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2012年8月16日 (木)

トータル・リコール

20120816032551  終戦から67年がたちました。当時、20歳だった若者も87歳。太平洋戦争も「歴史」となっていくのでしょうね。ところで、このほど映画「トータル・リコール」を見てきました。ポール・バーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツネッガー主演の1990年の同名大ヒット映画のリメイクです。率直に言って、第一報を聞いたときには「なんで? 別に90年版は古びていないのになんでこのタイミングで?」と思いました。ところで、90年版では、シュワちゃんの奥さん、ローリー役を演じた当時無名の女優、シャロン・ストーンがブレイクしたのでした。それで、今回のリメイク版ではケイト・ベッキンセールがそのローリー役を演じると言います。まあ、今回メガホンをとっているのが「アンダーワールド」シリーズでケイトを起用し、おまけに結婚しちゃったレン・ワイズマン監督なんで、当然ではあります。我が家はベッキンさんのファンなので、見ておこうというわけでした。
 トータル・リコールは、伝説のSF作家フィリップ・K・ディックの小説を基にした作品です。じつは日本のコミック、アニメ「コブラ」もこれを基にしています。要するに、自分はしがない平凡な市民だと思っていた男が、ふとしたきっかけに、自分の記憶が書き換えられていることに気付き、本当の自分の正体は何者か、と探ることになる・・・そういう話ですね。
 90年版のケレン味たっぷりで奇想的な作風が、どうアレンジされているのか・・・まあ見どころとしてはその点になります。
 近未来の地球。化学戦争のために世界中のほとんどの地域が汚染で居住不能になり、英国を中心にした欧州のブリテン連邦(UFB)と、オーストラリアのコロニーにだけ人類は生き延びている、という設定。それで、両者の間は地球の真ん中を貫通する超高速エレベーター「フォール」でのみ行き来できます。富裕層はみなUFBの住民で、貧困層はコロニーに住み、毎日フォールに乗ってUFBに通勤し、働いている。本作の主人公ダグラス・クエイド(コリン・ファレル)も、そんな生活をしているコロニーの住民で、UFBでは戦闘ロボットの工場で働いています。ところが毎晩、奇妙な夢にうなされる。見知らぬ美女と一緒に敵に追われ、最後は捕まる夢です。そのことを不思議に思いながら、退屈な日常にうんざりし、自分は本当はこんな生活をしていたくない、と思っています。そのころ巷で流行しているのが、思い通りの「記憶」を脳に与えるというリコール社の商売。頭の中だけの夢の世界では、大富豪にでも世界的ロックスター、スポーツ選手、なんにでもなれる、というわけです。クエイドもリコール社に出かけ、術を受けようとしますが、そのときわらわらと警官隊が押し寄せてきて彼を逮捕しようとする。すると彼の体は無意識に反応し、何十人もいる警官隊を皆殺しにしてしまう。なぜ俺にこんなことができるのか? 命からがら家にたどり着くと、今度は妻のローリー(ベッキンセール)が急に彼を殺そうとする。そして、自分は妻でもないし、ダクラス・クエイドなんて人物も存在しない。今まで彼が信じていた記憶は偽物で、自分は妻のふりをしていた監視役だった、という。ここもすんでのところで逃げ出したクエイド?は、夢に出てきた美女メリーナ(ジェシカ・ビール)に助けられ、徐々に自分の正体がUFB代表コーヘーゲンの右腕で、その後、コロニー独立運動のレジスタンス一派に寝返ったという世間でも有名な危険人物、カール・ハウザーその人であることを知ります。さてクエイド=ハウザーは、この世界のなかで自分を取り戻し、UFBとレジスタンスの戦いの中でどう行動していくのでしょうか・・・。
 ということでして、90年版では火星を舞台に描かれた話が、地球の中の二つの地域の間の紛争という形になっていますが、大筋の流れは90年版と同じです。話のプロットだけ見ればそのまま、といっていい。が、描き方はかなり違いますね。90年版にあった独特のユーモアはなくて、なにかシリアスでスタイリッシュな映画になりました。
 もちろん22年間の間に進んだ特撮技術の進歩は大いに感じられます。めくるめく空中アクションなどはまぎれもなく今のものです。コロニーの描き方は、やはりフィリップ・k・ディック原作の「ブレードランナー」を思わせる東洋風なのも興味深いです。
 しかしですねえ・・・ここは正直な感想。やはり「90年のバーホーヴェン+シュワちゃんの映画は偉大だった」というのが本当のところかもしれません。まあ、前作をまったく見ていない若い人なんかだと、また感想も違うんでしょうが。
 前作ではシャロン・ストーンのローリーは割とあっけなく死んでしまって、リクターという敵役がシュワを追い詰めるんですが、今作ではリクターがいなくて、ローリー本人がクエイドを追い詰める、ということになっています。ですからベッキン様の登場シーンは非常に多いし、アクションも満載です。ベッキンセール・ファンならまず見るべきですね。
 また、前作を引き継ぐシーンやセリフも結構あります。たとえば乳房が三つある遊女が出てきたり、検問所では前作でシュワちゃんが頭にかぶっていた女性タイプの被り物が衝撃的でしたけれど、あの役を演じていたのと同じ女優さんが登場して、同じセリフ「2週間よ」と言います。まあそういうわけで、見比べる面白さはあちこちにあります。
 しかしまあ・・・やはりシュワちゃんの存在感とコリン・ファレルはちょっと比較にならないですかねえ。シュワの場合、「なんで俺はこんなところで、こんな仕事をしているんだろう」という違和感がすごく自然に見えた。どう見ても普通の人じゃないだろう、と思ったらやっぱり普通の人ではなかった。そのほうが説得力があると思うんですが。
 前作では巨匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽も非常に印象的でした。今でもテレビ番組のBGMでよく流れます。今回は音楽も印象に残りませんね。
 また90年版ではシャロン・ストーンのローリーと、レイチェル・ティコティン演じるメリーナが全く違うタイプの女性だったのですが、今回はベッキンセールとビールがルックスもイメージも全くダブります。監督は「似ているから起用した」とパンフレットにあるんですが、ここで両者が似ていなければならない必然性がちょっと分かりません。
 この件に限らず、90年版の方が話のメリハリ、設定、全体にきっちり出来ていた感じがあります。今回はなんか納得いかない点が多い。次々に明らかになる、意外などんでん返しも前の方がずっと、効いていた。今作はなにか展開も平板です。
 何より目新しさを求めて、火星から地球の近未来に設定を変えているのが、弱い。はっきりいってどうもピンとこない設定にも思えます。単にスケールが小さくなってしまった。
 ということで・・・やはりベッキンセール様のファンのための映画、かも。まあだから、我が家的にはこれでもいいんですが。

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