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2011年1月 8日 (土)

英国近衛兵の赤い制服。

 MEN’S EXという雑誌の2月号を見ていて、感心したことがあり、それはワードローブコンサルタントのケン青木さんのコメントです。青木さんのその日のスーツの袖ボタンが5つである理由を問われて、「いえ、ウェールズの服の伝統的なディテールです。イギリスはごぞんじのとおりさまざまな国の連合国ですが、昔は国ごとに、ロイヤルガーズと呼ばれる近衛連隊がありました。その連隊ごとに、実は袖のボタン数が違っていたんですよ。スコットランドは3つ、イングランドは4つ、ウェールズは5つです。ポール・スミス氏はウェールズ出身なのでコレクションにも5つボタンを多用しています」。
 こういうことを言える方は教養があるんですね・・・。正確に言うと、英国近衛兵の正装であるレッドコート(赤い制服)は、国によって前ボタンと袖ボタンの数が違います、そしてこれは昔の話じゃなくて今でもそうです。スコッツ・ガーズは前ボタンが3×3×3で合計9つ、袖は3つボタン。コールドストリーム・ガーズなどのイングランドの連隊は前ボタンが2×2、2×2、2の10個で、袖口は2×2。これがハケットロンドンのスーツでも見られる2×2の袖ボタンですね。それでウエルス・ガーズは5×2の10個ボタンで、袖も5つボタンです。全くその通りでして、私は前からケン青木さんという方、海外からの視点を持っているだけにいいことを言われると思っていましたが、これなんかも、なかなかスーツしか知らない人には出てこない発想です。
 しかしポール・スミスがウェールズの出だから5つボタン、とは知りませんでした。確か生まれはノッチンガムか何かでウェールズじゃないような気がしますが、家系がそうだということなんでしょうか。
 もっとも、それではなんで、青木さんのその日のスーツが「ウェールズ調」だったのか、は分かりませんでしたが・・・。それはともかく、英国のブランドなどは、レッドコート(その起源は1645年にさかのぼります)を意識することが多いのも当然、自分らの民族衣装のひとつなわけですから。
 ◆  ◆  ◆
 私は「戦史・服飾史研究家」と名乗っております。服飾評論家ではありません。ファッションの方の専門家じゃなくて、歴史家の一ジャンルのつもりです。そういうわけですから、じつは20世紀になると急速に興味が薄れます。本当のところ、人気が高いから第二次大戦ものも研究していますし、特に圧倒的に愛好家が多いのでナチスものは避けて通れませんが、個人的には食傷気味というか、すでに詳しい人も多いのであまり触れたくありません。
 そんなわけで、スーツとか紳士服一般についても、もちろん好きではありますが、べつに専門家でもないし細かいことには興味もありません。ただ、上のような歴史がらみ、それも軍服がらみとなると俄然、面白くなります。

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コメント

どうも初めまして。ケン青木と申します。
知人より辻本さんが私のインタビュー記事
について触れておられるという話を聞き、
コラムを拝見致しました。
 私のいささかいい加減な原稿チェックの
せいもありましたが、的確且つ極めて正確
な御修正、アドバイスを頂戴し誠に有難う
ございます。
 私は大学時代中世英文学を専攻いたし、
現在はアメリカに住んでおりますが、仕事上
イングランド、スコットランド人との付き
合いも多く、ボタンの話についてはよく話題
となります。特に軍服のボタンの微妙な配置
具合が時に部隊間の識別は元より一種の暗号
的役割をすることもあるetc.の話を伺った
事もあります。(未だ突っ込んだ質問は致し
ておりませんが。)
 来週金曜日にはロバート・バーンズ記念の
ディナーが世界中のスコットランド関係者
の間で行われます。NYでも200名程集まり
半数以上の方がハイランド・ドレスです。
私は唯一の日本人参加者が、ディナー・
ジャケットを着用します。さながらクラン・
タータン見本市のようで大変興味深いです。
 辻本さんの著作、新宿紀伊国屋にて数年前
に購入させていただきました。結構目立つ
所に積んでありましたよ。
 戦前の日本では、今と違い極く一握りの
上流の方しか海外へ渡航することがなく、
また彼らも欧米における日本の立ち位置を
何とか向上させようと洋服について真剣に
取り組まざるを得なかったと思うのですが、
その分モノの成り立ち、即ち歴史をしっかり
勉強されていたので、本質を見る目が養われ
たのだと考えます。そのような意味で、辻本
さんの著作は現代の日本において大変貴重
で意義深い価値あるものと思います。(昔、
翻訳の際、キャプテンについて混乱したこと
があったのですが、御陰様で良く理解出来
ました。)今後とも御身体、健康には御気を
付けになられ、益々がんばってください。
世界の勲章の本、楽しみに致しております。

投稿: ケン青木 | 2011年1月20日 (木) 00時21分

ケン青木様

私のしがないブログにご訪問を賜りまして光栄の至りです。私は以前から、ネット上などで青木様の御見識を読んで、その海外で得られた一次情報の的確さ、正確さに感服してきた者でございます。
日本で出回っている情報を見ますと、最近はかなりよくなってきているかもしれませんが、とにかくかなりいい加減な話が多く、せめて英国の話なら英語で調べてみる、という最低の手間も惜しんでいるような記述が多いと思っております。
なにしろ私は、基本的に歴史、とくにミリタリーのほうが専門で、今の紳士服については全くのど素人ですので、青木様のような方にいろいろ教えていただきたいと思うことがございます。ぜひ機会がありましたら、最近の特に米英などでの実情などご教示ください。欧米でも紳士のワードローブ、21世紀にはいってかなり変わってきているのではないかとも推察しておりますので・・・。
個人的な観測ですが、スーツというスタイルも徐々に礼服に格上げされる、という歴史的な変化にさらされている気がします。
また御見識をうかがえれば幸いですし、次の本(世界の軍服の歴史です)が出ましたらぜひ献呈してご高評を賜れたらと存じます。取り急ぎ御礼まで。

投稿: 辻元よしふみ | 2011年1月20日 (木) 05時19分

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