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2007年10月 9日 (火)

パンズ・ラビリンス

 わざわざ有楽町シネカノン(ビックカメラの上階の映画館)まで行って、ギレルモ・デル・トロ監督のアカデミー賞3部門受賞作品「パンズ・ラビリンス」を見てきました。それにしても全編スペイン語だから、なのか有名人が出ていない、からなのかこれだけアカデミー受賞した作品がほとんど近所では上映されないのだから困ってしまう。現に昨日も、あまり広くない劇場はすべての回が満員御礼であった。監督はハリウッド作品でも有名な人だし、評価は高いのだし、商業上の安全主義は理解できるとしても、もうちょっと考えてもらいたいものである。
 なにしろ1944年フランコ独裁が完成しつつあるけれども、ナチスドイツなんかは敗北しつつある時期、という微妙な時代設定である。で、ゲリラ狩りに勤しむフランコ軍の大尉のもとに、身重の奥さんと、その連れ子の女の子がやって来るところから始まるのですが、この女の子、というのが普通の人間じゃなく、実は地下の魔法の王国の王女なのだが地上で記憶を失っている、という設定でありまして。
 で、ふとしたことから地下の国の使者の妖精や牧神(パン)が現れ、彼女に試練を課して、これをクリアしたら王女としてお迎えします、という話になる。
 なにしろ現実世界の方は、残虐冷酷で人殺しと拷問が趣味というファシスト軍人の義父と、それにへつらうばかりで連れ子の自分も疎むようになる母親・・・しかも母親は徐々に病状悪化し、危険な状態に。さあ、ヒロインはどうなる? そんなわけです。
 で、ファンタジーとしての見せ場も多々あるし、そのすばらしさでアカデミー賞をとったのは事実ですが、しかし現実世界の義父と、ゲリラとの戦いというのが非常に壮絶なんですよ。なんか半分以上、パルチザンものの戦争映画みたいになっている。後で思い返してもファンタジーの部分より現実の部分の方が重くて暗くて、すごいのであります。
 まあエンディングなど語りませんが、しかし・・・まあ見ようによってハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのか分からないようなエンディング、とだけは言ってもいいでしょう。なんかもう救いのなさにどっと疲労します。
 でまあ、上述の戦闘シーンとか拷問シーンとかが非常に残酷なもので、ファンタジーなのに12歳以下はダメの指定となっております。まあ、徹頭徹尾大人向けのファンタジーなんですね。
 それにしてもフランコ時代のスペイン軍なんて真っ向から描く映画自体珍しく、そしてどの評者も「誰が化け物といって義父の大尉がいちばんの化け物」という、この人物描写がものすごく、靴を磨き、髭をきれいにそり、身だしなみも行儀作法もきちんとしたこの軍人がまさに悪魔の化身に見えてくる・・・まあ大抵のナチスもの映画で出てくるナチ軍人よりも悪いです。が、彼にしてもなかなか見ようによっては、業を負っている描き方なんですね、いろいろと。彼の父親は著名な将軍で、そのコンプレックスがこの男を歪めているらしいのですが。実際、いい年して大尉止まりというのはぜんぜん出世遅いです。
 いやあ、ダークなお話ですが、一見の価値大ありです。なかなかどこでもここでも上映していませんが、お近くでしたらぜひ。

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 舞台は1940年代。スペイン内戦後の社会的不安を、少女の空想の世界に委ねたラテン・ファンタジー。普通、ファンタジー映画といえば空想部分がメーンで現実描写は少なめ。しかし、この映画は内戦後のスペインを生きる少女のダークな現実をしっかりと描いている。その点、少女が主人公ではあるが、大人の男性にも見ごたえがあるはず。  監督は『ミミック』などのホラー映画を手掛けるメキシコ人監督、ギレルモ=デル・ ... [続きを読む]

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