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2013年3月28日 (木)

ジャックと天空の巨人

 「ジャックと天空の巨人」JACK THE GIANT SLAYERという映画を見ました。いわゆる「ジャックと豆の木」のおとぎ話を映画化したものですが、原題が「巨人殺しのジャック」であることでも分かるように、春休み向け子供向けの軽いお話かと侮るなかれ、ブライアン・シンガー監督の手による派手な戦闘シーン盛りだくさんの正統派ファンタジーになっております。出演も「スターウォーズ」シリーズのユアン・マクレガーや「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのビル・ナイ、「アリス・イン・ワンダーランド」のエレノア・トムリンソンと実は豪華配役。これは拾いものですよ。20130328224602



 時は12世紀ごろ、欧州のクロイスター王国にて。この国には、1000年の昔、エリック大王が巨人を退治したという伝説がありました。エリックは魔導士に造らせた巨人の王の心臓を溶かして作った王冠を被ることで、巨人たちに対しても王権を発揮し、遠く天界の国ガンチュアに彼らを追放したというのです。
 その伝説はおとぎ話となっていましたが、農夫の息子ジャックは、それが真実であり、巨人はいつか攻めてくるのでは、と思っていました。同じころ、王宮でもイザベル王女が同じお話を聞いて育ち、天界の巨人の国を思い浮かべて、冒険に憧れていました。
 その後、ジャックは父親が死に、折り合いの悪い叔父の元で働いていましたが、ある日、馬を市場で売ってわらと交換するように頼まれます。寄り道をして町の芝居小屋に入ったジャックは、酔っ払いにからまれて困っているイザベルを助けます。小屋を出たところ、イザベルの許嫁で王の信任厚いロデリック卿が、修道士を捕まえようとしているところに出くわします。修道士はジャックに豆の入った袋を手渡し、代わりに馬に乗って逃げようとしますが、逮捕されてしまいます。一方、豆だけ持って帰ったジャックは叔父に罵倒され、怒った叔父は豆を床にぶちまけてしまいます。その夜、激しく降る雨の中、ロデリック卿との愛のない結婚話に嫌気がさしたイザベルがたまたま雨宿りにジャックの家にやってきます。
 芝居小屋の件もあってすぐに親密になる二人ですが、突如、叔父が床に捨てた豆の一粒がぐんぐん発芽し、イザベルを家ごと、はるか上空まで運んで行ってしまいます。
 王女が失踪したことを嘆く国王は、騎士エルモントに、豆の木に登って王女を捜索するよう命じます。それに、ロデリックとジャックも同行を志願。幾多の苦難の末、一行はついに天空の世界ガンチュアに到達します。そこには本当に伝説の巨人たちがおり、1000年前にエリック王に与えられた屈辱を晴らし、人間たちに復讐しようと待ち構えていました。イザベルはエリックの子孫として捕えられ、エルモントとジャックは王女の救出に向かいますが、ロデリックは本性を表して、彼の本当の野心をあらわにします。彼はエリックの王冠を使い、巨人たちを使役して、地上を支配しようと目論んでいたのでした・・・。
 ということで、「アバター」で革新的に進んだ技術はここにきて完成の域、といってよく、この映画はおそらく2013年時点でもっともハイテクで撮影された映像の映画だと言っていいでしょう。一昔前なら絶対におもちゃじみた絵にしかならなかった巨人の軍勢と騎士団の死闘、といったシーンがこれでもか、という具合に自然に描かれます。もはやどんな絵でも撮ろうと思えば撮れるのだな、と思わせます。
 スリルありロマンスあり冒険あり、戦闘シーンあり、身分の卑しいものが成り上がるどんでん返しあり、もうこういうジャンルの王道要素がきっちり盛り込まれており、中世ファンタジーの理想形と言っていいかと思います。この手のジャンルの作品が好きな人は見て損はありません。服装、甲冑や武器のたぐいは12世紀というより、もう少し後の時代っぽいのですが、「リンカーン」や「ワルキューレ」など時代物で手腕を発揮してきたジョアンナ・ジョンストンの制作する衣装も見事なもので一見の価値があります。これは春休み映画と見逃すのはもったいないのじゃないでしょうか。

