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2007年4月23日 (月)

「クィーン」もっと拡大公開してほしい映画

 ヘレン・ミレンがアカデミー賞主演女優賞を射止めた話題作「クィーン」・・・これがまた、14日から日比谷シャンテ・シネで単館上映していて満員盛況だったとか。で、22日より拡大ロードショーとなり・・・とはいうものの、それでもまだ私の住んでいる周辺では市川コルトンプラザ、船橋ららぽーとの二館ぐらいしかやっておらず、そういうことで船橋に出る用事があったついでにららぽーとの東宝で見て参りました。
 とにかく、女王が・・・そっくり、というのは物まね的なそっくりというわけではないのですが、しかしかなりルックスそのものも似せていますけど、それより話し方とか仕草とか、特に歩き方・・・女王様ってしゃなりしゃなり歩かれませんよね、なにしろ君主なんだから。けっこうドシドシという感じで歩く物腰なんか似ているんじゃないかな、と。それはもうヘレン・ミレンは見飽きるほど女王の映像を見て研究したとか。とにかくオファーを受けてから、恐いほどに緊張したとか・・・そりゃそうでしょう、現役の世界でも最高レベルの有名人、それもセレブじゃなくて、君主なんだから。
 日本の天皇と違って、英国女王が明確に君主であり、多くの権限と権威を担っているということを映画はきっちり描いています。「私が承認するまでは首相ではなくて、首相になられる方」と呼ばれるトニー・ブレア氏にして「強靱な人だ」と心から恐れ入ってしまうような、そんな人物。うまく描けています。
 が、その一方で、まるでそのロイヤルファミリーが普通のホームドラマのように、寝間着のままベッドから起きだしてくる様とか、テレビを見ながらフィリップ殿下や、当時健在だった女王の母上のエリザベス皇太后、チャールズ皇太子などがあっけらかんと茶の間で話すシーンなんてのは見物です。実際、こんな感じなのだろうか。
 そんなちょっとのぞき見趣味的描写があるかと思えば・・・とにかくびっくりさせられるのが、王室の「私有地」であるスコットランド・バルモラル城での描写。狩り場まで、もう女王や皇太子が自分でハンドル握ってレンジ・ローバーなど乗り回すところは驚いてしまう。そしてかっこいいなというか、自立した王室なのだな、と、それはこちらの国の皇室と比較してみてもちょっと考えられないですよね、陛下と呼ばれる人が荒れ地でバーヴァーのオイルジャケット羽織り、一人でジープ乗り回すなんてのは。
 で、川の真ん中でシャフトがおれる、というシーンがあるのですが「前のシャフトよ、私は戦時中、車の整備をしていたから分かるの」と女王が言うあたり、実際、戦時中は女王も従軍していたんですよね、そのへんもさりげなく示していて、まあただの贅沢で箱入りのお嬢さんじゃないというのがこれでもか、と出てきます。
 もう一人の主役は、トニー・ブレア。この作品の主軸であるダイアナ元妃の事故死の直前に就任した若き首相です。これがまた、そっくりさんじゃないのだがよく似ている。
 が、シェリー・ブレア夫人はこの映画を見たのだろうか。はっきりいって相当に悪い描き方になっているのですが、彼女。いくら幕引き目前とはいえまだこの首相夫妻は現役なのに・・・そのへんがまた、とても日本じゃ考えられないですね。とにかく主要人物のほとんどは健在どころか現役なのですから。
 10年前のダイアナ・フィーバーは結局なんだったのか。今では英国人も、あれは一種の欲求不満というか、集団ヒステリーのようなもの、と考えているようです。この事件で一人悪者とされた女王ですが、今冷静に見れば、パパラッチつまりマスコミが主犯であるという事実をかわすため、マスコミが必死になって悪者を女王に押しつけたわけですね。そういう構図というのが映画でも出てくるのですが、そこで一人、くせ者というかこれも一般に思われているよりずっとしたたかなのがチャールズ皇太子という人。ダイアナの死に際しては、けっこう実際に嘆いた、というところも描かれていますが、それよりも、国民のヒステリーに際して保身を考える節があるような・・・しかしこれも、単なる保身というよりも、王室そのものを護ろうという意識の表れなのでしょうね。
 非常にこう苦みがあるというか、甘ったれたお涙ちょうだい映画も近頃多い中、そんな「お涙ちょうだい」フィーバーをきっぱりとはねのける王室を描いた、いかにも英国的な骨のある一本。決して保守じゃなく、むしろ左翼寄りだという監督に脚本家、ヘレン・ミレン自身も本当はそうらしいのですが、しかし女王と君主というものの重み、というのをこう的確に描くに当たり、妙なバイアスがかかっていないのがお見事。それでも保守本流の英国人は不満に思うかも知れませんが。
 この映画も、もっと拡大公開してほしいもんですが。

