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2012年12月21日 (金)

ホビット 思いがけない冒険

 20121221143442 ピーター・ジャクソン監督の新作「ホビット 思いがけない冒険 THE HOBBIT UNEXPECTED JOURNEY」を見ました。あの10年前に映画界に革新をもたらした「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の続編──、いや、正確にいえば「前日譚」です。今回の「ホビット」シリーズも三部作の予定ですので、全部で6作。そして、先に三部作を作り、それより遡った時代で三部作を製作するという経過は「スター・ウォーズ」シリーズと同様です。すなわち、本作品は指輪物語シリーズの「エピソード1」ということになります。
 原作者のJ・R・R・トールキン教授は、初めに子供のためのおとぎ話として「ホビット」を書き上げました。ところがこれが非常に評判がよく、ここからさらに話をどんどん大きくして、彼の創造したファンタジー世界「中つ国」の世界大戦の模様を壮大なストーリーで描く「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」を書くことになりました。
 映画の製作順は、原作の執筆順とは逆になっているわけですが、そのおかげで、トールキンが続編を書くにあたって、前作をいろいろ整合性をつけるために書き直さざるを得なかったのとは逆に、この映画ではロード・オブ・ザ・リングでの展開を踏まえた伏線をいろいろ張れるわけです。
 中つ国の片田舎で小人族のホビットたちが住むホビット荘。袋小路屋敷の当主ビルボ・バギンズは、平和で満ち足りた暮らしを満喫していました。しかしそこに魔術師ガンダルフが訪れ、さらにドワーフ族の王族トーリン・オーケンシールドほか13人のドワーフが突然、やってきます。トーリンはかつて悪竜スマウグに奪われた離れ山の「山の下の王国」を奪還する決意を固めていました。ガンダルフはビルボを本人に断りもなく「忍びの者」としてメンバーの一人に推薦していたのです。あれこれの経緯の後、ついに安定した生活を捨てて冒険の旅に出かけることにしたビルボ。しかしその行き先には、単に竜を倒して古い王国の宝の山を見つけに行く、というおとぎ話的な展開にとどまらず、中つ国に再び復活し始めていた古の魔王の影がちらつき始めていました・・・。
 ということで、原作はわりとゆるい児童文学なのですが、映画はあくまでもロード・オブ・ザ・リング三部作のエピソード1として、非常に壮大かつシビアな味に仕上げており、前の三部作を見た人は必見です。原作の「ホビット」には描かれていないが、「指輪物語」で大幅に増補した部分が取り入れられてます。たとえば原作では名前しか登場しない茶色の魔法使いラダガストが大活躍したり、サルマンやガラドリエルが参加する白の賢人会議の描写が描かれたりします。ファンには嬉しい要素ですね。また、映画の冒頭部分も、冒険の60年後、そして「ロード・オブ・ザ・リング」の少し前の時点で開かれたビルボの111歳を祝う誕生パーティーを描いており、ここで前作でビルボを演じたイアン・ホルムと、フロドのイライジャ・ウッドが再演してくれているのも嬉しいサービス。昔からの原作ファンなら「ああ、このシーンも映像化してくれたか」と思うこと請け合いです。
 上記の二人のほか、ガラドリエルのケイト・ブランシェット、エルロンド卿のヒューゴ・ウィーヴィング、そしてガンダルフのイアン・マッケランが、とても楽しそうに10年ぶりの役を演じています。そして驚かされるのが、サルマン役のクリストファー・リー。なんと今年90歳を迎えましたがかくしゃくたるもので、前作より60歳若い白の魔術師サルマンを演じています。何しろリーはトールキン教授と会ったことがある唯一の出演者ですから・・・。
 若き日のビルボを演ずるのはマーティン・フリーマン。「銀河ヒッチハイクガイド」で無理やり宇宙旅行に連れ出される情けない地球人の役をやって有名になりましたが、同じような役柄といえますね。また、本作のもう一人の主役であるトーリン役はリチャード・アーミティッジ。これまでですと「キャプテン・アメリカ」でナチスの諜報員などを演じた程度で、まだまだ無名に近いのですが、これで注目されることは間違いありません。国を奪われた悲壮な王子役を熱演しています。
 さらに、本作ではあのゴラム(ゴクリ)がパワーアップして登場。前作ではまだぎこちない部分もあったモーション・キャプチャーももはや完成の域。演じるのはもちろんアンディ・サーキスです。
 この「ホビット」で、ビルボはゴラムから「指輪」を手に入れることになり、これが60年後のフロドの冒険につながっていく伏線になるわけですね。
 とにかく圧倒的な映像美です。ホビット荘、ゴブリンの地下王国、ドワーフの王国、いずれも見事な視覚化で、もはやこれを上回るものは難しいのでは、と思われます。「ロード・・・」の映画のファン、原作小説のファンも見ておくべき映画だと思いました。
 
 

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