« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月31日 (金)

ブーリン家の姉妹

20140507152615 映画「ブーリン家の姉妹」を見ました。英国史上有名なアン・ブーリンの物語・・・いや、厳密に言いますとその妹であるメアリー・ブーリンの物語です。原作小説はメアリーの視点による一人称小説だそうで、原題もThe other Boleyn girlすなわち、「もう一人のブーリン家の娘」というもの。
 実際、アン・ブーリンは有名ですが、その姉妹となるとかなりのマニアか研究者じゃないと知らないはず。実際、映画では妹となっていますが、はっきりはしないが、本当は姉であったらしい。そして、姉妹そろって英国王ヘンリー8世の愛人となり、メアリーは日陰の存在で終わったけれど、アンは正妻の王妃を追い出して堂々とクイーンに上り詰めた人物です。おまけにアン・ブーリンと結婚するべく、正妻を追い出すためにヘンリー王はカトリック教会との決別をしてしまいました。英国がカトリックでもプロテスタントでもない国教会という宗派になるのはこれがきっかけで、その後、英国がスペインやフランスと抗争を続ける原因となった話です。だからアンはとにかく英国史上では最大級のヒロイン。
 一方のメアリー・ブーリンはほとんど名前も知られていない存在です。その視点で描く辺りが巧妙な作品です。
 史実と引き比べますと、けっこう大胆に改変しているところがあり、たとえばブーリン家は本来、駐仏大使を務めた外交官として頭角を現した一族。アンもメアリーも当然、10代のほとんどをフランスで送っていますが、この映画ではとにかく地方からの成り上がり者、という面を強調しています。その他、いろいろありますが、原作および脚本家が非常に上手にまとめる人で、なるほど、こうしてまとめていくと面白い話になるな、というお手本のようです。それで調べますと、脚本のピーター・モーガンは「クィーン」「ラストキング・オブ・スコットランド」など、史実に立脚した映画を多数、手がけている人。今あげた二つの作品も、史実通りになぞるのでなく、いくつかの人物や挿話をまとめあげて流れを作るのが巧みで、いずれも見事にアカデミー賞作品となっています。なるほど、似たテイストだな、と思った次第です。
 衣装は大変よく考証されていて、ことにヘンリー8世の有名な、たっぷりと幅の広いダブレットや、股間に飾るコッドピース(股袋)まできちんと再現しています。衣装担当は「アヴィエイター」などでアカデミー賞の経験があるサンディ・パウエル。
 それに制作者は「エリザベス」の人だそうです。
 そこに、アンをナタリー・ポートマン、メアリーをスカーレット・ヨハンソンと人気者を配して、ヘンリー8世はエリック・バナ。「トロイ」や「ミュンヘン」で有名になった人です。これだけ豪華なメンバーですが、監督はこれが長編初というほぼ無名の新人。いきなりこういう大作を新人に任せる辺りはすごいです。
 それにしてもヘンリー8世というのは、6人の妃を迎えては離婚し、2人を処刑したことで有名な人物。普通、かなりの暴君に描かれますが、本作ではけっこう違う面も描いております。これがまったく史実とも思いませんが、なるほど、と思わせられる。
 一方、アン・ブーリンはちょっと悪女のような描き方で可愛そうかもしれません。史実だからネタばれもないと思うので書きますが、最後は処刑されてしまうところまでちゃんと映画で描きます。その結末は史実だとしても、ちょっと「自業自得」という描き方なので、いささか厳しいかもしれない。まあ、メアリー・ブーリンがヒロインですので。
 最初の妃であるキャサリン・オブ・アラゴンやメアリーが生んだことになっている王の庶子(つまり王位にはつけない私生児)のその後、なんかはけっこう切り捨てられていて、ちょっと物足りないですが、なにしろ脚本はかなり枝葉を刈り込む主義なので。そういえばメアリーの最初の夫(王の愛人になる前に結婚してたんです)ウィリアム・ケアリーのその後も割愛されています。この三人についてだけ、ちょっと書いておくと、キャサリンは王妃を首になっても、もともとは若死にしたヘンリーの兄の奥さんだった人、しかも神聖ローマ皇帝カール4世の妹にしてスペイン王フェリペ2世の叔母なので、ヘンリーもうかつに手は出せず、王族という身分も剥奪されず前王太子妃という身分で、まあ軟禁ですがそんなにひどい目にも遭わずに生きます。私生児のフィッツロイというのは、史実ではメアリーの子ではなく別の愛人の子かもしれないようですが、結局、映画にも出てくるアンやメアリーの叔父・ノーフォーク公の娘婿になりますが、早死にします。また、最初のだんなのケアリーは悪性感冒でこれも早死にしています。
 それから映画のラストでノーフォーク公は、懲りもせずにヘンリー8世に5人目の妃であるキャサリン・ハワードを献上したけれど、キャサリンもまた反逆罪で処刑、前のアンのこともあって腹に据えかねた王により投獄される、という紹介がありますが、処刑寸前にヘンリー8世が亡くなって危うく処刑だけは免れ、その後は衰弱して死んだようです。