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2007年4月16日 (月)

サンシャイン2057

 地球温暖化がむしろ問題だという昨今ですが、太陽が急速に輝きを失う近未来・・・もっとも、将来的には太陽も「死ぬ」わけなのですが、とにかくそれがわずか50年後に起こる、そして人類に残された手段は、巨大な核弾頭を宇宙船で運んで太陽の中心部に打ち込むだけ、そんな設定のSF映画「サンシャイン2057」を見ました。
 この人類の未来をかけたミッションに集結した世界中の科学者チーム。それを束ねる船長は日本人の金田(真田広之)なんですねこれが。さて、ミッションは成功して無事、地球は救われるのか、そしてクルーの運命は・・・。という次第なんですが、まあいちばん似ているテイストといえば「2001年宇宙の旅」でしょう、あれを思い出させるシーンが多いです。しかし、招かれざる邪魔者・未知の敵が侵入してきて、正体がわからない、という展開は「エイリアン」を思わせるし、地球を救うミッションに命を懸けるところは「アルマゲドン」のようでもあり、また宇宙空間の密室劇という点では「U・ボート」のような潜水艦ものの持ち味も感じさせる・・・実際に、それらの先行映画を参考にした、という話がパンフレットにあります。
 監督が真田さんを起用したのは「たそがれ清兵衛」での演技が決め手だったとか。ぐっと耐える男、それが日本のサムライ、ということでしょうか。実際、キャプテン金田は本作の中ではじっと耐える男、常に沈着な男・・・実を言うと、今回のミッション「イカロス2号」は人類にとってのラストチャンスで、7年前に出発して謎の失踪を遂げたイカロス1号の失敗をリカバーするためのもの。そして、イカロス1号の失敗はどうも、任務の重圧に負けたピンバッカー船長の乱心に原因があったようで、そう意味でもイカロス2のキャプテンは「絶対に平常心を失わない男」が必要であった・・・そういう設定らしいんですね。そこで日本人が起用され真田さんが出演した、というのは日本人としてちょっと気持ちがいい話ではあります。当初の予定じゃアメリカ人という設定だったらしいのですけど。
 さすがに英国でシェークスピア劇に出て鍛えただけのことはあり、英語も完璧。お見事です。
 実際、前のミッションの失敗と前の船長の乱心、というのがその後のお話に大いに絡んでくるのですが、ま、そのへんは語らないことにしておきます。
 最後まで手に汗握るサスペンス、密室ものとしての緊迫感と非常にシリアスな展開は見物です。それは本当に面白い・・・が、惜しむらくは最後のオチですか。
 ま、簡単に言いまして、結局、一人の不適任な馬鹿者のせいでみんなが苦労しました、というのでは、ちょっと締まらない感じがありますが・・・。
 ヒロイン格の女性がどっかで見た顔、と思ったら「トロイ」のヒロインのローズ・バーン。いい演技をしております。この女優さんは上手いですね。
 宇宙に出ると、人間の精神はかなり変容するという話があり、けっこう帰還してから奇行に走る人もおります。最近でも妄想的な嫉妬心で異常な追跡劇を演じて解雇されたNASAの女性飛行士がおりました。
 本作の理解にはそこらへんが重要ですが、ちょいと感情移入が難しいかな、という思いも残りました。そこんとこ、納得しないと、前船長の乱心の謎もピンと来ないうらみがあるんですね、話として。
 とにかく緊迫した息苦しいほどの密室劇、として見るのが一番、と思います。そういう見方からすると満点かもしれません。非常に疲労します。
 宇宙ものの娯楽系じゃないハードなSFとしては久しぶりという感じもあります。そういう系譜の最新型として一見の価値あり、と思うわけでありました。

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2007年4月10日 (火)

映画「大帝の剣」アラララララ!

