、一部で独占しておく、というのは実際には難しいような気もしますけれどね。
 ほかにも面白い描写は多くて、たとえばエリジウムの上流階級では社交の場の言語はフランス語になっていたりします。一方、ロサンゼルスでは英語とスペイン語やポルトガル語が半々になっていて、もはやラテン系の言葉の方が通りがいい。なるほど、ありそうな設定です。
 とにかく人がたくさん死ぬ展開になっていまして、見終わった後はかなり暗いです。アクの強さで知られ、「ローン・レンジャー」では主役を食うほどの存在感を見せたウィリアム・フィクトナーがせっかく出ているのに、あまり活躍しないのがちょっと残念。「第9地区」のちょっと情けない主人公から、今回は常軌を逸した殺人鬼的な性格の傭兵を演じるコプリーの熱演ぶりは見ものです。
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 ウォーム・ボディーズは一転してゾンビ映画ですが、よくあるこの種の作品と一線を画するコメディー作品となっています。原作はアイザック・マリオンの『ゾンビRの物語』という小説で、決して大作というものではなかったのですが、内容のユニークさでヒットし、話題作となっています。
 一言で言えば、ロミオとジュリエットを人間の女性とゾンビの男性の話に置き換えた、ということですが、特に面白い設定なのが、ゾンビというのがよくある、心も知性も人格も失った全くの屍(しかばね)ばかりではない、というところ。感染した被害者は徐々に記憶を喪失して肉体と人格が崩壊し、かなり時間をかけて死体化、最終的には完全な化け物である白骨化したガイコツになる、ということになっています。よって、感染初期のゾンビはまだまだ自立的にものを考えたり、感じたり・・・そして人を愛することすらできる、というわけですね。そんな一人のゾンビとなりつつある若者が起こした奇跡の物語、なわけです。
 世界のゾンビ化が進む終末の世界。初期ゾンビの青年R(ニコラス・ホルト)は、自分の頭文字がRだったこと以外は過去の記憶を失い、何もかも分からなくなり、進行していく自分のソンビ化と戦っています。空港に留まっている旅客機を住みかとし、レコードを聴いたり、いろいろなコレクションを眺めたりしながら、少しでも人間性を失わないように努力しています。
 ある日、人間狩りの最中、人間の少女ジュリー(テリーサ・パーマー)と出会い、彼女を好きになってしまいます。初めは恐れていたジュリーも、Rに人間性が残存している事実を知り、そして愛する心から彼が徐々にゾンビから「人間化」していくことを悟ります。Rとジュリーの関わり合いを見たRのゾンビ仲間M(ロブ・コードリー)も、自分の中で人間性が回復しつつあることに気付きます。
 しかし、ジュリーの父親グリジオ大佐(ジョン・マルコビッチ)はゾンビ狩りの指揮を執る軍の部隊の指揮官。当然ながら娘がゾンビと交際することなど認めるはずもありません。人目を忍び、ロミオとジュリエットのように禁断の愛を実らせていく2人は、彼ら2人の関係のみならず、やがて世界に大きな変化をもたらしていくことになります・・・。
 というわけで、初めはコミュニケートもままならないゾンビRが、だんだん表情も豊かになって人間に戻っていく様が感動的に描かれます。面白いのが、人間の脳みそを食うとその相手の記憶を手に入れることができる、という設定。それでRは、ジュリーの恋人だったペリー(デイヴ・フランコ)の脳を食ってジュリーの生活ぶりやペリーとの関係を知る、というのがユニークかつブラックです・・・が、そこはコメディーなので、あまり深刻な話にはなりません。そして、ゾンビ化そのものは感染症の一種なのですが、ゾンビからガイコツになるのは本人の気の持ちようが大きく、人間性を放棄し、絶望した者がいち早くガイコツに堕落していく、という描き方が興味深いです。
 Rが音楽好きという設定なので、たくさんの挿入曲が効果的に使われています。「プリティ・ウーマン」のような定番曲などいろいろですが、中でも前奏だけですが、スコーピオンズの名曲「ロック・ユー・ライク・ア・ハリケーン」が使われているシーンには個人的ににんまりしてしまいました。
 「ジャックと天空の巨人」で注目されたホルトの、ゾンビになっても爽やかな好青年ぶりが大注目。この人はこれからもっと活躍しそうです。「魔法使いの弟子」などで知られるヒロインのパーマーの生き生きした魅力も印象に残ります。いつもながらどこかつかみどころのない怪優マルコビッチが、やや狂信的な軍人役で映画の格を上げています。そして本作ではチョイ役といえるのですが、ジュリーの彼氏ペリーに扮したデイヴ・フランコ。この人は「スパイーダマン」「オズ」のジェームズ・フランコの実弟で、今後も出演する大作が待機しており有望株です。
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 しかしながら、最近は終末的な近未来をテーマにした映画が多いですね、異常な気象や災害、環境問題や人口爆発、経済の動揺など、世界的に時代の気分なのでしょう。そんな中で見た上記の2本ですが、かなり暗い「エリジウム」と、心温まる「ウォーム・ボディーズ」。対照的な持ち味の両作、もし私のように2本立てで見るなら、やはりこの順番で見るのがよろしいかと思います。まずビターなもの、そのあとは口直しに・・・という具合。しかしどちらも好評な理由がよく分かる、とてもよく出来た映画だったと思います。