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コドモ警察

 映画「コドモ警察」というものを見ました。TBS系の深夜ドラマで人気が出たものの初映画化ということですが、私は実のところテレビ版は存在自体、知りませんでした。「マルモのおきて」で一躍、人気者となった鈴木福君を主演に据えた刑事ドラマ、というのがユニークな作品です。20130327233740



 横浜を拠点に悪事を企む謎の組織レッド・ヴィーナス。これに対抗するべくエリート刑事を集めて横浜大黒署に編成されたのが精鋭部隊「特殊捜査課」。本庁のキャリアエリートたちも、一目も二目も置く大沼デカ長(50歳)、定年まじかで落としの名人ナベさん(59歳)、大食漢の豪快なイノさん(49歳)、プレイボーイ風のチャラいノリだが実は頼れるエナメル(29歳)と、熱血漢で武闘派のブル(28歳)、頭脳派で上品なスマート(39歳)、紅一点のクールな美女マイコ(30歳)、それに新人刑事の国光(23歳)という陣容です。ところが彼らはレッドヴィーナスの罠にかかり、「子供になってしまうガス」を吸うことに。そのために彼らはみな、中身は大人・・・最年長のナベさんなどは60に近いというのに、身体は小学生になってしまうことに。その場にいなかった新人だけが大人で、先輩たちはみな、一見すると子供、というギャップがとても珍妙なことになってしまいます。
 ところが最近、レッドヴィーナスがらみの犯罪があまりにも粗雑すぎることに、一同は不審を覚えます。適当なサラリーマンや女子高生、肉屋の親父などに犯罪をそそのかすだけの手口はあまりにもお粗末で、とても以前のレッドヴィーナスの計画的な犯罪とはほど遠い。あるいはレッドヴィーナスは壊滅寸前で、その名をかたる模倣犯が現れているのではないか、と彼らは疑い始めます。
 そこに、本庁の間警視(38歳、しかしやはりガスを吸って12、3歳になっています)から連絡が入り、レッドヴィーナス名義で、来日するカゾキスタンのハザフバエフ大統領を暗殺する予告があったとのこと。特殊捜査課の面々は本庁のSPと合同で警備に当たることにしますが、SPの指揮官・吉住の態度は冷たく、かつての上官だったナベさんにも子供扱いして無礼な態度をとります。特殊捜査課だけで独自の捜査を、と主張するメンバーに対し、なぜかデカ長は「本庁の指示に従って、この件からは手を引け」と命じます。らしくないデカ長の態度にバラバラになってしまう特殊捜査課。しかしデカ長には何か考えがあるらしく、以前からの愛人でもある鑑識課の美人課員・凛子に「レッドヴィーナスがらみのチャカの種類を改めて調べてくれ」と依頼します。そのころ、エナメルは街で偶然、かつての彼女、絵里子と再会します。また、マイコは小学校の同級生・翔太からデートに誘われてときめいてしまいます。さて、こんなバラバラな状態で、大沼デカ長はレッドヴィーナスの手から大統領を守ることができるのでしょうか・・・。
 ということで、刑事たちのキャラ設定やあだ名でもわかるように、要するに70年代から80年代の刑事ドラマ「太陽にほえろ」とか「西部警察」の刑事たちが、子供だったらどうなるだろうか、という内容です。まだ8歳の鈴木福君がスリーピースの背広を着込んで、ショットガンを構えてヘリコプターから登場する様は、どう見ても渡哲也の大門団長ですし、捜査課のデスクで電話を取ると「なに?」と咆哮する姿は、石原裕次郎のボスそのものです。ほかの子役たちのキャラもどこかで見たような・・・これは松田優作かな、とかこれは殿下の小野寺昭かな、とかいう感じ。そうそう、こういうドラマでは必ず本庁の嫌われ役で、感じの悪い幹部が出てきますが、今作ではそれが小野寺昭さんなんですね。古い刑事ドラマへのオマージュなんでしょう。
 その他、なつかしのドラマを彷彿とさせる展開が随所にあって、わかっているのですが笑わせてくれます。
 なんの小難しい理屈もなく、とても楽しいバラエティー度満点の作品です。上映時間は101分とコンパクトで、肩のこらない作品をお求めの方にはお薦めかも。それにしても、刑事ドラマのパロディーだから、けっこう死人は出ます。映画館では子供向け映画の予告枠になっていましたが、これは本当は子供向け映画じゃないと思います、昔の刑事ドラマを見ていた世代向けの企画だと思うのですが、どうでしょう。
 