 ついでに。映画ではアン・ブーリンの近親相姦を王に告発し、処刑に追い込む悪女として登場するアンとメアリーの弟・ジョージの奥さんのジェーン・パーカーも、キャサリン・ハワードの侍女だったために連座して処刑されています。
 つまり関係者の殆どはその後、ろくな目に遭っていない。メアリー・ブーリンだけ生き延びたんですね。この映画では、そのへんの理由も描かれています。
 さて、ついでに映画の後の史実を言えば、映画でも最後のほうでちょっと出てくるアンの侍女ジェーン・シーモアがついにヘンリー王の正式な世継ぎである男の子を産みますがすぐに死亡。この男の子がエドワード6世と名乗って、ヘンリーの跡を継ぎ即位するけれど、わずか15歳で急死。そこで、ずっと不遇だった最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴンの娘メアリーが女王メアリー1世として即位。この人はスペインのフェリペ2世と結婚し、母親を追放した国教会を廃止してカトリックにもどそうと流血の弾圧を繰り返し、ものすごい暴君として名を残します。もちろん自分の母親を追放した女の娘、つまりアン・ブーリンの娘であるエリザベスをいびりぬきますが、そのメアリー1世も急死。
 で、結局、アン・ブーリンの一人娘エリザベス女王が、父親が残した国教会を守り抜き、スペインを撃破して世界に冠たる大英帝国を築くわけです。ここらは映画「エリザベス」やその続編「エリザベス ゴールデンエイジ」をご覧あれ、というところ。
 海外の批評では「ソープオペラみたい」という批評もあったようで、確かに英語も現代英語のようですし、キャスティングも若いし、昔のローレンス・オリヴィエなんかが出てきた史劇映画のような格調はないでしょうが、それは日本でも最近の大河ドラマ「新選組」と昔の片岡千恵蔵がでてたような新撰組映画を比較するようなもんで、現代的解釈として私は評価してよいのじゃないかと思います。本当にシェークスピア時代のような英語なんかでしゃべっちゃ英語圏の人もつらいだろうし。むしろヘンリーやアンのいかにも現代人的な感覚が興味深いです。原作者や脚本家の狙いでしょうが、つまり環境こそ違え、人間としてはいつの時代も同じ、ということ。そしてそういう生身の人間が、どれほど宮廷という密室で常軌を逸していくか、というお話です。
 暴君ヘンリーにも一抹の哀れさを覚えるのはそういうことからです。
 英国史の勉強をしたい人、歴史映画が好きな人にお勧めなのはもちろん、よくできた愛憎劇として見ても非常に面白い映画だと思います。2時間ちょっと、ややこしい人物関係を裁きながら、まったく目が離せない展開は見事だと思います。
 ※追記(2014年5月7日)この記事を書いてからもう6年もたちますが、その後「ブラック・スワン」でオスカー女優となったナタリー・ポートマンや、「アベンジャーズ」シリーズで不動の人気女優となったスカーレット・ヨハンソンの大活躍もあって、今でも「ブーリン家の姉妹」は人気が高く、本記事もよくご覧になっていただいています。ありがとうございます。それで一つ追記しますが、この作品でメアリー・ブーリン(ヨハンソン)の最初の夫、ウィリアム・ケアリーを演じていたのが、今や押しも押されぬ大スターとなったベネディクト・カンバーバッチでした。もちろん当時の主なキャストとしてはまったく紹介されない、無名な脇役という扱いでしたが、ここ数年の躍進ぶりは目を見張ります。それで、本作公開後に発売されたDVDでは公開時に割愛されてしまった未公開シーンがなんと73分も収録されており、その中でしっかりケアリーが病死する場面があります。やっぱり公開時には不自然な感じがしたのですが、夫だった人のその後をまったく触れないというのはやはり不親切だったと思います。それで、この未公開シーンでカンバーバッチはさすがに見事です! 病に侵され、王様に奪われてしまった妻を気遣いながら死んでいく無念の夫・・・鬼気迫る演技です。今なら絶対にこのシーンをカットするなどあり得ない話でしょう。この当時、カンバーバッチはまったく無名な役者でしたが、やはり後で名を上げる人は違いますね。ファンは必見です。
 ※※追記2(2015年4月2日)さらにこの作品では、メアリー・ブーリンがヘンリー8世の元を離れ、最後に嫁いだ夫ウィリアム・スタフォード役にエディ・レッドメインが出ているのですね。この人は本作では全くのチョイ役で、カンバーバッチ以上に小さい扱いでしたが、すでにミュージカル界では押しも押されもしないスターでした。そして、「マリリン 7日間の恋」で注目され、「レ・ミゼラブル」では得意の歌唱力を披露して圧倒的な存在感を誇示。知名度が上がったところで、「博士と彼女のセオリー」で難病の天才ホーキング博士役を演じました。この演技で、「イミテーション・ゲーム」で孤高の数学者アラン・チューリングを演じたカンバーバッチとアカデミー賞主演男優賞を争うこととなり、見事に2015年にオスカー俳優になりました。「ブーリン家の姉妹」は本当に将来性ある若手を見事にキャスティングしていたものですが、今のところ、ナタリーポートマンと並んで、このエディ・レッドメインが出世頭、となったようですね。
 