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2013年9月22日 (日)

ウルヴァリン;SAMURAI

 

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  芸術の秋というものか、話題の映画の公開が結構、続きます。ということで今度は「ウルヴァリン:SAMURAI」The Wolverineを見てきました。昨年、レ・ミゼラブルで本格派としての演技力、歌唱力、存在感を見せつけたヒュー・ジャックマン。そちらの撮影を優先して、本作の方は予定より進行が少し遅れたそうですが、しかしなんといっても彼の出世作はこのX-MENシリーズのウルヴァリンことローガン役。それで、本作の位置づけはウルヴァリン単独シリーズの第2作なのですが、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009年)の続編と言うよりは、むしろ「X-MEN ファイナル・ディシジョン」(2006年)の後を受けた作品といえそうです。舞台となるのは日本。80年代に発表された、ウルヴァリンが日本で活躍する原作コミックを下敷きにした映画化です。
 2006年の「ファイナル・ディシジョン」で、人類とミュータントとの戦争の終盤、心ならずも愛する女性ジーン(ファムケ・ヤンセン)を自らの手にかけて殺してしまったローガン。不老不死の身もあって生きる目標を見失い、仲間たちとも分かれ、カナダの山中で世捨て人として孤独に暮らしていますが、夜な夜なジーンの登場する悪夢にうなされています。ある日、山で友だちになったクマが心ないハンターの毒矢を受けて殺されます。久々に怒りに燃えたローガンはハンターを殺してしまおうとしますが、謎の日本人女性ユキオ(福島リラ)に止められます。そして、太平洋戦争の末期に、長崎の捕虜収容所でローガンが原爆の直撃から命を助けてやった日本軍将校・ヤシダ中尉(若年期は山村憲之介、晩年はハル・ヤマノウチ)が、戦後に大財閥の総帥として成功し、東京でローガンを待っていると告げます。
 ユキオに伴われて東京を訪れ、ヤシダの本拠地に赴いたローガン。がんに侵されて余命幾ばくもないヤシダから「来てもらったのはお礼を言いたかっただけではない。死ねないということは不幸なことだ。ローガンさん、私が君に死を与えてやろう」と言われます。その夜、あやしげなヤシダの主治医グリーン(スヴェトラナ・コドチェンコワ)から口づけされたローガンは、自分の身体に異変が起きていることに気付きます。
 直後、ヤシダが急死。ヤシダ財閥の後継者に指名されたのは孫娘のマリコ(TAO)で、その父親でありヤシダの息子であるシンゲン(真田広之)は怒りを爆発させ、マリコの婚約者で現役閣僚のモリ(ブライアン・ティー)も怪しげな動きを見せます。不穏な雰囲気の中、盛大なヤシダの葬儀が催されますが、ここでマリコはヤクザたちに襲撃され拉致されそうになります。長年、ヤシダ家に仕える忍者集団の一員ハラダ(ウィル・ユン・リー)が支援する中、ローガンはマリコを助け出します。しかし自分が不死身でなくなりつつあることを知って彼は愕然とします。2人ははるか西方の地、長崎にあるヤシダの別邸に逃れますが、ここにも追っ手が迫り・・・。
 ということで、不死身のはずのウルヴァリンが傷つき、死の危機を迎えるというストーリー。そして、全く文化の違う異国の日本で、一層の孤独にさいなまれながら、自らを見つめ直す、というのが話の肝。かなり誇張された日本の描写は、我々から見ると変なところも多々ありますが、かつての日本を舞台にしたボンド映画「007は二度死ぬ」(1967年)あたりから比べると、随分、外国の人の日本理解も進んだのかな、とも思えます。見ていまして全体の雰囲気や展開が、あのボンド映画にちょっと似ている気がします。