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2013年3月23日 (土)

日刊ゲンダイ「辻元よしふみウンチク堂」第49回・流行色

 日刊ゲンダイ連載「辻元よしふみ おしゃれウンチク堂」第49回が、きょう23日発売号に掲載されました。今回は「流行色の歴史は軍服が作ってきた」として、軍服の色がトレンドカラーを左右した17~19世紀の逸話を紹介。本連載は隔週土曜日掲載(次回は4月6日発売号の予定)です。20130323183859

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2013年3月22日 (金)

クラウド アトラス

 「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟、いやお兄さんが性転換したため、今ではウォシャウスキー姉弟が監督する話題作「クラウド アトラス」CLOUD ATLASを見ました。クラウド・アトラスとは直訳すれば「雲の地図」ですが、実はこの映画の原作小説を書いたデイヴィッド・ミッチェルによれば、この題名は日本人作曲家・一柳慧(いちやなぎ・とし)さんの楽曲「雲の表情」の英語題CLOUD ATLASから取ったものだそうです。一柳さんといえばあのオノ・ヨーコさんの最初のご主人。そして、ミッチェルは、前にもオノ・ヨーコさんのもう一人の夫、ジョン・レノンの楽曲「夢の夢」ドリーム・ナンバー9からタイトルを拝借した作品を書いているとか。20130322040909



