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2008年3月22日 (土)

銀座松坂屋ヘンリープール展

昨日の話の続きであるが、英国大使閣下からの書簡には、「銀座松坂屋でヘンリープール展をやっているのでぜひご覧を」とあった。
 そう言われては、見に行かずばなるまい。
 ということで、銀座松坂屋の「UK-JAPAN2009公認イベント ヘンリープール展~サヴィル・ロウ、スーツの源流」http://www.matsuzakaya.co.jp/ginza/fair/m080304.html3月19日~24日、というのを見てきました。
 ヘンリープールはロンドンの紳士服街サヴィル・ローでも最も古いテーラーで1806年創業とか。ナポレオン戦争の時代ですね。そしてナポレオン3世、エドワード7世、チャーチル首相、吉田茂首相、昭和天皇の服を作った老舗中の老舗。
 まず銀座松坂屋に行きますと、1階のショーウインドーにいきなりでーん、とネルソン提督の軍服の復刻がある。トラファルガー海戦で彼が着用していたネイビーブルーの燕尾服の精密再現だそうで、写真や肖像画では分かりにくいディテールがよく分かります。中央の隠しボタンはホック留め、左右の折り返し襟は肖像通りに非常に先端がとがっていて、ああ、おそらく後のピークドラペル(剣襟)はこの海軍の様式なんだろうな、と納得されます。
 その折り返し襟と、袖口のボタンホールは想像よりも大きくかつ細い。しかしちゃんと開閉できるのは当然であります。正肩章エポレットはベタ金で格別な飾りはなく、これが将官の階級を表して、袖口の金線は二本。海軍中将を表すのでしょう。二角帽は中央に金色の組みひもがぶら下がっており、珍しいディテールがよく分かる。
 その隣にはエドワード7世の夜会服。ぱっと見は普通のショールカラーのタキシードだが驚いたことに、前合わせがダブルになっていて、ハンガリー風の綴じ紐がついている。つまり軍服の肋骨服の仕様になっているのに驚きました。
 5階に上がるとヘンリープールの店内に展示あり。
 まず目を見張ったのがガーター騎士団のガウン。例の「人を笑うものに災いあれ」を刺繍した深い紫のガウンで、中央に下がる見事な太い組みひもの装飾は目を引きます。
 隣には1820年ごろの御者の制服。派手な縞柄でやはり前合わせはホック。金ボタンは飾りです。これはダブレットスタイルの最後の生き残りだと思われますが、おそらく1850年ごろまでに廃止された大礼服の類はこんなものだろうと納得。
 それから1900年代初頭の赤い英陸軍のジャケット。これは総督の着る礼服で普通の軍服じゃないらしい。エポレットの付け方がよく分かりました。留めボタンを受ける金具が、肩の生地に直に埋め込むのでなく、台布を置いて盛り上げて取り付けている。またエポレット本体も金属製の芯がついており、旧日本軍の正肩章と同じスタイルであること、など見て取れます。裏地は当然ながら白、また燕尾服の裾にまで王室紋章があるのは総督用の意匠でしょう。
 チャーチルのストライプのグレーのスーツの復刻もありました。ああ、こういうのを着ている写真もあるなあ、と思いました。もうちょっとダークな印象もありますが、明るいグレーも着たんですね。
 それから日本の明治時代に制定した枢密院侍従長の大礼服。見事な刺繍で、やはりこれも金ボタンは装飾、ホック留めと軍服の仕様なのがよく分かります。
 ほかに吉田茂や昭和天皇の注文台帳の実物も展示されています。そこらの電話帳よりずっと分厚い代物です。
 ということで、私みたいな者には面白いのですが、ちょっと店内展示なんでもっと大規模にやってくれればいいのに、とその点は残念というか、もっとたくさん見たかったですね。
 そして、やはりというか、こういう軍服のディテールとか仕立て技術が、そのまま紳士服の仕立て技術に応用されたのだな、ことにナポレオン戦争以後にサヴィル・ローが勃興して今のスーツの原形を作っていく、という流れは本当であるな、と実物展示で納得できるものでありました。
 私も「スーツ=軍服!?」http://www.hanmoto.com/bd/ISBN978-4-7791-1305-5.htmlなどと言う本を出した手前、しかしこういう本物を手元に持っているわけではなく、本当にいい勉強になりました。
 この展示は、3月26~31日には名古屋の松坂屋本店に移る予定だそうです。
 
 
 

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