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2013年3月 8日 (金)

ジャンゴ 繋がれざる者

 クエンティン・タランティーノ監督の話題作「ジャンゴ 繋がれざる者」DJANGO UNCHAINEDを見ました。同監督の前作「イングロリアス・バスターズ」に続き、クリストフ・ヴァルツがアカデミー助演男優賞を獲得、また監督自身も脚本賞を受賞、と高い評価を得た作品です。20130308054308
 一言で感想を言えば、前作よりずっと面白い、と思いました。「イングロリアス・・・」は60~70年代痛快B級戦争映画、というノリのはずが、最後は史実から完全に外れた訳の分からないファンタジーになってしまうのがどうしても納得いきませんでした。参戦国でもある日本人として、まだあの戦争を決着部分までネタにしてしまうようなことは、ちょっといただけない感じがしたものです。しかし、本作はああいう大風呂敷に歴史が変わってしまうような話ではない。やはり60~70年代のマカロニ・ウエスタンをいま、やったらどうなるか、というのを真面目に実践した作品です。そして、そのマカロニ西部劇という枠組みで、南部の黒人奴隷問題を扱って見せたわけです。当然ながら、前作以上に批判的な声もあったようですが、結果として監督の狙いは大当たりとなり、これは非常に娯楽作品としても社会派の作品としても両立する異色作として成功しているんじゃないでしょうか。
 時は1858年、南北戦争勃発の2年前のテキサス。カルーカン農園から売られた数人の黒人奴隷が、奴隷商人に歩かされています。そこに現れたのが、奇妙なドイツ人の歯科医、キング・シュルツ(ヴァルツ)。シュルツは同農園にいたお尋ね物のブリトル3兄弟を追っており、彼らの顔を知っている人物を探していました。奴隷の中の一人、ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)はこの兄弟の仕打ちにより農園を追われて売り飛ばされ、妻のブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)とも離れ離れになっていました。当然、兄弟に激しい憎悪を抱いています。シュルツは絡んできた奴隷商人を無造作に射殺し、ジャンゴを助け出します。彼は表向きは歯科医師だが、実は賞金稼ぎで、ブリトル兄弟を見つけ出して殺す手伝いをするよう依頼します。
 シュルツは次に入った街でわざとトラブルを起こし、現れた保安官をあっけなく射殺。そのあとに駆け付けた連邦保安官に対し、自分が殺した相手は元々は凶状持ちのお尋ね者だった、と説明。賞金をせしめます。その手際の鮮やかさにジャンゴもほれ込み、シュルツを手伝って賞金稼ぎの仕事を始めます。
 ブリトル兄弟が現在、雇われているガトリンバーグの農園で、ジャンゴは恨み重なる兄弟を殺し復讐を遂げます。しかし農園主のスペンサー(ドン・ジョンソン)は黒人の賞金稼ぎなる存在が気に入らず、白覆面を被った後の時代のKKKのような集団を率いて、野営しているシュルツとジャンゴを襲撃します。しかし、その動きを察知していた二人は逆に一味を撃退。スペンサーもあえなくジャンゴに返り討ちにされてしまいます。
 シュルツの元で腕を磨いたジャンゴは、ブルームヒルダを取り返すべく、彼女が売られた先であるミシシッピのカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の大農園に乗り込みます。農園には、表向きは従順な執事、しかし裏では主人のキャンディや白人の用心棒たちにまで命令を下す腹黒い奴隷頭のスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)が待ち構えていました。さて、ジャンゴはこの冷酷な農場主と、悪辣非道な奴隷頭から、最愛の妻を取り戻すことができるでしょうか・・・。
 というような展開で、とにかくタランティーノ作品ですから、たくさん人が死にます。しかし基本的にマカロニ・ウエスタンという設定なので、そこはそんなに気になりません。黒人のガンマンで賞金稼ぎという変わった役どころを、ジェイミー・フォックスが好演。しかしなんといってもクリストフ・ヴァルツの怪演ぶりは見事で、今回は初めからヴァルツの出演を前提として脚本を書いた「あて書き」だったというのもうなずけます。もう彼なしでは、タランティーノ監督は映画が作れないのではないでしょうか。それから、ディカプリオの悪役ぶりがまた、いいんです。これも本当にいい演技していますね。彼はこういう時代劇、向いていると思います。19世紀のコスチュームや髪形、非常によく似合っていますし。それに、「マイアミ・バイス」のドン・ジョンソンも重要な役で存在感を示していますし、フォックスがオスカーを受賞した「レイ」で、フォックス扮するレイ・チャールスの奥さん役を演じていたケリー・ワシントンもいいです。知的で芯が強く美しい黒人奴隷、という役どころにぴったりはまっています。
 この映画が本歌取りしているのが、1966年のマカロニ・ウエスタンの名作「続・荒野の用心棒」(セルジオ・コルブッチ監督)です。この映画、こんな邦題をつけられていますが、原題はジャンゴDJANGOなんですね。この映画で謎めいたガンマン・ジャンゴを演じて一躍スターとなったのがフランコ・ネロですが、今回の映画でも特別に出演しております。フランコ・ネロが酒場で隣にいるジャンゴに話しかけます。「名前は?」「ジャンゴだ」「つづりは?」「D-J-A-N-G-Oだ。Dは読まない」するとネロは「知っているよ」と答えます。そりゃそうです、もともと自分の名前なんだから。それから、カメオ出演と言えば、タランティーノ本人も後半で出演しています。けっこう、ちゃんと出ていますし、セリフもあるのでお楽しみに。
 とにかく、黒人奴隷問題というのは今に至ってもタブーで、なかなかアメリカ国内では正面から取り上げにくいそうです。そこを、マカロニ・ウエスタンというフィルターをかけて作品化したタランティーノの技あり、という一本だと思います。
 それにしても、この時代の服装はなんといってもフロックコート全盛の時代。特にディカプリオのような上流階級の衣装はカッコいいです。ああいう服なら、欲しくなりますね。

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