 よくこの手の映画では日本人の命名が、日本人から見て不自然なことも多いですが、ユキオ(雪緒)がちょっと男性みたいですが漢字にすればありえなくもない、マリコ(真理子)はもちろん合格、ヤシダ(矢志田)という姓は聞き慣れませんが、あっておかしくもないでしょうね。しかし息子の名前がシンゲン(信玄)というのは、あり得るとは思いますけれど、ちょっとなあ・・・。もっとも、こういうキャラクターの名前はすでにウルヴァリンを主人公にした原作コミックで既に何十年も前に確定しているものなので、今回、新たにつけたものではないからどうにもなりませんね。
 また、日本人の出演者はもちろん、他国籍の出演者の日本語もまずまず違和感がありません。沖縄出身のブライアン・ティーが上手なのは当然かもしれませんが、韓国系アメリカ人であるウィル・ユン・リーは終盤、かなり長い日本語台詞がありますが、立派にしゃべっています。ところで007といえば、ローガンがある人物を高い窓から突き落とすと、下にプールがあって助かる、それでユキオが「プールがあるって知ってたの?」と聞くと「いいや、知らなかった」と答える・・・このやりとり、「007 ダイヤモンドは永遠に」(1971年)のパロディーじゃないでしょうか。
 TAOさんと福島リラさんという2人の日本人女優が熱演しております。いずれも元々、ランウェイで国際的に活躍するモデルさんですが、新鮮な演技で、日本的な魅力をうまく引き出しています。日本刀を使った派手な立ち回りなど大変だったと思いますが、よくやっています。真田広之さんは・・・二刀流を鮮やかに操るアクションはさすがに見事です。しかし筋立て上は、不死身のウルヴァリン相手ではどうしても引き立て役になって、いかにも不肖の息子という役回り。印象的にはちょっと気の毒かも。いいところありません。ですがパンフレットによれば、やはり殺陣のシーンは真田さんが完全に仕切って、共演者にも指導していたとのこと。刀をすべて寸止めで上半身裸のジャックマン相手に決めるのは、大変な技術が必要だったそうです。ジャックマン本人も鍛え抜かれた肉体を見せつけていますが、18か月もトレーニングしたとか。役者さんは大変です。
 それから前作で死んだはずのジーンを演じるファムケ・ヤンセンの出番がかなり多いですので、もうこのシリーズでは彼女に会えないかも、と思っていたファンは必見。そして・・・この作品はエンドクレジットがしばらく続いた後で追加のシーンがあるタイプの作品なので、慌てて席を立たないことをお薦めします。
 それに関連して申しますが・・・今作には意外にも、前作で退場したかに見えたマグニートー役のイアン・マッケラン、エグゼビア役のパトリック・スチュワートが出演しているのです。これが何を意味するのか? このへんは見てのお楽しみであります・・・。

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2013年9月21日 (土)

日刊ゲンダイ「辻元よしふみ鉄板!おしゃれ道」第10回「ワイシャツの胸ポケット」

20130921194015 きょう9月21日発売の日刊ゲンダイに私、辻元よしふみの連載「鉄板! おしゃれ道」第10回が掲載されました。寄せられる質問に答える形式の本連載、今回は「ワイシャツの胸ポケットって必要?」です。本連載は隔週土曜日掲載(次回は10月5日発売号の予定)です。

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2013年9月20日 (金)

