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2009年5月30日 (土)

ピッティ・ウオモの「ピッティ」って?

 先日来の私の入院騒ぎで、当初予定では今頃には出ていてもよかった新刊書が出せないでいることは既報の通りですが、これでご迷惑をかけている方のお一人が、スタイル・クリエーションズ社の滝沢滋代表です。というのも、その新刊の推薦文を紳士ファッションの専門家のお立場から書いていただいているからで、同社の滝沢代表のブログでも前に紹介されているとおり。ところが肝心の本がなかなか難航している・・・というわけです。
 が、先日はその滝沢代表から「ブログで読んで心配していましたよ」とのメールをいただきました。なんとも申し訳ない次第と感じているところです。
 その滝沢代表は、おそらく今年も6月16日からイタリア・フィレンツェで行われる世界最大規模の紳士服見本市ピッティ・イマジネ・ウオモの準備にお忙しいところと思います。氏のタキザワシゲル・モデルの紳士服は日本では初めてこのピッティ・ウオモに出展したという快挙を成し遂げたのでありました。http://www.style-creations.jp/
 あまりこういう方面に興味のない方にたとえを申し上げれば、本場アメリカのモーターショーに初めて打って出た日本の自動車メーカーとか、あるいは日本のコミケに外国からやってきて出店している人とか、まあそんな具合で、その場に出ること自体がきわめて難しいスペシャルなイベントであり、そこで堂々と老舗の連中と渡り合い、受け入れられるというのは大変なこと、というわけです。
 ◆  ◆  ◆
 ところで、フィレンツェというのも不思議な町ですね。イタリアというのはローマ帝国の後は小国乱立してまったくばらばらだったのですが、教皇領、神聖ローマ皇帝領にあちこちの小国が延々と駆け引きをしていたわけです。その中にあって、フィレンツェというのはなんといっても商工業者の街で、最盛期には共和制をとって君主をいただかない国でありました。が、実質的な君主だったのがあのメディチ家、というものです。
 そうはいってもメディチ家はなんの称号もなく、よく最も有名な人物は豪華王(イル・マニフィコ)ロレンツォ・デ・メディチなんていいますが実際には王様ではありません。ローマ帝国の皇帝がまず名乗った「第一人者」といった名誉称号すらなかったようですから、まったくの一市民。それが事実上の君主として君臨していたわけです。
 で、メディチ家の居館がピッティ宮殿といい、ピッティ・ウオモの会場なわけでありますけれど。面白いことにその「ピッティ」というのは、実はメディチ家の敵であったピッティ家が建てた邸宅だったものを、後でメディチ家が買い取った、ということです。ということでピッティ、ピッティと言いますがあれはメディチ家のライバルの富豪の名前なんですな。そのピッティPitti家はワインやウール、それに衣服も商っていたそうですが、16世紀に正式にピッティ宮殿をトスカナ大公家(=メディチ家)に譲渡した後は完全に失権し、イタリア王国成立後の19世紀末にドイツのバイエルン王国に移住(というのもご先祖がフィレンツェ共和国の駐バイエルン公国大使だった)、20世紀初頭にアメリカに移住・・・とのことで、子孫はアメリカにいるらしい。そしてピッティの名だけは今も宿敵のお陰でフィレンツェに残ったわけであります。
 一方のメディチ家というと何か深い意味合いがありそうに感じるが、英語でいえばメディシン家です。要するに「薬」家で、先祖が薬屋さんかお医者さんだったらしい。らしい、というのは実はぜんぜん分かっていない。メディチ家の紋章として有名な六つのパッレ(玉)も意味が分かっていない。先祖にちなんだ丸薬か、血を吸い出すための吸い玉ではないか、あるいは財をなしたころ中核をなしたメディチ銀行を示す金貨の意味じゃないか、と推量されていますが本当はまったくなぞの多い家なんです・・・というか、決して名門じゃなく、成り上がりなので由来が不祥なんですな。
 で、後になるとこの家は念願のフィレンツェ公、トスカナ大公に成り上がり本物の君主となるのですが、結局、最後の頃は後継ぎの子供がそろいもそろって男色に走り(!)、家系が絶えてしまう、という自然消滅をたどった珍しい君主家です。
 イタリア、と一言でまとめることは実は難しいお国柄です。が、その中でもファッションの国を自負する御当地で、フィレンツェのピッティ宮殿を会場とすることには異論がないというのは、やはりほかの・・・たとえばドイツやフランスとは明らかに違ういかにもイタリア半島的な特色が、フィレンツェ共和国とトスカナ大公国の歴史にあるからでしょう。
 

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