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2013年4月 4日 (木)

アンナ・カレーニナ

 

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 4月に入りましたが、かえってうすら寒いですね。皆様、ご自愛のほどを。さて、このほど映画「アンナ・カレーニナ」Anna Kareninaというのを見てきました。いうまでもなくロシアの文豪トルストイの小説の映画化で、ヒロインのアンナを演じるのはキーラ・ナイトレイです。本作は先のアカデミー賞で見事に衣装デザイン賞を獲得しました。衣装担当のジャクリーン・デュランは、1870年代に流行したスタイルを綿密にリサーチしたうえで、そのままではあまりに時代がかってしまうため、ジョー・ライト監督と協議の上、1950年代のドレスを参考に女性たちのスタイルを作り上げたそうです。確かに、装飾過剰すぎないデザインながら、スカートの裾のラインは明らかに19世紀後半、というとても魅力的なドレススタイルで、あれなら現代の女性も披露宴やパーティーで着てみたくなるのではないでしょうか。また男性たちの服装の方は、最も紳士服がダンディーだった時代のもので、軍服や制服はとにかくスタイリッシュ、基本的に当時のロシアのものをイメージを損なうことなく再現していると思われます。大きめの将校帽をちょっと斜めに傾けて被る軍人たちが実にかっこいいです。政府高官たちは制服に勲章の太いサッシュ(大綬=タスキ)をかけて、非常に権威的。また一般の紳士用フロックコートや燕尾服なども少しモダンなラインを考慮しながら、じつに魅力的。こういう時代物はなんといっても、時代考証と現代的解釈のさじ加減が最も重要ですが、さすがに本作は見事です。まず歴史好き、服飾好きの人は必見、ですね。
 とまあ、なにしろ衣装デザイン賞作品ですから、その面の魅力を真っ先に書きました。しかし作品全般についても、正統的な時代物の側面と、新しい解釈とのバランスがとてもよく取れている映画だ、と言えると思いました。なにせ、トルストイのアンナ・カレーニナといったら、よくある世界文学全集に入っているレベルの作品で、読んでいない人でもあらすじは知っているような極端に有名すぎる作品です。そのままストレートにリアリズムで映画化しても、はっきりいって新味はありません。そもそも映画化自体、もう何度もされています。だから、本作ではかなり斬新な手法を使っているのが目を引きます。つまり、劇場の芝居のような、また音楽とも合体させて、ミュージカルのような手法をかなり駆使している。もちろん「レ・ミゼラブル」のような完全な音楽映画じゃありませんし、セリフも普通にしゃべりますが、全編を通じてミュージカル的なのです。中でも圧巻は、作品の中でも重要な舞踏会のシーン。たくさんの踊る人々が徐々に動きがストップし、さらには消えてしまい、人妻アンナと、彼女を誘惑するヴロンスキーの2人だけになる、といった映画ならではの撮り方は本当に見事な演出です。
 また配役もこういう題材として新鮮です。今や英国の実力派女優最右翼といえるキーラ・ナイトレーは、不倫に走って破滅する人妻の役どころ・・・これは難しいわけですね、やりすぎると汚くなりすぎるし、かといって褒められた人物でもないので美化してもいけない。あくまでも魅力的なままに破滅していかないといけない。そして胆なのが夫のアレクセイ・カレーニン。今までの映画や演劇では、年をとって尊大で堅物な、まあはっきり言って若い奥さんをほかの男にとられても仕方ないような人物として描かれがちでした。が、ライト監督によると「それではいけない」のだそうです。そもそもは魅力的な男だからアンナも結婚したのだ、と。しかしどこか冷たい人間である。非の打ちどころのない立派な人物なのだが、人間味がちょっと冷たい。そういう人物として描いています。だから、ここでジュード・ロウなんですね。この人の演じるカレーニンは、後半に行くと本当に劇中のセリフで言う「聖人」そのもののようです。エンディングまで行けば、彼が本映画版の中心人物だったことが分かるんです。そして、もう一人大事なのがアンナの不倫相手ヴロンスキー伯爵。これも大胆にと言いますか、あの「キックアス」で有名になったアーロン・テイラー・ジョンソンを起用。とにかく美々しくて情熱的で、しかしまた傲慢でキザ、しかしまだまだ男としては未成熟で頼りなく、危うい部分もある・・・そんな若い騎兵将校の役を本当に魅力的に演じています。またもう一人、注目されたのが、後半になってヴロンスキーの本命婚約者として登場し、アンナの精神を崩壊させるライバルといえるソロキナ公女。これも出番は多くないけれど、アンナが脅威を感じるような魅力的な女性でないといけません。それで起用されたのが、バーバリーなどの広告で知られるトップ・ファッションモデルのカーラ・デルヴィーニュ。昨年の英国モデル・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほどの存在感ある人で、これが映画デビューとか。これから、活躍する人なんじゃないでしょうか。
 時は1874年。ロシア帝国の閣僚にまで上り詰めた大物官僚カレーニンの妻、アンナは首都ペテルスブルク社交界の華。彼女は、モスクワにいる兄オヴロンスキーが不倫を働き、妻ドリーと不仲になっているのを仲介するためにモスクワに行きます。しかし皮肉なことに、兄の不倫をたしなめに行ったはずが、モスクワで開かれた舞踏会で騎兵将校ヴロンスキーと出会い、人生で初めて「ときめき」を感じてしまいます。ヴロンスキーはアンナを追ってペテルスブルクに現れ、彼女に付きまとい、そしてついに許されぬ道へ・・・。それを知った夫カレーニンは体面を重んじて、スキャンダルが表沙汰にならないことばかり強調します。やがてアンナはヴロンスキーとの間に子供を身ごもり、事態はどんどん破滅的な方向に・・・。一方、モスクワの舞踏会で、ドリーの妹キティは、結婚相手に望んでいたヴロンスキーをアンナに奪われた形になり、絶望してしまいました。ヴロンスキーに憧れるあまり、旧知の仲で彼女に思いを寄せていたオヴロンスキーの友人、田舎地主リョービンの求婚も断ってしまっていました。こちらのカップルは、アンナとヴロンスキーが泥沼に落ち込んでいくのと対照的に新しい生活を見つけて行きます。さて、アンナ、カレーニン、ヴロンスキーの三角関係の不倫は、そして田舎でスタートする新しいカップルの生活はどうなっていくのでしょうか・・・。
 やはり、見終わった後に重い余韻が残ります。さすがはトルストイ、ですかね。

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