キャプテンハーロック

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 日中こそまだ油照りですが、なんだかんだと朝晩はかなり涼しく秋めいてきましたね。今回は「キャプテンハーロック」SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCKというのを見ました。はっきりいってかつての人気アニメを下敷きにした実写化作品などはあまり成功例がありません。最近でも「ガッチャマン」が大苦戦、といううわさ。それで、この「ハーロック」は実写化ではなくてフルCGアニメ化なのですが、こちらも結構、苦戦中とは聞いています。
 とはいえ、一体なにゆえ、今になってあの松本零士作品が制作されるのか、モーションキャプチャーまで使用したフルCGはどの程度の出来栄えなのか、というのは大いに興味があり、見に行ってみたものです。
 率直な感想ですが、おそらく全く予備知識のない若い人などが見るなら、ちょっと内容に未消化なものがあるかもしれないが、筋立ての起伏はあって面白い作品だと思います。一方、1970年代、80年代あたりに夢中になった方々が「あのハーロック」を求めて見るなら、やっぱりちょっと違う、と感じるのではないでしょうか。
 もちろんハーロックは黒マントに重力サーベルを下げ、その肩に乗るトリさん、副長にヤッタラン、ブリッジにはケイ、おなじみ異星人のミーメ・・・と基本的には「あのハーロック」そのままでして、まるで実写のような再現でこういうキャラクターがどう動くのか、というのはひとつの見ものです。しかし、古いファンが期待するに違いない・・・たとえば999号とかメ―テルやクイーン・エメラルダスは登場しません。もちろんヤマトや古代守も出てきません。台場正を思わせるキャラクターは登場しますが、あくまでも別人です。あるいはまたアメリカ西部の早撃ちガンマン、フランクリン・ハーロックや、ハイリゲンシュタット出身の飛行家ハーロック一世、ドイツ空軍パイロットのファントム・F・ハーロック二世大尉などという御先祖の話も出てきません。大山トチローは回想シーンでちょっとだけ出てきますが、まあこれもほとんど、とってつけた感じの扱いなうえに設定も全く別人同然。実を言うと私なんかはそういう松本ワールドの周辺の話まで広げてくれるのかな、と思っていたのですが、今回の作品は松本ワールドの映画化というよりは、むしろ脚本担当の福井晴敏さんの世界のような気がします。要するに「亡国のイージス」とか「終戦のローレライ」の雰囲気の方が見終わった後の感じは近いような。まあ、かなり話が暗いんですね。そして良くも悪くも真面目。全く遊びがありません。松本零士的な作品というのはどんなに過酷でシリアスな内容でもどこかに余裕があって、三枚目なペーソスや詩情、ロマンを感じさせるのが特徴です。本作はそのへん、かなり堅い作風のような気がしました。
 特に設定は全く本作のオリジナルといってよい。中央政府にたてつく一匹狼の宇宙海賊ハーロックが戦艦アルカディア号と40人の仲間とともに宇宙を行く、というところ以外は全然、かつての漫画やアニメとはかかわりがないです。地球侵略を企むマゾーンなんてものも出てきません。ハーロック誕生や、アルカディア号の成り立ちの経緯も全く本作独自の解釈となっています。
 おそらく遥かな未来。星間航行技術を確立した人類は銀河の遠くまで散らばり植民し、ついには5000億人もの人口を抱えるように。しかし異星文明と出会うことはなく、唯一、滅亡寸前だったニーベルング族と接触できただけでした。宇宙の悠久の時間の中では文明の繁栄など一瞬にすぎず、他の星間文明と同時代にピークを迎えて接触することなど出来なかったのです。このため、人類は宇宙開発に失望し、故郷の地球に戻ることを考えるようになります。しかし5000億人がみな帰還すれば地球はもちろんパンクしてしまう。そこで地球の居住権をかけてはてしない大戦争「カム・ホーム」戦争が繰り広げられます。この戦争を調停するべく人類は最高統治機関ガイア・サンクションを設立。地球は神聖不可侵の星として、何人も近寄らないことと決定しました。そして、地球に近づく者たちを倒す切り札として、ニーベルング族が開発した謎のダーク・マター機関を搭載したデス・シャドウ級戦艦4隻を投入。その4番艦アルカディア号を指揮していたのが若きハーロック大佐(小栗旬)でした。
 しかしこの戦争の終盤、突然、ハーロックはガイア・サンクションに反旗を翻し、アルカディア号を奪って宇宙海賊となります。ダーク・マターの力のためか不老不死となったハーロックはそれから実に100年にわたり、地球政府に歯向かい続けることになります。
 そして1世紀の後。乗組員を補充するアルカディア号に、一人の新人が加わりました。彼の名はヤマ(三浦春馬)。実は彼はガイア・サンクション直轄の宇宙艦隊ガイア・フリート司令官イソラ(森川智之)の実弟で、ハーロックを暗殺するために潜入したのです。ヤマはかつて自らの過失で、大事故を引き起こし、兄のイソラを足の不自由な身体にしてしまった過去を引きずっています。また、密かに愛情を向けていた幼馴染のナミ(坂本真綾)も、この事故をきっかけにイソラの妻になってしまいました。
 ハーロックは宇宙の各地の惑星に、中央政府から奪った強力な破壊兵器、次元振動弾を設置し続けていることが判明。ですが、ニーベルング族の生き残りでハーロックの腹心であるミーメ(蒼井優)を除いては、ヤマにはもちろん、ベテランのヤッタラン(古田新太)をはじめクルーたちにも、その本当の目的は分かっていません。ハーロックは99番目の目標として惑星トカーガに次元振動弾を設置することを決め、任務に志願したヤマとケイ(沢城みゆき)を派遣。しかしそこでアクシデントが起こり、ヤマはケイを助けつつ自分は絶体絶命の危機に陥ります。すると、ハーロック自らが単身でその危険な場所に赴きヤマを救出します。「初めから気付いていたはずだ、俺の任務はあんたを暗殺することだ」というヤマに、ハーロックは「自由を求めてアルカディア号に乗った、と言ったな。ならば自分を縛るものと戦え。それで出た答えなら、いつでも俺を撃て」と言い放ちます。
 そしてハーロックは100番目の設置目標として、地球を選びます。これを待ち受けるのはイソラが率いるガイア・フリートの大宇宙艦隊。集中攻撃を受けながら、イソラの作戦を次々に突破してアルカディア号は地球に接近していきます。イソラはヤマが自分を裏切ったことを知り、さらに妻のナミが作戦情報をヤマを通じてハーロックに漏らしていることを悟ります・・・。
 というような展開でして、スケールが大きいし、映像は申し分なし。いまの最先端技術のほどが良く分かります。戦艦や艦載機の戦いは、実は昔のアニメよりもこういうフルCGの方が再現しやすいのではないでしょうか。「ああ、リアルに描くと宇宙戦ってこんな感じなのか」という納得感がありますね。
 原作のイメージに一番、近いのはミーメじゃないでしょうか。これも、リアル化するとこんな感じと言うのが興味深いです。そして、実を言うといちばん驚いたのがトリさんです。これも原作のイメージどおりなのですが、声は合成ではなくて、福田彩乃さんが演技しています。一生懸命、キジやペリカンの鳴き声を研究してトリさんになりきってアフレコに挑んだそうです。
 ということで、見どころはあるしお話も、かなり暗めな展開ですが面白い作品だと思うのですが・・・後は、観賞する方が「あのハーロック」だとは思わずに見られるかどうか、という感じを持ちました。まあ、思い入れが強い人は「違う」というだろうな、とは感じた次第です。

