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2007年6月19日 (火)

映画「アポカリプト」

あのメル・ギブソン監督の新作「アポカリプト」を見てきました。ついつい前作「パッション」を想起して、マヤ文明時代の物語などと聞いて身構えてしまう人もいるかもしれませんが、これは違います。圧倒的なエンターテインメントで娯楽作でもあり、あえていえばギブソンの作品のなかでもっとも「マッドマックス」に近いノリの作品。あるいはuランボー」とか「コマンドー」「プレデター」みたいな、一人VS集団の密林サバイバルもの、というジャンルですらあります。ああいうシュワちゃんやスタローンの若いころの作品が好きな人は必見でしょう。
 マヤ文明が滅亡に瀕している16世紀、平和な村が襲撃され、村民がマヤのトシに連行されます。そして有名な血のいけにえとして、神にささげられていくのであります。
もちろん「パッション」の監督ですから手抜きなく、徹底的な時代考証を加えつつ凄惨残酷なシーンが延々と続きます。
 しかし、父親を殺されながらも、そこを辛くも逃れた一人の若者、それを追ってくる一隊の戦士。密林の中で死闘が繰り広げられます・・・。
 馬もなく鉄器もなく、飛び道具すらあまりなかったマヤ文化をテーマにしたのは、とにかく肉弾戦を描きたかったから、とのこと。そのねらい通り、ハードな「男の筋肉と筋肉のぶつかり合い」が延々と描かれる、実に硬派な作品ですが、お話はけっこう「復讐ものアクション映画」にはよくある分かりやすい筋書きであり、非常に見やすい、入り込みやすい、そして面白い。
 その一方で、巨大なマヤの神殿にきらびやかな貴族や王族の衣装、まがまがしい儀式、そして現代人とは明らかに違う死生観とか、勇気に関する感覚・・・そこらは非常にメインのストーリーとはギャップがあり、またそれが魅力的です。
 出演者はほとんど無名の新人で、映画経験があるといえるのは、追撃してくる舞台の指揮官役の人(昨年のポカホンタスを描いたニューワールドなどにも出演)だけ。全台詞はマヤ語を使用、という異例づくめの演出。これ、たとえば今、日本で全部アイヌ語の映画を作るとなったら非常に大変でしょうが、ッじようなことでしょう。「パッション」もすべて古代ヘブライ語やラテン語を使用しましたが、ギブソン監督は「アメリカ人にも字幕を見る習慣を付けてもらいたい」という意図があるそう。
 世界中どこに行っても英語が通じるという思いこみから、実際には井の中の蛙に陥りやすい米国人には確かに必要なことでしょう。ハリウッド映画を諸外国の人は字幕で見ていることをアメリカ人は気づいていないそうですから。
 主演のヤングブラッドという人はネイティブアメリカンのダンサーで、ボクサー、さらにクロスカントリーの選手でもあるという肉体派、しかし顔立ちはなかなか甘く、ひょっとして人気者になるかも。その奥さん役というのも、ベラクルス大学の現役学生で、街でスカウトされた女の子だとか。キャスティングした人の苦労もなまなかじゃなかった模様。
 生け贄の習慣はマヤじゃなくてもうちょっとメキシコ側のアステカじゃないか、という声もあるようですが、そこらへんはまあ、ドキュメンタリーじゃないから。
 それよりも、文明が森林を破棄しすぎて崩壊していった様、そして文化が退廃して奇形化していった様、という描写が力強く、アクション映画の部分とは別に、その文明批評的な視点が非常に印象深い。
 アステカもマヤとほぼ同じ時代にコルテスに侵略されてしまいますが、とにかくそのへんを思わせる意外感あるラストシーンがまた、利いています。
 非常に良くできたアクション映画であり文明批評映画。ギブソン監督の手腕がさえ渡っております。
 ◆   ◆   ◆
 前に見た「300(スリーハンドレッド)」のパンフレットで、ヘナ・レディーの紹介文があり、近作には「第一次大戦の撃墜王リヒトホーフェン男爵の恋人役を演じたThe Red Baronがある」などと書いてありました。「レッド・バロン」? 昔ジョン・フィリップ・ロー主演の映画がありましたが(DVDにもなっています)そのリメイクだろうか。
 今の技術でリヒトホーフェンを描いているならぜひ見てみたいですが・・・日本じゃやってくれないかなあ。

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2007年6月12日 (火)

映画「300」(スリー・ハンドレッド)

映画「300」(スリー・ハンドレッド)見てまいりました。いやあ、驚きました。これはガチンコの歴史大作。「シン・シティ」のフランク・ミラー原作のコミックが下敷きと聞いて、またシン・シティのようなケレンミたっぷりの、ちょっと現実離れしたようなファンタジーかしら、と思ったらとんでもない、正統派の史劇なのには驚いてしまいました。
 紀元前480年、ヨーロッパ侵攻を企てたペルシャ帝国の大軍その数なんと200万人。対するはわずか300人のスパルタ兵。率いるのはスパルタ王レオニダス。普通に考えれば問題にも何にもならないのだが、レオニダスには一計があった。切り立った断崖を通る細い山道を通らないと海岸から平地に出られない地形。ここでは、大軍のメリットはなく、精鋭300人が陣取れば十分に持久できるはず・・・。
 そして、200万の大軍はついに、欧州侵攻を断念、ペルシャ王クセルクセスは撤退を余儀なくされるという、戦史に名高いテルモピュライの戦いを描いております。
 史実なのでありますから、勝手に変えられることは限られます。
 そのなかで、ジェラルド・バトラーのレオニダスは骨太で見事です。オペラ座の怪人の彼ですが、存在感ありますね。
 王妃を演じているのはヘナ・レディー。こちらも王の留守を守って捨て身の戦いを展開しますが見てのお楽しみ。
 それにしても、もうちょっと漫画っぽいのかしらと思ったのだが、本当に硬派な歴史劇であります。
 ペルシャ人は長ズボンで、スパルタ側は裸同然。このころは長ズボンをはくのはアジア人でヨーロッパ人は裸だったんですな、服飾史的にも。
 非常に濃密な世界で、ハードです。戦闘シーンも計算されつくしております。
 娯楽作品ですが、相当な手ごたえ、と思いました。

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