 まあ、このへんは余談なのですが、実はミッチェルは日本の広島で8年間も英語教師をし、その後も沖縄などに住んだことがあり、奥さんも日本人。というわけで、日本とアジア文化に非常に理解のある人で、オノ・ヨーコさんがらみのタイトルを使うのも決して偶然じゃないようですね。それに、本作の基本的な構想の軸となるのが「輪廻転生(りんね・てんせい)」なわけですから、この同じ魂が何度もよみがえって人生を繰り返す、という発想はじつはキリスト教圏ではタブーなわけでして、仏教圏のアジア地域ではさして珍しいテーマでもないのですが、人生は一回限りで、死者は最後の審判の日までじっと墓場で待っている、というようなキリスト教の教義からすると非常に異教的というか、スピリチュアル的なテーマなわけであります。原作者がそういう人なのだな、と知ると、なるほど理解できる気がしてくるわけです。
 さて、本作はその輪廻転生テーマで、しかも六つの時代の物語が、順序良く並ぶのではなくてばらばらの断片でつながれる、という・・・つまり、たとえば2012年の登場人物が「扉を開いて外へ出るぞ!」と叫ぶと、次には2144年の人物たちが、扉を開いて外に飛び出していくシーンにつながる、といった具合です。この、個々の物語は必ずしもつながりがない(一部でつながってはいるのですが)にもかかわらず、しかし通底するセリフやシーンが重なって、人というものは、人生というものは「何度も何度も同じような間違いを繰り返す」(1973年のハル・ベリーのセリフ)のです。そして、六つの物語がトータルで訴えているのは、弱肉強食で、強いもの、権力の有るものが弱いものを虐げ、搾取することで序列を作っている人間の社会、その中で欲望のままに他人を押しのけ、支配する層と、その束縛から逃れ自由になろうとする魂の戦い・・・結局、人類の歴史とはそういう繰り返しであり、そしてそこから徐々に昇華していくべきものなのだというメッセージです。
 六つの時代の六つのストーリーが交互にバラバラに出てくる展開なので、そのまま粗筋を記すことはできません。ざっと便宜的に、六つの話を概略、紹介しますと・・・。
 ①1849年。南太平洋を航行する帆船にて。義父の代理として奴隷貿易の書類にサインした弁護士のアダムは、病にかかりグース医師の治療を受けることとなる。船室に忍びこんでいた奴隷のオトゥアの命を救ったアダムだが、病状はどんどん悪化。そして治療に当たるグース医師もなにか魂胆があるようだが・・・。
 ②1936年。①のアダムの航海日誌を愛読する青年ロバート・フロビッシャーが主人公。同性の愛人シックススミスに別れを告げ、老作曲家エアズの元で採譜の仕事を始める。しかしフロビッシャーの傑作「クラウドアトラス六重奏曲」を、エアズは自分の曲として横取りしようとする。フロビッシャーはエアズに銃を向けて逃走し、シックススミスに最後の手紙を書く・・・。
 ③1973年。②に登場したシックススミスはその後、科学者として原子力発電所の開発に携わっていた。原発開発にかかわる黒い陰謀があることに気付いた彼は、偶然、出会ったジャーナリストのルイサ・レイに秘密を暴露しようとするが、その直前に射殺されてしまう。ルイサは原発に乗り込んで真相を解明しようとし、そこで出会った科学者アイザックは、彼女に協力しようとするのだが、彼らにも殺し屋の手が伸びてきて・・・。
 ④2012年。無頼作家ダーモットはパーティー会場で辛口批評家を殺害してしまう。ダーモットはこれで刑務所送りになるが、それまで鳴かず飛ばずだった彼の著書は大ヒット。思いがけず、その担当編集者であるカベンディッシュも大儲けする。ところが、ダーモットの弟たちが現れてカベンディッシュを脅迫、助けを求めてすがりついた兄にも騙され、まるで監獄のような老人ホームに送りこまれてしまう・・・。