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2013年9月13日 (金)

マジック・マイク

 

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 一部で話題になっていた映画「マジック・マイク」MAGIC MIKEを見ました。異色の話題作を連発するスティーヴン・ソダーバーグ監督の作品で、アメリカでは700万ドルの比較的低予算の製作費で1億ドルを超える大ヒットを記録、日本でもちょっと前から都内などで公開していましたが、今月になって浦安にも回ってきたものです。
 これはアメリカでも決して一般的ではない「男性ストリップ・クラブ」をテーマにしたものでして、製作・主演のチャニング・テイタムが無名時代に実際にやったストリッパーとしての経験を基にしています。マッチョなアクション・スターというイメージの彼が、こんな経験をしていたのは驚きですが、さらにこの世界を映画化することを彼自身が希望し、ソダーバーグ監督に売り込んだそうです。男性ストリップ映画といえば「フルモンティ」という作品が有名ですが、今作はさらに実体験を交えてリアルにこの世界が描写されているのが興味深いです。
 鍛え抜かれた男性たちが、セクシーかつ見事なダンスや寸劇を繰り広げる・・・ということでちょっと日本人が思う隠微なストリップという感じはありません。なにかあっけらかんとしています。出演者はみな、テイタム以外はもちろんストリップ経験などありませんが、おそらくオファーされた時はためらいもあったでしょうけれど、とても楽しそうにストリッパーを演じているのが印象的。
 フロリダ州のタンパで、週末になると人気の男性ストリップ劇場エクスクイジット。30歳になるマイク(テイタム)はここの看板スターで、もう6年間も「マジック・マイク」の名で出演しています。ほかに瓦葺きや洗車などもしていますが、本当は家具職人として起業したいと思ってお金をためています。劇場のオーナー、ダラス(マシュー・マコノヒー)はマイクを右腕として重用していますが、しかしなかなか共同経営者としては認めてくれません。
 瓦葺きの現場で知り合った学生崩れの若者アダム(アレックス・ペティファー)を見込んだマイクは、彼を劇場に連れてきます。突然のアクシデントでショーを埋める必要に迫られたマイクは、アダムをステージに上げてストリップ・デビューさせます。ダラスもアダムを気に入り、正式に雇うことに。マイクは弟分としてアダムの面倒を見ますが、ストリップの世界にのめり込んでいくアダムは、やがて危険な世界にも足を踏み入れて行ってしまいます。一方、アダムの姉のブルック(コディ・ホーン)に一目ぼれしたマイクですが、彼女との距離はなかなか縮まりません。それに銀行はなかなか融資してくれず起業の目途が立たない、おまけに長年のガールフレンドだった医学生ジョアンナ(オリヴィア・マン)にもふられてしまいます。着々とタンパを捨て、マイアミに大劇場を開こうとするダラスとも意見が対立。人生に迷いを覚えたマイクは、ついにある決断をすることに・・・。
 ということで、テイタムのダンスは見事なもので、本当に目を奪われます。それから、オーナー、ダラス役のマシュー・マコノヒー。彼はオーナーですので基本的には経営とMCに徹して舞台からは引退していますが、終盤、タンパでの最後のショーで自らステージに立ち、歌を披露し、さらに69年生まれ(ということは撮影時には42、3歳だったのでしょう)にもかかわらず見事な無駄のない肉体美をさらしてストリップを見せてくれますが、これがすごいインパクト。このワンシーンで、マコノヒーはニューヨーク映画批評家協会賞の助演男優賞ほか、少なくとも五つの賞を総なめにしたそうです。本作で一番、得をした一人かも知れません。
 アダム役のぺティファーやケン役のマット・ボマーなど伸び盛りの若手が魅力的。それに元プロレスラーのケヴィン・ナッシュもさすがの筋肉美で、いい味を出しています。
 まだまだ無名に近いコディ・ホーンは現ディズニー・スタジオ会長で元ワーナー社長である業界の大物ホーン氏の令嬢という本物のセレブ。彼女もとても魅力的で、裸の男性がメインの本作でいいバランスをとってくれています。エルヴィス・プレスリーの孫娘ライリー・キーオが大事な役どころで出ているのも見逃せません。
 まあ事実そのものではないにせよ、アメリカのある文化の側面を見事に描いている作品でもあります。しかしそういう堅い話はなくて、とにかく面白い映画ですし、また意外にも青春純愛ものでもあります。おそらく今月いっぱいぐらいが最後のチャンスかな、と思いますので、興味がある方はぜひ今のうちにお見逃しなく・・・。

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2013年9月 7日 (土)

日刊ゲンダイ「鉄板!おしゃれ道」第9回「夏の帽子」

20130907173821 きょう9月7日発売の日刊ゲンダイに私、辻元よしふみの連載「鉄板! おしゃれ道」第9回が掲載されました。寄せられる質問に答える形式の本連載、今回は「紳士は帽子をかぶるべきか?」です。本連載は隔週土曜日掲載(次回は9月21日発売号の予定)です。

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2013年9月 6日 (金)