「アラララララララ・・・・」というあのインパクト大な予告編。テレビCMでもあの、化け物がアラララ言っているシーンを思いっきり使っておりましたが、確かにあれ、耳に付きます。見終わってみますと、とにかくあのアララララ、と、主人公の「おっもしれえ!」という台詞が癖になってしまって、しばらく口について離れませんでした。
 ということで、東映の痛快娯楽大作「大帝の剣」を見てきました。阿部寛主演、長谷川京子、宮藤勘九郎、津川雅彦、杉本彩、竹内力らが共演、という時代劇にして伝奇ファンタジーにして、いやもうこうなるとSF作品といってもいいか。さすがに夢枕貘原作。スケールが大きいというかなんというか。まあ「魔界転生」とか「帝都物語」をさらに百倍ぐらい大風呂敷にしたような話であります。
 一応、時代背景としては、島原の乱の直後というから1638年ごろ、徳川幕府が3代家光の時代に入ってようやく安定してきたころ、というわけです。が、この話はいきなり豊臣家の血を引く舞姫(はっきり映画では語られませんが、秀頼の娘なんだろうか)というのが生き残っており、これをひそかに養育してきたのが真田幸村・・・彼も大坂夏の陣で戦死していなくて、この時代まで20年以上もひっそり生きていたという設定なのでまあ70過ぎの老人です。で、舞姫のお供に忍びの佐助、これは有名な猿飛佐助本人じゃなくて、どうも子供ということらしい。霧隠れ才蔵は登場しますけどかなりの高齢という設定なのは、こちらは初代の本人なんでしょうね。で、豊臣家再考をねらい、前田、島津、毛利といった諸大名とひそかに通じて陰謀中。それから、島原の乱後ということで、やはりというか、天草四郎も死んでおらず、やはりお話に絡んでくる・・・ここまではまあ、ちょっと突飛な歴史物ならありがちな設定。それにしても、この話通りだと徳川幕府ってぜんぜん、敵勢力の親玉を倒せなかったことになりますね。
 それはさておき、もっと奇怪なのが主人公というのが破格な人物で、まず彼は宣教師のヴァリニャーニが織田信長に献上したとされるおそらく日本で最初の黒人ヤスケの孫、というのであります。ヤスケは実在の人物で、信長から高級武士待遇に取り立てられて、本能寺の変でも信長を守って奮闘したという記録があります。が、彼に孫がいたというのは初耳。で、彼が背中に携えているのが「大帝の剣」という巨大な両手剣。どう見ても日本の刀剣の流れからは出てこないものですが、なんとこれは太古の地球に飛来した神秘の金属「オリハルコン」(こいつもSFではよく出てきますよね、アトランティス帝国で使われていたというあの金属)で出来ており、刀の形にしたのはあのアレキサンダー大王、というのだからすでに話がでかい。
 そして、この剣と、世界中に散らばった三つのオリハルコンの秘宝を集めると、世界を征服できるパワーが授かる、という設定もこういう話じゃありがちですが・・・。
 しかしそれだけじゃなくて、このオリハルコンを巡って、地球人だけじゃなく、宇宙からもエイリアンがやってきて争奪戦を繰り広げる、ということに。
 もちろん、豊臣家の残党も、また徳川幕府も、このオリハルコンの秘密は知っていて、血眼になって手にいれようと躍起になっているわけであります。
 ということで、大風呂敷のお話ですがとにかく面白い、肩の力を抜いて楽しめること請け合い。近頃見た娯楽系の作品じゃ抜群の面白さじゃないでしょうか。脚本もよーく練れていまして、テンポもよく、お笑いたっぷりだが、かといって必要以上にふざけてもいず、実にいいバランス。
 阿部寛が実に楽しそうにやっておりますし、ほかの出演者も本当にこの映画は楽しく演じているのが伝わってきます。江守徹のナレーションも、前の大河ドラマでの語りを思い出させますが、非常にこのけれん味のある世界観にはまっております。面倒くさい設定など、もうぜんぶ江守さんの語りに語らせてしまうあたりがかえって好感を持てます。楽しむためにはまず分かりやすくないとね。
 でも、意外にもけっこうしっかりと作ってあるな、というのはたとえばヴァリニャーニが信長に謁見するシーンなんてほんの数秒なのに、しっかり出来ています。
 宇宙船の飛来シーンも、そのへんのSF映画よりもよっぽど長く、派手な宇宙戦争のシーンが描かれていて実にとんでもないところで凝っている映画です。
 で、あの「アララララ」という化け物ですが・・・ちょっとネタばれになりますかね、あれは実は決して主要な登場人物じゃない、というのが面白いですはい。竹内力が演じるボスキャラは別にいるんですよね。だから中ボスというか。ところがその、全体の中では決して主要な役回りじゃないキャラがいちばん目立っていたりして、そのへんがおかしいです。
 おかしいといえば、この映画のパンフレットもパロディーがきいていて、中学校の歴史の教科書風になっていまして、駄法螺満載で笑えます。たとえば宇宙船の写真のキャプションに「加賀藩に伝わる宇宙船の絵図」とか書いてあって(嘘付けというの)。
 ラストシーンではとことん、とんでもないことになりますが見てのお楽しみ。なんでも、監督がキューブリックの「2001年宇宙の旅」へのオマージュを込めた、とのことですが、私もそのシーンで2001年・・・を思い出しました。
 面白いです、最近は邦画にパワーがあるといいますが、本当にそうですねえ。
 

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