 ⑤2144年。全体主義国家ネオ・ソウルで。クローン人間であるソンミ451は、同じレストランで労働させられているユナ939から、クローンが見ることは禁じられている映画を見せられる。それは④のカベンディッシュが老人ホームから脱走する顛末を描いた小説が映画化されたものだった。その後、ユナは客を殴って殺され、ソンミの元には謎の男ヘジュが現れて、囚われの身から解放する。ソンミは徐々にこの社会の恐るべきシステムの実態を知っていく・・・。
 ⑥2321年。文明社会が崩壊して106年が経過した。人々は⑤のソンミを、神の化身で救世主「ソンミ様」として崇拝している。かつてハワイと呼ばれた島の男ザッカリーは、目の前で妹の夫アダムが、人食い人種コナ族に襲われて殺されるのを見殺しにしてしまう。強いもの、恐ろしいものに抵抗する勇気が彼にはないのだった。ある日、この島に旧文明の技術を継承しているプレシエント族の女性メロニムがやってくる。ザッカリーは彼女を警戒するが、病気になった姪を進んだ技術で治してもらう代わりに、メロニムが望む「悪魔の山」への道案内を引き受ける。メロニムの狙いとは一体、なんなのか・・・。
 同じ役者さんが、各時代で違う役を次々に演じるわけです。トム・ハンクスは①ではグース医師を、②ではフロビッシャーの弱みにつけこむ安宿の支配人を、③では科学者アイザック、④では無頼作家ダーモット、⑤では映画の中でカベンディッシュに扮する俳優、そして⑥でザッカリーを演じます。しかし、彼の場合はいずれも白人の男性役なので、まあ無難な「転生」ぶりですが、たとえばハル・ベリーは②ではユダヤ系白人女性のエアズ夫人、③では黒人女性のジャーナリスト・ルイサ、⑤ではアジア人の男性医師、⑥で黒人女性のメロニムです。韓国人女優のペ・ドゥナの場合、①ではアダムの妻である白人女性ティルダを、③ではメキシコ人の不法移民女性を、⑤ではアジア系女性のソンミを演じています。①でアダムを演じたジム・スタージェスは⑤ではアジア系のヘジュに成り切りますし、⑤でユナに扮する中国人女優ジョウ・シュンは、③でホテルの白人男性従業員、⑥ではザッカリーの妹の白人女性になります。極めつけはヒューゴ・ウィーヴィングで、①での白人優越主義者の義父とか、③の殺し屋、⑤の軍人役などはまあいいとして、④では老人ホームの凶暴極まりない看護婦をやる・・・つまり女装しているのが非常に怖いです。
 まあ輪廻転生ですから、人種も国籍も、性別も変わって当然なわけです。しかし徐々に悪から善に近づいていく魂もあれば、おそらく昇華して「解脱」したらしい魂、いつまでも悪人から抜け出せない人物、そして・・・最後にはもはや人間として転生することも許されず、悪霊というか、悪魔になり果ててしまう魂まで描かれます。
 まあ、けっこう哲学的に考えてしまう作品ですし、六つの物語が交互に出てくるので初めの30分ぐらいは本当に分かりにくいのですが、最後まで見るとすっかりよく理解できて、とても面白いエンターテイメント作品として成立しています。オムニバスとしてみれば、時代劇あり、スリラーあり、SFあり、という具合で、これも面白い。特に④はこの話だけ明らかにコメディータッチです。
 難しいのではないか、ということで敬遠する必要はない作品です。時間も本編172分とかなり長いのですが、見ていて全く長いとは思いませんでした。それだけ構成が巧みに出来ている、ということです。本当によくまあ、映画化できたものです。また性別も人種も超えて見せる最新のメーキャップ技術も凄いもの、と感心させられます。充実した一本だと思います。お薦めです。

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2013年3月14日 (木)

オズ はじまりの戦い

20130314011531  「オズ はじまりの戦い」OZ THE GREAT AND POWERFULを見ました。ディズニー作品で、1939年のジュディ・ガーランド主演で有名な名作「オズの魔法使」の前日譚に当たる作品。メガホンを取るのはサム・ライミ監督です。
 オズの魔法使といえば、アメリカの児童作家ライマン・フランク・ボームが1900年に発表した小説で、これが大ヒットしてから、全部で14冊もシリーズが書き継がれました。そして、39年といえば第二次大戦が始まった年ですが、この年に制作された映画が決定版となり、ガーランドが歌った「オーバー・ザ・レインボウ」はスタンダードナンバーとなりました。アメリカのカンザス州の田舎娘ドロシーが、愛犬トトと共に竜巻に飛ばされて、オズの国に飛ばされてしまいます。北の魔女に教えられて、黄色いレンガの道をたどり、途中で出会った勇気のないライオン、脳のないカカシ、心のないブリキ人形といった珍妙な連中と、エメラルドシティを目指します。そこの宮殿にいる大魔法使オズならば、カンザスへの帰り方を教えてくれるだろう、というのです。そしてたどり着いた都で、ドロシーたちは魔法使オズなる人物が、実際はなんの力もないただの老人にすぎないことを知り落胆するのですが、良き魔女グリンダの助言を得て、それぞれの望みをかなえることになる・・・そんなストーリーでした。
 さてそれで。物語の題名であり、不思議の国の国名でもあるオズOZというのは何者なのか? ボームの残した14冊の原作にはある程度、記されているわけですが、今回はそれを基に大胆に想像を加えて、パンフレットの中の監督の言葉によれば、「原作から40%、脚本家ミッチェル・カプナーのイマジネーションが60%」で、そのオズが不思議の国を治める大魔法使と呼ばれるようになるまでの物語を作り上げた、というのが本作であるわけです。
 時は1905年、サーカス団の三流奇術師であるオスカー・ゾロアスター・ディグス、通称オズ(ジェームズ・フランコ)は、人をだますことをなんとも思わない悪党でペテン師、女たらしの小悪党として登場します。今日も行きがかりでたくさんの女性に声をかけ、挙句に本命の幼馴染であるアニー(ミシェル・ウィリアムズ)からは別れ話を切り出されます。サーカス団の怪力男の彼女をたぶらかしたことで、怪力男を激怒させ、大乱闘に。命からがらサーカス団を逃げ出し、気球に乗って逃げだします。ところが突然、竜巻が襲ってきて、オズは気球ごとどこかに飛ばされてしまいます。気がつくと気球は見たこともない美しい国に到着していました。
 森で出会った美しい魔女セオドラ(ミラ・クニス)から、この地が自分の通称と同じ名のオズの国であり、そして、空からやってきた魔法使がこの国の新たな王となり、平和と秩序をもたらす、という伝説があることを知ります。セオドラはオズのちょっとした奇術を見て、彼を本物の魔法使と誤解します。オズはいつもの悪い癖でセオドラを誘惑、彼女もその気になってしまい、オズが国王、自分が妃となってオズの国を支配しよう、と言いだします。
 途中、ライオンに襲われていた翼のある猿フィンリー(声ザック・ブラフ)を助け、エメラルドシティに乗り込んだオズは、セオドラの姉で現在、都を事実上、管理している美貌の魔女エヴァノラ(レイチェル・ワイズ)から、莫大な財宝を見せられます。そして、実の父親である前国王を暗殺して悪の限りを尽くす悪い魔女を倒してくれれば、正式に新国王に迎え、財宝はすべてあなたのものになる、と焚きつけられます。オズはフィンリーを連れて、悪の魔女退治に出かけるのですが、途中、陶器の町で、魔女の手下に襲われた陶器の少女(声ジョーイ・キング)を救出し、いよいよ悪の魔女の本拠地に乗り込みます。ところが、その悪の魔女は、あのアニーそっくりの魔女グリンダ(ウィリアムズの二役)であることを知りオズは驚愕します。
 一方、城ではセオドラが、オズが自分のほかに姉のエヴァノラも誘惑したことを知り、嫉妬に怒り狂います。さて、三人の美しい魔女に囲まれて、オズはいったいこれからどうするのでしょうか。そして、前国王の死の真相とは・・・。
 ということですが、女たらしのペテン師、オズが徐々に使命感に目覚めて成長していく様が一つの柱となっています。一見、甘い風貌で、しかし実はいい加減な男である、しかしながら芯の部分では正義感があるという複雑な人間像を、ジェームズ・フランコが好演。そして、三人の魔女の魅力、というのが重要なポイントですが、「ブラック・スワン」で有名になったミラ・ニクス、「ハムナプトラ」「ナイロビの蜂」のオスカー女優レイチェル・ワイズに、「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズと、ルックスも演技力も一流の3人がいい仕事をしています。
 現実のカンザスのシーンは白黒で、オズの国に来るとフルカラーになる、という演出は1939年の映画を踏襲しています。オズの国の描写はことのほか美しく、さすがに70年前の作品とは比較にならない最新技術の成果、といえます。
 とはいえ、ちょっとかわいそうな描き方なのが、妹の魔女セオドラです。すっかり姉の言いなりになって生きてきて、女たらしのオズに出会って一目ぼれ、そして騙されたと知って傷つき、そのまま最後まであまりいいことがないのですけれど、これでいいんでしょうか? まあ、この人が39年の映画で登場する北の魔女になるのでしょうけれど。
 そういえば、猿のフィンリーを助けるときに、オズに撃退されるライオンが登場しますが、特に説明はないですが、ここでおびえてしまって以来、この国のライオンは勇気がなくなったのでしょうか。おそらくそういう設定なのでしょうが・・・。
 全体に、美しくて楽しいディズニー映画という線を外れていませんが、やはり癖のある作風のサム・ライミ監督ですので、オズの人間像と言い、魔女たちの描き方と言い、けっこうダークなものがありまして、意外に子供向けとは言い難い、かなり大人向けファンタジーじゃないでしょうか? なかなかビターな一本だと感じましたけれど、どうでしょうか。

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2013年3月 9日 (土)

日刊ゲンダイ「辻元よしふみウンチク堂」第48回・男性下着の歴史

 日刊ゲンダイ連載「辻元よしふみ おしゃれウンチク堂」第48回が、きょう9日発売号に掲載されました。20130309184528 今回は「欧州でノーパン当たり前の時代があった」として、古代から現代までの男性下着の歴史をご紹介。本連載は隔週土曜日掲載(次回は3月23日発売号の予定)です。

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2013年3月 8日 (金)

ジャンゴ 繋がれざる者

 クエンティン・タランティーノ監督の話題作「ジャンゴ 繋がれざる者」DJANGO UNCHAINEDを見ました。同監督の前作「イングロリアス・バスターズ」に続き、クリストフ・ヴァルツがアカデミー助演男優賞を獲得、また監督自身も脚本賞を受賞、と高い評価を得た作品です。20130308054308
 一言で感想を言えば、前作よりずっと面白い、と思いました。「イングロリアス・・・」は60~70年代痛快B級戦争映画、というノリのはずが、最後は史実から完全に外れた訳の分からないファンタジーになってしまうのがどうしても納得いきませんでした。参戦国でもある日本人として、まだあの戦争を決着部分までネタにしてしまうようなことは、ちょっといただけない感じがしたものです。しかし、本作はああいう大風呂敷に歴史が変わってしまうような話ではない。やはり60~70年代のマカロニ・ウエスタンをいま、やったらどうなるか、というのを真面目に実践した作品です。そして、そのマカロニ西部劇という枠組みで、南部の黒人奴隷問題を扱って見せたわけです。当然ながら、前作以上に批判的な声もあったようですが、結果として監督の狙いは大当たりとなり、これは非常に娯楽作品としても社会派の作品としても両立する異色作として成功しているんじゃないでしょうか。
 時は1858年、南北戦争勃発の2年前のテキサス。カルーカン農園から売られた数人の黒人奴隷が、奴隷商人に歩かされています。そこに現れたのが、奇妙なドイツ人の歯科医、キング・シュルツ(ヴァルツ)。シュルツは同農園にいたお尋ね物のブリトル3兄弟を追っており、彼らの顔を知っている人物を探していました。奴隷の中の一人、ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)はこの兄弟の仕打ちにより農園を追われて売り飛ばされ、妻のブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)とも離れ離れになっていました。当然、兄弟に激しい憎悪を抱いています。シュルツは絡んできた奴隷商人を無造作に射殺し、ジャンゴを助け出します。彼は表向きは歯科医師だが、実は賞金稼ぎで、ブリトル兄弟を見つけ出して殺す手伝いをするよう依頼します。
 シュルツは次に入った街でわざとトラブルを起こし、現れた保安官をあっけなく射殺。そのあとに駆け付けた連邦保安官に対し、自分が殺した相手は元々は凶状持ちのお尋ね者だった、と説明。賞金をせしめます。その手際の鮮やかさにジャンゴもほれ込み、シュルツを手伝って賞金稼ぎの仕事を始めます。
 ブリトル兄弟が現在、雇われているガトリンバーグの農園で、ジャンゴは恨み重なる兄弟を殺し復讐を遂げます。しかし農園主のスペンサー(ドン・ジョンソン)は黒人の賞金稼ぎなる存在が気に入らず、白覆面を被った後の時代のKKKのような集団を率いて、野営しているシュルツとジャンゴを襲撃します。しかし、その動きを察知していた二人は逆に一味を撃退。スペンサーもあえなくジャンゴに返り討ちにされてしまいます。
 シュルツの元で腕を磨いたジャンゴは、ブルームヒルダを取り返すべく、彼女が売られた先であるミシシッピのカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の大農園に乗り込みます。農園には、表向きは従順な執事、しかし裏では主人のキャンディや白人の用心棒たちにまで命令を下す腹黒い奴隷頭のスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)が待ち構えていました。さて、ジャンゴはこの冷酷な農場主と、悪辣非道な奴隷頭から、最愛の妻を取り戻すことができるでしょうか・・・。