マン・オブ・スティール

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 「マン・オブ・スティール」MAN OF STEELなる映画を見てきました。全く予備知識のない方なら「鋼鉄の男? スターリンの伝記映画か?」と思われるかもしれませんが、これは新しいスーパーマンの映画化です。しかし正式名称にはスーパーマンのスの字もないのが興味深いところ。すでに何度も映画化されており、なんで今さら、と言われかねない題材です。しかし、近年の映像技術の進化からして、やはりこのまま埋もれさせてしまうには勿体ない。何しろ1933年に同人誌に登場したスーパーマンは、すべてのアメコミ・ヒーロー、そしてすべての超人ものの元祖。すでにこびりついてしまった手垢を落とし、全く新しい映像としてスーパーマンを再生させたい、というこの難しい仕事を、「バットマン」シリーズを再生させたクリストファー・ノーランが原案・製作、「300(スリーハンドレッド)」で驚くべき映像美を見せつけてくれたザック・スナイダー監督がメガホンをとって見事に成し遂げた一本となっております。
 物語の大枠としては、むしろ旧来のスーパーマンをかなりきちんと踏襲しています。滅亡したクリプトン星から赤ん坊の状態で逃れて地球に飛来し、カンザス州で農業を営むケント夫妻に育てられ、デイリー・プラネット新聞の女性記者ロイス・レインと出会って恋に落ち、やがて自らも同社の記者という身分になって世界の危機を救う・・・という展開は全く元のままで、リメイクものにありがちな、奇をてらった余計な手を入れていないところが好感を持てます。実は私は個人的には、スーパーマンの職業が変わるのではないか、と予想していました。新聞というメディアがアメリカでは衰退著しく、実際にコミック版のスーパーマンの新作では、IT系の企業に在籍する設定に変わってしまったように聞いており、今回の新シリーズもそういうアップデイトの変化はあるのかな、と思ったのです。しかし今作では「世界中の情報が集まりやすく、危険なところに乗り込んで行っても詮索されない仕事」としてやはりデイリー・プラネット社が健在です。なるほど、情報の部分だけなら、今ではネットでいろいろ手に入るのでしょうが、「危険なところに乗り込んでいく」という要素、事件や事故の現場に、軍人や警察官のような組織に属さずに乗り込んで違和感がない民間の職業と言えば、今でも旧来のメディア関係、新聞とテレビの記者しかない、といえそうです。
 10万年にわたり高度な文明を築いてきたクリプトン星。かつては宇宙のあちこちに偵察隊を派遣し、植民と資源確保を図って宇宙規模の大帝国を展開していました。しかし文明は衰退期に入り、厳格な遺伝子管理で、初めから指導者、科学者、軍人、労働者・・・などと赤ん坊は素質ごとに分類されて「生産」され、退嬰的で変化を嫌う元老院が支配するようになると、各地の植民星は放棄され、資源を掘り尽くし、ついにクリプトン星の最後の時が迫ってきました。無能な元老院に反旗を翻した軍部の高官ゾッド将軍(マイケル・シャノン)と女性副官ファオラ(アンチュ・トラウェ)らはクーデターを起こし元老院を掌握。しかしこれに反発した科学者ジョー・エル(ラッセル・クロウ)は、妻のララ(アイェレット・ゾラー)との間に自然分娩で生まれた赤ん坊カル・エルに、クリプトン星人の全遺伝子データの雛型であるコデックスの情報をすべて注ぎ込んで、脱出ポッドで逃します。怒ったゾッドはジョー・エルを殺害しますが、やがて巻き返しを図った元老院側に逮捕され、反乱は鎮圧されます。しかしもはや時間は残されておらず、クリプトン星は大爆発を起こして消滅しました。
 それから33年後。あちこちで超人的な能力を発揮して、人命救助をしては去っていく謎の青年クラーク・ケント(ヘンリー・カビル)の姿が遠く離れた地球にありました。彼は子供のころから自分の能力を持て余し、地球での父ジョナサン・ケント(ケビン・コスナー)から、自分の正体が異星人であることを教えられると、自分探しの旅に出ていたのでした。そのころ軍部はカナダ北部で、約2万年も昔に謎の異星人が残したらしき宇宙船を発掘。取材に訪れた女性記者ロイス・レイン(エイミー・アダムス)はそこで、宇宙船に乗り込むクラークの姿に気づき、後を追います。宇宙船の防衛機能に攻撃され負傷したロイスを、クラークは助け、宇宙船を操って姿を消します。ロイスはクラークが異星人であることを確信し、取材を重ねて、カンザスに住むクラークの母マーサ・ケント(ダイアン・レイン)の元まで訪れ、ついにクラークと再会します。ロイスはクラークに、正体を明かすべきだと言いますが、クラークは、地球の父ジョナサンから秘密を明かすのは早すぎる、地球人は彼を歓迎せず、恐れるから、と教えられており、その言葉にしたがって今は身を潜めていたい、と告げます。ロイスもその考えに納得し、秘密を守ります。しかしクラーク・ケントがそのままひっそりと生きることはできなくなります。クリプトン星消滅を逃れたゾッド将軍が、ジョー・エルの息子カル・エルが地球にいることを知り、部下を率いて地球にやってきます。そして地球人類に「地球人になり済まして潜伏している同胞を引き渡せ」と脅迫します。クラークがゾッドに投降しなければ、ゾッドは圧倒的な科学力と軍事力で、簡単に地球人類を滅ぼすことでしょう。クラークは行きずりの教会で牧師に尋ねます。「僕はあの話題になっている異星人です。僕が投降してもゾッドは侵略をやめるという保証がない。彼は信用できません。でももっと問題なのは・・・地球人も信頼できない、という点なのです」。牧師は答えます。「まずはあなたが信じてみることです」
 クラークはまず公然と姿を現し、ハーディー大佐(クリストファー・メローニ)に逮捕されます。尋問室に呼び出されたロイスはクラークの胸の「S」の字に似た模様は何かと質問します。これはクリプトン星では希望の意味だ、というクラークにロイスは「それは地球では、スーパー・・・」と言いかけますが、これ以後、誰が言うともなく、クラークはスーパーマンと呼ばれるようになります。クラークはゾッド将軍に投降しますが、実父の仇敵であるゾッドとクラークの間が丸く収まるはずもなく、ゾッドは地球を惑星改造してクリプトン化を図り、地球人類を滅ぼすことを決意。地球の命運をかけた両者の死闘が始まります・・・。
 というような展開で、従来のシリーズと比べてクリプトン星の描写が多くて詳細なのが注目されます。そして、スーパーマンの4人の親が今までになく出番が多く、親子の絆の物語という要素も強くなっています。実父にラッセル・クロウ、養父にケビン・コスナーと大物が配されているのは伊達ではなく、出番も多いし見せ場もたっぷりあるのが興味深い点です。
 自分探し中の放浪するクラークの描き方や、子供時代に周囲から疎外されて苦悩する描写も非常に自然で、今までにないもの。このへんが新感覚ですね。今までの優等生的で大らかな描き方ではないのですね。
 新スーパーマン役者のヘンリー・カビルは非常に魅力的です。今まで「インモータルズ」ぐらいしか大きな役はなかった人ですが、伝統的スーパーマンらしさと新しい若い感覚を併せ持ち、歴代のスーパーマンと比べても遜色はないのではないでしょうか。
 それから個人的に気になったのがゾッド将軍の副官ファオラ役のアンチュ・トラウェという人です。ドイツの女優さんですが、いかにも強い女性という感じで、非常に目立ちました。これでぐっと注目されてくるかもしれません。
 非常に詩的でひとつひとつの映像が美しく、感動的な作品に仕上がっていると思います。なんだスーパーマンものか、今さらだよね、と言って頭から切り捨てる方もいるかもしれませんが、そういう先入観でカットしてしまうのは非常にもったいないと思いました。お薦めです。

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2013年9月 2日 (月)

ダチョウのドゥンガ君(ぬいぐるみ)。

 20130902054527 9月に入り、徐々に秋めいて・・・来ませんね、ちっとも。今年も秋らしい秋の気候は、ほとんどなさそうな気配ですね。ところで、このほど我が家に来た新しいぬいぐるみをご紹介します。ダチョウのドゥンガ君です。20130902054721 ご覧のように、まつ毛まで丹念に再現されております。素晴らしい出来栄えです。これは千葉県のカドリーhttp://www.shop-cuddly.com/というお店の商品です。ドイツなど欧州の高級ぬいぐるみに負けない高品質の国産品を創りたい、との高い志で活動されている会社と伺っています。しかし、手作りですし、材料も入手困難、とのことで、このドゥンガ君は現在、売られているものが完売したら生産中止の予定だとか。欲しい方は今がラストチャンスかと思いますので、ぜひ。

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