 

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年10月25日 (土)

「手ぶら」はお勧めしません。

なんだろうか、昨日は近所のホームセンターに行きまして、食事などもし、いい機嫌で帰宅しまして、「ちょっと一休みする」といったきり・・・ふと目を覚ますと時計は4時54分だかを指していまして。「ん? これ、朝なの、夜なの」と一瞬、理解できず、さらには一体現在は何曜日で、自分はなにをしているのか分からないという案配に。どうも、明け方の5時だったんですね。それからまた気絶しまして・・・今度は目が覚めたのは、お昼の時報でした。翌日の昼ですね。
 なんかざっと数えると14時間ほど寝ていたらしい。しかもほとんど途中の記憶がない、つまり夢もあまり見ていない。なかなかこんなに長く寝られるもんじゃないと思いますが、よほど疲れているのか。
 まあ前日まで、会社の健康診断があるというのでかなり熱心に運動したり、食事を軽くしたりしましたので、けっこうストレスになっていたのかも。ウエストまわり83センチという結果になりました。
 ところで、ここ1年半ほどかなり意識的に運動しておりますが、ウエストなんかは絞れるんですが、体重そのものはかえって増えてきたりする。ひょっとしてある一線を越えたのかしら、筋肉が増えて体重そのものは増えるところまできたのかもしれない、という気はします。
 ◆  ◆  ◆
 なにかの記事で、手ぶら通勤の勧め、というのを読んだことがあります。その趣旨は、手ぶらだと軽快だし、満員電車でも便利、そしてなんでもかんでも持ち歩くよりも合理的になって、本当に必要なものだけ携帯するようになる。必要な場合は会社に鞄を置いておいて、必要なときに使用すればよい・・・そんなことでした。
 これはよく分かるし、実は私、十年ほど前には手ぶら派でした。雨の日の傘以外は基本的になにも持たない。それどころじゃない、クールビズなんていわれる前から私は通勤時にはネクタイもしないし上着も着ない、ジャケットは会社に起きっぱなしにしておくという典型的な・・・まあ今時のにんげん、よくいえば合理的人間、悪くいえば合理化かぶれのだらしない人間でした。
 ところがこれ、駄目だな、と思った。弊害の一つは、基本的にだらしなくなる。軽快というよりものにこだわらない人間になる。面倒くさがりになる。
 二つに、これはてきめんに出ますが、握力や腕力が低下する。間違いなく下がります。
 三つ目、これが私の中では大きいのですが、まったくの手ぶらの場合、万が一にも暴漢に襲われた場合に身を守ることも、攻撃することもできない。逆に金属製のケースでも持っていればそれだけでかなりのことができます。
 四つ目、これはまあどうでもいいようなもんですが、家人にこっそり何かを買うことができなくなる。いつでも手ぶら、という前提だと、少しでも手に何かを持って帰ると「なにを買ってきたの?」とばれやすい。
 私は上記のなかでも主に二と三を重視しまして、かえって重いぐらいの鞄を常用するようになりました。なんでもかんでも軽くて合理的なものがいい、という風潮は違うのじゃないかと思っています。
 握力、筋力が格段に上がりました。これはもう確実に自信があります。手ぶらの頃はとにかく体力がなくて太っていました・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月21日 (火)

