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2011年10月 6日 (木)

ミケランジェロの暗号

 オーストリア映画「ミケランジェロの暗号」を見てきました。このあたりでは、TOHO日比谷シャンテでしかやっていないので(相変わらず、欧州の映画となると見るのに苦労します)わざわざ出かけましたが・・・これが快作ですね。文句なく面白い。
 第二次大戦を背景にしたユダヤ人とナチスもの映画、というと重苦しいのじゃないか、と身構えてしまう人も多いと思います。で、実際にこの映画はユダヤ人の収容所送りとかナチス親衛隊の横暴とか、出てきそうな要素は出てくるのですが、持ち味はサスペンス映画なんですね。どんでん返しに次ぐどんでん返し、はらはらするスピーディーな娯楽作品の要素が強くて、実によく出来た映画でした。
 1943年、第二次大戦中盤のポーランドで、レジスタンス組織がドイツ軍の輸送機を撃墜します。搭乗していた親衛隊将校の一人は即死、生き残ったのはルディ・スメカルSS大尉と、ユダヤ人のヴィクトル・カウフマン。しかし、今はナチ親衛隊将校とユダヤ人という関係の二人ですが、元は幼馴染で親友でありました・・・。
 時はさかのぼって1938年、ドイツ第三帝国に併合される直前のオーストリア、ウィーン。ヴィクトルは裕福なユダヤ系画廊の経営者ヤーコプ・カウフマンの息子で、何不自由ない生活をしていました。そしてルディは、長年カウフマン家に仕えた使用人の息子で、アーリア系。一家とは家族同然の付き合いでしたが、ここしばらくはドイツに滞在し、久しぶりにウィーンに戻ったところでした。また二人には共通の幼馴染のレナという女性がいて、二人とも憧れていました。ちょうどこの頃、カウフマン画廊はミケランジェロの未発表絵画を手に入れた、というセンセーショナルな情報が流れます。この絵をイタリアの独裁者ムッソリーニが執着し、またイタリアとの外交関係を重視するナチス・ドイツも手に入れようと目論んでいました。そしてドイツによるオーストリア併合。黒い親衛隊の制服を着て現れたルディにヴィクトルたちは衝撃を受けます。ルディはミケランジェロの絵を親衛隊に引き渡せば、スイスに亡命させてやる、とカウフマン一家に強要します。父のヤーコプはなんとかしてミケランジェロの絵を守ろうと一計を案じます。カウフマン家の人々は、ミケランジェロの絵を守り抜き、戦争を生き延びることができるのでしょうか・・・。
 後はもう、見ていただくしかない、めくるめくどんでん返しの連続で、本当に面白いストーリー展開です。
 経緯は記しませんが、途中でユダヤ人であるヴィクトルが、訳あって親衛隊の黒い制服をまとって身分を偽る場面があるのですが、そこで彼が「この制服を着てみて、これを着たくなる気分がよく分かったよ」と言います。ここは面白い。制服なんてただの布切れです。なんでもありません。しかし、その制服をまとうことは、絶大な権力と特権を行使できる身分を表すのです。ナポレオンに「人はその制服通りの人間になる」という格言がありますがまさにそれを地で行っているシーンですね。
 レナも、最初に登場した場面では普通の女性ですが、ドイツ軍婦人部隊の制服を着て登場する中盤では確かに見違えるほど不思議な魅力を漂わせます。この映画は、こんな制服の魔力というものが隠れたテーマになっている点も興味深いです。
 その割に、時代考証的にはちょっと疑問点もあるというか、特に大戦中盤になって親衛隊の高官たちが黒い制服を着ている点(実際には灰色のものが普通になります)、通常ならSD(情報部)の隊員であるのが自然な展開で、なぜか襟にSSルーンをつけた武装親衛隊みたいな制服の人物が多い、内勤の親衛隊員なのに騎士十字勲章らしきものを首に下げているシーンがあった・・・など、「戦史・服飾史研究家」を一応、名乗っている自分としては、やや「?」という部分もありました。
 が、本作はシビアな時代物というより、やはりナチス時代を背景にした娯楽作品として楽しむのが王道かな、と感じました。そして、そういう点でなかなかの傑作でした。
 制作陣はアカデミー賞を受けた「ヒトラーの贋札」と同じスタッフ。たしかにちょっと似たような味わいがあります。それからこれは妻の感想ですが、ドイツ語が古風な戦前のドイツ語を意識的に使っていて、好感を持てた、とのこと。特に力んでしゃべる軍人役の人たちが良かったそうです。確かに最近のドイツ語はかなり英語風な発音になっていて、ドイツ語圏の俳優さんでも、ハリウッドなんかに出てくると、たまにドイツ語映画に里帰りしても、今風なドイツ語になってしまって、いまいち、ということがあります。日本語だって、昔の映画を見ると、かなり発音や語彙が違いますもんね。そのへんは、かなりこだわって作った映画のようでした。
 ◆  ◆  ◆
 この映画を見た後、東京国際フォーラムに最近、出店したレストラン「ラ・メール・プラール」に立ち寄りました。ここは、フランスでも指折りの観光名所モン・サン・ミシェルにあるオムレツの名店の日本支店です。その名高いオムレツを食べてみましたが、これはもうオムレツというかなんというか、本当に別次元の感じ。一度食べてみないとなんともいいようがないかも。まるで綿菓子のようなふわふわ感はすごいですね。オムレツ以外の鍋料理も非常にいい味でしたよ。
 

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