 というような展開で、とにかくタランティーノ作品ですから、たくさん人が死にます。しかし基本的にマカロニ・ウエスタンという設定なので、そこはそんなに気になりません。黒人のガンマンで賞金稼ぎという変わった役どころを、ジェイミー・フォックスが好演。しかしなんといってもクリストフ・ヴァルツの怪演ぶりは見事で、今回は初めからヴァルツの出演を前提として脚本を書いた「あて書き」だったというのもうなずけます。もう彼なしでは、タランティーノ監督は映画が作れないのではないでしょうか。それから、ディカプリオの悪役ぶりがまた、いいんです。これも本当にいい演技していますね。彼はこういう時代劇、向いていると思います。19世紀のコスチュームや髪形、非常によく似合っていますし。それに、「マイアミ・バイス」のドン・ジョンソンも重要な役で存在感を示していますし、フォックスがオスカーを受賞した「レイ」で、フォックス扮するレイ・チャールスの奥さん役を演じていたケリー・ワシントンもいいです。知的で芯が強く美しい黒人奴隷、という役どころにぴったりはまっています。
 この映画が本歌取りしているのが、1966年のマカロニ・ウエスタンの名作「続・荒野の用心棒」(セルジオ・コルブッチ監督)です。この映画、こんな邦題をつけられていますが、原題はジャンゴDJANGOなんですね。この映画で謎めいたガンマン・ジャンゴを演じて一躍スターとなったのがフランコ・ネロですが、今回の映画でも特別に出演しております。フランコ・ネロが酒場で隣にいるジャンゴに話しかけます。「名前は?」「ジャンゴだ」「つづりは?」「D-J-A-N-G-Oだ。Dは読まない」するとネロは「知っているよ」と答えます。そりゃそうです、もともと自分の名前なんだから。それから、カメオ出演と言えば、タランティーノ本人も後半で出演しています。けっこう、ちゃんと出ていますし、セリフもあるのでお楽しみに。
 とにかく、黒人奴隷問題というのは今に至ってもタブーで、なかなかアメリカ国内では正面から取り上げにくいそうです。そこを、マカロニ・ウエスタンというフィルターをかけて作品化したタランティーノの技あり、という一本だと思います。
 それにしても、この時代の服装はなんといってもフロックコート全盛の時代。特にディカプリオのような上流階級の衣装はカッコいいです。ああいう服なら、欲しくなりますね。

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2013年3月 4日 (月)

歌舞伎座の幕の内弁当。

昨日の記事であまりに暗い写真を載せましたので、今日はその歌舞伎座地下のお弁当売り場で「歌舞伎座の幕の内弁当」を買ってみました。これで1000円です。とても上品な薄味でした。20130304153828

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2013年3月 3日 (日)

夜の歌舞伎座、開業も間近。

 すみません、このところ結構、立て込んでいて更新をさぼっておりました。さて、ひな祭りの3月3日。まあ我が家はあまり関係ないですが、一般の人たちが平安時代の衣装を知っているのはこの行事のお陰かもしれません。そういう意味で、大事にしていってほしいと思います。歴史的なものはいったん途切れると、復活は難しいものですから。
 ところで、先日、竣工成った東銀座・歌舞伎座の前を通り過ぎました。4月2日から公演ということで、地下の売店や弁当売り場などはもう営業を開始しています。ゆっくり見たい方は今の内に見ておくといいかも。20130303181840
 この近くにあった「銀座シネ・パトス」という名画座は今月末に閉館します。また、銀座松坂屋デパートもまもなく、いったん閉店して大規模な建て替えをします。
 ということで、銀座もけっこう変化しております。生きている街なんですね。

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