英国の勲章。インフルエンザ

今、わけあって英国の勲章制度について調べていますが・・・しかしあの国の勲章もおもしろいですね。ガーター勲章とかシスル勲章、バス勲章なんていうと格好いいような気がしますが、翻訳すれば「靴下止め勲章」「アザミ勲章」「お風呂勲章」ですからね。まあ歴史があるだけに由来はそれぞれあるんですけど。
 ◆  ◆  ◆
 鳥取でタミフルが効かないインフルエンザ・ウイルスが高頻度で見つかっているとか。おそろしいですね。国の見積もりでも60万人以上が死ぬんじゃないかという新型ウイルスの登場はいつの日のことか。国がせっせと溜め込んでいるタミフルも結局、たいした役には立たないかもしれず。
 先のことを考えると、こういう病気や環境、経済に医療、なにをとっても、どんなに楽観的な人でも暗然とする今日この頃じゃないでしょうか。本当にろくなことがない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月18日 (土)

看護師さんの憂鬱。武装商船

またちょっと新しい原稿に取りかかったりしてまして、そうなるとこういうブログなんかに書く暇がなくなって間遠になる・・・もうばれているかと思いますが、そんな感じでございます。ところで先日、26歳の看護師さんが26時間ぶっつづけの手術室勤務の後、急逝したのを労災認定した、という話題がありました。なんでも最近、ときどき行っている近所のスーパー銭湯で、夜の12時すぎに近くの病院の看護師さんが二人、いたそうでありますが、やっぱり「手術室勤務がつらい」「ああ疲れた」「彼氏から連絡があったけど、疲れすぎて会いたくない。そんなこと分からないのかな」「・・・ああもう駄目。あまりに疲れすぎたので、もう上がろうか」といって上がっていったとか。もう見るからに疲労しきって顔色悪いお二人だった、と妻が申しておりました。
 人を救おうと思ってこういう仕事に就かれたのに、自分たちがもう、命の危険すら感じるほど疲労している。それでもって、患者たちはわがままばかり言う。いやもう頭が下がります。
 ◆  ◆  ◆
 最近、インド洋の海賊が増えて困っており、海上自衛隊も派遣しようか、という話が出てきましたが、本当にひどいらしいですね。しかも身代金はテロリストに流れる。これ、、昔のような「武装商船」とか、「仮装巡洋艦」とかいうのは駄目なんだろうか。商船と思って近寄ると、いきなり大砲が出てきてドカンとやる。昔はそういうのもあったんですが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月 8日 (水)

ノーベル賞。

 最近ろくなことがないのですが、ここにきて連日、日本人がノーベル賞受賞。まあこれもオリンピックみたいなもので、まるで関係ない自分たちなどからみても慶賀だけれども、皆さん、30年も40年も前の研究がここにきて認められている、というのはちょっと気になるところかもしれません。というのも・・・そのころの日本の研究レベルが高かった、ということだと、今後はどうなんだろう、と。それで言いますとノーベル賞をもらうにはやはりある程度の長命が必要だ、ということも思いますね。基礎研究の評価には時間がかかるわけで。若くしてもらった、というのは田中さんだけですね。
 いやあ。なんにしましても、こう毎日悪いニュースばかりだと、とにかくほっとします。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年10月 7日 (火)

緒方拳さん。

ゆうべは、アメリカの株価暴落の話一色で・・・と思っていたわけですが、1時すぎて毎日新聞が「訃報・緒形拳さん 71歳」というのをサイトで速報したわけです。ところがまもなく削除されちゃって、うちの会社も「載せるのか、載せないのか」と大騒ぎの末、確認がとれずに載せなかった・・・のですが、どうも2時半ごろには確認がとれた模様。
 本当ですか。71歳。お若いですよね、今の感覚だと。それもつい先月まで倉本聡の新作ドラマなんかが発表されてたような。
 2、3か月前にみた「鬼太郎」の「ぬらりひょん」役、映画としてはあれは最後なんでしょうか、それとも後があるのか。ともかく驚きました。
 私個人としては、NHK大河の「太閤記」のころはまだ生まれていませんので、「風と雲と虹と」の藤原純友役とか、「黄金の日々」の秀吉役、それから「峠の群像」とか印象深いです。ああ、「風林火山」でも宇佐美定満でしたね。ファッション誌にもよくでておられて「ブリオーニ」を愛用されていたとか。とにかくまだまだこれから老け役でいいお仕事ができそうなところだったと思います。ご冥福をお祈りいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年10月 4日 (土)

もうてんやわんや。

いやあ、選挙が延びちゃうわ、なんだかんだでもうなんか・・・大変です。予定立たないですね。変な失言大臣も政界引退するそうですし・・・アメリカでは金融安定化法案が通ったようだし、しかし毎日毎日めんどうくさいですなあ。
 次の本の準備で、もう連日、6時間も7時間もコンピューターに向き合っていました。なんか段々、精神的に悪くなります。が、なんとかこのほど、まとまりそう。本出すのって大変です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »